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インタビュー

  • 【白河商工会議所】鈴木俊雄会頭

    【白河商工会議所】鈴木俊雄会頭インタビュー

    すずき・としお 1947年生まれ。国立平工業高等専門学校中退。アクティブワン代表取締役。2013年から白河商工会議所副会頭、昨年11月から現職。  白河商工会議所は昨秋の役員改選で、新会頭に鈴木俊雄氏(アクティブワン代表取締役)を選任した。鈴木氏は改選前まで副会頭を務めており、昇格という格好になる。就任間もない鈴木会頭に、今後の抱負や新型コロナウイルス感染症の会員事業所への影響、そのほかの課題などについて話を聞いた。  ――昨年11月に新会頭に就任しました。 「副会頭を9年間務めましたが、会頭という立場は階段を数段駆け上がったような大きな重みを感じています。会頭に就任してから数カ月が経過しましたが、会頭は全ての場面で表に立つ立場ですから、あらためて責任を実感しています。一方で副会頭を長らく経験してきたこともあり、他会議所等の人脈や経験もありますので、それを生かしながら進めていきたいと思います」 ――新型コロナの影響について。 「国内で感染予防を徹底しても海外から多くの観光客が移動すれば防ぎようがありません。そういった意味で集団免疫が出来るまでは仕方ないと感じています。スペイン風邪など、いままでの感染症の歴史を見ると、終息までに3年程度を要しています。しかもスペイン風邪の流行時はワクチンがありませんでした。それにもかかわらず3年で終息しています。今回は、ワクチンを接種して感染のスピードを緩やかにしつつも、結果的に3年が経過しています。集団免疫が出来つつありますが、それが出来上がるまでは感染が広がるのはやむを得ないと思います。ワクチンを接種し、重症化リスクを下げていくことで、積極的に経済活動を再開させていくべきだと思います。 そのためにも、まちなかの賑わいづくりに欠かせない事業所支援は必要です。会議所としても県や市に働きかけ様々な支援策を講じています。最近では、当会議所と大信・表郷・ひがし商工会が市の委託事業により『しらかわ生活応援クーポン』を配布しました。これは250円クーポンが12枚つづり(3000円分)になったもので、500円以上の買い物や飲食で使用でき、市民の皆さんにも好評を得ています。 それでも県内は震災復興が8合目を迎えた矢先で、加えて一昨年、昨年と大きな地震が発生し、被害を受けた事業所も多いのが現状です。そのため、こういった支援策を講じても、コロナ禍で3年が経過したことで飲食店をはじめとする小規模・中小企業事業者の多くは、限界を迎えています。加えて、今後、コロナウイルス支援対策で受けた融資制度の返済が始まればさらに苦しい状況に立たされます。国では返済期間の延長を考えてくれていますが、もともとあった後継者問題や、ロシアのウクライナへの侵略戦争に伴う影響、急激な円安による諸物価の高騰といった問題も出てきています。 会議所としては、先ほど話したクーポン事業等をはじめ、職員による補助金申請サポートといった支援策を講じているものの、会議所単独で行えることには限界がありますから、国や県にはさらなる支援策の拡充を望みたいと思います。 そんな中、国では防衛費の増額による増税やプライマリーバランスを黒字化するといった報道が出ていますが、いまこそ経済支援に目を向けるべきだと思います」 市街地活性化に努める  ――白河だるま市が今年は通常開催されるなど、コロナ対策によって中止していたイベント等も再開しつつあります。 「だるま市は3年振りに開催されることになったほか、イベント等も再開され、今後の経済活動の活性化には期待したいと思います。一方で、伝統的な祭りなどはコロナ禍によって人材や資金不足に陥っています。今後はそういった祭りを観光資源として生かせないか、議論していきたいと思います」 ――国道294号バイパスが間もなく全線開通を迎えます。利便性が向上する一方で、中心市街地への影響が懸念されます。 「今回のバイパス開通は会議所としても何度となく要望してきたものです。東北自動車道白河スマートICから市内に入り、国道289号まで一直線で行けるため、慢性的だった交通渋滞の解消、商工業の物流面、観光面に与える影響は大きく、期待を寄せています。今後この道路をどう生かしていくべきか問われると思います。 白河市や西白河・東白川地域等を加えた県南地域の人口は約13・5万人ですが、製造品出荷額等は約9380億円で県内ではいわき地域とほぼ一緒です。いわき市の人口は33万人以上と県内でも大きな都市ですが、その地域と製造品出荷額等が同じということはそれだけ白河地域にまだポテンシャルがある証拠だと思います。とはいえ、管内事業所は人材不足に苦しんでいます。そのためには他地域から人材を集める必要があり、寮などの整備議論も進んでいます。半面、若者がそういった企業に就職するため、地元の商店街や農家では後継者問題を抱えているのが現状です。そういったバランスを見ていかないとまちづくりはうまくいかないと思います。 一方で、田町や横町などの商店街はバイパス開通によってすでに影響を受け、さらにストロー現象の影響も懸念されます。また、本町地域には銀行の白河支店がありますが、二年後には、店舗を閉めて郊外に新たな店舗を建設します。旧店舗の利活用を含めて中心市街地活性化を進めていきたいと思います。 まちなかの事業者は高齢化が進んでいます。空き店舗になった建物は相続などが発生し所有権などの問題があるだけでなく、空き店舗とは言っても、併設する住宅部分には住民が住んでいるなど、空き店舗の有効活用は簡単ではありません。それでも、楽市白河が手掛けている賃貸マンション『レジデンス楽市』は好評で、現在は満室になっていることからも分かるように、街なかで暮らしたいと思う住民もいます。確かに白河駅まで徒歩3分で、買い物などにも不自由しません。医療体制も充実しており、運転免許返納後は街なかに住みたいと思う高齢者が増加するかもしれません。そういう意味では、いままでの考え方ではなく、環境を整えつつ歴史と文化の香りがする中心市街地に住んでみたいと思われる街にしていくべきだと思っています。市でも歴史的風致維持向上計画を立案し、古い歴史的建造物を保存し利活用していく考えです」 ――今後の抱負。 「白河市は県南地域の中核都市と言われますが、県内の7つの生活圏の一つとして、今後どのように成長していくかということを考えながら職務に当たっていきたいと思います。とはいえ、私一人で出来ることには限りがありますから、会議所役員の皆さんや職員と一緒になって取り組んでいきたいと思います」 白河商工会議所のホームページ 掲載号:政経東北【2023年2月号】

