滞る【国見町】の救急車事業検証【ワンテーブル】

滞る国見町の救急車事業検証

百条委の調査能力に疑問符

 国見町が高規格救急車を所有して貸し出す事業を断念した問題の検証が難航している。町執行部が設置した第三者委員会は、委員3人のうち2人が「一身上の都合」で9月下旬に辞任し議事が滞った。議会は11月上旬に地方自治法100条に基づく調査特別委員会(百条委員会)を設置する方針。百条委員会は証言者が出頭を拒否したり記録提出を拒んだ場合、刑事告発できるなどの強制力を伴うが、救急車リース事業案の問題点を見過ごし、一時は原案通り可決した議会が調査能力を発揮できるかは未知数だ。

 救急車リース事業は、受託企業ワンテーブル(宮城県多賀城市)の社長が「行政機能を分捕る」と発言したことが明らかとなったのを受け、町執行部が「信頼関係が失われた」と事業を中止。執行部は町民説明会での要望を受け、有識者3人からなる第三者委員会で事業の検証を進めようとした。

 ところが、委員を務めていた垣見隆禎・福島大行政政策学類教授と元井貴子・桜の聖母短大准教授が辞任したことで、執行部の検証に暗雲が立ち込めた。本誌が垣見教授に電話すると「河北新報に書かれた通り。それ以上のことは答えられない」と口は重かった。

 9月28日付の河北新報は《垣見教授によると、これまでの会合で委員が事業の関連資料の提出を促しても町側は「既に廃棄した」などと回答を拒み、核心部分の調査が進まなかった》《「そもそも町は第三者委による調査を条例で『事務執行適正化』に関するものに限定し、最初から問題の検証が困難な建付けになっていた」》と報じていた。

 町が設置した第三者委員会とは何か。第3回臨時会(5月17日)提出の条例案によると、設置趣旨は「本町職員による不適正な事務執行が発生した場合又は発生が疑われる場合において、その経過の客観的かつ公正な検証及び再発防止のための提言を行うため」(第1条)とある。

 委員会が所掌する事務は⑴不適正な事務執行の経過に関すること、⑵不適正な事務執行の再発防止策の提言に関すること、⑶前2号に掲げるもののほか、町長が必要と認めること。条文は職務を事務執行に限定していることが分かる。議会は「事務執行とは具体的に何を指すのか」と疑問視せずに原案通り可決した。

 本誌は辞任したもう1人の元井准教授にメールで問い合わせたが「本件につきましては、本学企画室がご対応することになっておりますので、私からお答えすることは控えさせていただいております」と回答。辞任した2人の口が重いのは、条例第8条「委員は、職務上知りえた秘密を漏らしてはならない」「その職を退いた後も同様とする」と守秘義務が課されているためだろう。

 町監査委員会は9月に発表した意見書で、4億円を超える事業にもかかわらず計画書を作成していなかった点、監査委が救急車製造仕様書の根拠となる参考資料提出を求めたところ、執行部は受託業者からの資料のみで「他は処分した」と説明したことを問題視している。

 資料が新たに出ない以上、検証には関係者の証言しかない。百条委員会はワンテーブルの元社長や関わった町職員への聴取を検討しているという。町民は「狡猾な企業に町の予算を狙われ、恥をかかされた」と怒っている。百条委はガス抜きのための調査に終わらせず、ワンテーブルに狙われた過程を明らかにすることに徹するべきだ。

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