同党県総支部は昨年2月23日付で設立された。福島市や郡山市ではなく、あえていわき市に事務所を設けた理由について、当時関係者は「復興最前線のいわき市を重点地区に位置付けているため」と強調していたが、わずか1年足らずで移転したことになる。
報道では《昨年11月の県議選でいわき市選挙区から候補者を擁立するため、総支部の住所を暫定的にいわき市に置いていた》(福島民報2月1日付)と、いつの間にか一時的に設置したことになっていた。
総支部長を務めるのは衆院議員の井上英孝氏(4期、大阪1区)、幹事長は元参院議員の山口和之氏。山口氏に事務所移転の狙いを質したところ、次のように答えた。
「大きな目標だった昨年秋の県議選で公認候補当選を果たすことができた。総支部の仕事は郡山にいる私が主に担っており、いわき市の事務所はあまり機能していなかったので、郡山市の私の事務所内に移転することにしたのです。ここを拠点に中通りや会津地方でも支持者を増やしていきたい」
昨年11月12日投開票の県議選いわき市選挙区(定数10)には元県議の鳥居作弥氏が同党公認で立候補し、6位で再選。県議会で同党初となる議席を確保した。続いて県内でのさらなる支持拡大を図るべく、事務所を郡山市にある山口氏個人の事務所に移転した、と。
新事務所は交通量の多い国道288号沿い、総合南東北総合病院の向かいにあり、外壁に維新の会のポスターが何枚も張られていた。スタッフが常駐しているわけではないようだが、以前の事務所は宿泊施設内にあり、電話対応や郵便物受け取りがメーンの機能だったというから、環境は改善されたと言えそう。
同党県総支部(福島維新の会)のホームページには「福島二十二策」として、「まずは、議員の身を切る改革」、「アクアマリンの入館料、半額」、「海洋放出の福島負担の軽減」、「福島医大、入学、授業料の減額」などの施策が掲げられている。
「健康増進、企業誘致、教育……福島を盛り上げるために取り組むべき課題はたくさんあります。福島県は保守層が強い土地柄だが、復興途上の本県こそ改革に向けた動きが活発化していくべき。簡単にはいかないですが、今後も人材発掘を継続していきます」(同)
今後注目されるのが9月のいわき市議選だ。山口氏は複数の人物に接触しており、公認候補を立てる準備を進めているという。
同党所属の県議である鳥居氏も「維新公認の議員の数が増えて骨格ができてくれば、浜通り全域に支持が広まっていく。さらに中通り・会津地方からも議員が誕生し、改革の波を一緒に作っていけることを期待しています」と意気込みを話した。
県議選では既存政党やベテラン議員の落選が目立った。自民党はただでさえ内閣支持率が低迷していた中で浮上した派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金問題により、完全に信頼を失っている状況。一方、批判票の受け皿となるはずの立憲民主党もいま一つ支持を伸ばせていない。こうした中で維新の会が浮動票の受け皿となれるのか。
事務所設置の本当の理由が後出しで出てきた点は若干気になるものの、今後は中通り・会津地方の市町村議員選挙などで維新の会公認候補の姿を見る機会が増えそうだ。