  • 【星北斗】参議院議員

    【星北斗】参議院議員インタビュー

    ほし・ほくと 1964年郡山市生まれ。安積高、東邦大医学部卒。医師。医系技官として旧厚生省に入省。退官後の現在、星総合病院理事長、県医師会副会長を務める。  昨年7月の参議院選挙福島県選挙区で初当選した星北斗氏(58、自民)は医師であり、病院経営者である立場から新型コロナウイルスの出口戦略を描き、政策に反映させようと奔走している。だが、内閣支持率は低迷しているのが現状だ。岸田文雄政権に苦難が待ち構える中、与党の一員として政権運営をどう捉えるのか。単刀直入に聞いた。  ――あらためて、初当選を果たした選挙戦を振り返ってどのような思いですか。 「大きく感じたことが三つあります。一つ目は『福島県は本当に広いんだなあ』ということ。二つ目は自分が身を置く医療界というのは、数ある業界の中の一つに過ぎないのだということ。農林水産業、商工業含めてあらゆる方々が苦心されているのを目の当たりにして感じました。三つ目は希望の持てる発見ですが、小さな町村の首長が元気で積極的ということ。それぞれの地域が独自性を打ち出し、魅力的な場所にしようと努力されています。広い県内を回り、そのことを強く認識しました。 参議院議員としてさまざまな立場の声を聞き、国政に反映させる責任は非常に重いですが、同時にやりがいを感じています」 ――新型コロナウイルス感染拡大が依然収束しませんが、今後の対応と出口戦略についてうかがいます。 「新型コロナウイルスはBA・5に変異が進み非常に感染しやすくなっています。ただ、ワクチン接種と治療薬の環境は整ってきています。あとは重症化対応のために医療をどう集約するかでしょう。政治判断や法の整備が必要になると思います。一般医療への影響を防ぐためにどうするか、出口戦略を今年度中に見いださなくてはなりません。 感染拡大の真っ只中に出口戦略を大々的に訴えるのはいかがなものかとの指摘もありますが、今真剣に考えておかなければなりません。感染が落ち着いてからだと、どうしても希望的観測が頭をよぎるからです。 2類相当から5類に変える場合には、国が一方的に決めるだけではだめです。国民が『これならいける』と納得する安心領域に入らないといけません。経済との天秤にかけるのではなく、自分の生活の中で新型コロナを5類の感染症として受け入れられるかどうか。そうでなければ出口は見えないと思います。 一般医療に感染を持ち込まないため、既にある発熱外来のような仕組みは5類になったとしても続けていく必要があるでしょう。新型コロナへの感染が疑われたら医療にアクセスできる仕組みはできています。環境が整っていれば『インフルエンザと同等』とあえて強弁しなくてもいいのではと思います。 5類になれば新型コロナの治療費や検査費が自己負担になることについては『自分を守るための出費』という考えが国民の間に一定程度浸透していると思います。例えばインフルエンザのワクチンは、重症化のリスクがある高齢者や子ども、あるいはエッセンシャルワーカーの方は接種するという考え方が定着しています。新型コロナのワクチンも全国民ということではなく、必要な方が必要に応じて接種する方向に徐々に変わっていくと見ています。 一方、自己負担についても全額負担してもらうのか、国が一部を補助するのかという方法論は検討の余地があります。補助の割合も半額なのか、2、3割なのかといった議論が必要で、国民の納得が得られる形にしなければなりません。治療費の補助は上限を決めるが、薬は無料といった柔軟策もあり得るでしょう。丁寧な議論を経ず、単に2類相当から5類に下げるだけではハレーションは大きくなると思います。国として丁寧な制度設計と準備、広報が必要です」 ――東京電力福島第一原発で増え続けるトリチウムなどを含んだALPS処理水の海洋放出をめぐり、安全性への懸念や風評被害を心配する声が未だに後を絶ちません。 「私は、科学的安全性に対する懸念はないと思っています。ただし、風評はどこまで行ってもなくなりません。漁業者らのために買い上げや基金を整えるほかに、多くの方々の意識を変えていく取り組みが必須です。そのためには、多くの方に福島第一原発を訪れてほしいと思います。敷地内に林立する大量の処理水タンクは、帰還が進む地域に暗い影を落としています。タンクの撤去なくして復興はないと思います。これだけのタンクをこのままにしておいていいのかという視点が必要です。 少なくとも、科学的安全性を私たち県民が受け入れなければ海外の人たちが納得しません。安全性だけで物事が動くとは思いませんし、漁業者の方々の心配する気持ちも分かります。ただ、自信を持って県産品を輸出するためには、国は手間と時間を惜しんではいけないと思います」 ――岸田内閣の支持率が低迷しています。とりわけ昨年末に浮上した防衛戦略と、それに伴う増税の考え方には多くの批判が上がりました。 「言葉を選ばずに言うと、私は自民党・岸田内閣に対する期待の大きさの裏返しと捉えています。事実、自民党の支持率自体は下がっていません。ウクライナ侵攻や台湾有事への懸念などを受け、防衛費増加の考え方は国民的コンセンサスが得られつつありました。そうした中で浮上した増税について、まだまだ国民の理解が進んでいないのであれば、それは説明不足だったという批判は真摯に受け入れなければなりません。ただ旧統一教会問題に関しても、熱心に野党との協議を重ね、100点とは言えなくてもスピーディーに解決への道筋を付けました。国会の短期決戦の中で岸田首相は並々ならぬ決意があったと思います。その過程で避けては通れぬ増税の話が出たので、期待がマイナスに変わったのではないでしょうか。 防衛費のために国債を発行し、将来世代にツケを回すのは正しい判断ではありません。それをしないための増税です。復興特別所得税の一部が充てられる点についても、内実は復興の財源が減るわけでなく『切り捨て』ではありません。説明を尽くしていくしかないでしょう。おそらく、衆院選後に発表するのは国民を欺くようで、岸田首相はできなかったのだと思います。真面目さの表れと捉えています」 ――今後の抱負を。 「5年半後の参院選で圧倒的に勝つ、これに尽きます。勝つことが目的ではありません。得票数・得票率は選んでくれた方に対する責任をどう果たしたかが表れる指標になるからです。有権者の方から『星北斗にもう一回やらしてみっぺ』と言われるように、何ができるかを常に考えていきます。  自民党は水平な組織です。1期生だろうが参議院議員だろうが、現場の実情に詳しく、アイデアがあれば政策に反映してくれます。そういう党の環境を最大限活用します。任期の6年間は第2期復興・創生期間の折り返しです。震災・原発事故で避難された皆さんが帰ってこられるまち、住みよいまちにするため首長や地元の方々と取り組んでいきます。次の選挙で相手陣営に『あいつには勝てない』と言われるような、替えの利かない国会議員を目指します」 星北斗参議院議員のホームページ 掲載号:政経東北【2023年2月号】

  • 【亀岡偉民】衆議院議員

    【亀岡偉民】衆議院議員インタビュー

    かめおか・よしたみ 1955年生まれ。作新学院高、早稲田大卒。2005年の衆院選で初当選、現在5期目。この間、復興大臣政務官、衆院文部科学委員長、文部科学副大臣、復興副大臣などを歴任。現在、衆院拉致問題特別委員長を務める。  福島県の衆院小選挙区は5から4に減る。現1区の地盤が分断される亀岡偉民衆院議員(67、自民、比例東北)は「1票の格差」という人口を尺度にした考え方が都市と地方の格差をより広げていると問題視する。また、岸田文雄首相が訴える企業への賃上げ要請には、大都市と地方の経済格差是正の視点が必要と注文を付ける。  ――小選挙区の「10増10減」が行われました。亀岡議員が地盤とする福島1区は新たに福島市、伊達市、二本松市、伊達郡、安達郡に改定されました。影響を受ける議員としての見解をうかがいます。 「国会議員の意見をもっと聞くべきです。審議会が勝手に決めればいいというものではないですし、人口ベースで形式的に決めればいいというものでもありません。そもそも私は『1票の格差』という考えが、都市と地方の均衡の観点から間違っていると思います。『違憲状態』とされていますが、ある意味では地方の実情に合わせて憲法改正が必要になってきたのではないかと思います。地方のために『人口ベースの格差』という考えをなくすべきです」 ――新1区の支部長について、地元は亀岡議員を推薦し、自民党本部は「保留」としました。 「比例で2回復活したことを考えなければいけないのは確かだとしても、地元の方々の応援を受け、10万票以上を得て戦ってきました。『保留』という決定について、党執行部との協議は全然ありませんでした。県連から推薦が上がれば通常は公認されますが、おかしな話になっています。結論がいつになるか知りません。一生懸命地元の皆さんとやってきて支部長に認めないというのはあり得ないことと思っています。他県でも似たようなことが起きており、当該議員から反発が起きかねない状況です。一生懸命やってきた議員たちが自民党を離れる可能性すらあります」 注:2月10日、亀岡偉民氏が正式に新1区の支部長に就いた。 ――地元紙には、自民党本部が公認しなかった場合、無所属での立候補もあるという記事が載りました。 「出るに決まっています。我々はもともと自民党のために働いているわけではない。国民のために働いているんですから。その目的を達成するために、一緒に働く政党を自民党にしようと言っているだけです。勘違いしたら大変なことになります」 ――そのような中、現在描いている選挙戦略についてうかがいます。 「全く考えていません。支部長ではないので動けないのです。弊害ばかりです。どのような結果になろうとも、あとは有権者がどう判断するかです。ただ、選挙運動が上手いだけの人が勝つような社会ではどうしようもないと思います。私は30年以上政治の道を歩んできました。本当に国会議員に働いてほしかったら、働ける環境を作らないといけない。選挙運動ばかりやっていたら、政治家としての本来の仕事が何もできなくなってしまいます」 ――本県は震災・原発事故からの復興が道半ばです。一昨年2月、昨年3月には福島県沖地震が発生し、甚大な被害に見舞われました。 「福島県は多重災害に見舞われています。復旧・復興のために迅速に予算を確保する、これこそが国会議員の責務と奔走しました。激甚災害の指定を待っていたのでは遅いと考え、官邸や国交省と直接協議し、財務省には必要な予算をつけるよう強く働きかけました。『被災地の議員がやらなければ誰がやるんだ』という思いで仕事をしました。 県内の被災地は全て回りました。東日本大震災でも甚大な被害を受けたのに2年連続で大きな地震に見舞われ、とりわけ相馬地方は大変な状況でした。『補助金をもらって事業を続けており、借金の返済も残っているのでやめるにやめられない』と泣いている事業者の方もいました。被災者の置かれている状況を官邸や省庁は直視し、必要な支援策をさらに講じるべきです」 ――東京電力福島第一原発で増え続けるトリチウムなどを含んだALPS処理水の海洋放出をめぐり、安全性への懸念や風評被害を心配する声が後を絶ちません。 「私は、処理水タンクが存在すること自体が風評被害だと思っています。1000基以上のタンクを今後も並べたままで風評被害がなくなるかと言うとなくならないでしょう。決断の時期が来ているのは事実です。風評被害を絶対出さないようにしながら、危険性を煽る人たちには『落ち着いてくれ』と説得しなければなりません。世界で一番安心・安全な基準で海洋放出するのだから、それは認めてほしいとお願いしたい。理解を得て納得してもらうために努力を続けていくしかありません」 ――政府は防衛戦略の変更や装備の拡充を打ち出しています。 「ロシアによるウクライナ侵略を受け、国民の8割が防衛力を強化するべきだというアンケート結果をもとに政府は大きく舵を切ったのだと思います。敵基地攻撃力を有し『やられたらやり返す能力がある』ということを相手に示さないと、いいようにやられてしまいます。抑止力を持つことについては、納得してくれる国民は多いと思います」 ――防衛費増額の財源のうち、復興特別所得税の一部を事実上転用する形で財源を確保することに対して被災地から批判の声が上がっています。また、岸田内閣の支持率も低迷しています。 「2・1%の財源を1・1%にしたとしても、その分、税の徴収期間を延長するので内実は減りません。私たち被災地の議員はそこを理解したうえで同意しました。復興には長い時間を要するので、長い間財源が確保できることについて異論はありませんでした。 岸田首相は、支持率は下がってもやるべきことはやっている、国民はそう評価していると私は捉えています。岸田首相は物価・燃料・電気代高騰対策など必要な政策を迅速に打ち出し、国民の声に真摯に答えようとしていますが、これに対する野党の煽りと一部のマスコミ報道でマイナス評価につながっているのではないでしょうか」 ――最後に、有権者へのメッセージをお願いします。 「岸田首相は企業に対し賃上げを要請していますが、地方では人手不足に拍車がかかると懸念しています。首都圏で時給が上がったおかげで、地方から人材が流出しているからです。給料を上げるのはいいことですが、上げたくても上げられない地方の中小企業にとっては中央との格差が広がる一方です。大企業なら、首相から上げてほしいと言われれば上げられるでしょう。では、その分のしわ寄せがどこに行くかというと、地方の下請け企業に来る可能性があります。人手不足は進んでいるのに中小企業の給料は上がらない、こうした状況を解消しなければなりません。岸田内閣には都市と地方の格差を真剣に考えてほしい。 要するに衆院区割りと一緒です。『1票の格差』を解消すると言いながら、逆に都市と地方の格差を助長している。均衡な発展のため大都市中心主義の生活を是正し、どんな山の中にいても平等な生活ができる社会にしなければなりません。そのために私は今後も尽力していきます」 【亀岡偉民】衆議院議員のホームページ 掲載号:政経東北【2023年2月号】

