福島市西部の先達山で進むメガソーラー工事をめぐり、事業者のAmp社と鋭く対峙する市民団体「先達山を注視する会」(松谷基和代表。以下、先注会と略)。本誌先月号「先達山メガソーラー事業者が市民団体代表に〝圧力〟」という記事の脱稿後には、これまで先注会主催の対話会に臨んできたAmp社が突如〝音信不通〟となり、「今後はAC7合同会社(以下、AC7社と略)が住民対応に当たる」などと一方的に連絡してきたことが分かった。
AC7社はメガソーラーの保有だけを目的とした特殊目的会社で、従業員はいない。そんなAC7社に代わり実務を担っていたのがAmp社だったが、先注会の厳しい追及に嫌気が差したのかAmp社はAC7社に住民対応を〝丸投げ〟した形だ。
その後、AC7社から先注会に届くメールには代表者や担当者の名前はなく、どういう立場の人物が回答を寄せているのかは不明。AC7社が先注会に送ったメールでは「個人情報保護の観点から個別の担当者名や連絡先の開示は控えるが、担当者は住民対応を含む業務遂行に必要な権限を有しており、責任ある立場で対応に当たっている」と説明している。今後、対話会に出席するかどうかは検討中としているが、顔の見えない相手とメール交渉したところで所詮〝暖簾に腕押し〟だろう。
ところで、先達山では過去にも大規模な開発計画が持ち上がったことがある。栃木県宇都宮市の土木工事会社が1万2000人の居住人口を想定した宅地分譲を計画し、開発許可の手続きを進めようとしたのだ。
今から26年前、1999年の9月定例市議会で石原信市郎議員(当時)が次のように質問している。
「(宅地分譲の)事業は県知事の認可事項ではあるものの、事業者からは窓口である市にどのような働き掛けがあり、市としてどのように対応するつもりなのか」
石原議員は質問の中で①予定地は貴重な手つかずの里山である、②予定地のすぐ下にある在庭坂小坂地区では過去に土石流災害が発生している、③実際に1万2000人が居住した場合、今の高湯街道で十分な交通対応ができるのか、④地元の自治振興協議会と町内会連合会からは反対の陳情が出ている――等々の問題点を指摘した。
これに対し、吉田修一市長(1986~2001年まで4期務める)はこう答弁している。
「先達山大規模開発については本市の土地利用計画に適合しないばかりでなく、環境保全、防災、道路網の整備などに問題があるため、開発には反対であることを表明した。今後、地元の代表者から出された要望も含めて、県と事業者に本市の反対の意思を伝えていきたい」
この考えは吉田氏の後に市長に就いた瀬戸孝則氏(2001~2013年まで3期務める)にも引き継がれ、2001年12月定例市議会で瀬戸市長は次のように述べている。
「先達山大規模宅地開発については市議会との連携のもと、本市の土地利用計画に適合しないこと、自然および生活環境に及ぼす影響が極めて大きいこと、災害の危険が伴うこと等から判断し、認めることができない旨を県に伝えた」
吉田氏も瀬戸氏も市議会と連携して大規模開発に反対したわけ。
年月が移り、先達山を舞台にした大規模開発の中身は宅地分譲からメガソーラーに変わったが、木幡浩市長と市議たちが「先人の考え」に学んでいれば、今日の騒動は防げた可能性もあったのではないか。

























