やざわ・げんせい 1951年生まれ。東洋大学経済学部卒。76年に三島町職員となり、生涯学習課長、政策担当課長などを歴任。町教育長を経て、2015年の町長選で初当選。今年4月の町長選で3選を果たした。
――4月23日投票の三島町長選では、激戦を制し3選を果たしました。選挙戦を振り返って。
「私が今まで進めてきた取り組み、2期務めてきた実績、今後の4年間を見据えた本町の方向性について、町民の皆さんに訴えたことが認められたのかな、とあらためて実感しています。町長の任に就かせていただくにあたって、国、県の動きを見ると、これからの時代は経済成長を前提とした施策ではなく、ある程度成熟社会を踏まえた方向性に転換していると実感します。本町でも、医療・介護・福祉・保健・環境・自然保護・再生という言葉をキーワードとする地域社会の創造が私の使命であると痛感しています」
――2期8年の総括を。
「この間、特に注力してきた分野が医療・福祉です。地域住民の生活を守るため、地域包括支援センターや在宅医療の充実に努めてきました。また、本町をはじめ、柳津町、金山町、昭和村の医療圏を構成する4町村での連携のもと、県に対し、老朽化が著しい県立宮下病院の改善策について要望を重ねてきました。そうした中で、町民運動場への移転・新築が決定し、『有床診療所』として2027年度に開院の予定です。これに伴い、在宅医療センターも新設されるなど、県内でも特に過疎化や高齢化率が高い特性に合わせた地域医療の拡充が期待されます。
今後も構成自治体同士がしっかりとスクラムを組みながら同病院と一体となり、過疎地域における医療拡充を図っていく必要があります。医療・介護・保健・福祉が集約される地域包括的役割を担う同センターは、地域住民が安心・安全に暮らせる心のよりどころと言っても過言ではありません。
一方、同病院整備を足掛かりに道路整備にもつなげていきたいと考えます。現在、財政難や公共事業の削減も相まって本町の雇用を下支えする建設業は厳しい状況です。今後の建設予算の獲得には相応の合理性が一層問われるものと考えます。同病院移転を契機に周辺の道路のみならず、医療圏内の交通を円滑にするための道路整備が必要となるので、今後も関係機関に対し積極的に働きかけを行っていきます。そのほか、柳津町・三島町学校給食センターの整備、子育て支援策として給食費と保育料の無料化や紙おむつの支給、町営バスの減免制度創設、若者定住促進事業を展開してきました」
――3期目で目指す町政運営の方針についてうかがいます。
「私の政治哲学は〝本町の守るべきものはしっかり守り、変えるべきものはしっかり変えていく〟であり、端的に言えば『温故知新』と『不易流行』に尽きます。それらに基づいた町政運営を展開していきます。
1974(昭和49)年以降、本町では、5つの運動を展開してきた経緯があります。具体的には、①都市と農村の交流を通した地域活性化を狙いとする『ふるさと運動』、②伝統行事の数々を集落の誇りとして守り連帯意識を醸成する『1地区1プライド運動』、③伝統的なモノづくりの技と自然や地域資源を現代生活に生かしながら交流人口創出を図る『生活工芸運動』、④県立宮下病院の拡充や健康寿命の延伸を狙いとする『健康づくり運動』、⑤健康づくりと農業の連携・融合を目指した『有機農業運動』――であり、まちづくりの根幹になっています。地域をどのように活性化するのか、そのためには地域の資源をどう活用するのか、引き続き『温故知新』と『不易流行』の精神で取り組む考えです」
広域連携で活性化図る
――周辺自治体との広域連携の重要性について訴えてきました。
「周辺自治体を巻き込んだ広域連携のメリットは、各々の自治体における短所を互いに補い合える点のみならず、各自治体が持つ長所を認め合いながら相乗効果を発揮して『点から面』への地域振興を図っていける点だと考えています。そのためにも周辺各自治体と『Win―Win(ウィンウィン)』の関係を構築していきたいと強く思います。
現在、本町の人口は1400人で、人口減少と少子高齢化が加速している状況にあります。この問題に対処するためにも広域連携は大変重要になっていきますし、本町を含む過疎地を抱える山村の自治体が豊かさを維持するための至上命題と言えます。現時点では、先述した宮下病院を中核とする4町村の医療圏構想などで具現化しています。
柳津町、昭和村との連携による『特定地域づくり』の活用も重要です。教育や文化も含めた『総合的企業』という観点で、地域の文化の香りを生かした広域連携を展開し、活性化を図っていく考えです」
――3期目の重点事業について。
「1つは、『結婚・出産・子育てしやすい環境の整備』です。結婚祝い金制度の充実をはじめ、世代間の垣根を超えたさまざまな交流、きめ細かな子育て支援策、保育所や学童保育の充実を図っていく考えです。
2つは、『地域資源を生かした仕事を創る』です。環境に配慮した地域産業創生を目指し、4年間にわたり、環境省からご指導いただきながら取り組んできました。この間、『三島町における木質バイオマス活用を契機とした地域循環共生圏構築事業』、『三島町ゼロカーボンビジョン』など、環境省と連携しながら協定を締結し、環境問題についていろいろ議論を重ねてきました。
再生可能エネルギーにも注目しています。森林を生かした木質バイオマス発電、水を活用する小水力発電を積極的に展開して『産業化』を図り、循環型地域経済社会の創造を目指していきます。また、桐や編み組、温泉、会津地鶏、カスミソウ、健康野菜、山菜など魅力ある地域資源をさらに磨き上げ、地場産業の振興による雇用の拡大、農・商・工連携による地域で稼いだお金を地域に還元する地域経済循環の構造を一層盤石にする考えです。
3つは、『交流人口から関係人口・定住人口につながる流れをつくる』です。『サイノカミ』をはじめ、雛流し、虫供養など本町独自の地域文化をはじめ、自然との共有による豊かな暮らしなど、本町の魅力を積極的に発信し、交流人口の拡大はもちろん、関係人口の創出、ひいては定住人口の向上に努めていきたいと考えます。併せて、町内の空き家等の利活用にも注力していきます。
結びに、『生涯活き活きと過ごせる魅力ある地域を創る』です。『みしま健康ポイント事業』、有機農業などの健康づくりをはじめ、生涯学習の充実、町内集落における民俗文化の魅力発信による元気なまちづくりに向け鋭意努めていきます。そのほか、会津地鶏加工場の建設をはじめ、ガソリンスタンドや通信情報施設の整備にも着手します」