  • 【相馬商工会議所】草野清貴会頭

    【相馬商工会議所】草野清貴会頭インタビュー

     くさの・きよたか 1946年生まれ。東京電機大卒。草野建設代表取締役会長。2013年から相馬商工会議所常議員を務め、2016年11月から会頭。現在3期目。  昨年秋、全国の商工会議所で役員の一斉改選があり、相馬商工会議所は草野清貴会頭(草野建設代表取締役会長)の続投が決まった。3期目の任期をスタートさせた草野会頭に、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う会員事業所への影響や、昨年3月の福島県沖地震からの復旧状況などについて話を聞いた。  ――3期目がスタートしました。 「東日本大震災以降も度重なる災害で大きな被害を受け、旅館などでは未だ再開できていないところもあります。加えて、コロナ禍に伴う消費低迷やエネルギー価格・資材高騰により、経済環境は悪化し各事業所の業績はますます低下しています。そうした中、会頭に再任したのは非常に身の引き締まる思いです。今後も職員と一緒に会員が少しでも元気を取り戻せるよう個々の課題に寄り添いながら重責を全うしていきたいと思います」 ――昨年3月に福島県沖を震源とする地震が発生しました。 「被害額は合計約81億円で、会員事業所93%に何らかの被害がありました。2021年2月の地震と比較すると5倍の被害額です。会議所では、直ちにグループ補助金適用の要望を行い、制度適用に至りました。ただ、2021年2月の地震でも申請している事業所が多く、職員も申請手続き支援を行いましたが、複雑な作業となりました。現時点で施設復旧のための見積金額は約91億円、うち補助金申請金額は約79億円となっています。一方で、二重の借金を抱えることになるところが多く、後継者問題もあって再開をためらう事業所が多いのが現状です。そんな中、市内に一軒だけあった豆腐店が震災の影響で閉店してしまい非常に残念です。宿泊施設は、再開を決めたものの、人手不足や資材調達遅延の影響もあり、まだ着工になっていない事業所もあります。県内では宿泊割引などが行われていますが、市内の事業所はそういった経緯から参画できなかったところも多くあるため、継続して宿泊割引支援を行ってほしいと思います」 ――コロナに加え、円高や物価高など厳しい状況が続いています。 「東日本大震災、新型コロナ、福島県沖地震など、際限なく苦境に立たされながら必死に営業努力を続ける管内事業所には敬意を表したいと思います。会議所としても、少しでも会員事業所のお役に立てるよう職員に呼び掛けています。 新型コロナに関しては、国の方針は新たな行動制限を行わず、感染拡大防止と社会経済活動両立を図る、まさにウィズコロナ社会となり、一定の安堵感はあるものの、会員事業所は依然として減収・減益の中、厳しい状況下に置かれています。 加えて円安や物価高の状況で、会員事業所の多くから『エネルギー価格や原材料価格高騰に対する価格転嫁ができていないため利益を見いだせない』との声も聞かれます。そのため、賃上げの意思はあるものの、対応できていない状況にあります。一方で、価格転嫁した事業所は新たなサービスや付加価値を持って対応を始めているところもあります。 また、誘致企業の多くは、コロナ禍により人員削減し、その後、再度人員募集を行っても人員が集まらない状況にあり、慢性的な人手不足が続いています。さらに、ここに来て世界情勢の影響を直で受けている企業も多くあり、企業努力では解決できない状況も生じています。足腰の弱い小規模事業所の中には、後継者不足もあって、廃業を検討しているところも少なくありません」 ――国や県に要望したいことは。 「コロナ禍に加え、二度の地震被害、さらには円安や物価高騰が続く中、今後も景気が厳しさを増すことが予想されます。そんな中で、国債を発行して防衛費を増額する案が出ていますが、社会保障や景気回復のための予算投下を優先させるべきと思います。また、これは県にも要望したいのですが、燃料費高騰に対する中小企業への支援措置の拡充をさらに進めてほしいと思います。原発処理水の海洋放出に関しては、海を生かした観光を進めているものの、未だに海産物の価格が戻らない中、さらなる風評被害につながることを懸念しています。そういった面では風評被害対策にしっかり取り組んでほしいと思います」 トラフグを新名物に  ――観光協会長も兼任しています。 「浜の駅松川浦には多くの観光客に訪れていただいています。今年は道の駅そうまもリニューアルオープンしました。また、昨年は新たに尾浜にビーチバレーボール場がオープンしたほか、サーフィンスポットとしても注目され、スポーツ目的で相馬に訪れる方が増加しています。最近は天然トラフグの水揚げが急増し、昨年は30㌧と過去最高となりました。新たな常磐もの『福とら』として売り出そうと『相馬市福とら利用促進協議会』を立ち上げ、PRに努めたことで、仙台やいわきなどからフグを目当てに訪れる観光客が増加しています。昨年は本場・下関の関係者を招き、指導を受けながら相馬産のフグを召し上がっていただきましたが、下関の関係者からも『下関産フグより一回り大きい』と太鼓判をいただきました。フグと言えば西の下関、東の相馬と呼ばれるようにしたいと思います。 また、最近は健康志向も重なりアオサノリの評判が上々です。加工品やアオサノリを使用したラーメン、そばなどといった開発も進み、地元米を使用した日本酒『夢そうま』とアオサノリをセットにした贈答品も人気があります。先日も宮城県に視察に行きましたが、缶詰などの加工品開発が進んでいました。県内でもいわきにはさんまのみりん干しといった加工品が多くありますが、相馬市の場合は加工品はあまり多くありませんでした。これまでは新鮮な海産物を首都圏で販売するという考えでしたが、どうしても生ものだけに頼ると飛躍できないと思います。今後も新たな加工品開発に力を入れ、それを観光に結び付けたいと思っています。相馬を訪れた観光客がお土産として加工品を購入し、地元企業も潤うという好循環を生み出したいと思っています。 また、最近はクルーズ船が相馬に停泊しています。東北中央道ができたことでクルーズ船の乗客が福島や米沢に行くコースも計画されているので、さらに福島や米沢との連携を強化していきたいと思います。ほかにも、海だけでなく城下町ならではの歴史や文化もありますから、海と歴史・文化を織り交ぜた観光開発も進めていきたいと思います」 ――今後の抱負を。 「度重なる震災やコロナ禍等により、中小企業や小規模事業所は未曾有の影響を受け、厳しい状況にあります。経営者の心が折れることなく、今後も事業継続に希望を持つことができるよう、職員一丸となって取り組んでいきたいと思います」 相馬商工会議所のホームページ 掲載号:政経東北【2023年2月号】

  • 【棚倉町】湯座一平町長

    【棚倉町】湯座一平町長インタビュー

    子育て・教育環境の充実と健康寿命の延伸を図る ゆざ・いっぺい 1961年生まれ。福島大経済学部卒。2012年9月の棚倉町長選で初当選。2020年8月の町長選で無投票での3選を果たした。  ――町長選で掲げた公約の進捗状況についてうかがいます。 「教育分野については、課題解決能力やコミュニケーション能力など〝生き抜く力〟の養成を主眼に置いた『キャリア教育』を推進しており、文部科学省からも高い評価を得ています。今後は、幼・保、小、中、高のトータルな連携強化を図りながら、さらなる充実を目指します。また、自分で学習目標を立て、その習熟度を可視化する『ロイロノート』を導入し、学力向上につなげていきます。 まちづくりについては、『棚倉町歴史的風致維持向上計画』に基づき、メーン通り一帯の街路灯の改修、棚倉城跡周辺道路整備や城下道路整備に取り組んでいます。 健康づくりについては、健康長寿のポイントが食事・運動・社会参加であるという観点から、地域サロンを拠点に、本町が委嘱する健康アンバサダーのもと、健康づくりの指導をはじめ、運動や生きがい活動などを展開しています。 デジタル化の推進については、この間、町税、水道料金、手数料などの電子決済が可能になる一方、今後は医療補助、水道の使用、健康診断等の申請業務のオンライン化を進めていきます」 ――新型コロナウイルス感染症や物価高騰に対する町独自の対策についてうかがいます。 「これまで、生活支援を図るとともに消費喚起を促す狙いから、『たなぐら応援クーポン券』を2回発行(1回目5000円、2回目1万円)しています。これまで約9割が使用されるなど、地域経済活性化をはじめ生活支援に寄与していると考えます。物価高騰対策としては、老人福祉施設や障がい者施設に対して光熱費などの助成事業を実施しています」 ――2023年度の重点事業について。 「教育・文化関連に関しては、新たに高校生を対象にした支援策として手当を給付するほか、小中学校施設整備事業を推進し、子育て・教育環境の充実を図ります。また、棚倉町文化センターの大規模改修や棚倉運動広場夜間照明灯設置工事を実施し、スポーツ・文化・芸術活動の発展に努めます。 福祉に関しては、新たに妊産婦医療費の無償化や健康づくり推進事業を実施し、疾病の早期発見・早期治療の促進や健康寿命の延伸を図っていきます。 事業所支援に関しては、起業活動の支援はもちろん、既存企業においても新たな事業への挑戦、本町への拠点機能の移転、サテライトの開設などを後押しすべく、『きぎょう支援』事業を展開し産業の振興を図っていく所存です」 棚倉町のホームページ 掲載号:政経東北【2023年2月号】

