政府は10月21日、いわゆる「1票の格差」是正に向けて、衆議院議員選挙の小選挙区定数を「10増10減」することなどを盛り込んだ公職選挙法改正案を閣議決定した。12月10日に会期末を迎える今国会で成立する見通し。成立後、1カ月の周知期間を経て施行され、次の衆院選から新たな区割りが適用される。
新たな選挙区割りでは、福島県の選挙区は現行の5から4に減る。
新1区=福島市、二本松市、伊達市、本宮市、伊達郡、安達郡。
新2区=郡山市、須賀川市、田村市、岩瀬郡、石川郡、田村郡。
新3区=白河市、会津若松市、喜多方市、西白河郡、東白川郡、南会津郡、耶麻郡、河沼郡、大沼郡。
新4区=いわき市、相馬市、南相馬市、双葉郡、相馬郡。
地方振興局の管轄エリアごとに再編・切り貼りした格好となった。
本県関係の衆議院議員は小選挙区、比例区併せて9議員。選挙区が1つ減ればその分当選できない人が出るわけで、各議員にとっては死活問題だろう。
本誌10月号では、現3区を地盤とする玄葉光一郎氏(58、立民、10期)が新2区への転出をうかがって、地盤作りに努めている様子をリポートした。それ以外の選挙区に関しても、現職議員がこれまでの地盤以外での動きを活発化させているという話が漏れ聞こえてくる。報道によると、公職選挙法改正案が成立次第、自民党などが候補者調整に速やかに入る方針とのことなので、今後、陣容が固まるものとみられる。
今後の動向という意味で気になるのは新4区だろう。
「震災・原発事故の影響を受けた浜通り」として一体感があるように見えるが、福島第一原発による避難指示の有無や被害状況は自治体によって違う。
政治的な背景という意味でも現1区の相馬市・南相馬市と、現5区のいわき市では全く異なる。
現5区選出の衆議院議員はいわき市を地盤とする吉野正芳氏(74、自民、8期)。2020年に脳梗塞を患って以降、骨折したことなどもあって、健康不安説が浮上した(2020年12月号参照)。現在は回復しているが、年齢を考えると次も立候補するのは難しいのではないかと囁かれている。
仮に吉野氏が引退したら誰が後釜に入るのか。かつて吉野氏とコスタリカを組むなどしのぎを削った元衆院議員・坂本剛二氏の息子で、同党県議の坂本竜太郎氏が立候補に強い意欲を見せているが、まだ正式には方針が固まっていない様子。大票田であるいわき市ではこれまで複数の国会議員を誕生させてきた経緯があり、自民党いわき総支部などを中心に候補者選定が進むと思われる。
ただ、浪江町が福島国際研究教育機構の整備地に選ばれ、相双地域の復興が進む中で、その意向も無視できなくなるだろう。
福島県内の選挙事情に詳しい東北大学大学院情報科学研究科(政治学)の河村和徳准教授は次のように語る。
「自民党いわき総支部の中で“後継者争い”が進む中、相双地方の意向も加わってくれば、さらに混乱模様となることが予想されます」
新4区は震災・原発事故被災地の復興まちづくり、福島第一原発・福島第二原発の廃炉推進、県外最終処分を予定している中間貯蔵施設への対応、福島イノベーション・コースト構想の進展など多くの課題を抱えている。国や県に要望する機会が増えると思われるが、そうした役割を果たす国会議員をどこから選出するのか。吉野氏の意向も含めて、今後の動向を注視したい。