【会津若松市】室井照平市長インタビュー(2024年)

【会津若松市】室井照平市長インタビュー(2024年)

経歴

むろい・しょうへい 1955年生まれ。東北大卒。会津若松市議2期、県議1期を経て、2011年8月の会津若松市長選で初当選。昨年7月の同市長選で4選。

 ――市役所新庁舎整備事業の進捗状況についてうかがいます。

 「市民生活を支える役割のほか、情報や防災の拠点となる予定です。2023年3月に着工し、これまで旧庁舎で基礎躯体工事や基礎免震改修工事、外壁改修などを実施しました。新庁舎で最上階となる7階までの躯体工事などを行っています。今後は、旧庁舎で壁や天井の仕上げなどの内部改修、新庁舎で低層階から内装やガラス・カーテンウォールの取り付けをはじめ、外装工事や外構工事に着手します。そのほか、庁舎南側道路の拡幅工事や雁木および駐車場整備工事も本格化しています」

 ――会津若松市歴史的風致維持向上計画が国の認定を受けました。

 「2021年度から計画策定を進め、昨年6月に認定を受けました。同計画では、歴史的建造物と地域の伝統的な活動を『歴史的風致』と認識し、市街地環境を向上させるとともに、次世代に継承することが主な狙いとなっています。文化財や景観・観光資源などの整備による地域活性化と郷土文化に対するシビックプライドの醸成が期待されます。

 この間、文化財、観光、まちづくり整備、都市計画(景観)などの関連部局で連携しながら歴史資源を生かした『まちづくり』を推進しています。PR活動として5種類の『歴まちカード(カード型パンフレット)』を発行したところ、約8000枚を配布するなど観光客からも好評を博しています。本庁舎旧館の保存工事も同計画に位置づけられています。今後は日新館天文台跡や鶴ヶ城の周辺整備などを鋭意進めていきます」

 ――5月20日には「ごみ緊急事態宣言」が発令されました。

 「会津若松地方広域市町村圏整備組合が整備する新ごみ焼却施設の処理能力は当初220㌧の計画でしたが、事業費の高騰や将来的な人口減少を踏まえ、持続可能なごみ処理体制構築の観点から、2019年に196㌧に変更しました。これに伴い同組合を構成する10市町村ではごみ排出量削減が至上命題になり、本市でも2020年3月にごみ減量実施計画を策定、2021年4月に一般廃棄物処理基本計画を改定しました。新ごみ焼却施設稼働予定の2026年3月まで、ごみ排出量を1日当たり82・1㌧まで減らすという重点目標を定めています。

 一方、本市の実情を見ると、昨年度の排出量は1日当たり98・2㌧(前年比5・8%減)で、重点目標達成にはさらに16・1%の削減が求められるという大変厳しい状況です。本市の1人1日当たりの生活系ごみ排出量は同規模自治体232団体中全国ワースト4位で、ごみが非常に多い現状にあります。衛生的な生活環境を維持するとともに、次世代の財政的負担を軽減するためにも、さらなるごみ排出量削減が必要との判断から、今般『ごみ緊急事態宣言』の発令に踏み切りました。

 同宣言においては、市民・事業者に向けて①家庭での生ゴミ減量、②家庭でのリユース、③家庭でのリサイクル、④事業所でのリサイクル、⑤事業所での食品ロス対策を柱とする5つの行動指針などを示しました。緊急減量期間は本年6~11月の6カ月間で、現在、9~11月までに排出される燃やせるごみの量を対前年比で12%以上削減することを目標に鋭意取り組んでいます。参考値として4~7月の3カ月平均の統計で7・4%削減されました。目標達成に向け市民・事業者の皆さまのご理解・ご協力をお願いいたします」

 ――観光庁の「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」に会津若松市・磐梯町・北塩原村3市町村が県内で唯一事業採択されました。

 「2023年度に会津磐梯エリアの自治体や関係事業者などとともに『会津磐梯スノーリゾート形成計画推進協議会』を設立し、特にインバウンドに対し、それぞれの持つ自然・歴史・文化などの地域資源を持ち寄り組み合わせることで、さらに地域の魅力を高め高付加価値化したコンテンツを創出し、誘客を図っています。本年度は、同協議会としてホームページを開設し、同エリアの魅力を広く海外に発信するとともに、スキー場と飲食店などが充実する本市を結ぶバスを運行します。

 また、会津若松観光ビューローと連携して、市内の居酒屋の楽しみ方を英語でコミカルに紹介する動画を公開しており、今後はインバウンド用の特別メニューなどを掲載したパンフレットも作成する予定です。

 同エリア全体で温泉や食、伝統文化などに触れる機会を幅広く提供し、主にオーストラリアなどのスキーヤーをターゲットに長期滞在とエリア内の周遊を促し、さらなる観光消費額の向上を図っていく考えです」

 ――新潟市とも観光振興に向けた協議会が設立されました。

 「新潟市とは水運を通じて古くから交流しており、現在では交通網も整備され、より身近な存在として相互交流が図られています。2012年には本市との『観光交流宣言』を調印し、広域観光誘客事業や台湾誘客事業などを連携して展開してきました。一方、コロナ禍以降の価値観の変化や旅行動態が多様化する中、持続可能な観光振興を推進するためには互いの地域資源の共有化による相乗効果を最大化させる必要があります。そのため、同市との連携をさらに発展させ、『新たな観光の時代』に対応した取り組みを進めるべく、昨年7月に観光振興に関する連携協定の締結を経て、3月に新たに協議会を設立、2025年大阪万博の開催を見据え、関西方面からの誘客の観点から両市共通の『発酵・醸造文化』を生かした旅行商品開発を検討しており、両地域から日本酒をはじめ100以上のコンテンツの掘り起こしを進めています。今後も両市に共通する文化や双方が持つ強みを生かしながらインバウンドも視野に入れた新たな魅力を創出していきたいと考えます。また、新潟県佐渡市とも新潟市同様に観光連携を強化している点も付言したいと思います」

 ――その他の重点事業について。

 「本市の人口は1995年の約13万7000人をピークに減少が続いています。この間、少子化・人口減少対策を最重点課題に位置づけ結婚・出産・子育て支援・定住・二地域居住の推進、若年層の地域内定着の促進など人口減少緩和対策を多岐にわたり取り組んでいます。3月には危機感とスピード感をもって少子化・人口減少対策を進めるため、『第3期まち・ひと・しごと創生総合戦略』を策定しました。また、昨年度に続きライフステージごとの支援策をパッケージングした『会津若松市暮らし応援ガイド』をあらゆる媒体や機会を通じて積極的に広報しています。少子化・人口減少対策には『特効薬』がありません。重層的かつきめ細かな対策を積み重ねることが大きな成果につながるものと確信しています」

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