  • 長谷川浩一建設業協会会長

    【福島県建設業協会】長谷川浩一会長インタビュー

    県土と業界の発展に貢献する はせがわ・こういち 1962年2月生まれ。法政大卒。堀江工業社長。福島県建設業協会副会長を経て、2019年5月から現職。  ――最初に新年の抱負を。 「昨年は、国道118号鳳坂トンネルや国道252号本名バイパスの開通、令和元年東日本台風で被災した河川の改修など、本県の復旧・復興に向けたプロジェクトが大きく前進した年でありました。 一方で、3月の福島県沖地震や8月の豪雨災害、年末の鳥インフルエンザ発生など度重なる災害に見舞われた年でもありました。そうした中でも、会員企業が一致団結し災害対応等に尽力した結果、県民生活の安全安心の確保に努めることができたと考えています。 本年は、昨年末に成立した補正予算により、防災・減災、国土強靭化関連工事が相次いで発注される見込みであることに加え、復興関連の道路整備、令和元年東日本台風関連の河川整備も大詰めを迎えることから、会員企業の総力を挙げて施工体制を強化し、円滑な受注や工事進捗を図ることで県土の発展に貢献していきたいと考えています」 ――コロナ禍、物価高など中小企業を取り巻く環境は厳しいものとなっていますが、県内の建設業界においてはいかがでしょうか。 「長引く新型コロナウイルス感染症の影響に加え、ロシアのウクライナ侵攻以来、原油及び原材料価格が高騰し、世界経済に大きな影響が生じています。 本県建設業界においても、生コンクリートやアスファルト合材及び鋼材など各種建設資材の値上がりに伴うコスト増の影響により、民間建築を中心に工事の中止や先送りが相次ぎ厳しい受注状況が続いています。加えて経費の増大に伴う価格転嫁が困難なことから会員企業の経営環境にも大きな影響を及ぼしています」 ――2023年度の重点事業について。 「2024年4月から、建設業においても時間外労働時間の罰則付上限規制が適用となります。今後は働き方改革への取り組みがより重要になります。当協会としては、発注者の協力を得ながら遠隔臨場などICTを活用した工事管理の効率化を進めるとともに、協会内のワーキンググループにおいて好事例の情報共有を図るなど、各会員企業における働き方改革の取り組みを積極的に支援していきたいと考えています。 建設業は高齢化が進んでおり、担い手の確保が長年の課題となっています。若者に建設業を選んでもらうためには、建設業界全体で週休2日の実現や他業種に見劣りしない収入も必要です。 当協会としては、地域の暮らしを支えるやりがいのある仕事として、一層の労働環境の改善や、ものづくりの楽しさ、『地域の守り手』としての活躍を伝える広報などに取り組んでいきたいと考えています」 福島県建設業協会のホームページ 掲載号:政経東北【2023年2月号】

  • 【鏡石町】木賊正男町長

    【鏡石町】木賊正男町長インタビュー

    町民と共に個性ある地域づくりを進めていく とくさ・まさお 1956年11月生まれ。須賀川高卒。鏡石町総務課長、教育課長兼公民館長、税務町民課長などを歴任。2022年5月の町長選で無投票初当選。  ──町長就任から半年以上経過しました。まずは現在の率直な思いをお聞かせください。 「前町長から引き継いだ事業に無我夢中で取り組み、町民の皆さまの幸せの実現のために奔走した半年間でした。 昨年は本町の町制施行60周年の節目であり、記念式典(10月)をはじめ、全国田んぼアートサミット(7月)、鏡石駅伝・ロードレース大会(11月)、ふくしま駅伝(同)など多くのイベントが開催されました。 9月には就任後初めてとなる定例会の招集があり、主要な議題を無事に議決いただきました。本町出身の方で結成される『東京かがみいし会』の総会も3年ぶりに開催でき、さらに県選出国会議員の皆さまに本町の重点事業に関する要望活動を実施するなど、さまざまな活動に注力できたと考えています。 職員として勤めていた頃との景色の違いを強く感じています。町民の皆さまからの信頼に背くことなく町政に取り組む所存です」 ──物価高や燃料価格の高騰が続いていますが、町民への支援について。 「昨年7月に生活困窮者への支援として国・県の補助金を活用した定額給付を実施したほか、9月には施設園芸農家への燃料費一部助成を行いました。低所得者への影響を考慮して、定額給付金として一律5万円を支給しました。 加えて町内の中小企業・小規模事業者を対象に上限10万円の支援金を給付し、昨年12月には経済活性化策としてプレミアム商品券の第2弾を発行いたしました。プレミアム率は25%で、1万8000セットが完売し、総額9000万円分の経済効果が見込まれています。第1弾で約2億円の効果が得られたこともあり、年末年始に緊急的に実施しました。 新型コロナウイルス感染拡大による輸入飼料の高騰も課題です。畜産農家に対しては家畜一頭当たり2万円の支援金を給付するなど、営農継続のための補助金を給付する支援策を実施してきました」 ──今後の重点事業について。 「まずは昨年4月に策定された第六次総合計画を実現するため、各種事業を進めていくことが重要です。そうすることで、他の自治体と比べ個性ある地域が作られ、町民の皆さまにとって誇りの持てる自慢の町になっていくものと考えています。 今から40年前、鳥見山公園に唱歌『牧場の朝』の歌碑が建立されたのをきっかけに『牧場の朝』のまちづくりが始まりました。40年間のさまざまな事業を振り返りながら、個性ある地域づくりについて町民の皆さまと一緒に考えていきたいと思います」 鏡石町のホームページ 掲載号:政経東北【2023年2月号】

