今年8月に会津若松市一箕町のパチンコ店「ビックつばめ会津若松店」で従業員を脅し、桑折町の専門学生の男(19)が金庫から多額の現金を奪う「強盗事件」が起きた。驚いたことに、事件は会津美里町から出勤していた従業員の男が犯行グループの一員で、自ら襲われたように演じていた狂言強盗だった。(敬称略)
2700万円窃盗を手引きしたのは従業員だった!

犯行はSNSを通じて集まる匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)によるものとみられ、10月24日時点で指示役、実行役、現金回収役ら合わせて9人が逮捕されている。同月22日には実行役を手引きし、強盗被害を演じた元従業員の初公判が地裁会津若松支部(佐藤久貴裁判官)で開かれた。この事件で少年以外の犯人が裁かれるのは初、つまり最初の公開裁判となる。
被害に遭ったパチンコ店の元従業員、真鍋一皐(23)=会津美里町文殊西甲=は窃盗と建造物侵入の罪に問われている。勾留中で、法廷にはジャージ姿で現れた。目の上までの長さのおかっぱのような髪に黒縁眼鏡を掛けていた。事件後に懲戒解雇された。形は「強盗」に偽装していたが、盗みを手引きしたのが実態なので、窃盗と違法な目的で店に侵入したことが罪に問われている。真鍋は罪を認めている。
起訴状によると、真鍋は今年8月12日の午前1時46分ごろに被害店舗に従業員通用口から侵入し現金2668万4000円を盗んだ。事件直後、被害額は約2800万円と報じられたが(金庫にあったのは2852万4000円)、捜査の結果、実行役が金庫から奪った現金を詰めたボストンバッグ一つが壊れ、現金の一部を置いてきたことが判明した。
真鍋は高校を卒業後、職を転々とし、昨年5月ごろから被害店舗となるビックつばめ会津若松店で働き始めた。独身で会津美里町内の自宅に父や祖父母と暮らしていた。
指示役の佐々木綾哉(25)=東京都、窃盗と建造物侵入で起訴=とは知り合いだったという。2人は遅くとも今年6月か7月上旬までに真鍋の協力でパチンコ店の金庫の現金を奪う狂言強盗を考えた。
計画はこうだ。実行役と車の運転役が店舗近くで待機し、営業時間が終わった後、強盗に扮した実行役が踏み込む。1人で勤務中の真鍋にモデルガンを突きつけて脅し、真鍋は被害者を装い言われるがままに金庫の金をバッグに詰める。実行役は真鍋を拘束して店を出た後、運転役の車に乗って東京都内まで逃走し、駅のトイレに現金や犯行時に着た服などを隠す。そして、別の共犯者が回収し、佐々木が経営する会社事務所に運び込む手はずだ。
佐々木は合同会社エーシー(東京都豊島区南大塚3丁目45番7号ラインビル301号室)を経営していた。登記簿によると、同社は2023年に設立し通信販売業、各種商品の輸出入、卸売及び販売、コンサルティングを業務とする。
犯行グループ間の連絡は秘匿性の高いアプリ「Session(セッション)」を使った。「テレグラム」や「シグナル」はトクリュウによる闇バイト強盗が横行し、一般にも知られるようになったが、次々と新しいアプリが出てくる。佐々木は狂言強盗への参加者を募ると、スマートフォンにセッションをインストールさせた。
まず、佐々木は6月から8月上旬の間に会社員の鈴木大(39)=東京都世田谷区=、同じく会社員の山口裕介(33)=同足立区=に犯行計画を話し、報酬をかざして参加を持ち掛けた。2人は参加し、佐々木らと同様に窃盗と建造物侵入の罪に問われている。
佐々木は8月7日に都内から来福し、福島駅近くで専門学生の男A(19)=桑折町=と面会する。Aとは既に6月に知り合っていた。その後、佐々木はパチンコ店を下見するため会津に向かう。会津若松駅で真鍋が車で拾い、2人は車でパチンコ店周辺を下見。運転役に指示するために、犯行時に車を停める場所の写真を撮った。
8月9日に佐々木はセッションでAに実行役を持ち掛け了承を得た。Aは少年法で守られ、少年院送致の処分で済んでいる。
今度は運転役だ。佐々木は知人を介して無職の菅井陽(22)=宮城県名取市=とつながり、菅井はまたその知り合いの飲食店従業員村山廉(22)=同多賀城市=を運転役に引き入れた。菅井と村山もまた窃盗と建造物侵入の罪に問われている。佐々木と菅井をつないだ知人の処遇は不明。
同11日午後7時ごろ、実行役Aはマイカーを運転して福島駅に向かう。運転役の村山が仙台駅から新幹線で福島駅に来るため、迎えに行った。同7時半ごろに村山と合流し、運転を代わった。
実行直前でトラブルが起こる。本来なら真鍋の勤務中にパチンコ店に押し入るはずだったが、警察が店の警戒を強化していたため計画を変更。真鍋は翌12日午前1時ごろに店を出て近くのセブンイレブンに行きLINE通話で佐々木に指示を仰いだ。店を出て車に乗り込んだところにAが脅してパチンコ店に戻り、現金を強奪する筋書きに変更した。
午前1時半ごろ、村山が運転する車で来たAが、セブンイレブンから出てきた真鍋がマイカーに乗ったところを、脅すふりをして助手席に滑り込んだ。パチンコ店に着くと、真鍋が警備会社に連絡して従業員通用口を開けた。あとは手はず通り現金をリュックサックとボストンバッグに詰め込んだ後、真鍋の体を粘着テープで拘束し、村山が運転する車で東京に向かった。
Aは金を持って池袋で降り、別の車に乗り換えて現金回収役の鈴木と山口が待つ品川駅のトイレに向かった。午前7時45分ごろに現金をトイレ個室に置き去り、入れ替わりで鈴木、山口の順に入り、それぞれ現金を運び出した。鈴木はAが犯行に使った服やスマホも持ち帰り処分した。2人はそれぞれ電車やタクシーを使い、南大塚にある佐々木の会社に運び込んだ。これが公判で明らかになった犯行の全容だ。
次回は11月19日午後2時から運搬役の鈴木、山口を法廷に呼び証人尋問を行う。


























