あぶくま高原道路の小野インターチェンジ(IC)で行われている工事が長期に及び、平田方面に向かう合流車線の通行止めが6年近く続いている。地元では「設計ミスで工事をやり直しているらしい」とウワサされているが、実際はどうなのか。
わざわざ反対の滝根ICに向かい、そこでUターンしなければならないなんて面倒

実は、個人的にもずっと気になっていた。小野町内を通る国道349号を車で走ると、あぶくま高原道路小野IC近くに設置された電光掲示板や立て看板には常に「平田方面通行止め」と表示されていたからだ。
いつから表示が始まったのかは正確には覚えていない。ただ、いつまで経っても通行止めが解除されないので「いつまで工事をしているんだろう」と周辺を通るたびに不思議に思っていた。
そうした中で郡山市内の某社長と話をしていた際、偶然、あぶくま高原道路の話題になった。社長は「久しぶりにあぶくま高原道路を使ったらびっくりした」と苦笑しながら、こんな話をしてくれた。
「いわき市で仕事があり、帰りは磐越道の小野ICからあぶくま高原道路の小野ICに乗り換えて平田IC―国道49号経由で帰宅しようと考えた。ところが、磐越道からあぶくま高原道路に乗り換えようとしたら平田方面の合流車線が通行止めになっていたんです」
これでは、あぶくま高原道路を使う意味がないが、よく見ると周辺には平田方面に行くための案内があったという。
「いったん平田ICとは反対の滝根ICに行き、滝根ICで降りてUターンすれば平田方面に行けると看板に書かれていた」(同)
社長は案内通りに滝根ICに向かい、そこでUターンして平田ICに行くことができた。Uターンしなければならない分、小野ICから直接平田ICに行くより6、7分、余計に時間がかかるが、それでも無事にあぶくま高原道路を通れたことに社長は安堵した。ただ、同時に
「わざわざ反対の滝根ICに向かい、そこでUターンしなければならないなんて面倒(苦笑)。そもそもなぜ、平田方面の合流車線はずっと工事をしているの?」(同)
社長の疑問はもっともだ。私と同じように不思議に思っている人がいたことを知り、現場周辺を取材することにした。
その前に、あぶくま高原道路のことを簡単に紹介しておきたい。

あぶくま高原道路は東北自動車道矢吹ICから磐越自動車道小野ICまでを結ぶ延長35・9㌔の地域高規格道路で、1994年に県が事業着手し、2011年に全線開通した。同道路と東北道、磐越道で阿武隈地域を三角形で囲むことから、トライアングルハイウェイとも呼ばれている。無料で通行できるが、矢吹中央IC―玉川IC間だけは有料区間になっている。管轄は県あぶくま高原道路管理事務所で、有料区間は県道路公社あぶくま高原有料道路管理事務所が管理する。
前段で滝根ICに触れたが、正確に言うと同ICはあぶくま高原道路ではない。小野IC―滝根IC間の2・6㌔は、震災からの復興を目的とする「ふくしま復興再生道路」として整備された一般県道吉間田滝根線(広瀬工区)の一部に位置付けられ、2018年に事業着手、2024年に開通している(※)。
※一般県道吉間田滝根線(広瀬工区)は延長9.2㌔で、自動車専用道路の小野IC―滝根IC間2.6㌔と、滝根ICからいわき市川前町小白井の県道小野富岡線までを結ぶ一般道6.6㌔で構成される。この一般道部分が国直轄権限代行事業で整備されるなど復興関連事業に位置付けられたことで、通常より早く工事を終えるとともに、浜通り・川内村と小野町のアクセスが格段に向上した。
橋梁が最大7㌢沈下