  • 【下郷町】星學町長インタビュー

    【下郷町】星學町長インタビュー

     ほし・まなぶ 1947年1月生まれ。日本大学東北工業高卒。下郷町建設課長、助役、副町長などを経て、2013年9月の町長選で初当選。2017年9月の町長選で再選、2021年9月の町長選で3選を果たした。  ――新型コロナウイルスの町内への影響と対策について。  「当町は大内宿や湯野上温泉に代表されるように県内有数の観光地があり、新型コロナウイルス感染症の影響は他市町村と比較しても大きいものがあります。今年度に入り、観光客数は増加傾向にあったものの、第8波の到来により、観光客数が減少し、地域経済の停滞が懸念されます。一般家庭においても、原油・物価の高騰もあり、収入の減少やそれに伴う個人消費の落ち込みが予想され、経済面・生活面の両方での対応が不可欠と考えています。  そこで町では、昨年11月の第2回臨時議会において、消費の下支えを通じた生活者の支援や地域経済の活性化を図ることを目的に、全ての町民を対象とした町内店舗で利用できる商品券を一人当たり1万円発行する『電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金』の予算を計上しました。さらには、電力・ガス・食料品等の価格高騰対策として、非課税世帯等1世帯当たり5万円を給付する『電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金』の予算を計上し、経済面・生活面の両方から住民の皆さまを支援していく所存です。  また、昨年12月より『Welcome しもごう ご褒美 宿プラン』を実施しており、こちらは対象となる町内の民宿・旅館で宿泊料金税込み5500円以上の利用に対して45%の割引を付与するなど、観光振興にも注力しており、町内経済の活性化を図ってまいります。  町内のワクチン接種率については、昨年12月2日時点で60歳以上の方々の4回目接種率が88・9%、75歳以上の方々については91・8%となっており、県の平均よりも上回っていると見ています。5回目接種も始まっているので、より多くの方々が接種を受けられるよう円滑に進めていく考えです」  ――今年度は第6次下郷町総合計画の3年目となっています。  「新型コロナウイルス感染症の影響により、各種イベントや式典等が中止となっておりますが、新型コロナウイルス感染症が終息し、人の流れが戻ってきたタイミングに備えて、観光資源の磨き上げと新たな素材の創出に取り組んでいきます。全国でも珍しい茅葺の駅舎である湯野上温泉駅は、多くの観光客が訪れることもあり、現在駅前広場の整備を進めており、今後、住民と観光客の交流の場となる観光産業の拠点としての役割が期待されています。また、紅葉シーズンに多くの観光客が訪れる観音沼森林公園においては、屋外で楽しめるイベントの創出と観光客の長期滞在化を目的に、ライトアップ事業を実施し、新型コロナウイルスの感染拡大のさなかにあっても、歩みを止めない、さらに町を発展させていくための施策を講じてまいります。新型コロナウイルス感染症が終息したあかつきには、第6次下郷町総合計画において目標に掲げた、観光入込客数230万人を達成すべく取り組んでまいります」 人口減対策に注力  ――2025年度の開通に向けて整備が進められている国道121号湯野上バイパス事業について、開通効果と今後の展望をうかがいます。  「会津縦貫南道路の開通により、町の空洞化を懸念される方もいらっしゃるかと思いますが、湯野上バイパスの整備事業によって町が活性化するチャンスであると私は捉えています。将来的に会津縦貫南道路、その先の栃木西部・会津南道路が開通することで、関東方面へのアクセスが向上し、観光客の皆さまには下郷町をもっと身近に感じていただける絶好のチャンスになると考えていますし、下郷町を訪れる観光客の増加も期待しています。  また、大内宿はゴールデンウイークや紅葉シーズンになると、国道121号の渋滞が目立つことが長年の課題でしたが、会津縦貫南道路の開通によって生活車両と観光車両が分散し、渋滞緩和につながると見込まれるため、多くの観光客の方々が利用しやすく、今までよりも魅力的な観光地と感じていただけるのではないかと考えています。  今後もさらに既存の観光資源の磨き上げや新たな素材の創出、観光資源のルート化に努め、観光客の皆さまを飽きさせない、また来たいと思っていただけるようなまちづくりを進めていく所存です。  さらに、会津縦貫南道路の開通によるアクセス向上は観光面だけでなく産業面にも大きく寄与するところなので、今後は積極的な企業誘致や工場立地を推し進めるほか、定住人口の増加にも役立てていきたい所存です。いずれにせよ、会津縦貫南道路の開通は本町のみならず会津地域全体に経済効果をもたらすことが期待されるため、早期開通に向けてこれからも国・県と連携を図ってまいります」  ――移住・定住政策は全国どの自治体でも喫緊の課題です。 「本町の人口は1955(昭和30)年の1万4979人をピークに、昨年4月時点で5231人まで減少しており、移住・定住政策は本町におきましても喫緊の課題となっています。本町は少子高齢化が著しく、若い世代の方々の移住・定住を推し進めることがまず重要であり、そのためには安心して子育てできる環境づくりが不可欠であると考えています。その一環として、子育て世代の負担軽減を図るため、子宝祝金や給食費の無償化などに取り組んでいます。  今年度からは、新婚生活応援のために結婚者1組につき10万円の『しもごろー商品券』を給付する結婚祝金事業や、独身男女の婚姻促進のために結婚マッチングシステム会員登録補助事業も実施しており、結婚から子育てへと繋げ、人口増加を目指す施策の充実を図っているところであります。  また、空き家・空き地バンク事業も展開しており、実際に制度を利用して移住した方々も増えてきているので、町内の空き家・空き地を解消するとともに定住人口増加へと繋げていきたい所存です」  ――今後の抱負について。  「まず一番は第6次総合計画の進行が重要で、諸所の課題解決に向けて着実に取り組んでいかなければなりませんし、私のスローガンでもある〝よりそう行政 挑戦する下郷〟の実現を目指します。これまで高齢者を対象にタクシー料金の一部助成や一人暮らしの高齢者の方々の生活の安全確保のために除雪作業の援助を行っているほか、学校給食や保育所の無償化という形で子育て世代への支援も並行しており、多くの町民に寄り添いながら、会津縦貫南道路の早期開通など新規事業の整備によって町内に新たな風を呼び込み、町政発展に努めてまいります」 下郷町のホームページ 掲載号:政経東北【2023年1月号】

  • 【湯川村】三澤豊隆村長インタビュー

    【湯川村】三澤豊隆村長インタビュー

    1949年生まれ。会津高校中退後、就農。湯川村議を連続4期務め、その間村議会議長などを歴任。2015年の村長選で初当選、現在2期目。  ――新型コロナウイルスの感染拡大による村内の影響についてうかがいます。  「このところ、子どもから親に感染する家庭内感染や高齢の感染者の死亡が目立っており、第8波を痛感しています。地域内連携やコミュニティーにも影を落としている状況です。一方で、規模縮小など制約はありますが、文化活動やイベントを段階的に再開し、にぎわいや活気を取り戻しつつあります」  ――新型コロナウイルス関連の村独自の支援策についてうかがいます。  「この間、コロナ禍により冷え込んだ地域経済の再生を図るべく、湯川村商工会と連携し、村民1人当たり5000円分の『あじさい商品券』を交付したのをはじめ、地元飲食店の利用促進を狙いとする『がんばる地元の飲食店応援券』、『ゆがわまいちゃん20%プレミアム商品券』など、消費刺激策を講じてきました。村民からも好評で一定の成果が挙がったと実感しています。併せて非農家世帯に対して1人当たり5㌔分の『お米券』を配布し家計の負担軽減を図りました」  ――本年度の重点事業について。  「1つは、本村の基幹産業である農業支援です。この間、コロナ禍の影響や米価下落など、ただでさえ厳しい環境にあった中、今年度は燃料、肥料、資材などの物価高騰が追い打ちをかけている状況です。村では農業経営の安定化を図るため、夏季に『湯川米生産意欲向上対策』として10㌃当たり4100円、秋季に『湯川村農家支援助成金』として10㌃当たり2500円を支給するなど対策を講じています。2つは、村とJA会津よつばとの共同出資による農業法人㈱会津湯川ファームを旗振り役とする大規模農業の振興です。現在の生産面積30㌶から50㌶まで拡大させる考えです。3つは、道の駅あいづ湯川・会津坂下における販売力向上とそれに伴う農業出荷量の維持です。現在、コメをメーンに魅力ある地元産品を提供していますが、今後は年間100万人を超える利用者をさらに取り込むため、商品開発や販売戦略の構築に努めていきます」  ――結びに抱負についてうかがいます。  「約1200年の歴史を誇る国宝・勝常寺を核とした、歴史が息づく村づくりに取り組みたいと考えます。現在、屋根の葺き替えが完了し、勝常地区の住民による『黒塀プロジェクト』、『角屋プロジェクト』の新設などにより、門前町としての景観や参道の整備が着実に進んでいます。今後も、村民とともに観光資源としての磨き上げに努め、道の駅との相乗効果が発揮できるよう魅力ある情報発信を展開していく考えです」  湯川村のホームページ 掲載号:政経東北【2023年1月号】

