双葉郡内の森林整備事業を担う双葉地方森林組合(富岡町、松永秀篤組合長)の周辺が何やら騒がしい。例年と異なる6月の唐突な人事異動により意に沿わない形で異動になった職員がおり、不満の声が飛び交っているためだ。
複数の関係者によると、本部で管理職を務めていた職員2人が、突然広野事業所や川内事業所に配属になったという。同組合の担当者は本誌取材に対し、「どちらも当組合の事業所の重要な拠点であることに変わりはない。該当する職員にはヒアリングを行い納得してもらったうえで異動を実施した」と説明する。だが、職員らは「事前にヒアリングなどは一切行われておらず、いきなり内示を受けた。事実上の降格人事だ」と憤っている。
職員の間でささやかれているのは、5月に退任した岸眞前組合長による〝思い付き〟の人事異動だったのではないか、ということだ。
「2人はもともと相馬森林組合に勤めており、双葉森林組合に移ってからは本部の業務を支える重要な存在となっていました。林業経験がない岸前組合長に対し、直接意見を言うこともあったので、退任直前に嫌がらせのような人事を行ったのではないか、と言われています。このほか、1人の職員が現場から本部に異動になったが、現場作業は2人1組で行われるため、残された1人をどうするか、職員は頭を悩ませたそうです」(ある関係者)
岸前組合長は双葉中学校の校長などを務めた人物で、前任の組合長の体調不良に伴い組合長に就任。今年89歳と高齢なこともあって退任した。〝退任直前の置き土産人事〟に対し、2人の職員は撤回を求めているそうだが、同組合の動きは鈍く、問題解決に向けた会合などを開く見通しも立たないという。
双葉地方森林組合は1994年設立。職員数20人。管轄エリアは双葉郡全域。資本金1億0185万2000円。民間信用調査機関によると、2025年3月期の売上高は6億4400万円。
組合員所有の山林の手入れや林産請負などが従来の主な事業だったが、原発事故後は放射能汚染により見合わせざるを得なくなった。2020年、9年8カ月ぶりに地元での業務を再開。現在は市町村が森林の間伐と放射性物質対策を一体的に実施する「ふくしま森林再生事業」の請け負いや海外防災林の防風柵の加工などが主な業務となっている。
職員から人事への不満が出ていることについて、松永組合長にコメントを求めたところこう回答した。
「正直組合長に就任したばかりで、事情が分かっていない面も多いが、不満を抱えた状態で働くのは問題があるので、まず職員の話を聞くところから始めます。すぐに人事を見直すというわけにはいかないだろうが、必要に応じて検討していきます」
締め切りの都合上、どういう意図を持って人事を行ったのか、前組合長の岸氏に話を聞くことができなかったが、人事に対する不満の声が漏れ聞こえているのは事実。あらためてヒアリングして現状把握するところから始める必要がありそうだ。
森林組合といえば、本誌では相馬地方森林組合の内情についてたびたびリポートしてきた経緯がある。職員退職や事務所移転問題、役員改選をめぐりさまざまな情報が飛び交っていることを紹介する内容だったが、その相馬地方森林組合に所属していた職員が関連しているということで、今回の情報が本誌に寄せられたのだろう。

