というわけで、あぶくま高原道路を実際に通ってみた。小野ICから侵入すると、平田方面に向かう合流車線はバリケードで封鎖され、否応なしに滝根方面に向かわされた。小野ICから滝根ICまでは約3分。滝根ICに着くと、そこでUターンし、再び小野IC、さらにその先にある平田ICへと車を走らせた。滝根ICから平田ICまでは約10分だった。
いちいちUターンしなければならないのは面倒だが、一般道を使って小野町から平田村に向かうと30分程度かかるので、それと比べれば、面倒でもあぶくま高原道路を使った方が遥かに早い。
では、小野ICの平田方面通行止めはいつまで続くのか。県あぶくま高原道路管理事務所のホームページを見ると「通行止めは令和7(2025)年度内の解除を予定」となっているが、通行止めが長期に及んでいる原因には触れられていない。
小野町内で聞き込みをすると、某事業所の代表がこう教えてくれた。
「設計ミスがあり、工事をやり直しているって聞いています。ただ、詳しい原因は誰も分からないので、町民の中には『県が隠蔽しているんじゃないか』と言う人もいます」
設計ミスや隠蔽が事実とすれば穏やかではない。
実際はどうなのか、県あぶくま高原道路管理事務所に尋ねると「工事については県中建設事務所に聞いてほしい」と言う。そこで同事務所に問い合わせると、吉田秀一事業部長が対応してくれた。
吉田部長いわく、小野ICは「想定外の事態」で工事をやり直しているのだという。
「あぶくま高原道路は小野ICで全ての車が降りる構造になっていましたが、新たな自動車専用道路によって滝根ICまで行けるようになることを受け、小野ICに平田方面に向かうための合流車線を整備することになりました。その合流車線のための橋梁(小戸神橋)の工事が2020年1月から始まり、予定では2024年4月に開通するはずだったが、開通直前に(あぶくま高原道路の)本線と(橋梁の)合流車線の接続部分に段差が見つかったのです」(吉田部長)
段差は箇所によって最大7㌢に及んでいた。調べると、橋梁が沈下していることが分かった。


「完成後の引き取り検査では段差はありませんでした。しかし、完成から開通まで日時があり、その間に橋梁が少しずつ沈下した結果、本線と合流車線にズレ(段差)が生じてしまったのです」(同)
段差が生じた原因は二つあった。
「一つは、橋梁の土台部分の地盤が沈下した。もう一つは、四つある橋梁の下部工のうち、一つの土台に計算上の見落としがあり、それが設計ミスにつながって沈下を招いてしまったのです」(同)
小野町内でウワサされていた設計ミスは事実だったのだ。
ただ、県による隠蔽は事実ではない。県は設計ミスが起きたことを公表しており、2024年12月26日付の地元紙でもこう伝えている。
《県中建設事務所は、県道吉間田滝根線広瀬工区小戸神橋(拡幅部)=小野町=の舗装面に生じている段差の対策工事を行うと25日、発表した。供用開始は来年度になる見通し。今年4月の広瀬工区開通時に供用開始となるはずだったが、段差のため通行止めが続いていた。
同事務所によると、設計者が本来計上すべき作用力を見込まなかったことや、施工時の表流水と湧き水によって支持地盤が緩んだのが段差の原因という。橋台や橋脚などの下部工が1~5㌢ほど沈下し、橋の既設部をつなぐ部分の舗装面に段差が生じた》(福島民報より抜粋)
再工事費は原因者に請求
設計ミスを起こしたのはセントラルコンサルタント(東京都中央区、中田健一社長)。1967年設立、資本金1億3000万円。民間信用調査機関によると、2024年9月期の売上高124億7100万円、当期純利益11億4400万円。福島県発注の工事で多くの実績がある。
この設計ミスを受け、県はセントラルコンサルタントの入札参加資格を2025年3~6月の3カ月間、制限(停止)した。
一方、段差を生じさせたまま車を通行させることはできないため、県は必要な調査・再設計を経て工事のやり直しに着手。この調査・再設計に時間を要したため、小野ICでは通行止めが長期に及んでいるのに工事が始まる気配が見られない状況が続いていたのだ。
「やり直し工事は支持地盤の沈下を収束させた後、設計ミスがあった下部工を壊し、新しく造り直しています。その後、ジャッキアップをして本線と合流車線の高さを調整し、段差を解消します。最後に舗装工事や付属物設置工事、安全対策工事をして完成となります」(同)
予定では3月末までに完成させ、4月からの供用開始を目指しているという。本来は2024年4月に開通するはずだったから、丸2年遅れた格好だ。工事開始は2020年1月なので、実に6年も通行止めが続いていることになる。
想定外の設計ミスにより、長期にわたり面倒な利用を強いられている小野IC。県は今後、やり直し工事にかかった費用の全額をセントラルコンサルタントに請求する。設計ミスの代償はあまりにも大きかった。

