  • 【会津商工会議所】澁川惠男会頭インタビュー

    【会津若松商工会議所】澁川惠男会頭インタビュー

     しぶかわ・ともお 1947年生まれ。会津高、日大商学部卒。澁川問屋会長。会津若松商工会議所副会頭などを経て、2016年から現職。現在3期目。    澁川問屋会長の澁川惠男氏が会津若松商工会議所の会頭に再任され、3期目が始動した。経済は新型コロナウイルスによる打撃から回復傾向にあるが、円安、物価高、燃料高騰が企業の経営を圧迫。澁川氏は「全国旅行支援」の効果をより高めるため、観光のオフシーズンにも実施することを提言する。  ――会頭職3期目を迎えました。これまでを振り返っての感想をお聞かせください。  「2016年に初めて会頭に選任いただいた時から、長期的視野による『持続可能な地域の創生』をテーマに掲げ、2500会員の負託に応えるべく、地域経済発展の牽引役として全力で取り組んでまいりました。若者が暮らして楽しいまちづくりを目指す『市街地再開発事業』をはじめ、行政とともに実施した『プレミアム商品券事業』、国のコロナ対策に合わせた『独自の事業者支援制度』、正常な企業活動再開に向けた『コロナワクチン職域接種事業』など、数々のコロナ対策事業を実践し、これらの事業展開が会員の皆様から大きな支持を得ることにつながって、今回3期目の職責をお任せいただくことになったと受け止めております。気を引き締めて負託に応えられるよう努めてまいります」  ――新型コロナウイルスの第8波が到来しています。管内の経済状況を教えてください。  「日本商工会議所の11月調査によると、新型コロナによる経営への影響は、『続いている』とした回答がようやく6割を下回りました。インバウンド復活や全国旅行支援により活動回復が進み、業界は改善傾向にあります。ただ、感染拡大の兆候から消費マインドの低下を懸念する声もあります。  コロナ禍での忘年会シーズンは3度目となります。大半の飲食業にとって12月は最も売り上げが伸びる書き入れ時です。第8波の影響は懸念されますが、行動制限が緩和されていますので、客足回復の兆しが見られています。『コロナ禍前にはほど遠いが、前年よりは増えている』といった状況だと思います」  ――円安、物価高、燃料高騰が続いていますが、管内への影響について教えてください。  「物価高で仕入価格が上昇し、利幅が小さくなっていることに加え、電気代やガス代などの光熱費も上昇し、経営を圧迫しています。深刻なのは『儲けが出ない』ということです。全業種的にB tо Bにおけるコスト増加分の価格転嫁についても、なかなか進んでおりません。価格転嫁できた企業は1割にも満たず、約2割の企業では協議すらできていない状況です。  そのような中、公的資金のゼロゼロ融資が終了した一方、元本返済の据え置き期間が終わり、コロナ融資の返済が本格的に始まりました。金融機関では柔軟な対応をしていただいているようですが、資金繰りは厳しい見通しとなっています。  経済活動は正常化に向かっておりますが、経営課題は山積している状況ですので、政府の経済対策等をいち早く管内事業者に周知しながら、徹底した事業所支援を行っていきます」  ――10月より全国旅行支援が始まりました。観光業への影響はどうですか。  「確かに客足が回復する後押しになったと思います。ただ、その効果を問われると何と言っていいのか分かりません。もともと秋は観光シーズンであり、紅葉とJR只見線の再開通で、地元・東山温泉の予約状況は好調でした。そこに全国旅行支援が重なり、いわゆる予約の付け替え作業が発生しました。また、コロナ禍による感染防止対策として、食事会場へのパーテーション設置や入場人数の制限などにより、全体のキャパシティーが縮小している上、人手不足が深刻で、予約を受けきれないという売り上げ機会を逃す状況となっています。  支援は延長されるようですが、繁忙期ではなく、降雪後のパタッと客足が落ちる閑散期にこそ実施すべき施策だと思っています。  また、経済活動が正常化に向かう中、人手不足を訴える声は観光業以外にも多く聞かれます。解決策の一つとして、外国人の雇用が再び注目されていますので、会員向けの勉強会を開催していくことにしています」  ――JR只見線が全線再開通しました。反響はどうですか。  「只見線は鉄道と自然が織り成す風景が独特で、景色の良さを競うローカル線の人気投票で常に上位にランクインしています。そのため外国人観光客にとても人気で、特に台湾や中国、ベトナム、タイから多く来訪がありました。再開通は昨年10月1日でしたが、話題性に加え、紅葉や全国旅行支援などが重なり、座れないほどの混雑となりました。JR東日本は臨時列車の運行と増車を行っています。  只見町では、宿泊施設や飲食店の予約が取れないほどの活況ぶりで、金山、三島両町を流れる只見川での観光用渡し舟『霧幻峡の渡し』も予約でいっぱい、11月中旬になってようやく落ち着いたと聞きました。  沿線への波及効果に確かな手応えを感じています。ただ便数と乗車時間の関係からツアー商品がつくりにくい、冬はどうしても閑散期となってしまうなどおもてなしにロスが出ている実情があります。インバウンドに関しては、冬景色と只見線の競演で、日本らしい観光が提供できると期待しています。観光入込の平準化のためにも、県、沿線自治体、観光関係者が知恵を出し合いながら対策の検討を進めるしかないと思っています。  会津若松は只見線の起点であり、会津観光の玄関口です。日光、仙台、新潟からお越しになるケースも多く、これらの都市との連携は非常に重要であると思います。新潟県佐渡市が世界遺産登録を目指していることもあり、行政では相互誘客や広域的な観光周遊ルートの構築を目指しておりますので、商工会議所としても民間ならではの交流を進めていきたいと思っています」  ――今後の抱負をお聞かせください。  「市街地再開発事業への取り組みをより進めます。2020年に実施した市民アンケートの結果をもとに有識者による検討委員会を立ち上げ、市内5つの主要な土地の有効活用についてまとめました。昨年は『街なか再開発構想』として行政に提言しましたので、今年は実現に向けて不退転の決意で臨んでいきます。  事業所の変化を後押しします。ポストコロナ時代だからこそ、チャレンジが必要で、新たな事業計画策定などの支援業務が重要になってきます。管内商工業に明るい展望が見えるよう、意識改革を促しながら経済を牽引していく所存です」 会津商工会議所のホームページ 掲載号:政経東北【2023年1月号】

  • 【富岡町】山本育男町長インタビュー

    【富岡町】山本育男町長インタビュー

     1958年8月生まれ。原町高、東京農業大卒。町議を連続5期務め、副議長などを歴任。2021年7月の富岡町長選で初当選を果たした。  ――夜の森・大菅地区の特定復興再生拠点区域で、来春の避難指示解除に向けた準備が進められています。  「避難指示解除が現実的なものとなるまで長い年月を要しましたが、再び生活できる地域として生まれ変わろうとしているのは大変喜ばしいことです。本町では、故郷での生活を希望する方々が心地よく暮らしていける環境を整え、いつでも『おかえりなさい』と言える状況を築き上げていきます」  ――2021年、拠点区域外の地域に関しても「除染して希望するすべての住民が帰還できるよう2020年代をかけて避難指示の解除を進める」という政府方針が示されました。政府に求めることは。  「帰還困難区域を有する自治体の『再生を決してあきらめない』という気持ちと、団結した姿勢により実現した政府方針だと考えています。ただ、我々が求めているのはあくまで〝早期〟の帰還であり、町の全域除染です。現在の方針では帰還を望む人の家だけ除染されることになりますが、隣家の空間線量が高ければ意味がない。政府には住民の意向に沿った方針を示してほしいと思います」  ――「復興まちづくり」の見通しについて。  「将来を切り開くための基礎はできつつありますが、医療、福祉、教育、産業、絆の維持、住宅、移住促進など、取り組まなければならないことは多いです。希望と笑顔あふれるまちにするため、町民一人ひとりの声を丁寧に聞いて、着実に取り組んでいきます。今後はソフト事業に注力していく考えです。具体的には、元々住んでいた住民と、移住してきた方々をつなぐイベントを積極的に開き、交流を促していきます」  ――そのほか取り組んでいる重点事業は。  「短期的には、帰還者の多くが高齢者であることから、2022年開設した『共生型サポートセンター』を円滑に運営し、福祉の充実を図っていきます。一方で、子どもたちの健全育成を目的に造られた『富岡わんぱくパーク』を生かし、子どもの体力向上や運動不足の解消及び子育て世代の交流を促進していきます  中長期的には、人材育成・確保が重要になると考えているので、教育費用の無償化、移住者への住宅支援などに努めていきます」  ――今後の抱負。  「本町は全町避難した自治体なので、これから復興・再生していくにはかなりの労力・時間を要するものと考えています。それでも、将来を見据えた町政運営を進めていくのが我々の使命です。全国に避難している町民が少しでも早く故郷で生活したいと思える環境を整備していきます」 富岡町ホームページ 政経東北【2022年12月号】

