本誌2024年5月号で、社会福祉法人福島県社会福祉事業団(西郷村、太田健三理事長=一般財団法人太田綜合病院会長)が運営する障害者支援施設「福島県けやき荘」(西郷村)の元職員の男が入所者に虐待し傷害罪に問われた裁判についてリポートした。
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2022年9月、元職員の男が勤務中、入所者の男性の両太ももに熱した金属製スプーンを押し当て、全治1~2カ月の火傷を負わせた。裁判では虐待の経緯に加え、保身に走る園長が虐待防止担当者の報告をもみ消し、しばらくの間隠蔽されていたこと、別施設の職員からの情報提供で発覚したことも明らかになった。
福島県社会福祉事業団は1967年4月設立。資産総額79億0958万6896円。県内で、特別養護老人ホーム、障害者支援施設、救護施設、相談支援事業所など多くの施設を運営している。
虐待や隠蔽が横行していた同法人が再発防止を進めていけるのか注目されていたが、そうした中で同法人の施設で再び虐待疑惑が浮上している、と指摘する投書が寄せられた。
内容は①同法人の施設で虐待が疑われる事案が発生し、県、市町村、警察等に通報していたこと(証拠として、法人本部から昨年12月13日付で各施設に送られたFAX送信票が同封されていた)、②そんな中でも内部では法人幹部の掛け声で年末に飲み会が行われていたこと、③法人幹部についてパワハラや収賄などさまざまな疑惑がささやかれていること――など。
消印は1月11日付、郡山東郵便局。差出人は匿名だが同法人施設の利用者の家族を自称しており、「内部関係者から資料を含む郵便が送られてきたので、問題意識を持ち、さまざまな機関に告発している」旨が記されていた。そんな回りくどい方法で内部告発したとは素直に受け取りにくいが、FAX送信票が同封されているところを見ると、関係者が情報を提供しているのは確かなようだ。
投書に記されている内容は事実なのか。西郷村の同法人本部を訪ね、取材を申し込んだところ、同法人事務局経営管理部の田﨑吾部長が対応し、次のように説明した。
「虐待が疑われる事案が発生していたのは事実で、FAX送信票も私が作成して送付したものです。現在関係機関と連携して調査・確認作業を進めており、現時点で詳細を話すのは控えさせていただきます。飲み会は12月中に開催しましたが、全員参加というわけではなく、一部職員が参加しました」
西郷村にも確認したところ、健康推進課の担当者が「警察が捜査に入り、調査中の案件です。村としても動向を見守っている状況です」と説明した。同村では高齢者福祉の事案は健康推進課、障害者関連の事案は福祉課の管轄とのことなので、高齢者施設で起きた事案と推測できる。
令和5年度事業報告では、「虐待防止法に基づく防止策の徹底及び職員意識の醸成」に注力する方針が掲げられていたが、法人内の施設で虐待事案が発生していたとしたら、再発防止策は効果がなかったことになる。田﨑部長は「法人内に第三者委員会を設置して検証しており、県や関係する自治体(被害に遭ったけやき荘入所者の出身自治体)にも報告しています」と話したが、詳細について尋ねると「答える義務はない」と押し黙るばかりだった。
内部の情報が投書で外部(本誌編集部)に送られてくるということは内部で意見を交わし、改善するのが難しい組織になっているとも言える。再び虐待が疑われる事案が発生していたことを踏まえ、再発防止策が効果的に機能するのか、今後も注視していく必要があろう。
