地震被害とコロナで破産【矢吹町】「ホテルニュー日活」

地震被害とコロナで破産【矢吹町】「ホテルニュー日活」

 矢吹町の国道4号沿いで営業していた「ホテルニュー日活」が1月26日、福島地裁郡山支部から破産手続き開始決定を受けた。負債総額は約5億5000万円。破産管財人は武村陽弁護士(けやき法律事務所)。

 法人の㈱ホテルニュー日活(矢吹町大町44―1)は1953年創業、79年法人化。資本金2000万円。代表取締役は大竹利一氏。

 同ホテルは1980年に新築され客室数24室。宴会、法要、結婚式場としても利用され、仕出し料理の販売も行っていた。立地の良さから経営は好調で、同ホテルのほかにパチンコ店「日活第三ホール」(矢吹町)や旅館「辻梅」(郡山市香久池)を運営。賃貸アパートも町内に数棟所有していた。ピーク時の95年には売上高38億1100万円を計上した。

 一方で、1996年には同ホテルで食中毒が起こり3日間営業停止。97年には賃貸アパート1棟が入居者の火の不始末で全焼するなどのトラブルに見舞われた。2018年には町内に進出した大型パチンコ店のあおりで日活第三ホールが閉鎖。以降は同ホテルと辻梅の営業に注力していた。

 矢吹町商工会によると

 「破産と報じられ、大変驚いた。新聞に書かれていること以外は何も知りません。宿泊者がどれくらいいたかは分からないが、町でイベントがあるとよく使われていたし、商工会でも総代会の会場などでお世話になっていた。町内には他に大きな会場がないので、日活さんがなくなると不便になりますね」(事務局長)

 正直、目ぼしい観光資源のない矢吹町にどういう人が宿泊するのか想像がつかないが、町内で営業する矢吹ステーションホテルのフロント従業員に話を聞くと

 「出張のビジネスマンや、周辺の工場に研修で来た方を中心にご利用いただいています。日活さんにどういう人が泊まっていたかは、他社のことなので分かりません」

 ただ、ホテルニュー日活近くで営業する店舗に聞き込みをすると「イベントや会合があると駐車場には結構な数の車が止まっていた」「夜の駐車場にはほとんど車はなかった」というから、利用者は日中の会議や宴会が中心だったようだ。

 ある経済人はこう話す。

 「東日本大震災の大地震で建物が被害に遭った。ただ、その時は補助金を使って修繕し、客の入りもまだまだあったんです」

 しかし、その後に起きた二度の大地震が建物に更にダメージを与えたという。

 「2021年2月と22年3月に起きた福島県沖地震が建物にかなり影響を及ぼしたようです。加えて当時はコロナ禍でもあったので、会議も宴会も宿泊も全部入らなくなってしまった」(同)

 この経済人によると、同ホテルが建つエリアは地盤が軟弱で「あの場所で営業している以上、大地震があれば建物が被害を受けるのは避けられない」(同)のだそう。

 2021年7月期の決算は売上高6700万円、当期純利益3900万円の赤字。売上高はピーク時の57分の1にまで落ち込んでいた。

 不動産登記簿を確認すると、土地と建物には白河信用金庫が極度額4億3000万円、同5625万円、同4億円と三つの根抵当権を設定。常陽銀行も同1億2000万円の根抵当権を設定していた。

 同ホテル近くには大竹利一社長の自宅がある。報道によると、大竹社長は体調不良とのこと。インターホンを鳴らすと、男性の声で「弁護士に一任しているので、話すことはありません」という返答があった。

 時代の流れとはいえ、町の活況を長く支えてきた同ホテルの破産は寂しい限りである。

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