本誌のメール投稿フォームに「会津磐梯スノーリゾート形成事業」に関する投稿があった。投稿日は7月8日、投稿者は仮名。
内容は、「会津磐梯スノーリゾート形成事業」に対する疑念で、関連自治体やその関係者間の癒着、補助金を引き出すための特定スキー場への優遇などを指摘するもの。もっとも、それらについて詳細が記されているわけではなかったため、ここでは詳しく触れない。
同事業については本誌2023年12月号「会津磐梯スノーリゾート形成事業を展望 インバウンドの足かせになる処理水放出」という記事でリポートした。
同事業の正式名称は、「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」で、観光庁が実施している補助制度。県内では唯一、会津若松市、磐梯町、北塩原村の「会津磐梯地域」が2023年度に事業採択された。計画策定者は会津若松観光ビューローで、同団体が事務局のような役割を担っている。
冒頭のメール投稿には「なぜ、猪苗代町は含まれていないのか」との指摘もあった。
確かにそこは本誌も不思議に思い、同計画策定時に猪苗代町長を務めていた前後公氏に聞いたところ、「私の知る限りでは、その件(スノーリゾート形成事業)で話(誘い)はなかった」という。
一方で、ある関係者は「猪苗代町は独自路線ということでしょう。遠藤さんのところは資金力もあるでしょうから」と話した。
この関係者が言う「遠藤さん」とは、ISグループ代表の遠藤昭二氏のこと。遠藤氏は猪苗代町出身。証券事業やFX取引などのISホールディングスを筆頭に、いくつかのグループ企業がある。そのうちの1つに猪苗代スキー場などを運営している「DMC aizu」がある。
確かに同グループは資金力があり、独自でさまざまな仕掛けを試みている。そのため、前出の関係者は「猪苗代町のスキー場はISグループが中心だから独自路線なのだろう」との見解を示したわけ。
一方、会津磐梯スノーリゾート形成事業で、1つ目玉となったのが、磐梯町のアルツ磐梯と北塩原村の猫魔スキー場の連結だった。両スキー場はともに、星野リゾート(本社・長野県軽井沢町)が運営している。同社は2003年からアルツ磐梯を運営しており、2008年に猫魔スキー場を取得した際、両スキー場を尾根をまたいでリフトでつなぐ構想を持っていた。
ただ、当時の地元住民などの反応は「この地域は国立公園だから規制が厳しい。新たに建造物(リフト)をつくって山をまたいで連結させるなんて無理に決まっている」というものだった。
夢物語のように見られていたわけだが、スノーリゾート形成事業の採択に合わせるような形で許可が下り、リフトが建設できた。連結計画が浮上してから約15年かかったことになる。これにより、2つのスキー場が合体し「ネコママウンテン」という1つのスキー場になった。
会津磐梯スノーリゾート形成事業の最大の目的はそこにあったのではないか。だから、猪苗代町は含まれず、ネコママウンテンがある磐梯町と北塩原村に加え、歴史・文化に特化した観光施設や温泉地などがあり、宿泊施設や飲食店なども多い会津若松市がそこに乗る形でホストタウンになった、と。本誌はそう見ているが、結果的に「国際競争力の高いスノーリゾート」が形成され、スキー場を含めた周辺観光地などの集客力が上がれば地域にとってはプラスになる。