喜多方市高郷町の石材会社社長が不要になった墓石を不法投棄していたとして廃棄物処理法違反の疑いで逮捕された。地方では、人口減や若者流出を背景に〝墓じまい〟が進み、石材業者は苦境に立たされている。そうした現状を象徴するような事件と言えよう。
背景に〝墓じまい〟増加と石材業界の苦境

喜多方署は5月28日、喜多方市高郷町の石材業者「丸正」の代表取締役社長・佐藤正道氏を廃棄物処理法違反(不法投棄)の疑いで逮捕した。地元紙の報道によると、逮捕容疑は2022年5月から9月にかけて自社近くの採石場跡地のくぼ地に、墓じまいに伴い引き取った墓石計454㌔を投棄・埋設した疑い。
不要になった墓石は産業廃棄物の「がれき類」と解釈され、中間処理施設で破砕・選別された後、再生砕石としてリサイクルされるのが一般的だ。だが、同社はそれをせずに、自社敷地に埋めていたわけ。
発覚のきっかけとなったのは、2025年6月、県に対し「不要になった墓石を埋めている」と情報提供があったこと。県が立ち入り調査を実施したところ、実際に埋設された墓石を確認した。これを受けて、県が警察に通報し、捜査が進められてきた。他にも複数の墓石が確認されており、少なくとも数㌧に及ぶという。そのため、警察は同様の行為が常態化していた可能性があるとみて捜査していることが報じられた。
5月29日に送検され、「捜査に支障があるとして認否を明らかにしていない」とされていたが、6月17日付で、処分保留で釈放された。今後は任意で捜査が続けられる。
丸正は1910(明治43)年創業。1968(昭和43)年に佐藤石材㈲を設立し、1986(昭和61)年に㈱丸正として法人改組・社名変更した。墓石などの石材販売・加工が主業で、採石業、土木建築工事を事業内容に掲げている。資本金2000万円。「石の丸正」ブランドで県内では高い知名度を誇り、〝頑固親父〟が「自分の墓を自分で選んで何が悪いんだい!」と怒鳴るテレビCMは長く放送されている。
佐藤氏はロータリークラブのガバナー(地区代表)などさまざまな団体の役職を歴任し、会津地方はもちろん県内全域で知られる存在だった。喜多方市を代表する企業の一つと言えるが、近年はかなり業績が低迷していたようだ。民間信用調査機関によると、直近6期の業績はグラフの通り。2021年から売り上げが落ち込み、4期連続で1000万~5000万円の純損失が発生している。不法投棄が行われた2022年5月から9月は業績が落ち込んでいる時期に当たる。

石材業界関係者によると、墓じまいするためには、解体にかかる2、3人の人件費、重機の費用に加え、産廃処理業者に収集運搬、破砕などを依頼する費用がかかる。それらを合計すると、墓1基当たり数十万円は必要になるとのこと。同社が墓じまいで不要になった墓石を無料で引き取っていたのか、有料で引き取っていたのかは判然としないが、処分費用を惜しんで、自社敷地内への不法投棄を選んだと推測される。
大手石材業者の幹部は「人口減少に伴い新しい墓を建てる需要が減少し、加えて地方では、墓じまいも加速しているので、業者にとって苦境が続いている」と語る。本誌でも2023年10月号で喜多方市示現寺を取り上げた際、「子どもが都心部で暮らしており、墓参りの負担軽減などを理由に、檀家から離れて墓じまいする家が増えている」と報じた。
「1990年代以降、安価な中国産墓石が流入したことで、国内の石材加工業は厳しい価格競争にさらされ、体力を失っていたところに『墓離れ』、『墓じまい』の流れが直撃しました」(大手石材業者の幹部)
加えてある産廃業者によると、墓石を原料とした再生砕石は感情的な理由から需要が低く、用途が限られるという事情もあるようだ。
「受け入れている業者が少ないうえ、墓石の硬度によって対応できる施設が限られる。そういう意味で受け入れ先探しに苦労している面はあったと思います」
ただ、いずれの人にも共通していた意見は「どんな事情があったとしても、ほとんどの業者はきちんとマニフェストを取得し、お金を払って適正に処理している」、「佐藤氏も当然分かってやっていただろうし、同情の余地はない」というものだった。
処理費用は2、3億円か
一方で、ベテランの石材業界関係者はこのようにも話す。
「廃棄物処理法が公布された1970年前から活動していたり、限られた企業とだけ取り引きしている事業者は、驚くくらいコンプライアンス意識が低い。慣習的に敷地内に石を埋めたり、石材の切断時に発生する汚泥を垂れ流しにしているところもあると聞きます。丸正の社長がいきなり逮捕されたことには驚いたが、『墓じまい』が増える中、業界全体への警鐘という意味合いもあったのではないか」
なお、丸正の不法投棄が発覚したのは、県に情報提供があったとのことだが、複数の産廃業者や近隣住民の間では、「退職時にトラブルになった元社員が県に細かく情報提供したようだ」と囁かれている。埋めた期間や場所が具体的に報じられたのは、それが理由だったのかもしれない。
同社はホームページに謝罪文を掲載し、関係機関の調査への全面協力と事実関係の確認、社内管理体制・業務運営体制の見直し、信頼回復に努める考えを示した。
6月中旬、佐藤正道氏が釈放される前の時点で同社を訪ねたところ、女性社員が「弁護士に対応を一任しているので現時点で何も話すことはありません」と回答した。
県は今後、埋まっている墓石の全容解明が終わり次第、掘り返しと適切な処理を求める方針。前出・ベテランの石材業界関係者は、「報道の通り数㌧分埋まっているとしたら、撤去費用は2~3億円規模になるだろう」と指摘する。
「処分保留の理由は明らかにされていないが、証拠隠滅や逃亡の恐れの有無などを踏まえた判断だったのだろう。起訴されるかどうか現時点では分からないが、その〝後始末〟はどれだけ金がかかってもやらなければならない。ただ、経営的に厳しい状況で耐えられるかどうか」(同)
墓じまいが増加する喜多方市で発覚した不法投棄。「自社敷地に石を埋めていたとしても大した問題ではない」と擁護する声も聞かれるが、「自分の敷地内に産廃を埋めて何が悪いんだい!」というわけにはいかない。県によると、墓石の不法投棄が多発しているわけではないということだが、適正処理が徹底されているか、関係機関による監視がこれまで以上に求められる。

























