経済人が注視する【常磐興産】出資会社の行方【スパリゾートハワイアンズ】

 いわき市の温泉施設「スパリゾートハワイアンズ」を運営している常磐興産(いわき市、関根一志社長)は昨年11月12日、米投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ(フォートレス)」の傘下に入った。今年度内にはフォートレスの完全子会社となる見込みだが、市内の経済人が注目するのは常磐興産が株式を所有している会社の今後だ。

県外業者が狙う!?小名浜海陸運送の株式

小名浜海陸運送
小名浜海陸運送

 常磐興産は1884年創業、1944年創立。資本金21億4100万円。報道によると、ハワイアンズは新型コロナウイルスの5類移行に伴い売り上げを回復させ、同社は2024年3月期連結決算で2期連続黒字を達成した。

 しかし、老朽化した施設の補修・改修に必要な費用を確保するのが困難になり、設備投資を強化するため取引先金融機関を通じて接触してきたフォートレスの買収提案を受け入れた。

 フォートレスは1998年設立の投資運用会社。運用資産額は約490億㌦(約7兆0188億円)、投資実績総額約1950億㌦(約27兆9318億円)。ホテル運営なども手掛け、国内では大型リゾート施設「フェニックス・シーガイア・リゾート」の運営会社に投資した。

 フォートレス以外の株主が持つ株式を強制的にフォートレスに売却する「スクイーズアウト」手続きを経て、2月中に上場(東京証券取引所スタンダード市場)廃止となる予定。

 買収完了後も従業員の雇用は維持される予定で、ハワイアンズの施設やフラガールのショーも存続する方針が示されている。ハワイアンズはいわき市はもちろん、福島県にとっても象徴的な観光施設なので一安心というところだが、市内の経済人は「それより気になるのは常磐興産が出資している会社の行方」という。

 「常磐興産は常磐炭鉱が閉山時に分社化した名残で、株主になっている会社が複数ある。フォートレスの完全子会社となることで、それらの会社はどういう扱いになるのか。フォートレスが不要と判断して第三者に転売されたらどうするのか、と心配している経済人が少なくないのです」(市内の経済人)

 常磐興産の有価証券報告書などによると、常磐興産が株式を所有している企業は別表の通り。

常磐興産が株式を所有している会社

 常磐興産がフォートレスの完全子会社となることで、これらの会社の株式を手放し、地元以外の会社が大株主になるのではないか、と懸念しているわけ。

 前出の経済人によると、中でもその動向が注目されているのが、港湾運送事業を担っている小名浜海陸運送だという。同社は1955年設立。小名浜港での船舶への積み込みや貨物の荷下ろしといった港湾荷役、作業に付随する倉庫業、船舶代理店業、通関業も担っている。主力得意先は常磐共同火力。

 民間信用調査機関によると、同社の株主・出資者総数は84名で、大株主は以下の通り。

 常磐興産  5万2306株
 磐城通運  4万9320株
 クレハ   1万6800株
 小名浜製錬 1万6800株
 東邦亜鉛    8400株

 「小名浜港で仕事をしている企業が出資しており、もともとは三菱商事が一番の株主でしたが、三菱グループが不要な株を整理する方針を打ち出し、常磐興産が株を買い増した経緯があります。それだけに常磐興産が所有している株の行方が注目されているのです」(同)

 複数の港湾運送事業関係者によると、港湾運送事業は国土交通大臣の許可を受ける必要があり、港湾ごとに事業者が決まっているので新規参入は極めて難しいと言われている。だが、小名浜港では関西などの事業者が以前から進出しようとする動きがあるため、一部の地元業界関係者が警戒していたという。

 「港湾運送事業は暴力団と関係が深かった時代がある。常磐興産が所有している株を足掛かりに、県外のさまざまな港湾運送事業の企業が小名浜港に入り込み、競争を激化させる可能性が考えられるだけに、業界関係者が心配しているのです」(同)

 こうした懸念の声が出ていることを小名浜海陸運送ではどう受け止めているのか。同社を訪問したところ、担当者が次のように答えた。

 「確かに当社の筆頭株主は常磐興産ですが、子会社というわけではないので方針も共有していないし、今後に関しては分からないというのが正直なところです。ただ、当然ながら、その株が第三者にわたってしまうと(経営上の)リスクが生じるので逆に常磐興産がどういうスタンスなのか知りたいところです」

 小名浜海陸運送としても、常磐興産がどういう考えなのか、逆に知りたい、と。

「判断を任されている」

常磐興産が運営するスパリゾートハワイアンズ
常磐興産が運営するスパリゾートハワイアンズ

 そこで、常磐興産に今後の方針を問い合わると、以下のような回答が寄せられた。

 「地元企業の株式はいまのところ、特に売却する予定はございません。正確に言うと、フォートレスとしても『地元と軋轢を起こしたくない』という方針なので、当社に判断を任されているというのが実際のところです。当然、投資ファンドなので方針変更となる可能性はゼロではないが、いまのところ、引き続き当社が株式を保有し、今後についても当社の判断に任せると言われている状況です」(経営企画部担当者)

 常磐興産は現時点では所有している株式を処分する考えはない、と。

そういう意味では当面、別表の会社の大株主が地元以外の会社になることはなさそうだが、常磐興産経営企画部担当者が話していた通り、今後の経済情勢によってはフォートレスが考え方を変えるかもしれない。引き続き注目を集めそうだ。

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