【エアレース】室屋義秀パイロット塾で3次試験実施

【エアレース】室屋義秀パイロット塾で3次試験実施

本誌7月号で、福島市に拠点を置くエアレースパイロット・室屋義秀さんが、次世代のエアレースパイロットを発掘する「RACE PILOT PROGRAM(レースパイロットプログラム)」をスタートさせたと報じた。8月には、福島市のEBM航空公園(ふくしまスカイパーク)で同プログラムの3次試験が行われた。

9月からいよいよ飛行訓練が開始

9月からいよいよ飛行訓練が開始
モーターグライダーに乗り込む候補生

室屋さんは飛行機レースの世界大会「レッドブル・エアレース・チャンピオン・ワールドシップ2017」でアジア人初の年間王者に輝いた実績を持つ。

 そんな室屋さんがこの春から始めたのが、エアレースパイロットとしての才能がある若者を発掘・育成するプロジェクト。通常、専門パイロット育成には10年かかるとされているところを5年でデビューさせようとする挑戦的な取り組みだ。対象年齢は16歳以上(今年9月30日現在)40歳未満。主催は室屋さんが所属する「LEXAS PATHFINDER AIR RACING」。

 4月29日のキャンプ1(1次試験)には室屋さんやエアレースを愛してやまない20~30代の男女32人が全国から集結、体力測定が行われ全員が候補生として合格した。

 続く6月10、11日のキャンプ2(2次試験)には18人が参加(14人は辞退)。パイロットに最低限求められる能力を測るため、体力測定10種目、ディベート、英会話試験が行われ、13人が合格した。

座学の様子
座学の様子

 キャンプ3(3次試験)は8月10日から3日間にわたり行われ、フライトシミュレーターを使った模擬飛行と、実際に空を飛ぶ飛行適正検査が実施された。

 初日、朝6時15分の集合時間に会場に来たのは8人で、5人が辞退した(音信不通の2人含む)。

 候補生たちは2人乗りのモーターグライダー(翼が長くエンジンを止めていても滑空できる)に乗り、それぞれ3回ずつ検査に挑んだ。

 候補生の半数は航空機の操縦が初めてで、1回目の飛行後は「思うように操縦できなかったが、第一歩としていい経験ができた」「景色が良くて最高の気分だった」と高揚しながらコメントする姿が見られた。

 最終日の同12日には、航空法などの座学が行われ、各候補生が先生役となる形で30分ずつ授業が行われ、聴講する候補生や同チームのスタッフらが疑問点を質問した。

 その後、3回のフライト内容や座学への取り組みに対する審査が行われた結果、総合得点(1万3000点)の60%を達成できなかった2人が脱落することに。その1人が本誌7月号記事に登場した、県内からの唯一の参加者・宮田翔さんで、候補者ら一人ひとりと握手をして部屋を去っていった。

 フライト審査には基本動作をチェックするための項目がいくつも設定され、操縦未経験者の「伸び率」なども考慮されていた。そこでうまく点数を伸ばせなかったのが、2人にとって〝敗因〟となった。

 ムードメーカーでもあった宮田さんら2人の脱落に静まり返る6人の候補者に対し、室屋さんは「プロの世界では、コンペティションやセレクションでこうした経験が増えてくる。この感情を大事にしてほしい」と語りかけた。

 キャンプ4(4次試験)は9月上旬からスタートし、同公園で毎週飛行訓練を実施する。4段階のフェーズが設けられ、それぞれで審査が行われて、基準を満たせなければその時点で脱落する。候補者は現在の仕事を休職するなどして福島市に生活拠点を移しながら訓練に取り組む。必要となる資格を取得し、いよいよ本格的にエアレースパイロットへの道を歩み出すことになる。

 今後への意気込みについて室屋さんはこのように話した。

室屋義秀さん
室屋義秀さん

 「(脱落した2人は)一般的に見て極めて優秀な候補生。世界を目指すパイロットを生み出すためのプログラムなのでこういう結果となったが、才能がないわけではない。それぞれ違った形でのフライト人生が待っていると思うので応援していきたい。9月からはいよいよ本格的な飛行訓練がこの場所で始まるので、候補生たちがどうやって成長してくれるか、楽しみです」

 過酷なサバイバル試験。果たして何人が福島市からエアレースパイロットとして羽ばたいていくのか。

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