【アレンザHD】浅倉俊一会長兼CEOインタビュー

【アレンザHD】浅倉俊一会長兼CEOインタビュー

 あさくら・しゅんいち 1950年生まれ。聖光学院高卒。76年に㈱アサクラ(現ダイユーエイト)創業。2019年4月、経営統合で設立されたアレンザホールディングスの社長となり、今年5月、会長兼CEOに就任した。

 ホームセンターのダイユーエイトなどを展開するアレンザホールディングス(福島市)は5月24日、定時株主総会と取締役会を開き、浅倉俊一社長が代表権のある会長兼最高経営責任者(CEO)に就き、後任にホームセンターバローの和賀登盛作氏が就任した。浅倉会長兼CEOに、現状や今後の見通しについて話を聞いた。

世代を担う人財を育てるのが私の役割

 ――3月にダイユーエイトの会長兼CEOに就き、5月にはアレンザホールディングスの会長兼CEOにも就任しました。

 「以前から70歳で後進に道を譲りたいと思っていましたが、コロナ禍で3年間先送りしている状況でした。アレンザホールディングスも今年で5年目となり、ちょうどいいタイミングだと考えました。次世代を担う人財を育てていくことが私の役割だと考えています」

 ――アレンザホールディングスの2023年2月期連結決算(収益認識を除外した数値ベース)は、営業収益1583億4900万円(前期比100・9%)、営業利益52億8200万円(同84・1%)、経常利益59億0600万円(同86・3%)、当期純利益27億円(同66・0%)で、増収減益となりました。

 「増収になった要因は、新店9店舗出店による売り上げ増と、昨年3月に発生した福島県沖地震の特需などによりダイユーエイト既存店の売り上げが伸びたことです。

 減益となった要因は販管費の増加が大きかったです。前年同期比23億円増で、その内訳は水道光熱費6億円、人件費6億円、物流費用2億円、キャッシュレス・EC手数料2億円、その他新店の開業経費などとなっています。加えて、タイム社において、会計上の理由で繰延税金資産の取り崩しが約5億円発生したことも当期の利益に影響しました。

 光熱費高の影響は大きかったですが、照明の明るさを下げたり、LEDに換えたりして電気代の節約に取り組みました。また、減益となった一方で、粗利率は0・5%改善しました。これは売り上げにおけるプライベートブランド(PB)商品の割合比率が11%から13・5%に向上したためです」

 ――ダイユーエイトの既存店ベースで、客単価が前年同期比3・9%増加しましたが、来店客数が同3・6%減少したことにより、既存店売上高は0・1%の増加となりました。要因をお聞かせください。

 「客数の減少は〝コロナ特需〟の反動減によるものです。2022年2月期は〝巣ごもり需要〟によってマスクなどの衛生用品のほか、DIY用品、インテリアの売り上げが伸びていました。一方、客単価が増加したのは、原価の値上げ分を適正に売価へ反映してきた結果、物価上昇分がそのまま上乗せとなったためです」

エイトプロ出店を加速

 ――職人向けの工具などをそろえた「エイトプロ」の郡山安積店(郡山市)が新規オープンしました。福島店に次いでの出店となりました。

 「概ね計画通りに進捗しています。特に主力の工具部門が好調で、予想を上回る売り上げを上げています。プロショップはまだまだ伸びしろがあると感じています。

 今期は3店舗の新規出店を計画しており、そのうち岩沼店(宮城県岩沼市)と福島本内店(福島市)の2店舗はすでに具体的な物件を確保しています」

 ――新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に引き下げられました。ダイユーエイトはじめ、アレンザホールディングス傘下の店舗において、売れ筋商品・売り場作りなどに変化はありましたか。

 「マスクなど衛生用品の売り上げが大きく減少し、旅行などの需要回復に伴い来店客数が減少しています。今後はホームセンターの主力部門である園芸・植物での『地域一番店』を目指して、ドラッグストアやスーパーマーケットとの差別化を図っていきます。またDIY用品の強化や棚割り改革を行い、地域の需要にきめ細かく対応していきたいです」

 ――ペットワールドアミーゴは屋島店(香川県高松市)をはじめ、3店舗の出店がありました。今後の戦略をお聞かせください。

 「ペット事業は特需の反動減で一時低迷していましたが、その影響が昨年12月くらいに一巡し、それ以降は既存店ベースで前年並み、あるいは上回るところも出てきています。特に犬フード、猫フード、トリミング、ペットホテルが好調に推移しています」

 ――福島県経済の今後の展望について、考えをお聞かください。

 「東日本大震災・原発事故以降、だいぶ風評被害がありましたが、徐々に回復してきていると感じています。県内の農業や水産業は、高い品質と安全性があることから需要が高まりつつあります。観光業も、県内の温泉や自然景観などを生かした観光プランの開発によって回復傾向にあります。一方、流通・小売業では大手企業が活発に出店を進めており、商業施設やショッピングモールの開業が相次いでいます。

 今後は、地域特性を生かした商品を生み出したり、地域の需要にきめ細かく対応するなどして、地元消費者の支持を獲得することが求められるようになると思います。またIT技術を活用し、店舗とオンラインショップを組み合わせた販売形態を構築したり、店舗内でイベントなどを開くなどして、顧客獲得にも積極的に取り組む必要があるでしょう」

 ――ホールディングス発足4年を振り返って。

 「企業が統合することによって生まれる『シナジー効果』を求めて、商品開発や物流コスト節減、粗利率の改善に取り組んできました。特に粗利率の改善については、メーカー統一による原価価格引き下げ、PB商品開発の拡大を進めてきました。2023年2月期と、経営統合前の2019年2月期の粗利率の差異は、ダイユーエイトが+1・9%、タイムが+0・8%、ホームセンターバローが+2・3%です。今後もPB商品の拡大に取り組んでいきます」

 ――今期(2024年2月期)の経営方針として、商品力の向上、店舗力の向上、新規出店、差別化戦略、DX推進、SDGs推進、M&A戦略を掲げています。

 「『商品力の向上』として、今期PB商品売り上げ構成比18%の実現を目標に掲げています。具体的には、単品販売力の向上や定番棚割りの見直しを行っていきます。PB商品における海外開発の割合は7割を占めていましたが、コロナ後は3割まで下がり、粗利率が低下しました。海外開発の割合をコロナ前の基準まで引き上げていきたいですね。

 『店舗力の向上』として、ホームセンター11店舗、アミーゴ4店舗、MAX福島店の改装を実施し、14店舗の新規出店を計画しています」

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