本誌昨年11月号で、会津若松市が河東町八田地区で進める新工業団地整備について取り上げた。市は昨年9月、「製造業従業者数の目標値を達成するためには分譲地を拡大する必要がある」として、当初予定では約16㌶だった同団地の開発面積を30㌶に拡大する方針を発表した。
市は「企業の引き合いが多く雇用創出につながる」という見通しを示すが、実際には、農地転用などの手続きで県に難色を示され、「農地が道路に面している必要がある」など条件を満たすように検討を重ねて、結果的に面積を増やすことになったのではないか、とみられている。このほか、上水道供給への懸念、渋滞対策、費用対効果などの問題点があることをリポートした。
今年2月から3月にかけては、開発面積拡大などを盛り込んだ「新工業団地基本計画改定(案)」に関するパブリックコメントが実施され、1人から意見が寄せられていた。同市ホームページに掲載されている内容を確認したところ、「改定(案)」の見直しを求めるもので、以下の点が指摘されていた(文章は要約)。
①分譲面積拡大(10㌶→ 20㌶)の根拠が不十分
農地転用・農振除外のための形式的な拡大であり、実際の企業誘致需要や人口動態と整合していない。
②投資規模・事業費の拡大化
分譲面積拡大により、事業費が当初案の約25億円から約45億円と増加した。人口減少や生産年齢人口の流出が進む中、製造業で新たに大量雇用を生み出す計画には無理があり、費用対効果も疑問。
③段階的開発・既存企業支援への転換
需要を見極めた段階的造成、既存企業の生産性向上支援への投資転換が現実的だ。
④計画推進によるリスク
計画推進により造成地の長期売れ残り、人手不足による進出企業の撤退・倒産などのリスクが考えられる。
⑤改善提案
⑴雇用数を目標にするのではなく「省人化・自動化」前提の誘致、⑵需要を見ながら数期に分けて「段階的造成」を進める、⑶既存の市内企業の生産性向上(DX化、設備投資)支援に振り替える。
本誌前出記事で触れたのとほぼ同じ問題点を指摘し、より具体的な改善提案も示しているのだ。
これに対し市の回答はというと、従前の説明に終始。②事業費増加に関しては「国・県等の工業団地造成関連の各種優遇制度を活用して低減できる」と主張し、③段階的造成に関しては「土地利用規制に係る法令等により、実施することが困難」とした。
結局、パブコメの意見はほとんど反映されず、3月に「(仮称)新工業団地基本計画改定版」が公開されたが、市民がこうした意見を表明することで、「市内には反対意見もある」ということが可視化され、議論が活発化して、市も無視できなくなる。そういう意味では非常に意義がある行為と言えよう。
市内の経済人は特に事業費の増大を懸念する。
「中東情勢の悪化に伴い、建築資材高騰が止まらない中で、会津若松市内では県立病院跡地活用、会津若松駅前再整備、新斎場整備などの大型事業が控えている。そうした中で、立ち止まって考えることをせず、新工業団地の面積拡大・事業費増大を受け入れていいのか。そもそもこの情勢でどれだけの企業が進出しようと考えるのか。今後に向けた不安は尽きません」
新工業団地について、引き続き動向を注視していく必要がありそうだ。


























