わち・さとし 1969年生まれ。東北大学大学院工学研究科修了。1998年に県職員となり、土木部道路整備課長、土木企画課長などを歴任。今年4月から現職。
――4月13日より県道吉間田滝根線(広瀬工区)が開通しました。
「吉間田滝根線は、小野ICを起点に、いわき市川前町小白井を終点とした全長9・2㌔のバイパスで、ふくしま復興再生道路に位置付け、国の支援をいただきながら進めてきた事業です。吉間田滝根線につながる道路として、西側には矢吹ICから小野ICまでをつなぐあぶくま高原道路があり、東側には富岡方面に続く県道小野富岡線があり事業を行っています。この一連の事業が完成することで、県南地域から相双地域間の交通が円滑で安全に通行できるようになり、地域間の交流の活性化が期待されます。また、帰還困難区域を持つ双葉町や大熊町へのアクセス向上にも寄与し、帰還促進という点でも期待できると考えています」
――平成26年から実施されてきた千五沢ダム再開発事業が今年3月に竣工となりました。
「千五沢ダムはもともとかんがい用のダムとして国によって整備されました。一方、千五沢ダムの水は北須川に流れますが、北須川が流れる石川町では昭和の時代から何度も水害に遭っており、県としてもどういった治水対策が必要なのか検討を重ねてきました。かんがい用として整備された千五沢ダムでしたが、農業を巡る社会情勢の変化により、農業用水に必要な水量が減少し、ダム貯水容量に余剰が生じたことから、この空き容量に洪水調整機能を持たせた治水ダムとしての効果も加えようということで進めてきたのが千五沢ダムの再開発事業です。昨年度に本体工事が終わり、試験湛水を実施し事業が完成しました。今回の再開発事業によってラビリンス型洪水吐という珍しい形状に改造したことで、治水能力の向上だけでなく、観光スポットとしても観光客を誘致できるのではないかと期待を寄せています」
――猪苗代湖を一周する「猪苗代サイクリングルート(通称イナイチ)」の整備に向けて事務所内でも協議会が設立されています。
「以前から猪苗代湖周辺を活用した自転車の利用促進という構想があり、国や県、猪苗代湖に接する郡山、会津若松、猪苗代の3市町と、関係機関で協議を重ね、令和3年度に協議会を設立しました。安全に走行できるルートの選定やサイクリストへのアンケート調査などに基づく案内標識などの具現化を進める一方で、今後は休憩や食事も兼ねて立ち寄れるスポットの整備も関係機関と連携し検討していく予定です」
――今年度の重点事業について。
「道路事業では国道288号船引バイパスの整備があり、早期開通に向けて工事を進めていきます。また、石川町市街地部の交通混雑の緩和や物流の円滑化を図るため、いわき石川線石川バイパス1工区の早期開通に向け、工事を推進していきます。
河川事業については、特定都市河川に指定された釈迦堂川や今後指定される逢瀬川、谷田川について、国や関係市町村と連携し流域水害対策計画を速やかに策定するとともに、県が管理する逢瀬川や谷田川などの改修や河道掘削、砂防事業として砂防ダムの整備等を推進します。加えて、小学校への出前講座の実施による啓蒙活動などソフト対策にも引き続き取り組んでいきます」