震災・原発事故から間もなく15年の節目を迎える。廃炉作業の最前線はどうなっているのか。東京電力福島第一原子力発電所(大熊町、双葉町)の合同取材に参加し、その現場を見てきた。
1月20日、合同取材に参加
合同取材は「3・11」前のタイミングで毎年企画されており、地元紙・全国紙以外のメディアが参加している。今年の実施日は1月20日で、10媒体(13人)が参加した。
この日は、100㍍ほど離れた高台「ブルーデッキ」から1~4号機の廃炉状況について解説が行われたほか、実際に1~4号機周辺を歩いて間近で確認する時間も設けられた。
構内は汚染度が低い順にGゾーン(グリーンゾーン、一般服エリア)、Yゾーン(イエローゾーン、防護服エリア)、Rゾーン(レッドゾーン、防護服・アノラック重ね着エリア)に区分されている。フェーシング(地面をモルタルなどで舗装すること)やがれき撤去などの対策が行われ、空間線量は低下しており、現在は敷地内の96%がGゾーンだ。
敷地内では1日約4000~5000人が働いているとのことだが、防護服を着ていない人の姿も多く見かけた。ちなみに地元雇用率は約70%に上り、この日説明を担当した広報担当者の一人も大熊町出身の女性だった。
ダストが上がる可能性がない作業や視察などに関してはマスク着用も不要で、ブルーデッキの視察も一般服にベスト、APD(個人線量計)を装着した姿で行われた。周辺の空間線量率は36・1マイクロシーベルト毎時。記者が初めて参加した2019年1月の合同取材ではマスク装着が必須で、ブルーデッキの空間線量率は120マイクロシーベルト毎時だった。7年で3分の1程度まで下がったことになる。
周知の通り、1~4号機のうち、1号機と3号機は水素爆発し、建屋が大破。原子炉建屋内にがれきが残り、除去する際に放射性物質を含むちりが飛散するのを防ぐため、3号機にはかまぼこ型のドーム屋根が取り付けられた。1号機には建屋上部を覆う大型カバーが設置され、1月19日に工事が完了した。


福島第一原発1号機(2026年1月20日、東電提供、合同取材で撮影)
2号機は原子炉建屋の水素爆発にこそ至らなかったものの、原子炉格納容器内の圧力を下げる「ベント」に失敗し、格納容器が破損したため、最も多く放射性物質が放出された。
4号機は運転停止中で、原子炉内に核燃料は残っていなかったが、3号機から流入した水素により原子炉建屋が爆発。倒壊リスクが叫ばれるほど損傷したが、大型の柱とカバーで補強してある。
今後の課題は、1~3号機に残る「燃料デブリ」の取り出しだ。
2号機では2024年秋、釣り竿型のロボットを用いて、0・7㌘を試験的に取り出し、昨年4月にも0・2㌘を採取した。3回目はロボットアームによる気中での取り出し方式で実施する予定だが、トラブル続きで延期されており、ロボットアーム設置は3月ごろとなる予定だ。
3号機でも昨年末、燃料デブリ取り出しに向けて、マイクロドローンでの内部調査をスタートする予定だったが、原子炉格納容器から入れることができず、延期された。
燃料デブリは1~3号機合計で約880㌧あるとされており、昨年7月には燃料デブリの大規模取り出し開始時期が2037年度以降と後ろ倒しになる見通しが示された。全量取り出しまでの道のりは果てしない。
各建屋には、使用済みの燃料を水中で一時保管・冷却するための使用済み燃料プールが備えられており、現在も1号機に392体、2号機に615体が残っている。これらの取り出し準備も同時並行で進められており、2号機南側には作業用の構台が設置されていた。
やるべき課題は多く、スケジュールはどんどん後ろ倒しになっているが、それでも政府・東電は2051年までに廃炉を完了させるという目標を堅持する方針を示している。その理由を東電の広報担当者は次のように説明した。
「廃炉の目標の一つは、まず核燃料を壊れた建屋ではなく、しっかりとした容器で管理できる状態に持っていくことになる。ターゲットを定めないと仕事が進まないので、まずは2051年を努力目標に掲げて進めているところです」
本誌で「廃炉の流儀」を連載している尾松亮氏は、福島第一原発の廃炉は法的に示されているわけではなく、中途半端な状態で廃炉完了となるリスクがあることを指摘している。「廃炉」の定義を明確にしたうえで、東電が責任を持って廃炉を完了させることが求められる。
「廃棄物が最大の課題」
2号機原子炉建屋周辺の放射線量は約35~50マイクロシーベルト毎時。前述した2019年の合同取材では250マイクロシーベルト毎時だった。建屋の前に立って見上げると、その巨大さに圧倒された。時間をかけてデブリ取り出しに成功したとしても、建屋内に残された原子炉格納容器や放射化した壁などは巨大な放射性廃棄物となる。
広報担当者によると、原発敷地内では年間約79万㌧の廃棄物が発生しており、減容化・再利用により二十数万㌧まで圧縮して保管する計画。昨年、固体廃棄物貯蔵庫第10棟が完成し、第11棟の工事に着手している。もっとも、それらの廃棄物の最終的な「受け入れ先」もまだ決まっていない。「廃棄物への対応は最大の課題だ」と広報担当者は語った。
移動中のマイクロバスから増設多種除去設備(増設ALPS)、K4タンクエリアなども視察した。いわゆる処理水の海洋放出により空になったタンクが随時解体されており、現在はJ8、J9エリアタンクで作業が進む。解体後は2号機燃料デブリ関連の施設が整備される予定だ。広報担当者は「タンク解体は順調に進んでいる」と強調した。このほか、日本海溝・千島海溝地震での津波に備えて整備された高さ13・5~16㍍の新しい防潮堤も見た。

東京電力柏崎刈羽原発での相次ぐトラブルは、電力事業者として、さらには福島第一原発で事故を起こし廃炉を担う事業者としての適格性があらためて問われる出来事だった。1月には事故後初めて柏崎刈羽原発6号機を再稼働させたが、制御棒の警報システムの設定ミスが見つかったため、わずか数時間で運転を中断。不具合は運転を開始した30年前から見過ごされてきたという。
福島第一原発を2051年までに廃炉にするという目標は実現するのか。そしてこの場所が新たな土地として生まれ変わる日は訪れるのか。廃炉作業の最前線における東電の対応を県民はもちろん、国民全体で監視していく必要がある。

























