小熊慎司氏に「再起の芽」はあるか!?

小熊慎司氏に「再起の芽」はあるか!?

今年2月に行われた衆院選の福島3区で、小熊慎司氏(中道改革連合)は、上杉謙太郎氏(自民党)に約3万票の差をつけられ、比例復活もかなわず落選した。その後の小熊氏のSNSなどを見ると、政治活動を続ける意思を示す発信をしている。次の衆院選が本線だが、巷では「会津若松市長選への転身」といったウワサもある。果たして、小熊氏は今後何を目指すのか、その中で「再起の芽」はあるのか。

市長転身説は否定、政治生命を賭けて国政再挑戦

今回の衆院選は、「初の女性首相」である高市早苗首相の人気が、自民党に追い風をもたらした。いわゆる「高市旋風」で、野党の大部分はそれに屈した格好。

福島3区の小熊慎司氏もそのひとり。小熊氏は最初の国政選挙となった2009年の衆院選は落選だったが、翌2010年の参院選比例区で当選し、その後、衆院に鞍替えした後は、比例復活を含めて5回連続でバッジを手にしてきた。

その間、みんなの党、日本維新の会、維新の党、希望の党、立憲民主党を渡り歩いた。今回は立憲民主党と公明党の衆院議員による新党「中道改革連合」に参加し、同党公認での立候補となったが、自民党・上杉謙太郎氏の後塵を拝し、比例復活もかなわなかった。

選挙翌日の2月9日、小熊氏は自身のSNSで「これまでのご支援への感謝とともに、自身の不徳を深くお詫びし、原点である街頭に立ちました。寒さが募る朝。だからこそ、みなさまの声に耳を傾け、暮らしのために働く覚悟を新たにしました」と投稿した。

その後も、さまざまな発信をしており、「再起を図る」という意思が感じられるが、小熊氏に「再起の芽」はあるのか。

その前に今回の結果について、支持者や関係者に聞くと、やはり「高市旋風」と、SNSを中心とした選挙戦のあり方の変化が小熊氏に不利に働いたとの指摘が大勢を占めた。

福島3区の選挙結果

当 107,649 上杉謙太郎(50) 自民元
77,011 小熊 慎司(57) 中道前
4,084 金山  屯(85) 無所新

2026年2月8日投開票、投票率61・03%

ある有力支持者はこう振り返る。

「基本的には『本人の不徳の致すところ』ということ。ただ、実態は『高市旋風』と『SNS戦略』にやられたという側面が大きかったと思います。当初は1万票差くらいで勝てると見ていたが、中間時点では『厳しい』という感じになった。とはいえ、あそこまで差がつくとは思いませんでした。小泉純一郎首相時代の『郵政選挙』以上の風が自民党に吹いたと言えます。ただ、当然、次回はその反動もあるでしょう」

別掲に小熊氏の国政選挙歴をまとめた。2017年までの衆院選は、会津地方全域、2021年はそこに西郷村を加えた旧福島4区が選挙区だった。それが2022年の区割り改定により、会津全域と西郷村のほか、旧福島3区だった白河市、西白河郡、東白川郡が同一選挙区となり、新福島3区となった。

衆院選(2009年8月30日投開票)

当 91,695 渡部 恒三(77) 民主前
49,349 渡辺  篤(57) 自民前
42,824 小熊 慎司(41) みん新
1,735 鈴木 規雄(65) 諸派新


参院選(2010年7月11日投開票)

当 比例区 小熊 慎司(42) みん新


衆院選(2012年12月16日投開票)

当 71,751 菅家 一郎(57) 自民新
比 50,036 小熊 慎司(44) 維新新
15,718 小川 右善(63) 社民新
8,903 原田 俊広(53) 共産新


衆院選(2014年12月14日投開票)

当 56,856 小熊 慎司(46) 維新前
比 56,440 菅家 一郎(59) 自民前
10,139 小川 右善(65) 社民新
9,413 田中和加子(58) 共産新


衆院選(2017年10月22日投開票)

当 68,282 菅家 一郎(62) 自民前
比 67,073 小熊 慎司(49) 希望前
9,492 古川 芳憲(66) 共産新
8,063 渡辺 敏雄(68) 社民新


衆院選(2021年10月13日投開票)

当 76,683 小熊 慎司(53) 立民前
比 73,784 菅家 一郎(66) 自民前


衆院選(2024年10月27日投開票)

当 96,814 小熊 慎司(56) 立民前
68,133 上杉謙太郎(49) 無所前
11,715 唐橋 則男(63) 共産新

上杉氏は旧福島3区で活動しており、県南地方が地盤。そのため、県南で苦戦するのは想定済みで、実際にその通りになった。ただ、会津地方でも上杉氏に先行され、とりわけ大票田である会津若松市でも上杉氏の得票が上回った(別掲の市町村別得票数参照)。このことは関係者に大きなショックを与えると同時に、「小泉純一郎首相時代の『郵政選挙』以上の風が自民党に吹いた。それを跳ね返せなかった」との見方につながっている。

上杉謙太郎小熊慎司
会津若松市26,94724,019
白河市19,2767,815
喜多方市10,65910,126
南会津郡下郷町1,5691,398
檜枝岐村169162
只見町1,2191,096
南会津町4,0813,879
耶麻郡北塩原村694692
西会津町1,4751,665
磐梯町909806
猪苗代町3,3503,127
河沼郡会津坂下町3,7413,395
湯川村831819
柳津町809821
大沼郡三島町461435
金山町528600
昭和村364311
会津美里町5,1554,176
西白河郡西郷村5,7013,261
泉崎村2,042909
中島村1,713606
矢吹町5,2822,435
東白川郡棚倉町4,6001,694
矢祭町1,8251,026
塙町3,0301,242
鮫川村1,219496
合 計107,64977,011


