しらいし・たかし 1960年生まれ。田村市(旧船引町)出身。上武大学商学部卒。同市議1期を経て2021年4月の同市長選で初当選を果たした。
――市内ではコロナの出口戦略に向け、特に観光面で明るい材料が散見されます。
「昨年行った『たむらの桜88撰総選挙』が好評を得、愛称が『田村の美桜88景』に決まり、今年はフォトスタンプラリーを行います。88カ所は1年では回りきれないので、数年かけて回ることでリピーターになっていただく狙いがあります。併せて桜ウオークも開催する予定となっています。
第2回クワガタサミットも開催します。昨年開いた第1回サミットには全国から昆虫好きの方々が集まり大好評をいただきました。全国には昆虫でまちおこしを行っている地域が多くあるので、昆虫の聖地を目指した協議会を立ち上げようと準備を進めています。昆虫は良好な自然環境の象徴という意味で復興をアピールする材料にもなり得るので、いずれは世界サミットを開催したい希望も持っています。
今年はあぶくま洞が開洞50周年を迎え、9月の秋まつりでイベントを行います。また、あぶくま洞は『恋人の聖地』認定を受けていますが、福島市の四季の里も認定され県内2カ所となったので、両施設でさまざまな連携を図り、PRに努めていきたいです」
――常葉町地内に整備中の東部産業団地に工場進出が決定しました。
「2区画あるうち、昨年1社の進出が決定しました。残り1区画もご検討いただいている企業があるので、早期に決定できるよう引き続き営業活動に注力します」
――移住・定住に向け田村市・東京リクルートセンターや田村サポートセンターを開設しましたが、その効果は。
「令和3年度は移住相談が86件寄せられ、5世帯12人が市内に移住されました。4年度は12月現在で相談237件、10世帯16人が移住されました。移住希望者の中には仕事を探している方もいるので、市では独自の創業・起業支援としてキッチンカー移住チャレンジ事業を行っています。キッチンカーを無償で用意し、商品開発や出店支援を行うもので、3月には市内のイベントでカレー、ハンバーガー、パンケーキのキッチンカーがデビューします。食材も地元産にこだわり、農産物の6次化につながることも期待しています。
以前、この地域は葉タバコ栽培が盛んでしたが、現在、市場は縮小しています。そこでサツマイモ栽培に力を入れ、一昨年にはサツマイモ貯蔵施設が完成・稼働しました。同施設には東北でも珍しいキュアリング設備があり、サツマイモを貯蔵するだけでなく食味向上も図れるので、昨今のサツマイモブームにのって葉タバコに代わる農産物栽培と6次化につなげていきたいです」
――たむら市民病院の新病院建設をめぐり、市議会内に百条委員会が設置され調査が続いています(※白石市長へのインタビューは2月13日に行った)。
「公共事業の役割は、社会資本を整備することと地域経済を活性化させることだと思います。この二つの観点から、私は最優秀提案者に安藤ハザマを選びました。
プロポーザル委員会は最優秀提案者に鹿島を選びました。しかし両社の企画案を比べると、安藤ハザマの方が建設費が安く、地域貢献度も高かった。さらに多数決では、委員7人のうち4人が同社を選んでいた。にもかかわらず、その後の話し合いで鹿島が選ばれました。
もちろん、プロポーザル委員会は理由があって鹿島を選んだのでしょうが、市民から直接選ばれた立場である市長としては、市民にとって良い選択、すなわち将来に負担(借金)を残さないためには少しでも建設費が安い方がいいし、多くの地域貢献がもたらされる方がいいと判断しました。また、市民や市議会から『なぜこの業者を選んだのか』と問われた時、明確に説明できる材料がある方を選んだ方が余計な疑いを招かなくて済む、とも考えました。
今回、市議会内に百条委員会が設置され、(同委員会による)証人喚問では事実のみを丁寧に述べさせていただいたつもりです」
――元職員が逮捕・起訴された贈収賄事件をめぐっては市発注の入札に市内の業者が関与していたことが明らかになりました。
「今回の事態を深刻に受け止め、こういったことが二度と起きないような組織体制を構築すべきと考え、副市長を先頭に綱紀粛正を図っているところです。
ただ、言葉で言うだけでは実現は難しいので、全職員を対象にコンプライアンス研修を行い、全庁が同じ方向を向いて仕事を行えるよう倫理観の向上に努めているところです。また、各所属長に依頼し、職員への聞き取りやシステム・パスワード管理に関する調査を行いました。これにより現状を把握するとともに、改善が必要と認められた部分はその都度改善を行うようにしています」
――屋根工事などにトラブルが発生し、事業が中断していた屋内遊び場の進捗状況について。
「多くの市民の方にご心配をいただきましたが、建築主体工事は、ほぼ完了し、現在は内装や遊具設置、外構工事などを行っています。3月下旬には完成し、4月末のオープンに向けて運営業者に委託し進めていきます」
――昨年11月、JR東日本の2021年度収支で磐越東線のいわき―小野新町間が6億9000万円の赤字という報道がありました。
「報道後すぐに小野・三春両町長と話し合いを持ちましたが、沿線自治体という点では郡山・いわき両市や県との協力も不可欠です。ただ、ある一定の区間が赤字だからといって全線が不要かというと、それは乱暴な考え方だと思います。
磐越東線は三十数年前も廃止対象となり、田村青年会議所を中心に存続運動が展開された経緯があります。市内には実に六つの駅が存在しますが、同線は市民にとっても貴重な移動手段であり、地域公共交通体系の根幹となる要素ですので、存続に向けた取り組みをしっかりと行っていきたい」
――最後に、令和5年度の重点事業について。
「五つの政策枠を設けます。一つ目は豊かなふるさと実現枠。この中には新病院建設、健康長寿サポート事業、ムシムシランド移設などが含まれます。二つ目は地域創生枠。移住定住対策や産業振興、少子化対策などを行います。三つ目は新生活創造枠。昨年立ち上げたオンラインショップの運営やDXの推進などを図っていきます。四つ目は復旧・復興枠。都路町の複合商業施設の建設を進め、林業推進などにも努めます。五つ目は危機管理枠。自主防災組織を構築し、有事の際は機能できる体制にしていきたいです」
掲載号:政経東北【2023年3月号】