【須賀川商工会議所】菊地大介 会頭インタビュー【2026年】

【須賀川商工会議所】菊地大介 会頭インタビュー【2026年】

経歴

きくち・だいすけ 1972年生まれ。㈱あおい代表取締役。東北学院大卒。2019年11月から須賀川商工会議所副会頭を務め、22年11月から現職。2期目。


時代の変化に向き合い、課題解決に尽力していく。

会員の減少、世代交代、原油高騰――地方の中小企業を取り巻く環境が変化している。須賀川商工会議所の菊地大介会頭(㈱あおい代表取締役)が2期目を迎え、前任期から温め続けた構想を「実行」に移す段階に入った。故・円谷英二監督をモデルにしたNHKの〝朝ドラ〟誘致にも乗り出す中、市の現状と今後の展望を聞いた。

――会頭に再任されました。現在の率直な感想をお聞かせください。

「1期目の3年間は首相が2人交代するなど政権が安定せず、経済対策も思うように進まない場面が多くありました。そうした中で、当会議所では福島空港台湾便の活性化をはじめ、さまざまな構想を温め続けてきました。今年は政権も安定する見通しとなっており、これを機にさらなる交流人口の拡大を図っていきます。行政の財政状況が厳しい時代だからこそ、民間がお金を動かして経済を引っ張らなければなりません。前の任期で仕込んできたことを実行に移す――そういう3年間にしたいと考えています」

――管内の経済情勢について。

「どの業界・団体も同じ状況だと思いますが、人口減少を背景に会員事業所が減少しているのは確かです。ただ、私はこれを単なる会員数の増減の問題だけでなく、戦後80年という大きな節目の変化として捉えています。高度経済成長からバブル期にかけて、各種団体への加入は企業にとって大きな意味がありました。県の指名業者になるには協会に入っていなければならない、そういう時代の論理が確かにあったのです。しかし今は一般競争入札が主流となり、SNSやインターネットの普及で価値観も多様化しました。団体に入ることの意義そのものが問い直されています。また、選挙のあり方も変わってきました。かつては各種団体の組織票が選挙結果を左右しましたが、SNSの出現でそれも変わってきた。団体に入るメリットをどう再設計するかが重要なテーマです。

私が経営する会社の建設業界で言えば、高度経済成長期に採用したベテラン技術者が今、退職時期を一斉に迎えています。30~40代の中間層が薄く、人材の空洞化が深刻です。私自身は53歳の就職氷河期世代。バブルが崩壊して就職した時代に、当時の経営者はリストラで評価されました。今の時代にそんなことをすれば大問題になります。それほど時代は変わったということです。自分たちの世代が経営者の中核を担うこのタイミングで、団体として次の時代に何を提供できるかを真剣に考えなければなりません。この3年間は、そうした変革に向き合っていく期間にもなると思っています」

円谷英二監督を〝朝ドラ〟に

――中東情勢の悪化による原油価格高騰が懸念されています。

「非常に緊迫した状況で、情勢がどのように変化していくか日々注視しています。物価高騰が続く中で、さらに原油価格まで上がると、すべての産業に影響が及びます。建設業界ではアスファルトをはじめ建設資材のほぼすべてに原油が関わっており、単価が上がれば行政側も道路工事の発注を遅らせる可能性があります。便乗値上げも起きており、廃棄物処理に使う重油コストが跳ね上がれば、ゴミ処理にも波及します。1970年代のオイルショックを体験していない世代ですが、それに近い危機感を覚えます。エネルギーの調達先の多様化も含め、国へ実効性のある対策を強く求めていきたいです」

――須賀川市出身の故・円谷英二監督を主人公としたNHK連続テレビ小説の誘致活動を開始されました。活動に至った経緯と期待について教えてください。

「きっかけは3年前、沖縄の那覇空港と福島空港の連絡協議会の総会に出席したことです。沖縄の観光協会会長と話す中で『須賀川市はドラマの舞台に最適ですよ』と言っていただき、ウルトラマンをはじめとする多くの作品の脚本を手掛けた円谷監督の右腕・金城哲夫さんが沖縄出身だということも初めて知りました。

そこから3年間、金城さんのご家族を訪ね、ゆかりのある方々と関係を深めながら下地を整えてきました。今年、円谷監督がアメリカの視覚効果協会の殿堂入りを果たし、また、ウルトラマン誕生60周年という節目とも重なり今がそのタイミングだと判断し、3月の通常議員総会において了承をいただき、正式に誘致活動を開始しました。

発表後には偶然、円谷監督がNHKBSプレミアム『英雄たちの選択』でも取り上げられ、反響は想像以上のものがありました。円谷監督は活動写真の時代から映像に関わり、ゴジラ、そしてウルトラマンへと日本映像界の歴史をつくってきた方です。〝朝ドラ〟で先に取り上げられた古関裕而先生のご縁で福島商工会議所などとも連携しながら、福島県全体を巻き込み盛り上げていきたいです。実現すれば観光や経済への波及効果は計り知れません。それ以上に、地域の皆さんに円谷英二という偉大な人物をあらためて知っていただき、この地域に誇りと活気を取り戻すことが最大の目的です」

――中心市街地活性化など、今後注力していきたい課題について。

「JR須賀川駅が新しくなって数年が経ちますが、周辺の整備はまだこれからです。〝朝ドラ〟誘致に向けたイベントを展開していけば、それが自然と中心市街地の活性化にもつながっていくと考えています。

一方で『活性化』という言葉自体をゼロベースで見直す必要があるとも思っています。これまでつくり上げてきたまちづくりのやり方が、人口減少が進む今の時代にそのまま当てはまるとは限らない。人口減少を前提に、それに見合ったまちをつくるという発想も必要です。花火大会など各種祭りも、本来はご先祖の霊を送り返す『鎮魂』が原点。地域文化の原点に立ち返りながら、AIなどの技術をうまく活用し新たなまちづくりを皆で考えていくべきです。まちの空気は人の気持ちから変わる。景気は『気』からです。〝朝ドラ〟誘致のような夢のある話が地域の空気を明るくし、企業誘致や移住促進にもつながっていくと信じています」

――今後の抱負を。

「会員の減少、人手不足、世代交代、原油高騰など課題は山積みですが、逆に言えば、これだけ変革のきっかけが重なる時代も珍しい。商工会議所として時代の変化に正面から向き合い、会員事業所の皆様の課題解決に尽力していきます。〝朝ドラ〟誘致を軸にした地域の機運醸成、DX・省力化への支援強化、そして次の世代が商工会議所に入会するメリットを感じられる組織づくり。地域の一人ひとりが当事者意識を持ち、共に知恵を出し合える――そんな須賀川をつくっていくことが私の願いです。これからの3年間で確かな変化の礎を築き、次の世代へつないでいきたいと思っています」


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