  • 【福島商工会議所】渡邊博美会頭インタビュー

    【福島商工会議所】渡邊博美会頭インタビュー

     わたなべ・ひろみ 1946年生まれ。福島大学経済学部卒業後、福島ヤクルト販売入社。2012年に福島商工会議所副会頭。13年11月に会頭就任。現在4期目。  福島商工会議所は2022年11月、会頭に渡邊博美氏=福島ヤクルト販売会長=を再任し、新体制がスタートした。渡邊会頭は、企業や商店の足腰を強くするため力を注いでいくことを4期目の抱負に掲げる。人口減少とコロナ禍が重くのしかかる県内だが、県庁所在地の商工会議所として、駅前再開発をエンジンに街に賑わいを取り戻そうと模索している。  ――会頭4期目の任期が始まりました。抱負をお聞かせください。  「震災後の2013年に就任してから9年、無我夢中で取り組んできました。新型コロナの拡大は、ワクチンで一時は改善が進むも、変異株でまた感染が広がるといったように、影響がなくなったわけではありません。いかに拡大防止と経済を両立させていくかにかかっています。  新型コロナ禍で経済活性化には課題が残り、あらゆる取り組みを講じても効果は実感できるには至りませんでした。経済活性化のために引き続き自分が頑張らなければならないと会頭再任をお引き受けしました。  今期は一つ一つの企業や商店の足腰を強くしていくことに力を注ぎたいです。市、県、国は支援策を用意していますがそれは一過性に過ぎません。いずれは民間が自力で事業を継続し、地元に雇用を生むようにならないといけません。職員や会議所の議員らとこの意識を共有し、最大限の力を発揮していきます。  副会頭には、新たに東邦銀行専務の須藤英穂氏が加わりました。事業承継を控える企業もあり、足腰を強くするには金融が今まで以上に重要となります。東邦銀行さんにはコンサルタント役を期待しています。経済と金融機関が一体となり地元経済を支えることを意識した布陣です」  ――円安や物価高、燃料費高騰が深刻な問題となっています。  「企業は、材料費、光熱費、社用車の燃料代がかさみます。企業努力にも限界があります。何よりも人口減少が消費を冷え込ませています。  福島県はピーク時は約210万人の人口(1997年)でしたが、現在は約180万人で30万人ほど減っています。『人口が1人減ると食費だけで年間100万円減る』と言われます。30万人減ったということは3000億円減ったということです。あらゆる商売に影響しているでしょう。人口減少は地域の努力だけでは解決できません。お子さんが欲しい方々が子どもを産んで育てやすい社会にするために、行政は抜本的な対策を打ち出す必要があります」  ――福島県商工会議所連合会の会長も務めています。国、県に要望したいことは何ですか。併せて3選した内堀雅雄知事に求めることは。  「経済団体の重要な仕事は行政への要望活動です。市や議会と同じ価値観で結集し、省庁や与党に要望に赴きます。東北中央道開通や国道13号福島西道路延長でも要望を重ねてきました。まちづくりに要望は不可欠で、今後はより力を入れなくてはならないと思います。  福島県は女性の転出者数が全国で最も多く最下位ということに問題意識を持っています。2012~2021年の10年間にわたり、4万1283人に上ります。女性が働きたくなるような仕事や条件を用意できない企業にも責任があると思っています。このままではますます人口減が進んでしまう。  多くの信任を得て再選した内堀知事には、あらゆる課題に切り口を変えてチャレンジする姿勢を見せてほしいと思います。知事は国とのパイプがあり、堅実なのが評価されています。これだけ信任されているのだから、優先順位を付けて一歩進んでメリハリをつけてもいい。  原発からの処理水対応に関しては『簡単ではない』『白か黒かではない』と誰もが理解しています。ただし、県民の立場で国、東電に言うべきことは言ってもいいと思います。  我々民間業者が危惧するのは風評被害です。福島県産農産物はまだ一部の国で海外への輸出が規制されています。これは福島県だけの問題ではありません。東電だけでなく、国が責任を持って『漁業者、加工業者に対し一切責任を持つ』と言ってもらわないといけません」  ――3年ぶりにわらじまつりが街中で開催されるなどイベントが復活しつつあります。  「コロナ後は、わらじまつりはウェブで開きました。ただ祭りはリアルでないといけないとの声が根強かったです。2022年は参加団体と時間を制限してリアル開催ができました。  街中で短距離走をする『ももりんダッシュ』も3年ぶりに行いました。古関裕而記念音楽祭も開かれました。毎週末のように何かしらイベントが開かれていますが、一方で周知不足を課題に感じています。主催の市、商店街、民間団体が連携して情報発信をするのが重要と考えます。『週末に行けば何かやっている』『フラッといったら楽しかった』。小規模なイベントを重ねて街中をそのように認識してもらえればいいのかなと思っています」  ――福島駅前再開発事業が本格始動しました。「福島駅東西エリア一体化推進協議会」の会長を務めていますが、駅前再開発、中心市街地活性化はどうあるべきと考えますか。  「事業は2026年までかかります。国道13号福島西道路を南へ延ばし、福島市南部で国道4号とつながる時期と重なります。西道路を北へ延ばす計画も国交省に要望しています。実現すれば、市街地を通る国道の完全なバイパスになるでしょう。  現在、大型トラックも市街地を通ります。事故の危険性も高まり、歩行者にも優しくありません。何よりもパセオ通りと駅前が国道で分断されています。  西道路に交通を逃がせれば、街中が一体化しイベントも行いやすくなります。福島駅東口の再開発と併せて福島市のポテンシャルが上がります。駅前には福島学院大学、医大の保健科学部キャンパスがあるので、若者の活気を得て街づくりができるのではないかと期待しています。  2022年秋田市で行われた東北絆まつり(東北六魂祭)はヒントでした。感染対策のため会場はスタジアムで酒類の提供もありませんでした。ですが、売り上げは良かったそうです。祭りと一緒に集結した東北のグルメに皆さんが舌鼓を打ったそうで、『酒が出せないなら儲けがない』と出店しなかった事業者が悔やむほどの盛況ぶりだったようです。コロナ禍でも経済は両立できると実証してくれました。  東北と新潟を合わせた7県で、あるいは福島市と東北中央道でつながる相馬、米沢と連携した街づくりも効果的なのではないでしょうか。福島県が震災・原発事故で打撃を受けたのは確かですが、助けを求めるだけではもう通用しません。力強く立ち上がって魅力ある地域にしていかなければなりません」 福島商工会議所ホームページ 政経東北【2022年12月号】

  • 【二本松商工会議所】菅野京一 会頭インタビュー

    【二本松商工会議所】菅野京一 会頭インタビュー

     すげの・きょういち 1954年2月生まれ。福島大経済学部卒。糸屋ニット・菅野繊維代表取締役。二本松商工会議所副会頭2期を経て11月から現職。  2022年11月1日、二本松商工会議所の臨時議員総会が開かれ、新会頭に菅野京一副会頭(68、糸屋ニット・菅野繊維代表取締役)が選出された。コロナ禍、物価高、少子高齢化、後継者問題など、地方の中小企業は深刻な課題に直面している。そうした課題に対し、同商工会議所ではどう対応していく考えなのか。菅野新会頭に話を聞いた。  ――2022年11月に開かれた臨時議員総会で新会頭に選出されました。率直な感想は。  「二本松市は中核市である福島市や郡山市の中間地点に位置していますが、『二本松の提灯祭り』が毎年大いに盛り上がることからも分かる通り、郷土愛の強い地域で、100年続く会員事業所も少なくありません。私自身、故郷を離れて一度地元に帰ったとき、安達太良山を見て郷愁にかられ、あらためて郷土への誇りを感じた記憶があります。  だからこそ、まちを活性化していくには市外から移住してくる人や一度故郷を離れた若い力を積極的に受け入れ、活用していくことが重要です。そういう意味では会議所だけではなく、『オールにほんまつ』で盛り立てていくことが重要だと思います。  管内には安達太良山のほか、岳温泉、『二本松の提灯祭り』、『二本松の菊人形』など観光資源が多い。もっと言えば、坂道が多い地形など、地元に住んでいる人間にとって当たり前になっているものでも、十分観光資源になり得ます。市やさまざまな団体と連携し、地元の魅力を見つけて磨く作業を続けていきたいと思います」  ――新型コロナウイルスは感染拡大から3年以上経過しましたが、収束の見通しが立ちません。地方経済にも大きな影響を与えていますが、会員事業所の経営状況はいかがでしょうか。  「飲食業・宿泊業は特に厳しい状況にあります。今まで国や県から出ていた補助金がなくなり、補償も全くない中で店を閉めた所も少なくありません。これは会議所だけで解決できる課題ではありません。  当会議所ではコロナ対策を万全にして徐々に会合などを再開させたいと考えており、年始の賀詞交歓会はあだたら商工会と合同で3年ぶりに開催する予定です。ただ、県内では業績不振となった結婚式場が閉鎖しており、当管内でも大人数を収容できるコンベンション会場が少なくなっているのが悩みの種です」  ――コロナ禍や国際情勢の悪化で物価が高騰しています。会議所としてどのように対応していくべきだと思いますか。  「企業にとって電力値上げの影響は大きく、特に新電力に切り替えた事業所は苦しんでいます。会議所では経営指導に力を入れていますが、それで乗り切るのも限度があります。国には電気料金の負担軽減策の拡充を行ってほしいと思います。  今後、厳しい状況が続けば事業所をたたむケースが増えることも懸念されます。ただでさえ、中小企業は後継者問題を抱えています。昨今は銀行から送られる事業承継やM&Aの案内もよく目にするようになりました。子どもがいても、家業を引き継がず、自分自身で目標を持って別なことをするケースが増加しているようです。  商店街の空き店舗解消にも直結する重要な問題ですが、大胆な政策が無ければ解決しないと思います。一方であえて家業を継いで、時代に合わせた新しい形で経営する若手経営者もいます。会議所としてはさまざまな経営者のサポートを継続していきたいと考えています。  市外から移住者を受け入れ、まちを活性化させるためにも、特色を出すようにして、『この土地で商売をしたい』と思われる地域にしていかなければいけないと思います」  ――3選を果たした内堀雅雄知事に望むことは。  「真摯に県政に向き合っていると思うので、今の姿勢を崩さず続けてほしいですね。内堀知事は『オールふくしま』という言葉をよく使いますが、今後も県全体の発展に努めてほしいと思います」  ――「二本松の提灯祭り」、「二本松の菊人形」が3年振りに通常開催されるなど、今まで中止・延期になっていたイベントが復活しつつあります。今後、どのように観光振興を図っていくべきとお考えでしょうか。  「提灯祭りには予想以上に大勢の方が訪れ、露店も盛況でした。こういった行事やイベントが待ち望まれているとはっきり分かりました。  提灯祭りは観光振興という意味でも大事ですが、旧二本松市民にとって精神的支柱であり、祭りがないと活気が生まれません。経済効果も大きいので、たとえコロナ前と形は変わっても、継続していかなければならないと感じました。  菊人形も予想以上の盛況ぶりでした。〝お城山〟の紅葉が見ごろを迎え、菊が満開のタイミングで開催期間が終了したのが残念でした。  菊人形の季節には、寺社、事業所、店舗、住宅の前に、菊の鉢植えや菊の花を花器に浮かべた『菊手水』が飾られ、まち全体が菊の花に染まります。1本の茎から1000もの花を咲かせる千輪咲は、日本菊花全国大会で内閣総理大臣賞を獲得しています。  そういう意味で市を代表する行事であり、今後も『菊のまち』をアピールしていきたいと思います」 意見聞きながら舵取り  ――菊人形の会場近くの商店街もにぎわっていたようですね。  「空き店舗を活用した喫茶店や洋菓子店が開業しており、開催期間の週末は多くの来店客でにぎわっていました。SNSなども上手に活用してPRしていたようです。コロナ禍でインバウンド客は少なくなっていますが、海外まで情報が届けば需要の増大にもつながります。発信の重要性をあらためて感じました。  個々の事業所の発信をコーディネートして連携していけば、点同士がつながり、さらなるまちの活性化につながっていくと思います。喫茶店目当てで市内に訪れた観光客が、別な所に足を運ぶという展開も生まれるはずです。そうした考え方が今後は重要になると思います」  ――今後の抱負。  「3年間の任期がスタートしたばかりですが、会員事業所や市民の皆さんに『良くなった』と思われるような実績を残したいと思います。ある意味、激動の3年間になるかもしれません。  会頭に選出されましたが、私は一人で引っ張っていくタイプではないと思っています。皆さんの意見をとりまとめながら進む性格なので、意見を吸い上げながら、舵取りを行っていきたいと思います。  副会頭、議員、会議所職員には素晴らしい方が数多くいます。そういった方々と力を合わせて、これまでとは違う会議所を作り上げていきたいと思います」 二本松商工会議所ホームページ 政経東北【2022年12月号】

