本誌昨年1月号に続き、今年1、2月号で続報を伝えた猪苗代町の飛び地メガソーラー問題。2月号の記事中で指摘した疑問を踏まえ、事業者に再度質問したが、その回答から全容はどこまで見えるのか。
大阪の破綻企業が事業に関わった背景
飛び地メガソーラーは、正式名称を「Blue Power(ブルーパワー)猪苗代発電所」(以下、ブルーパワー猪苗代と略)という。猪苗代町の林の中に2枚のパネルを置き(種地)、そこから3㌔離れた会津若松市のゴルフ場跡地に大量のパネルを並べ(飛び地)、両所を自営線と呼ばれる電線でつなぐことで同一のメガソーラーと見なしている。種地でFIT認定を受けたが、様々な事情で周辺にパネルを設置できない場合に繰り出される苦肉の策。離れてはいるが自営線でつながっているので一体、という理屈だ。


これまでの本誌の取材で分かっていることは、①昨年7月にFIT認定が失効した。②失効の原因は飛び地メガソーラーの前提となる「自営線による接続」がされないまま売電していたため。③この事実を国に知られてしまい、認定取り消しの行政処分を受けた。④東北経済産業局エネルギー対策課によると、認定取り消しとなったメガソーラーは国に廃止届を提出し、施設を撤去しなければならない。⑤国はFIT認定無しで運転することを認めていない。
ブルーパワー猪苗代を設置したのは再エネ事業などを行うブルーキャピタルマネジメント(東京都港区、原田秀雄社長。以下ブルー社と略)だが、運転開始前に売却され、現在の事業者はCEISIEC(サイズイク)合同会社(東京都千代田区、代表社員・NSC一般社団法人、業務執行者・本間理志氏)となっている。
本誌2月号で、筆者はCEISIECアセットマネジメント合同会社の岡林亜希良氏とメールで次のようなやりとりをした。
――自営線でつながっていなかったのはなぜか。御社はつながっていないことを知らずにブルー社から瑕疵物件を買わされたということか。
「自営線でつながっていないことは把握しており、自営線を接続する工事は進めていました。現在、ブルー社との間で係争中につき、売電開始に至った経緯の詳細はコメントを控えさせていただきたい」
――東北経済産業局はFIT認定が無効になったメガソーラーは運転できず、施設は撤去してもらうと話している。
「これまでの買い取り価格を前提とした設計を見直し、他の方法で事業継続を検討しています」
――御社の閉鎖登記簿の役員欄には中川企画建設の名前が出てくる。同社はブルーパワー猪苗代に関与しているのか。
「中川企画建設とは設備運営保守契約は結んでいるが、施工契約は結んでいません。ブルー社が他社に施工を依頼し、弊社は完成後の施設を引き継いで運営管理をしています」
――御社と中川企画建設の間に資本関係はあるのか。
「ありません」
――御社の出資者は誰なのか。
「NSC一般社団法人です」
中川企画建設(大阪市)は昨年10月に222億円の負債を抱えて会社更生法の適用を申請。その後、地域みらいグループ(福岡市)をスポンサーに経営再建を進めることが決まった。再エネ事業は支援対象外となるため、撤退する予定だ。
中川企画建設をめぐっては、複数の違法森林伐採が見つかって工事が中断し、その後FIT認定が失効した千葉県鴨川市のメガソーラーや、工事現場で土砂災害を起こした鹿児島県姶良市のメガソーラーなど、表には出てこないが、それぞれの事業者の関連先として取り沙汰されてきた。福島県内ではCEISIECが運営を担う予定の西郷村の「ブルーパワー福島西郷」の工事を手掛けていた。ブルーパワー福島西郷は2024年度中に運転開始するはずだったが、中川企画建設が経営破綻した影響で現在も工事が中断している。
岡林氏の回答から浮かぶ疑問が六つある。
一つ目は、ブルーパワー猪苗代は運転開始から認定取り消しになるまでの間、東北電力にFIT認定に基づく売電をしていたと思われるが、自営線でつながっていない違反状態で売電していたということは、その間の売電収入は返還義務が生じるのではないか。
二つ目は、自営線の接続工事が終わるまで運転開始を延期できたはずだが、延期しなかったのはなぜか。
三つ目は、自営線の接続工事を本来行うのはブルー社だったのか、CEISIECだったのか。
四つ目は、東北経済産業局エネルギー対策課は「撤去」としているのに、CEISIECが言う「他の方法で事業継続」は可能なのか。
五つ目は、CEISIECの複数の関連会社の役員に中川企画建設の中川真太郎取締役が就いていたが、同社の経営破綻後、中川氏は相次いで役員を退任している。CEISIECと中川企画建設は深い人的関係があったということではないのか。
六つ目は、CEISIECが関与するメガソーラーの多くにはJA三井リース(東京都中央区)が債権者として関わっている。同社の有価証券報告書を見ると、投資目的でCEISIECの有価証券1億円を所有しているが、CEISIECとはどのような関係にあるのか。
「お答えできません」
これらの疑問を解消するため筆者は再度、前出・岡林氏に質問のメールを送り、岡林氏からは2月16日に回答が届いた。
――自営線でつながっていない状態で売電していたということは、その間の売電収入は返還義務が生じるのではないか。
「現在の諸々の事態はブルー社に責任があり、同社に対する責任追及を検討・準備しているため、これ以上はお答えできません」
――自営線がつながるまで運転開始を延期しなかったのはなぜか。
「同じくお答えできません」
――自営線の接続工事を本来行うのはブルー社だったのか、CEISIECだったのか。
「同じくお答えできません」
――東北経済産業局が「撤去」と言っているのに「他の方法で事業継続」は可能なのか。
「同じくお答えできません」
――御社の複数の関連会社の役員には中川企画建設の中川真太郎取締役が就いていた。同社と御社は深い人的関係があったのではないか。
「中川企画建設はEPC(※1)、またはO&M(※2)における業務委託先で、業務提携の一環として各SPC(※3)に職務執行者としての派遣を依頼していました」
※1=設計、調達、施工の三つの工程を一括して請け負うビジネスモデル。
※2=運転管理と保守点検業務の総称。
※3=特定資産を切り離して事業リスクを抑え、当該資産の価値をもとに資金調達するための法人。特別目的会社という。
――JA三井リースは御社の出資者の中の1社で間違いないか。
「有価証券報告書にある通り融資していただいています。それ以上の回答は控えます」
――御社の出資者であるNSC一般社団法人とはどんな団体で、母体企業はどこなのか。
「NSC一般社団法人はCEISIECがGK―TKスキーム(※4)を目論んでおり、同スキームにおいては倒産隔離のために準備される出資者となります。母体企業は守秘義務があり、お答えできません」
※4=合同会社(GK)をSPCとして活用し、匿名組合(TK)契約を通じて投資家から資金を集め、不動産信託受益権などを運用する仕組み。
岡林氏は、一連のトラブルはブルー社に非があり、責任を追及すると述べた。一方で、CEISIECの実態が明確になることはなかった。
事業者の「真の姿」が見えない中、合法的とはいえ売電で儲けるやり方に人、企業、カネが群がる状況は、地元の山や森林を開発されている県民からすると到底納得がいかない。

























