【福島県宅地建物取引業協会】加納武志会長インタビュー

【福島県宅地建物取引業協会】加納武志会長インタビュー
経歴

かのう・たけし 1959年生まれ。㈲菅野地所(福島市)代表取締役。2006年から福島県宅地建物取引業協会理事、2018年から同副会長、2024年から現職。

公益社団法人・福島県宅地建物取引業協会は、県内約1070社が加盟する不動産業界団体。消費者保護を目的に、9支部が各地域で行政や住民との連携を深めながら活動している。同協会の加納武志会長に、建築コスト高騰が続く現在の取引動向や、深刻化する空き家問題への対応、さらには業界の将来像などを聞いた。

社会や時代の変化を乗り越え信頼される団体であり続ける。

――あらためて、協会の組織と役割についてお聞かせください。

「私たちの協会は、一般消費者の保護を目的として設立された業界団体です。不動産取引における安心・安全を通じ、消費者が不利益を被ることのないよう日々活動しています。現在、約1070社の不動産業者が加盟しており、県内では最大の業界団体となっています。組織は福島、郡山、会津、いわきなど県内9支部に分かれており、それぞれが地域に密着した活動を展開しています。会員への研修会の開催や、消費者からの苦情相談窓口の運営も主要な役割です。

同じ業界団体として全日本不動産協会との違いをよく聞かれますが、消費者保護という根本の部分は共通しています。組織の運営方針や研修会の充実など取り組み方に多少の違いはありますが、どちらを通じても消費者が不利益を受けることのないよう、お互いの団体が努力しています。

各支部が果たす役割も大切です。市町村ごとに条例や規制の運用が異なるためです。例えば盛り土規制法は、福島市では規制高さが50㌢、郡山市等では30㌢と違いがあります。中核市は独自の裁量が大きく、支部長が各市町村と直接向き合うことで、地域の実情に即した細かな対応が初めて可能になります。福島県全体として本部が活動するよりも、各支部長が現場で動く方が幅広い対応ができると考えています」

――現在の県内の宅地建物取引動向をどう見ていますか。

「ここ数年の最大の問題は、建築コストと造成コストの高騰です。新築一戸建ての価格が上がり続けているため、一般の方が手を出しにくい状況が続いています。造成についても、アスファルトなどの仕入れ価格が急上昇しており、交渉事を進めている間に当初想定していた見積もりを大きく超えてしまうケースが出ています。中東情勢の影響もあり、資材費は1カ月単位で上がるほどの勢いです。造成する側にとっても購入する側にとっても、ここ数年は厳しい状況が続いています。

福島県内の不動産情勢について全体的な動きは下降気味ですが、需要が集中するエリアも存在します。郡山市内でも、駅に近い商業エリアや道路付けの良い整形地については一定の需要があり、ある程度動いています。一方、郊外や山間部では買い手がつかない物件が増えており、地域間格差が顕著になっています。かつて郊外に住んでいた方が都心部に近い場所を求めるようになるなど、住まいのニーズ自体も変わってきています。中心市街地と郊外では、まったく異なる市場が形成されつつあると感じています」

用途変更の規制緩和を要望

――空き家問題に対し、行政や他団体との連携を含め、協会としてどのような解決策を進めていますか。また、国・県に望むことは。

「当協会は2013年から空き家バンクの運営を始め、現在は県内40市町村と協定を結んでいます。ただ、空き家の増加には歯止めがかかっていないのが現状です。特に市街化調整区域内の空き家は活用の道が狭く、課題が積み上がっています。

私たちが強く求めているのは、用途変更の規制緩和です。調整区域の民家を飲食店や事務所として使えるようにしてほしいという要望です。現状、こうした用途変更を審査する『開発審査会』が年に3、4回しか開かれておらず、対応が後手に回っています。例えば福島市のフルーツラインのような幹線道路沿いであれば、業種を限ってでも飲食店の営業を認めるなど、柔軟な運用があってよいはずです。

また、空き家の中には親が長年住み続けた家をすぐに手放せないという感情的な事情もあります。そうした物件についても、住居を貸家として活用できる規制緩和が実現されれば、新たな需要が生まれるはずです。田畑を造成して新しく家を建てるのではなく、既存の建物を有効に使う発想の転換こそ必要です。国・県への規制緩和要望は継続して提出していますが、なかなか進んでいないのが実情です。行政には地域の実態に合わせた、より踏み込んだ対応を求めていきたいと思います」

――現在、注力している協会の事業や会員支援策は何でしょうか。

「業界全体の高齢化と廃業の増加が喫緊の課題です。地域で長年にわたり信頼を得てきた不動産業者が廃業するとなれば、そのエリアの消費者にとっても大きな損失です。成り手不足による廃業を少しでも抑えるために見守りと支援を続けることが、協会の重要な役割だと考えています。

不動産業は飲食店のように多額の初期投資を要せず、比較的開業しやすい業種とも言えます。そのため、年1回の新規開業者向けセミナーを通じて、業界に参入した方をサポートする環境を整えています。建築業からの転身や、不動産会社に勤めた後の独立など、入り口はさまざまです。これまでの経験を生かした新しい挑戦を協会全体で応援していきたいですね。

今後の課題は、廃業希望者と新規参入希望者のマッチングです。全国的にM&Aの動きが出始めており、協会としても会員減少への対策として真剣に検討すべき時期にきていると考えています。また、相談会の開催など業界イメージの向上にも力を入れていきたいです。一般の方は『不動産業者の店舗には入りづらい』と感じているのが実情であり、より信頼される業界であり続けるための取り組みは欠かせません」

――今後の抱負について。

「地域の活性化に尽力することです。空き家問題や高齢者の単身世帯の増加は、不動産業界だけでは解決できない社会課題です。行政や他団体と連携しながら、業界として積極的に向き合い、福島県の皆さんを笑顔にするため尽力していきます。

当然ですが、不動産において一人ひとりのお客様のニーズは異なります。不動産取引は一生に一度の大きな決断です。その決断を支えるためにも、安心安全な取引の実現に向けて会員の資質向上に努め、セミナーや研修を充実させていきます。併せて、新しく開業した方には積極的に学ぶ場を提供し、地域に根ざした業者を育てていく、それがこれからの協会の使命と考えています。ここ5年、10年は業界を取り巻く環境がめまぐるしく変化するでしょう。その変化を乗り越え、地域の皆さんに信頼される団体であり続けることが、私たちの変わらぬ目標です」


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