前出の有力支持者はこう続ける。

「中には『(小熊氏は)野党だから』という人もいますが、いまは国会議員が国から予算を引っ張ってくるような時代ではありません。知事や市町村長の努力で何とでもなるんです。それよりも、小熊氏本人は、政権を担える政党を育てる、二大政党制を実現するということを考えていると思います」

一方で、厳しい指摘も。

「小熊氏はさまざまな政党を渡り歩いてきた。良く言えば『流れに乗るのがうまい』ということだが、裏を返すと『信念が薄い』と見る人もいると思う」(県南の自治体議員)

「選挙後、(小熊氏から)電話の一本もない。そんな人が今後どうするかなんて、どうでもいい」(会津地方の議員経験者)

市長転身説が急浮上

興味深かったのは会津地方の自治体議員のこんな証言。

「上杉氏は会津地方ではまだ馴染みがない。ただ、菅家一郎氏が比例で当選したので、何かあったら、菅家氏に相談やお願いができる環境ができた。これが、菅家氏がいなかったら、『やっぱり(会津地方が地盤の)小熊氏も国政に送り込む必要がある』ということになったかもしれない。次の選挙で菅家氏がどうなるかは分からないけど、その間に上杉氏が会津地方の首長・議員、各種団体などとの関係を深めることができたら、小熊氏にとっては厳しくなると思います」

一方で、会津若松市内では「小熊氏は市長選に出てはどうか」との声もある。

ある関係者によると、「衆院選の最中、『小熊氏は次の市長選に出るらしい』という話が出て、今回の選挙(衆院選)に本腰を入れていないようなイメージを付けられ大変だった。相手陣営の戦略だったのかもしれないけど」とのこと。

実際、自民党関係者からも、「小熊氏は市長選に出ればいい」といった声が聞かれた。

前出の有力支持者によると、「もし、小熊氏がやると言えば、その線でまとめられる状況ではあった。ただ、本人は『国政で』と固辞し、その話はなくなった」という。

ちなみに、会津若松市長選は来年7月に実施される。

4月中旬、会津若松市内の事務所で小熊氏に話を聞いた。事務所に行くと、スタッフが「まだ片付けも済んでなくて」と話した。東京の議員事務所・宿舎を引き払い、地元の事務所も移転したため、どこに何をしまったかも掌握しきれていないような状況らしい。

小熊氏に聞く

以下は小熊氏とのやりとり。

――今回の選挙結果をどう総括するか。

「いろいろな反省点があり、まだ詳細まで詰められていない部分もありますが、やはり選挙区が広くなって、そこをしっかりカバーしきれていなかったと感じています。解散から選挙までということだけでなく、日常の活動の中でもう少し時間がほしかった。ですから、そういう反省はありますね」

――党や組織の問題はあったか。

「地方の場合、政党よりも個人の力が大きいと思っています。党勢がどうこうではなく、自分自身の努力不足と受け止めています。実際、当選している人はいるわけですから、自分の力が及ばなかったということで、そこを反省しています」

――それを踏まえて、今後の活動だが、次の衆院選を目指すと捉えていいのか。

「もちろんです。すでに役員会でも次の衆院選に挑戦することを表明しています」

――会津若松市長選に出るのでは、というウワサもあるが。

「それは完全にウワサです。私からそういうニュアンス的なことを言ったこともありません。そういった期待をかけていただけること自体はありがたいことですが、会う人(聞かれた人)すべてに否定して、『国政に再挑戦します』と言っています」

――国政にこだわる理由は?

「少子高齢化や人口減少、東京一極集中といった課題は、自治体単位では解決できません。地方の問題は日本全体の構造の問題であり、国政で取り組むべきだと考えています」

――いまはどんな活動を?

「時間ができた分、これまで回り切れなかった地域を丁寧に歩いています。いろいろな方の話を聞いたり、行き来する中で、違う視点も生まれてきているので、この状況を前向きに捉えて、いい勉強の機会にしたいと思っています」

――バッジを外したことで変わったことは? 当然、収入のこともあるだろうし、支持者も変わらず応援してくれる人、離れてしまった人などもいると思うが。

「多くの方から『また頑張れ』と励ましをいただいています。むしろ人のつながりや支えのありがたさを強く感じています」

――収入面は?

「縁があって、現在は企業の顧問をやらせてもらっています。ドローン関係の企業で、そのための講習や資格試験などを受けています。そんな事情もあって、まだ挨拶できていない人もいて申し訳なく思っていますが、生活は何とかしています。政治活動費については政党の支部活動費がどうなるか、不透明な部分があり、計画が立てられないというか、明確にできていない状況です。ですから、県南地方に行くときも、経費節減で高速を使わずに行っています。そういうところで気づきがあるんですね。生活者としての感覚を大事にして、ガソリン代や物価高なども、自分の問題として実感しています。理屈ではなく、体で感じるということです」

――選挙戦のあり方については。

「SNSなどの影響は非常に大きくなっています。従来のやり方だけでは通用しない部分もあり、いわゆる〝空中戦〟のやり方も見直す必要があると感じています」

――有権者にどう訴えていくか。

「生活者の痛みを自分自身の問題として捉え、その解決につながる政策を考え、実行していく。それを愚直に続けていきたいと思います」

小熊氏は市長選説を否定し、次の衆院選を目指すことを明言した。ある支持者によると「小熊氏は『次も負けたら政界を引退するつもりで挑む』と述べていた」という。そのくらいの覚悟で再起を図るということだが、すべては、今後、小熊氏が有権者にどんな姿を見せ、どれだけの期待値を示せるかに尽きる。その答えは次の衆院選後に分かる。

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