いわき市が進めているJR湯本駅前の再開発事業を巡り、市が業者を恣意的に選定したなどとして、業者に対して支払った業務委託料の公金934万2300円を業者から回収するよう市に求める住民訴訟を駅前の商店主が起こしている。10月28日に福島地裁で第1回口頭弁論が開かれた。被告のいわき市は出廷しなかったが、市は業務委託は適正に行われていたとして争う方針だ。
公金返還求める住民訴訟
提訴から第1回目の弁論までの期間は短く十分な反論ができないため、被告側が出廷しないことは珍しくない。通常は対決する姿勢を書面で知らせ、2回目に反論する。この住民訴訟では、原告側代理人は広田次男弁護士ら複数人が務める。被告いわき市の代理人は大谷好信弁護士。
原告は湯本駅前で洋菓子店を営む長岡裕子さん。この日、被告不在の席に向かって陳述書を読み上げた。
「今、目の前で進行している再開発事業が、あまりにも当事者である市民を置き去りにした不公正な手続きに基づいて進んでいる状況を看過できず、今回の提訴に至りました」
長岡さんが問題としている契約は市がまちづくり会社「㈱ふらゆもり」に発注した「常磐地区交流拠点エリア形成支援業務委託」。同社はまちづくりの任意団体「じょうばん街工房21」の関係者で構成されている。業務委託料は934万2300円。契約期間は2023年9月21日から翌24年3月29日まで。再開発エリアで既存店及び新規出店する事業者らの勉強会を開いたり、地権者の移転や出店の意向を把握したりする業務などを任された。
ふらゆもりは、いわき市と随意契約を結んでから約1カ月後の同年10月20日に602万2500円で㈱マイロックチョコレーツに再委託した。同社は「トコナツ歩兵団」の名称でいわき市のPR業務に携わってきた実績があり、「フラシティいわき」のブランド化やいわき湯本温泉の旅館の女将がフラを踊る「フラ女将」を手掛けてきた。
原告側は、本来は一般競争入札にかけるべきだった契約を随意契約でふらゆもりに委託したのは違法と主張する。随意契約は災害時などの緊急性や、その事業者である必然性がないと認められない例外の契約形態だからだ。原告側は、①ふらゆもりが設立されたのは市と契約を結ぶ約1カ月前と間もない点 ②契約から約1カ月後にマイロックチョコレーツに再委託している状況から、「実績がなく業務遂行能力がないふらゆもりに随意契約で事業を委託する理由は認められない。にもかかわらず契約を結んだのは違法」とする。原告の訴えが裁判で認められると、市はふらゆもりに公金を返還するよう請求しなければならなくなる。
湯本駅前の事例が当てはまるかは分からないが、地方における再開発事業の一般的な事情を次に記す。
資力に乏しい地方では、再開発は公金投入が欠かせない。国の補助金ありきだ。その際、自治体が地元の事業者に働きかけて意見集約の受け皿となるまちづくり団体をつくらせる事例がある。団体に住民の希望調査や再開発のデザインを描くノウハウは乏しいので、コンサルの力を借りる必要が出てくる。事業を担う行政や、まちづくり団体としては、業務の継続性の観点から一つのコンサルに任せたいという意向が働く。契約を「信頼関係」と捉えるか「癒着」と捉えるかは、多数の住民が再開発事業に「自分の意見が反映された」と思えるかや、契約の透明性が左右する。
次回は福島地裁で12月16日午後2時半に開廷。被告のいわき市が詳細な反論をする。

























