福島県では女性の活躍を地域再生の柱と捉え、2016年から「ふくしま女性活躍応援宣言」を掲げて、宣言に賛同する企業を募っている。官民一体となって進める「男女が公平に活躍できる環境づくり」のいまを紹介する。
「ふくしま女性活躍応援宣言」
地方では少子高齢化や労働力人口の減少に加え、若年女性の大都市への流出が課題となっている。震災・原発事故からの復興を進める本県にとっても喫緊のテーマであり、持続可能な社会の実現に向け、女性があらゆる分野で個性と能力を発揮できる環境づくりが求められている。
こうした背景を踏まえ、県は2016年7月、女性活躍を推進するため、「ふくしま女性活躍応援会議」を立ち上げた。県、県商工会議所連合会、県中小企業家同友会、厚生労働省福島労働局、市長会、町村会、アカデミア・コンソーシアムふくしま、各種産業関連団体など、官民19団体で構成され、女性活躍を県全体で推進する「司令塔」としての役割を担っている。
その同会議のキックオフイベントで発表されたのが「ふくしま女性活躍応援宣言」であり、以下の3点に一体となって取り組む方針が打ち出された。
①私たちは、女性が活躍できる環境づくりに向けた気運の醸成や、組織のトップをはじめとした意識改革に取り組みます。
②私たちは、率先して女性の登用に努めるとともに、女性が自ら意欲を高め、能力を発揮できるように取り組みを進めます。
③私たちは、働き方全般を見直し、男性も女性も仕事と生活の調和が図られるよう、働きやすい環境づくりを進めます。
県は宣言の実行を後押しするため、多様な支援策を展開している。
①に関しては、「ふくしま女性活躍推進シンポジウム」を開催したり、管理職の意識を変える「イクボス宣言」を推進して、組織全体で固定観念を打破する機会を提供している。
②に関しては、働く女性向けの「キャリアデザインセミナー」を実施したり、「働く女性を応援『キャリアデザイン』相談窓口」を設置して、女性が長期的な視点でキャリアを築けるようサポートしている。
③に関しては、次世代育成支援企業の認証制度や、女性活躍・働き方改革支援奨励金の交付、男性の育児参画を促す「カジダン」推進など、制度と企業風土の両面から多様で柔軟な働き方が広まっていくよう後押ししている。
この「宣言」に賛同して行動している企業の一つが、野地組(二本松市、野地武之社長)だ。
野地組

1953年創業の同社は、土木・建築・舗装工事などのインフラ整備、医療施設・店舗・一般住宅などの建設工事を手がけている。建設業界に根強く残る「男性は現場、女性は事務」という風潮を見直し、技術職でも男女の区別なく、年齢や実務経験年数などの基準を満たしていれば資格試験に挑戦できる制度を設けた。従業員62人中9人が女性で、この制度を活用して、1級土木施工管理技士補(監理技術者補佐)、2級建築施工管理技士の資格を取得した女性技術者が現場責任者として活躍している。
現場パトロールやドローン操縦、スキルアップ研修、チームリーダー育成のための社外セミナーなどへの参加も求め、役職を任せられるだけのスキルアップと意識向上を促す。キャリアコンサルティングや個別メンター面談制度も導入し、一人ひとりのキャリア形成を支援する。
このほか、有給や産休・育休の取得を後押ししており、復職後は短時間勤務や時差出勤制度を柔軟に選択できる環境を整備。子どもが病気になったときに使える看護休暇(特別有休)を年間7日設け、行事参加などによる早退も取得しやすくするなど、家庭と仕事の両立を支える仕組みづくりに力を入れている。
同社で働く女性従業員は「仕事と家庭の両立がしやすい環境」と語る。
「子どもの産休・育休を取得し、復職後は時短勤務を活用しました。子どもたちは野球のスポーツ少年団に所属しており、週4日の練習に加え、シーズン中はほぼ毎週試合や遠征があります。出勤日と重なる際は有給休暇を活用していますが、上司や同僚の理解のおかげで柔軟に対応できています。その分、普段からいかに効率よく仕事をこなすか考えて取り組んでいます」
同社担当者は今後の抱負を次のように語る。
「企業説明会には女性従業員も参加し、自身の体験を学生に直接伝えています。仕事と家庭の両立ができる職場環境を維持しながら、時代に合わせた働きやすい環境へと常に進化させていきたいと考えており、デジタル化の促進や人材育成にも力を入れて、効率的かつ成長できる職場を目指します。コミュニケーションを大切にし、若手や女性からの意見やアイデアを積極的に取り入れることで、より働きやすい職場づくりにつなげていきたいです」
公平な評価制度を構築
1933年創業で、電気・通信・消防設備工事を手掛ける東陽電気工事(西郷村、石川格子社長)も同宣言に賛同している企業だ。
東陽電気工事

同社の特徴はハード・ソフト両面から女性が働きやすい環境づくりに努めている点だ。ハード面では生理用品の常備、女性用作業服の導入に加え、女性用のヘルメットの検討も進めるなど現場での女性の負担軽減に取り組む。ソフト面では女性専用ホットラインの設置、男女を対象とした更年期障害に関するセミナーの実施、賃金評価テーブルの統一による公平な評価制度の構築を進める。
これらの取り組みにより、男女問わず「働きやすい」、「相談しやすい」、「休みやすい」企業風土の醸成につなげている。
同社の担当者はこうコメントする。
「社員からは『女性だけを対象とした特別な活動が少ないので、かえって働きやすい面もある』との声が聞かれます。女性に焦点を当てた活動が増えたり、女性社員への取材が相次ぐと逆に負担に感じることもあるようなので、今後はそうした意見を踏まえ、さまざまな活動が展開できたらと考えています」
これらの企業以外にも、建設業からサービス業、金融、行政まで幅広い企業・団体が同宣言に賛同し、具体的な行動を始めている。県民、企業、団体が一丸となり、性別を問わず働きやすく、能力を発揮しやすい環境を整えていくことで、地域の活力が高まり、地方が直面する課題の解決にもつながっていくはずだ。

























