2024年の衆院選直前に選挙区内の祭りに参加した27団体に現金計25万円を配ったとして、元衆院議員の亀岡偉民氏(70)=自民党を離党=が公選法違反(寄付行為)に問われている。亀岡氏は一貫して無罪を主張している。検察は寄付主体が亀岡氏・亀岡事務所だったと証明しようとするが、亀岡氏側は別団体である「福島メセナ協議会」を手伝ったに過ぎないと反論。協議会と亀岡氏が一体であったかどうかが争点となる。5月20日に福島地裁で行われた被告人質問で亀岡氏は、「不当な捜査だ」と述べた。
公選法違反公判で被告人質問
亀岡氏は、2024年10月の衆院選公示直前に福島1区内で行われた6つの祭りに参加した27団体に計25万円を寄付したことが公選法違反に問われている。この選挙では自民党の旧派閥で常態化していた政治資金収支報告書の不記載問題、いわゆる「裏金問題」で逆風が吹き、亀岡氏は落選した。
公選法は、選挙が近いかどうかにかかわらず、選挙区内の有権者への寄付をいかなる名義でも禁じている。祭りへの寄付は、運営側も当たり前のものとして受け取り、祈祷や食事を「対価」として受け取ったことにすれば、寄付には当たらない抜け道が用意されているため、地縁が強い地方議員の間では珍しくない。定期的に刑事告発されたり報道されたりするが、不起訴や略式起訴になる場合が大半だ。
政治家が起訴され公開裁判になるかどうかは、警察・検察の匙加減だが、今回、捜査機関が亀岡氏の立件に動いたのは、亀岡氏が落選して議員バッジを失ったからだと言われている。
事件は、亀岡氏・亀岡事務所が公選法違反に当たるのを自覚しながら複数の寄付行為を行っていたかどうかが争点になっている。実質的な寄付主体と故意性がポイントとなる。
警察は、「衆議院議員亀岡偉民」の挨拶状と共に祭り参加団体に渡された現金を包んだのし袋を押収。5000~1万円を包んだのし袋には、「福島メセナ協議会」と書かれている物もあれば、「衆議院議員亀岡偉民」と書かれている物もあった。罪に問われている祭りへの寄付について、祭り参加団体のある団員は、「亀岡氏を名乗る人がのし袋と挨拶状を渡していた」と法廷で証言した。
亀岡氏側は、亀岡氏は福島メセナ協議会が行っている文化活動への寄付を手伝ったに過ぎず、協議会とは運営も会計も無関係とする。亀岡氏の名前が書かれたのし袋は、本来は寄付主体である協議会の名が記入された物を渡すはずだったが、誤った名義で渡してしまったという。
この反論に対して、検察側は福島メセナ協議会の活動が亀岡氏の政治活動や選挙活動と一体だったことを示そうとし、両者の攻防が続く。
被告人質問で亀岡氏が明かしたところによれば、福島メセナ協議会の発足は1992年か93年ごろ。支援者の1人であった経営者X氏(故人)が応援資金として「800万円を使ってほしい」と亀岡氏に持ってきた。「応援資金」とはつながらないが、これを使って地元の祭りや文化振興の地元の祭りやスポーツを支援する団体、福島メセナ協議会の構想を打ち明けたという。亀岡氏は「当時落選中であったため受け取るのを断った」と話す。
福島メセナ協議会はX氏ら地元経営者が中心になって設立・運営され、亀岡氏は一会員として関わったという。高校野球や実業団野球で名を馳せていたため、スポーツ大会に名前を貸すようになった。協議会の「代表」や「会長」として書類に記載されることもあったが、実態はあくまで一会員で、大会主催者が箔付けのために亀岡氏の名前を使うのを黙認していたという。協議会の事務手続きを頼まれて亀岡事務所スタッフが手伝う時もあった。
亀岡事務所と福島メセナ協議会は運営も別で、会計も別だったという。同事務所が協議会の金銭を預かるようになったのは次のような経緯があったとする。
「2009~2011年にX氏が心臓病で2回倒れ、自宅に呼ばれた。箱に入った現金を渡され、文化振興活動に使うように言われた」
箱には1万円札や5000円札が入っており、亀岡氏は事務所スタッフにX氏の意向に従い祭りなど文化活動の振興に使うように伝えたという。その時点で箱の中の金額は数えていなかったため不明。現金がなくなった時点でX氏から引き継いだ寄付活動も終えるものと考えていたため、特別に出納簿は作って管理せず、新たに入金することもなかった。
弁護人から最後に捜査の状況を問われ、亀岡氏は「こんな捜査が許されるのか」と訴えた。落選後の2024年11月14日にホテルの前で待ち伏せされ、自宅や事務所など5カ所に家宅捜索が入った。携帯電話とパソコンを半年以上押収され、取り調べを受けた秘書は睡眠障害に陥った。捜査員から「告発を受けている」と言われ、「他の政治家も同様に寄付している」と答えると、「あなたも同じように告発すればいい」と返されたという。
検察は、「亀岡氏と福島メセナ協議会は別団体で活動は無関係」との主張に対して、被告人質問ではその一体性を示そうとした。例えば、亀岡氏の政治活動との関係。2023年12月に亀岡事務所は福島市の飯坂温泉にある老舗旅館で忘年会を開いたが、同時刻に同じ宿ではmRNAワクチンの開発で亀岡氏と関わりがあった大手製薬会社の役員と亀岡氏もが「福島メセナ協議会」の名義で懇親会を開いていた。亀岡事務所は案内状に「福島メセナ協議会
亀岡偉民」と差出人を書き、製薬会社の役員に送っていた。
法廷で亀岡氏は、「医療に関する講演会を開いた。せっかくだからと忘年会を合同で行った」と説明。協議会の名前を使った理由は、「向こうから『亀岡事務所の名前があると出にくい』と言われたから」という。も
目を光らせていた警察
裁判では、祭りと寄付のあり方についても問われている。本誌4月号では、亀岡氏の秘書が法廷で「福島稲荷神社の祭礼で同席したA県議(福島市選挙区選出)が、『実際は現金を渡したが、お茶にすり替えてもらった』と言っていた」や、「『亀岡さんが1年前にした寄付が警察に目を付けられ、今年は張られているよ』と教えられた」などと意味深な証言をしたことを報じた。「亀岡氏と同罪の政治家がいるのに処罰されていない」という趣旨の発言だが、今回、再び証言台に立った秘書はA県議との会話を詳しく話した。
秘書によると、亀岡氏の裁判が始まった後の2025年10月20日、代理としてある団体の会合に出席すると、懇親会で酒に酔ったA県議に話しかけられたという。
「私が所属している町会は寄付金を受け取らなかった。町会には現職の警察官やOBがいて目を光らせているからね」
秘書はA県議から、2024年10月、福島稲荷神社例大祭に参加するある町会に自身が寄付金を持って行った際に、町会が気を利かせて現金を「お茶」に変えて処理したことを打ち明けられたという。
裁判官も検察もこの証言には関心を示さなかったが、福島市内における祭りと政治家の寄付の実態を浮かび上がらせるエピソードだ。亀岡氏立件の端緒は、町会に所属する警察関係者からの情報提供であった可能性もうかがわせる。


























