【阿武隈川遊水地】5年遅れの余波

【阿武隈川遊水地】5年遅れの余波

 国土交通省福島河川国道事務所が進める「阿武隈川上流遊水地群事業」は、2028年度の事業完了・運用開始を計画していたが、当初予定から5年遅れの33年度になることが明らかになった。これにより、対象者にはどのような影響が出るのかを探ると「5年延長」よりも別の部分で懸念が広がっていたことが分かった。

懸念を広げた「面積拡大」報道

【阿武隈川遊水地】5年遅れの余波
遊水地事業エリアの鏡石町成田地区
町内で進む移転先宅地整備

 2019年10月に東日本に上陸した台風19号は、阿武隈川流域全域に激しい降雨をもたらし、戦後最大と言われた1986(昭和61)年の「8・5洪水」や「平成の大改修」の契機となった1998(平成10)年の「8・27洪水」を上回る雨量が観測された。

 これにより、阿武隈川では越水・溢水が発生し、本川上流部や支川では堤防決壊が多発したほか、本川下流部では大規模な内水被害が発生するなど、流域全体で甚大な浸水被害が出た。

 こうした事態を受け、国土交通省福島河川国道事務所では、河川掘削や堤防整備などを行う「阿武隈川緊急治水対策プロジェクト」を実施しており、その一環として鏡石町、矢吹町、玉川村の3町村に遊水地を整備する方針を示した。それが「阿武隈川上流遊水地群事業」である。

 当初、同事業期間は2019年度から2028年度までとされていたが、5年延長し、2033年度までかかることが分かった。以下は福島民友(9月17日付)より。

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 2019年の東日本台風を受けた阿武隈川の緊急治水対策として鏡石、矢吹、玉川の3町村で整備を進める遊水地の事業完了と運用開始が当初の28年度から5年遅れ、33年度になるとの見通しを明らかにした。現地の調査で遊水地の範囲を拡大する必要が出たほか、物価高によって事業費が当初から約800億円増え約1800億円に膨らむ見込みとなり、計画期間の延長が必要となった。

 (9月)16日、福島市で開いた阿武隈川水系河川整備委員会で示した。国交省は「緊急治水対策の完了は遅れるが、その間も河道掘削などにより水害対策を進めていく」としている。

 国交省によると、調査で遊水地の計画区域内の地下水水位が想定より高いことが判明。掘削できる深さが限られるため、遊水地の容量を確保するために面積を広げる必要が出たという。さらに掘削した土を堤防の盛り土などで活用する計画だったが、土が軟弱で土質改良も必要になった。

 また、物価高騰の影響で事業を開始した19年と比較して公共工事の労務単価や工事関係資材単価が約3割上昇、週休2日工事の導入も事業費を押し上げた。

 国交省は当初、999億円の事業費を想定していたが、事業費見直しの結果、遊水地の範囲拡大などで約603億円、物価高騰の影響などで約241億円が追加で必要となった。コスト削減を図っても大幅な上昇は避けられず、工事期間と事業費を確保するため、計画期間の延長が必要になったという。

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紛らわしい表現で波紋


 こうした報道がなされた後、関係者が反応したのは「5年延長」ということより、「遊水地の容量を確保するために面積を広げる必要が出た」という部分だった。

 遊水地の面積は約350㌶、(鏡石町約130㌶、矢吹町約100㌶、玉川村約120㌶)で、計画地内に住家がある世帯は、土地を国に売却して移転をしなければならない。移転対象は131戸(鏡石町66戸、矢吹町8戸、玉川村57戸)に上る。そのほか、事業エリアの大部分は農地が占めており、それらも国は買収を進めている。

 ただ、前述の報道を見ると、範囲が拡大されるような印象を受ける。そのため、周辺住民を中心に「国に土地を売却しなければならない範囲が広がるのか」といった懸念が広がったのである。

 対象町村では同事業対策の部署を設置したり、専属担当者を配置したりしているが、それら担当部署・担当者には、住民から「範囲が広がるのか」といった問い合わせが複数あったという。

 結論から言うと、範囲が拡大されるわけではないようだ。福島河川国道事務所が発行している「阿武隈川ニュース ―阿武隈川緊急治水対策プロジェクト―」(第23号)には次のように記されている。

 「今回の事業計画の変更では、遊水地の予算措置上の事業範囲をこれまで住民説明会等で皆様に提示してきた実際の事業範囲に整合させるための調整を行いました。これによる現地の事業範囲に変更(拡大)はございません」

 紛らわしい表現もあって懸念が広がったが、「事業範囲に変更(拡大)はない」と明記されている。

 一方で、「5年延長」の影響はどうなのか。

 鏡石町によると、「エリア内での工事期間が延びるだけで、住民の方々が移転するスケジュール等に変更はありません」とのこと。玉川村にも問い合わせたが、同様の見解だった。少なくとも、移転完了まで猶予ができた(期間が延びた)わけではなく、当初予定通りに進めなければならないようだ。そういった意味では対象住民には「5年延長」の影響はさほどないのかもしれない。

 今回の計画変更を受け、福島河川国道事務所は11月上旬に、町村単位で複数回にわたり住民説明会を実施する予定。そこで計画変更に関する説明がなされ、住民はそれに伴う懸念点などをぶつけることになると思われる。

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