【白河市】鈴木和夫市長インタビュー(2025)

【白河市】鈴木和夫市長インタビュー(2025)

経歴

すずき・かずお 1949年生まれ。早稲田大法学部卒。県相双地方振興局長、県企業局長などを経て、2007年の白河市長選で初当選。現在5期目。

 ――今年で合併20周年を迎えます。

 「私は、合併から2年足らずで市長の職に就きました。合併後間もない新市の一体感を醸成するため、多くの市民と顔を合わせ、意見や不安に十分に耳を傾けるとともに、市の現状や私の考えを説明することにより、市民との信頼関係を築こうとしてきました。

 一方、白河には、首都圏と近接する地理的優位性、歴史や伝統文化など豊富な地域資源がありながら、十分に生かされず、その魅力が地域の方々にも知られていないように感じていたことから、足元に眠っている資源を磨き生かす施策を柱に市政運営を進めてきました。まずは、地域振興の要は産業であるとの認識のもと、地元に根を張る中小企業を支援する『産業サポート白河』を立ち上げるとともに、これまで36社の企業を誘致し、地域産業の底上げや雇用の創出を図ってまいりました。

 また、県内で初めて『中心市街地活性化計画』と『歴史まちづくり計画』の認定を受け、本市の顔である白河駅前に『りぶらん』や『コミネス』を整備し、教育や文化芸術の振興を図るとともに、歴史的建造物や蔵の保存など、城下町の面影が残る街並みの保全にも力を注いできました。

 さらに、生活に不可欠な道路等のインフラはもちろんのこと、『表郷公民館』や『ひじりん館』、『きつねうち温泉』など、各地域の核となる施設の整備を進め、地域間の均衡ある発展にも心を砕いてきました。

 度重なる災害への対応には、大変苦慮しました。東日本大震災では15名もの犠牲者を出し、小峰城石垣の崩落、さらには道路や上下水道、建築物に至るまで甚大な被害を被ることに加え、未曾有の原発事故が発生し、足がすくむ思いでした。この厳しい状況の中にあっても、その後、行政と市民が一体となって復旧工事や市内全域の除染を進め、県内でも比較的早く安定した市民生活を取り戻すことができたのは、白河市民の底力によるものと思っております。

 令和元年秋に発生した台風19号では、旗宿地区、表郷地区の中央部を流れる社川が決壊し、深刻な農地被害をもたらしました。翌春の作付けに間に合わせるためには、農地復旧を最優先で進める必要があったことから、自ら建設業協会に足を運び、協力を要請しました。ほぼ通常通りに田植えが行われた景色を見て胸をなでおろしたことを今も鮮明に覚えています。

 この20年間を振り返り、私が市政に何らかの貢献をしたとすれば、多くの市民のご協力を得ながら共にまちづくりを進め、白河への愛着と誇りを育んできたことだと考えています。そして、これまでの取り組みが少しずつ実を結び、『自分たちの地域は自分たちでつくる』という気概でまちづくりに取り組む若者や団体が増えてきたことを大変嬉しく、また心強く感じているところです。

 しかしながら、『静かなる有事』とも言われる人口減少は想定を上回るスピードで進んでおり、令和4年4月には、表郷地域と大信地域が過疎指定を受けました。この現実を真摯に受け止め、『縮小する社会』を前提に、将来にわたり活力ある白河を創るために必要な対策を積極的に打ち出していきます。

 人口減少や少子化など地方を取り巻く環境は厳しさを増しておりますが、産業はもとより、教育や医療・福祉、そして文化・芸術などあらゆる施策をバランス良く講じながら『地域力』を高め、引き続き、市民一人ひとりが身近な幸せを感じられるようなまちづくりを推進してまいります」

大河ドラマでPRチャンス

 ――新たな交流などの拠点として複合施設整備を進めています。

 「市役所に隣接する市民会館跡地に整備を進めている複合施設は、現在、立体駐車場の建設工事が行われ、10月には完成する見込みです。その後は施設本体の工事に着手し、令和9年度早期の開館を目指しております。また、公募により施設の愛称が『しらふる』に決まりました。白河の『しら』と、満たされる、溢れるといった意味の『フル』を組み合わせたもので、市民や訪れる方々の心と体が満たされ、笑顔やつながりが自然に広がっていくような場所になってほしいとの願いを込めています。健康増進、生きがいづくり、子育て支援、さらには、女性をはじめ様々な人々の活躍を後押しする就労支援などの拠点、そして、人と人をつなぐ重要な『ハブ』として、期待しているところです」

 ――今年のNHK大河ドラマには白河藩主・松平定信公が登場します。

 「今年の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』で松平定信公が重要な役どころとして取り上げられ、『定信公ゆかりの地』として、本市を全国にPRするまたとない機会に恵まれました。寺田心さん演じる幼少期の田安賢丸に続き、8月からは、井上祐貴さん演じる成年期の定信公が登場し、関心は益々高まっております。

 定信公は、老中首座として、『寛政の改革』を推し進める中で、『囲米』制度の創設など、将来を見据えた優れた経済・災害対策を主導したほか、『人足寄場』に代表される先進的な福祉政策にも取り組むなど、大きな功績を残しました。中でも、災害に備え町会費を積立させた『七分積金』は江戸末期まで続き、東京府内の道路・橋の修築、瓦斯燈の設置、商法講習所(後の一橋大学)の設立や養育院の創設など、明治政府の多岐にわたる事業を支える財源となりました。

 白河藩主としても、『士民共楽』と『太平無事』の理念のもと『南湖公園』を築造したほか、現在の敬老会にあたる『尚歯会』を開催するなど、民を想う政策を次々と打ち出し実行しました。このように、定信公の功績は枚挙にいとまがありません。

 今後、定信公を演じた寺田心さん、井上祐貴さんが登場するトークショーをはじめ、歴史フォーラム、特別企画展の開催などを予定しております。引き続き、定信公の功績をしっかりと顕彰しながら、白河の魅力を広く発信していく考えです。

 同時に、市の広報紙で年間を通して定信公関連のコラムを掲載するほか、市内小中学校において定信公について深く学ぶ授業を実施するなど、地元への誇りや愛着の醸成にも力を注いでいるところです」

 ――最後に市民にメッセージを。

 「想定を超えるスピードで人口減少が進み、50年後の日本は8000万人台まで減少するとも言われ、地方の小自治体が消滅する、限界集落が急増するといった悲観的な議論がなされております。しかしながら、的確な対策を講じていけば決して恐れる必要はないものと考えております。一人ひとりが生き生きとし、誇りと愛着が感じられる『住みよいまち』、そして『小さくてもキラリと光るまち』の実現に向け、強い覚悟と高い意欲を持ち、ともに白河の明るい未来を切り拓いていきましょう」

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