玉川村に出現した謎の「赤い家」がSNSなどを中心に話題になっている。ただ、公式サイトで調べても施設の詳細はよく分からない。とりあえず、現地に行ってみた。
近隣住民は「景観条例制定を考えるべき」

 この赤い家は「REDBOX」というらしく、公式サイトを見ると、「悪夢体験施設」と書かれていた。「REDBOXってなに??」という項目をタップするとユーチューブに飛び、「REDBOXは池野実が見る悪夢を体験できる施設だよ」との紹介動画が出てくるが、正直意味は分からない。
 施設の写真を見ると、内部も真っ赤で、不気味な人形が置かれている。「施設のルール」もあり、「泣かない」「池野実に喋りかけない」「池野実に触らない」と書かれている。池野実とは、施設の所有者・運営者のようだ。「夢だから内容は毎回違うよ」「途中で目覚めることもできるよ」とも書かれている。
 悪夢が体験できる施設で、内容は毎回違う、途中で目覚める(止める)ことも可能ということらしい。
 「参加までの手順」とあったので見てみると、「まずは空き情報を確認してね」→「予約ページから予約してね」→「スタッフからメールがくるよ やり取りしてね」→「みんなの家にガラケーと誓約書を送るよ」→「当日は指定された場所にきてね ガラケーと誓約書は必ず持ってきてね」と書かれている。
 空き状況カレンダーを見ると8月、9月、10月はすべて×印。つまりは予約不可ということ。「11月以降のご予約は9月中旬に開始する予定」となっていた。
 「永夜熟睡の部 専用ページ」というのもあったので、タップすると「このページは、合言葉の入力をするページとなります。合言葉を入力していただくと、ページの内容を見ることができます」と書かれていた。当然、合言葉なるものは知らないので入れない。
 一通り見てみたが、結局、よく分からない。
 この赤い家が話題になったのは、運営者である池野実氏が8月6日にXで投稿したこと。「ここで体験施設やるんです 妻の夢やっとかないます」「【拡散希望】 福島県玉川村の方々へ これは私の住居です 村の方から宗教施設だと通報が殺到していてこまってます」と、赤い家の写真付きで投稿した。
自身の住居だが、苦情が来て困っていると訴えたのだ。
現地へ向かう

「赤い家」の正体を探る ユーチューブ動画を見て何となく場所の目星はつき、近隣住民に聞いてたどり着いた。場所は玉川村須釜地区で、行政センターやコワーキングスペース、貸しオフォスなどがある「すがまプラザ交流センター」の近く。本誌はモノクロのため伝わりにくいが、付近は上り坂になっていて、急に真っ赤な建物が目に飛び込んでくるので、やはり異様な雰囲気。呼び鈴などは見当たらず、中に人がいる様子もなかった。
 村の人はどう思っているのか。近隣住民に話を聞くと、「気味が悪いですよ」と話した。当然と言えば当然の反応だ。
 村によると、「SNSなどで話題になってから、役場に『あれはどういった施設なのか』といった問い合わせが数件あった」という。ただ、村が関与しているわけではないので、そのことを伝え、「分かりません」というほかなかったようだ。
 もともとは空き家で、同村には空き家バンクがあるが、そこに登録されていたわけではない。つまりは、民と民の取引で池野実氏の所有物件になった、と。池野実氏は地元の人ではないという。
 前出の近隣住民によると、赤くなったのは「たぶん昨年秋頃だったと思う」とのこと。当然、「あれは何だ」ということになり、ちょっとした騒ぎになった。
 さらに、この近隣住民は次のように続けた。
 「普段は人が出入りしている様子はないと思います。ただ、いろいろと話題になり、お盆の時期などは結構、人が来ていました」
 人が来ていたというのは、「悪夢体験者」というよりは、SNSなどで話題になっていたので見に来てみた類だと思われる。
 ある村民は「前所有者を知っているので聞いてみた」という。前所有者は、空き家になったところを頼まれて取得したようだが、用途がなく不動産会社に依頼して売却した。それが池野実氏なのか、それとも一度別の誰かにわたり、そこから池野実氏に渡ったのか。
 この村民によると、「前所有者に『完全に不動産会社任せだったから、そこまでは分からない』と言われてしまった」という。
 一方で、この村民はこんなことも指摘した。
 「村がすがまプラザの隣接地に整備した分譲地が、ちょうど8月から販売開始になりました。ただ、そこはあの赤い家からも近いので、自分だったら、そんなところに(分譲地を買って)家を建てない。場合によっては、景観条例のようなものも考えなければならないのではないか」
 この話を聞き、漫画家・楳図かずおさん(故人)の問題を思い出した。楳図さんの東京都内の自宅、通称「まことちゃんハウス」は、赤白横じま模様の外壁だが、これが「景観を破壊する」として周辺住民から提訴された。この争いは2007年から2009年まで続き、周辺住民の請求が棄却された。「景観を損ねる」という理由だけで法的に規制するのは難しいということ。
 ゆえに、「場合によっては景観条例のようなものも考えなければならないのではないか」といった話になるわけ。もっとも、条例を制定したところで、すでにあるものまで規制できるかどうかは不明だが。
 本誌は「REDBOX」公式サイトの問い合わせフォームから「『村の方から宗教施設だと通報が殺到していてこまってます』との投稿が反響を呼んでいます。一方で、村民からは『不気味』、『気味が悪い』との声も寄せられています。その辺をどう捉えているか、コメント頂戴できないでしょうか」と依頼したが、締め切りまでに返答はなかった。
池野実氏は何者なのか、「悪夢体験」とは何なのか、謎は残されたままだ。

 
  






















