白河市の㈱楽市白河をめぐり「役員が使い込みで辞めた」とのウワサがまことしやかに囁かれている。
本誌編集部には2月28日にこんな匿名メールが届いていた。
《楽市のF取締役(※メールには実名が書かれていたが伏せる)が2千円(※おそらく2000万円の間違い)相当の使い込み。白河市は知っているのか?》
楽市白河は2000年設立。資本金5400万円。中心街で様々なまちづくり事業に取り組み、一定の成果を上げている。社長の藤田龍文氏は、松平定信の書や掛け軸などを所蔵する藤田記念博物館を運営する。
法人登記簿を確認すると、メールにあった「F取締役」と思われる人物は確かに存在したが、昨年12月31日付で辞任していた。
ウワサと登記簿を接合すると「F氏は在職中、会社のお金2000万円を使い込み、その責任を取って取締役を辞任し会社を去った」と解釈できる。
市内を取材して回ると、こんな話も耳にした。
「自主退職したことになっているが実質クビ。横領したカネを何に使ったかは分からない」
「自営業の兄が半分肩代わりして返したと聞いた。返したから裁判沙汰にならなかったらしい」
「社員や市職員に厳しいかん口令が敷かれ、誰も詳しいことを話してくれない」
本誌は一民間会社で起きた出来事なら注目しなかったが、楽市白河は市が大株主で、白河商工会議所などが出資する公の色を帯びた会社なのだ。となれば、役員の使い込みは見過ごせないし、市に報告する必要もある。メールに《市は知っているのか?》と書かれていたのは「会社が市に報告していなかったら問題」と言いたかったのだろう。
もっとも、楽市白河に問い合わせると「使い込み? そんな事実はない。F氏は定年退職しただけ」(男性社員)と言うし、市も「そういう話は初めて聞いた。F氏は定年で辞めたはずだ」(渡邊正俊まちづくり推進課長)と困惑気味。
ならば、当のF氏に聞くしかないと携帯電話を鳴らすと
「使い込みって随分ストレートな言い方ですね。私は定年で辞めただけ。いろいろと話すのもアレなんで取材は遠慮したい」(F氏)
使い込みが濡れ衣なら「誰がそんなウソを言っているんだ!」と激怒してもいいのに、奥歯に物が挟まったような言い方で電話を切られたから、ますます釈然としない。
楽市白河の藤田社長をはじめ他の役員にも片っ端から取材を申し込んだが、返事がないか、あっても「お断りしたい」――そんな中、社内事情を知る経済人がようやく詳細を説明してくれた。
「使い込みはしていない。本当に定年で辞めただけ。ただF氏は在職中、強引な仕事のやり方で社内外から不評を買っていた。一方、仕事上は中心的役割を担っていたので、通常なら定年延長もあり得たが、会社が下した結論は『若返りを図るためF氏には退いてもらう』だった」
F氏は市議を1期務めた経験があるが、当選後に市外に自宅を新築したり、お世話になった人たちへの挨拶を欠いてひんしゅくを買ったという。楽市白河を辞めた後も、同社での実績を各地で話していることが反感を招いているという話もある。
「そういった昔から今に至る諸々の不評が、なぜか使い込み疑惑に発展し、それを聞いた人たちが『アイツならやりかねない』と周囲に広めた。これがウワサの真相です」(同)
なんだかF氏が気の毒に思えてくるが、同情する人は案外少ないことも最後に付記しておく。