JR福島駅東口で進められている駅前再開発事業の雲行きが怪しくなっている。昨年12月7日の福島市議会12月定例会で、石山波恵議員(2期)と斎藤正臣議員(3期)が事業の進捗について質問したところ、木幡浩市長から「計画全体の見直し」という答弁が出てきたのである。
「(地権者らでつくる建設主体の福島駅東口地区市街地)再開発組合と共に資材の変更や計画の再調整を進めてきたが、工事費高騰の影響を抑えるには至っていない。着工の見通しが描けない中、事業全体を成立させるには市のコンベンション施設も含め、踏み込んだ見直しを行うことも視野に検討しなければならない」
同事業は昨年6月定例会で木幡市長が「工事費の2割以上増額が見込まれ、資材の変更、計画の再調整、国庫補助など財源確保を再検討している」として、着工が2023年度から24年度にずれ込み、オープンも当初予定の26年度から27年度に遅れる見通しを示していた。
それから半年経ち、事業は延期にとどまらず、計画全体を見直さざるを得ない状況に追い込まれている。
原因は資材価格の先行きが見通せなくなっていることと、深刻な人手不足、それに伴う人件費の高騰だ。もっとも、同様の理由で着工・オープンが延期されている事業は表面化していないものも含めて県内に複数あり、福島駅東口再開発事業だけが特別なわけではない。
こうした中で筆者が注目したのは福島商工会議所の渡邊博美会頭が本誌先月号のインタビューで次のように述べていたことだ。
「資材価格高騰が建設に影響を与えている。完成後も維持費を考える必要がある。私は関係者に今こそ腹を割って話そうと言っている。一番良いやり方を、駅西口と一体的に考えるべきだ」
インタビューを行ったのは昨年11月中旬だが、この時点で渡邊会頭は計画全体の見直しを予見していたのかもしれない。
12月定例会で、前出・石山議員や斎藤議員は駅西口のイトーヨーカド
ー福島店が5月に閉店することを踏まえ「東西一体的なまちづくりを検討すべき」と促した。それに対し木幡市長は、県有施設の「とうほう・みんなの文化センター」(県文化センター)を駅西口に移転させるアイデアに言及していた。
「今まで東西一体的なまちづくりに関心を寄せてこなかったのに、議会も木幡市長も急にそういうことを言い出すのは不愉快」
と憤るのはある経済人だ。と言うのも、市内には福島商工会議所を中心に「福島駅東西エリア一体化推進協議会」という組織があり、福島駅の連続立体交差(※)により東西エリアの一体化を図るべきと訴え、自民党の有力議員に働きかけるなどしてきたが、議会も木幡市長も駅前再開発事業が進んでいることを理由に真剣に検討してこなかった経緯があるのだ(詳細は本誌2022年8月号参照)。
「コンベンション施設の規模を小さくすれば中途半端な再開発になってしまう。一方、議員は駅前にペデストリアンデッキをつくるべきとか東西自由通路を新しくすべきなどと言っているが、それだけでは東西一体化につながらない。連続立体交差は一大プロジェクトに違いないが、事業費を精査すると実はどの事業よりも安上がりで済むことに議員も木幡市長も目を向けてこなかったのは残念だ」(経済人)
今後、連続立体交差の機運が高まるかどうかは分からないが、迷走し出した駅前再開発事業の行方がはっきりしないうちは東西一体的なまちづくりの議論に入れないだろう。
※鉄道を連続的に高架化・地下化することで複数の踏切を一挙に取り除き、踏切渋滞解消による交通の円滑化と、鉄道により分断された市街地の一体化を推進する事業。施工者は都道府県、市(政令市、県庁所在市、人口20万人以上)、特別区とされ、国土交通省の国庫補助として行われる。このほか地方自治体の負担分も合わせ事業費全体の9割を行政が負担し、残り1割は鉄道事業者が負担。1968年の制度創設以来、これまでに全国約160カ所で行われてきた。