【郡山市】ヨークパーク開業をうらやむ福島市民

【郡山市】ヨークパーク開業をうらやむ福島市民

 郡山市の旧イトーヨーカドー郡山店跡地に3月14日、ヨークベニマルの新商業施設「ヨークパーク」がグランドオープンした。県内初出店の店舗も入居し、連日多くの来店客でにぎわっている。一方、福島市の旧イトーヨーカドー福島店跡地は建物の解体が決まったものの、未だ利活用方針は示されていない。福島市民からは郡山市をうらやむ声が聞かれる。

総合スーパー再生モデルとして脚光

 ヨークパークはヨークベニマルが旧イトーヨーカドー郡山店の建物を改装してオープンした商業施設。ヨークベニマル西ノ内店を中心に、県内初出店となる生活雑貨専門店ロフトをはじめ、アパレル店ユニクロ、赤ちゃん・マタニティ用品店アカチャンホンポ、郡山市再出店となるくら寿司など、35のテナントが入居した。

 建物は5階建てで、売り場面積約1万5424平方㍍。駐車台数1305台(立体駐車場含む)。

 2月28日にヨークベニマル西ノ内店が先行オープン、3月14日にグランドオープンしたが、両日とも開店前、数百人から1000人規模の行列ができた。それだけ期待感が高まっていたということだろう。

 「アカチャンホンポで特売になっていた紙オムツを目当てに来た。魅力的な飲食店や雑貨店、洋服店が入っており、ヨークベニマルで食料品も買えるので、子育て世帯としても買い物しやすそうです」(紙オムツを買い物かごに積んだ男性)

 「化粧品に興味があり、これまでは駅前のエスパルなどで買い物していた。ここなら自転車で来られるし、お小遣いで買える安い商品を扱うショップが出店しているのでありがたい」(女子中学生)

 ヨークパークのオープンは全国的にも注目を集めた。イトーヨーカドーは総合スーパー(GMS)という業態で食料品や日用品、衣料品、家電、家具などを総合的に扱い、売り上げを伸ばしていた。その後、バブル崩壊やユニクロ、しまむらといった専門店の台頭によりGMSという業態自体が衰退・撤退したが、その跡地を使ってGMSを再生しようというのが今回の出店だった。

ユニクロ柳井氏の激励

 プレジデントオンライン2月28日配信記事によると、旧イトーヨーカドー郡山店の跡地を再生するうえで、ノウハウがないヨークベニマルの大髙耕一路社長やヨークHDの幹部らが頼ったのは、ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長だった。

 大髙社長はグランドオープン時のあいさつで「2023年12月、柳井さんのもとへ大髙善興名誉会長と協力の〝お願い〟に行ったところ、『GMSを立て直すには〝お願い〟なんて生ぬるい気持ちじゃだめだ』、『創業精神に立ち返り、何でもやるつもりで挑戦すれば、必ず再生は成功する』とアドバイスを受けた」と明かした。そのうえで、「長らくイトーヨーカドーとして皆様にかわいがってもらった場所であり、郡山市はヨークベニマル創業の地でもある。多くのテナントを迎えて開業できることを感謝したい」と語った。

 グランドオープン前日の記者会見では、ヨークHDの石橋誠一郎社長が同社株式の6割を保有する米投資ファンド「ベインキャピタル」の知見をいかしてGMSの再成長を図る方針を示し、「ヨークパークをこれからのGMSのモデルとなるような施設にしていきたい」と語った(朝日新聞3月14日付)。

 ちなみにヨークベニマル、前出のロフトやアカチャンホンポはセブン&アイ・ホールディングスの中間持ち株会社「ヨーク・ホールディングス(HD)」の子会社。 ヨークベニマル・ヨークHDが総力をあげて開発した複合施設であることが分かるだろう。ヨークパークは週末になると駐車場所を探すのが困難なぐらい活況を呈しており、スタートダッシュに成功したと言える。

 その一方で、昨年5月に閉店した旧イトーヨーカドー福島店跡地は未だ土地活用のめどが立っていない。土地・建物を所有する不動産大手・ヒューリック(東京都)は2月25日、建物を解体する方針を明らかにした。駐車場を含めた福島店跡地全体の敷地面積は2万3750平方㍍。

 有識者や市民で組織された福島駅周辺まちづくり検討会では、「まちづくりに生かすことが重要」、「一体的・複合的な開発が望ましい」と報告しており、本誌3月号では木幡浩・福島市長が「マンションが立ち並ぶだけでは拠点としての魅力に欠けるので、地域住民の日常生活に役立ち、かつシンボリックなものにしたいと考えている」と述べていた。市は検討会の報告を踏まえ、市や市民の意向に沿った土地利用をヒューリックに求めていく考え。

 本誌昨年11月号ではイオングループが進出するのではないか、というウワサも囁かれていると報じた。ただ、どう活用されるかは土地・建物の所有者であるヒューリックの胸三寸という状況だ。

 集客力が落ちている地方都市の駅前とはいえ、広大な土地を購入して開発するとなれば、多額な資金が必要となる。それだけ大規模な開発を進められる事業者が現れることに期待したいが、なかなか決まらず、塩漬け状態が続く可能性も否定できない。

福島と郡山、分かれた明暗

ヨークパークグランドオープン時の開店セレモニー(中央がヨークベニマルの大髙耕一路社長)
ヨークパークグランドオープン時の開店セレモニー(中央がヨークベニマルの大髙耕一路社長)

 同じイトーヨーカドー跡地なのに、郡山店跡地はにぎわい、福島店跡地は活用未定――。駅前と幹線道路沿いという立地の違いはあるにしても、明暗がはっきり分かれた格好だ。

 ブログやSNSでは「福島市にもヨークパークを作ってほしい」、「福島市のイトーヨーカドーも空いてますよー」など、郡山市に魅力的なテナントを備えたヨークパークができたことをうらやむ福島市民の声が数多く見られた。福島市のある経済人もこのように話す。

 「ヨークベニマルは郡山市が創業の地ということもあり、社運を賭けてGMS再生に取り組んだ。いわゆる〝公務員のまち〟である福島市にそこまでする民間企業はないと思います。福島駅東口再開発で整備される民間エリアには飲食店、医療機関、オフィスなどが入る予定だが、魅力的な商業テナントは誘致できなかった。県内初出店のテナントが並ぶヨークパークがまぶしく見える」

 昨年4月、ヨークベニマルの真船幸夫会長(当時)は「条件が合えば旧イトーヨーカドー福島店跡地への出店を前向きに検討したい」と話していたが、その後大きな動きはなかった。福島駅西口の歩行者通行量はイトーヨーカドー閉店後に3割減となり、跡地に整備され人気だった月決め・時間貸し駐車場は閉鎖されることになった。東口再開発は2029年度開業予定で、その間の中心市街地の空洞化が懸念される。

 2027年春、福島市南矢野目にイオンタウンが新規出店する予定だが、2026年下期には伊達市にイオンモール伊達がオープンし、県北地方の商業地図が塗り替わっている可能性もある。気軽に買い物を楽しみたい福島市民の嘆きは止まらない。今年11月の福島市長選でも大きな争点になりそうだ。

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