玉川村の50代男性職員が住居手当と通勤手当の計約400万円を不適切に受給したとして、昨年12月に停職3カ月の懲戒処分を受けた。一方、本誌昨年10月号では、矢吹町の30代男性職員が住居手当を不適切に受給していたとして、昨年9月に戒告の懲戒処分を受けたことを報じた。この2つの事例から察するに、表面化していないだけで、この手の問題はほかの自治体でもあるのではないか、と思えてならない。
矢吹町でも同様の事例発覚
玉川村の問題は、地域整備課の男性職員(主任主査。50代)が、2012年5月~昨年11月まで、住居手当379万7000円と通勤手当17万1000円の396万8000円を不適切に受給した。村はこの男性職員を停職3カ月の懲戒処分にした。処分は昨年12月7日付。
村によると、男性職員は村外に借りたアパートに住民登録しており、村では家賃の2分の1、2万8000円(※以前は2万7000円)を上限に住宅手当が支給されることになっている。ところが、男性職員はアパートを借りたままで、実際の生活は村外の親族宅で暮らすようになった。それが始まったのが2012年5月こと。本来であれば、その時点で住民票を移して、村に申し出なければならなかったが、「親族宅での生活は一時的なもの」として、そのままにしていた。しかし、親族宅での生活は「一時的なもの」ではなく、結果的に10年以上に及んだ。その間、アパートの賃貸借契約は継続されていたが、住居手当には「生活の実態がある」旨の条件があり、受給条件を満たさなくなった。加えて、その親族宅は、住民登録していたアパートより、職場(玉川村役場)への距離が若干近かった。
こうした事情から、前述した住居手当、通勤手当の計約400万円を不適切に受給したとして、停職3カ月の懲戒処分を受けたのである。
この問題が発覚した原因は匿名の情報提供があったのがきっかけ。これを受け、聞き取り調査を行い、男性職員が事実と認めたことから、懲罰委員会で処分を決めた。不適切に受給した住居手当、通勤手当は全額を返済されているという。
「(処分発表後)村民からは厳しいご指摘もいただいている。今回の件を受け、11月と12月に(同様の事例がないか)全職員への聞き取りを行いました。今後も、年1回は確認を行い、このようなことが起こらないように対処したい」(須田潤一総務課長)
今回の件を受け、ある議員はこう話した。
「昨年12月議会開会前の同月6日に、控え室で村から議員にこの問題についての説明があった。そこでは明日(7日)に懲罰委員会を開き、(議会初日の)8日にあらためて説明するとのことだった。ただ、村民の中には、われわれ(議員)より先にこの問題を知っている人がいて、それによると『この男性職員は矢吹町にアパートを借りていて、奥さんが出産の際、実家に戻った。旦那さん(男性職員)もアパートに帰らず、奥さんの実家に寝泊まりして、そこから通勤するようになった。それがズルズルと続いて、今回の問題に至った』と、逆にわれわれが村民に詳細を教えられる状況だった。どこから漏れたのか、ある程度、察しはつくが、こういうのは何とかならないものかと思いましたね」
肝心の問題の対処については、「どの職員がどこに住んでいるか。本当に、住民登録があるところに住んでいるのか等々を把握するのは難しい。本当にそこに住んでいるのか、抜き打ちで後をつけるわけにもいかないしね。その辺は本人の申告に頼らざるを得ないが、定期的に確認することは必要になるでしょう」との見解を示した。
アパートなどの賃貸住宅は、一度契約すると、当事者からの申し出がない限り、自動的に契約が更新される仕組み。例えば、1年ごとに契約を結び直すシステムであれば、その度に契約書を提示してもらうことで確認できるが、そうでない以上、本人の申し出に頼るしかない。そういった点はあるものの、住居手当の受給条件を満たしているか等々の定期的な確認は必要だろう。
一方で、ある村民はこう話す。
「いま、村内では阿武隈川遊水地の問題があるが、遊水地の対象地区では地元協議会を立ち上げ、要望活動などを行っています。昨年12月9日に、その会合を開き、村からも関係職員が出席することになっていましたが、急遽、村から『事情があって出席できなくなった』と言われました。後で、その問題を知り、そういうことか、と」
前述したように、処分は昨年12月7日付だが、村が公表したのは同12日だった。そのため、ほとんどの村民は、同日の夕方のニュースか、翌日の朝刊でこの問題を知った。遊水地の地元協議会が開かれた9日の時点では、「なぜ、村はドタキャンしたのか」と訝しんだが、数日後に「この問題があってバタバタしていたから来られなかったのか」と悟ったというのだ。
矢吹町の事例
ところで、本誌昨年10月号に「矢吹町職員〝住居手当〟7年不適切受給の背景」という記事を掲載した。受給条件を満たしていないにもかかわらず、住居手当を7年8カ月にわたり受け取っていたとして、30代男性職員が戒告の懲戒処分を受けたことを報じたもの。まさに玉川村と似た事例だ。以下は同記事より。
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報道や関係者の情報によると、この男性職員は2013年2月から賃貸物件を契約し、住居手当1カ月2万6700円を受給していた。
2015年10月に賃貸物件を引き払い、実家に住むようになったが、住居手当の変更手続きを怠り、同年11月から今年6月までの7年8カ月分、245万6000円を受給していた。職員は届け出を「失念していた」と話している。また、町もこの間、支給要件を満たしているかどうかの確認をしていなかった。
本人の届け出により発覚し、不適切受給した分は全額返還された。
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記事では、男性職員が懲戒処分の中で最も軽い戒告処分、監督する立場だった管理職の50代男性2人を口頭注意としたこと(処分は9月15日付)に触れつつ、町民の「結構重大な問題だと思うけど、ずいぶん軽い処分だったので呆れました」とのコメントを紹介した。
懲罰規定は各自治体によって違うが、確かに、似たような事例で、玉川村では停職3カ月、矢吹町では戒告と、処分に開きがあるのは気になるところ。
一方で、両町村の事例から察するに、バレていないだけで、似たような問題はほかの市町村でも潜んでいるのではないかと思えてならない。各市町村は、一度点検する必要があるのではないか。