  • 【原町商工会議所】高橋隆助会頭インタビュー

    【原町商工会議所】高橋隆助会頭インタビュー

     たかはし・りゅうすけ 1951年生まれ。原町高、拓殖大卒。㈱高良代表取締役。原町商工会議所副会頭を経て2010年11月から現職。現在5期目。  2022年度は全国の商工会議所の一斉改選があり、原町商工会議所は高橋隆助会頭の続投が決まった。高橋会頭は5期目に入り、この間、震災・原発事故や新型コロナウイルス感染症など、厳しい環境の中で地元経済の舵取り役を担ってきた。再任間もない高橋会頭に管内の状況や課題、今後の抱負などを聞いた。  ――5期目に入りました。  「皆さま方からのご推挙により会頭に選任され、誠に身の引き締まる思いであり、引き続き誠心誠意努力する覚悟を新たにしています。2010(平成22)年11月に会頭に就任してから、これまでの4期12年間は、東日本大震災による地震・津波・原発事故といった未曾有の被害や近年の台風・大雨、福島県沖地震と、自然災害が重なりました。さらには新型コロナウイルス感染拡大防止対策としての経済活動の規制や自粛は経済人にとっては翼をもがれた鳥のようでした。また、ロシアによるウクライナ侵攻に起因した経済問題も深刻化しています。  当面の課題が3つ挙げられます。1つはALPS処理水の処分や進まない住民帰還等の復旧・振興に直結する課題。2つはコロナ禍の中で、いかに経済を維持していくのか。3つはロシア、ウクライナ両国の日本経済に与える影響が、企業をはじめ、食料品・生活用品の値上げなど家庭にまで押し寄せていること。この様々な状況下にある原町区内の事業所は経営を続けることさえ困難な状況に陥っています。こうした点を踏まえ11月1日から始まった5期目の3年間は、商工会議所が果たすべき役割などを念頭に次の3つを基本方針にしたいと思っています。  1つ目は東日本大震災からの復旧・復興です。任期3年間は国の第2期復興・創生期間の残り3年度と時期が重なっています。この期間は人と人、商工業者と商工業者のつながりや、会員事業所が希望や生きがいを持って前を向いていくことができる地域経済環境の整備に取り組み、次の世代の人たちが安心して経済活動ができる地域経済環境の整備に取り組んでいきます。そのためには福島イノベーション・コースト構想を活用して産業交流事業を促進し、新たな取り引きを図りたいと思います。  2つ目は相談業務、事業所支援の充実です。国は9月に『withコロナに向けた政策の考え方』を決定し、ウィズコロナの新たな段階に移行しました。全数届出の見直しなど保健医療体制の強化を進めていくことになりましたが、コロナに関する収束が宣言されていない現在においては、感染症対策は継続する必要があると感じます。また、ロシアによるウクライナ侵攻は世界の経済成長にも大きな影響を与えているばかりでなく、地域事業所の経営にまで影響が及んでいます。この課題に対応するため、会員事業所、地域の商工業者に対して相手の立場に立ち、ていねいな仕事を心掛けながら伴走型支援を実施していくことが重要です。また、より高度な専門的見地を必要とする場合は、ハンズオン支援につなげていきます。同時に会員事業所の意見を集約して要望活動などを行っていきます。  3つ目は関係機関との連携強化です。日本商工会議所をはじめ全国515商工会議所、東北商工会議所連合会との連携をより強化していきます。また、県や市との協力関係も重要ですから、推進していきたいと考えています」  ――新型コロナの影響について。  「一向に収束しない感染者数や落ち込んだ経済活動により、商工業者は大きな損害が出ています。今後いかに経済活動をしていくか、難しい課題を抱えたままとなっています」  ――円安や物価高、燃料費高騰も深刻な問題です。  「ロシアによるウクライナ侵攻は深刻な人道危機を招いているだけではなく、各国の経済成長に大きな影響をもたらしています。両国は一次生産のサプライヤーで、世界全体で小麦が約30%。トウモロコシや無機質肥料、天然ガスが約20%。石油が約11%を両国で占めています。また、半導体の製造に使用されるアルゴン(不活性ガス)、航空機に用いられるスポンジチタンの一大生産国でウランの資源量も高い。加えて金属輸出も重要な役割を担っています。これら一次生産品の価格はロシアのウクライナ侵攻以降、急速に上昇しており、世界経済の成長を鈍化させてインフレ圧力を高めています。侵攻以前はほとんどの国で新型コロナからの回復傾向にありましたが、侵攻によって2022年1年間で世界の経済成長率は1%以上押し下げられインフレ率も2・5%上昇すると試算されています。日本を含めたアジア太平洋地域の先進国やアメリカは欧州地域に比べてロシアとの貿易・投資関係は弱いものの、国際的な需要低下と物価上昇は、企業をはじめ家計まで深刻な影響を与えています」 復興関連施設の影響  ――2022年は3年振りに相馬野馬追が通常開催されました。   「ウィズコロナの新たな段階に移行し、保健医療体制の強化を進めていくことになりましたが、収束が宣言されておらず、第8波が迫る中、従来通りの感染対策の必要性を感じています。一方で、経済活動の停止・自粛等は経営者の活力を大きく減衰させ、非常に苦しくもどかしいものでした。コロナ禍で中止されたイベント等の復活は経済を回していくためには重要です。しかし、いまの状況下では、自分が感染しない、人にも感染させないという意識が重要だとあらためて感じています」  ――福島ロボットテストフィールドなどの復興関連施設が地域経済に与える影響について。  「先ほども述べたように、5期目の任期は国の第2期復興・創生期間と重なっています。この期間は人と人、商工業者と商工業者のつながりや会員事業所が希望や生きがいを持って前を向いていくことができる地域経済環境の整備に取り組んでいきます。10月には当商工会議所役員議員と進出企業の交流会を行いました。出席頂いた6社の進出企業紹介の後、短い時間でしたが交流会を行いました。その後、アンケート調査を行ったところ、今後の取り引きにつながる可能性として『感じられた』『やや感じられた』を合わせると80%超でした。また、交流会の満足度も高く、このような交流会は今回が初めてで、感染対策による制限もありましたが、積極的にそういった機会を設けることの重要性を再認識することができました。今後も福島イノベーション・コースト構想を活用して産業交流事業を促進し、新たな取り引きにつなげたいと思っています」  ――今後の抱負を。  「伴走型支援を実践し、会員事業所が安心して経済活動ができる環境づくりに力を尽くしていきたいと思います」 原町商工会議所ホームページ 政経東北【2022年12月号】

  • 【いわき商工会議所】小野栄重会頭インタビュー

    【いわき商工会議所】小野栄重会頭インタビュー

     おの・えいじゅう 1954年10月生まれ。慶應義塾大商学部卒。オノエー㈱社長。いわき商工会議所副会頭を経て2011年5月から現職。現在5期目。  いわき商工会議所会頭にオノエー(株)社長の小野栄重氏が再任され新体制がスタートした。コロナ禍や物価高など様々な課題が経済を覆うが「挑戦」と進化・伸化などあらゆる意味を持たせた「シン化」をテーマに解決に取り組む。JRいわき駅前の再開発や、いわきFCのJ2昇格はその起爆剤となりうるか。小野会頭に今後の見通しを聞いた。  ――5期目の抱負を教えてください。  「現在、いわき地域は、自然災害、原発事故、コロナ禍からの復興に加え、エネルギー・仕入価格の高騰、世界的なインフレの進行、AIやデジタル技術の進展、カーボンニュートラルへの対応、若者流出や長寿社会の到来などさまざまな課題に直面しています。こうした課題を乗り越え、次のステージへ進むためには、事業所も、事業所を支える人財も地域も、大きく変化する環境に果敢に『挑戦』し、新化して行くことが重要です。商工会議所のミッションは、ネットワーク力を生かしながら、こうした挑戦を支援し、地域全体の持続力、革新力、成長力を底上げすることにあると考えます。  今期3年間のテーマを『挑戦、シン化(進化、伸化、深化、新化)。そして未来へ』としました。『世界に誇れる復興モデル都市の実現』に向けて取り組んでまいります」  ――新型コロナの影響について会員事業者からどのような声が寄せられていますか。  「国・県の需要喚起策により、幅広い業種で売り上げは回復傾向にあります。しかし、観光業や飲食業においては、コロナ前の水準にまでは需要が回復しない中、コロナ融資の返済を危ぶむ事業主が多いです。観光旅館は『全国旅行支援のスタートにより、団体客・個人客ともに増えてきているが、コロナ前の7割程度の回復に留まっている』、また飲食店からは『ゼロゼロ融資の返済が始まったが、返済財源の確保が難しい』といった声が上がっています」  ――円安や物価高、燃料高騰の影響を教えてください。  「コスト上昇が収益を圧迫し、資金繰りが悪化している会員事業所からの相談が日を追うごとに増えています。『30%コストアップしたが、取引先との交渉が上手くいかず、価格転嫁は10%しかできない(部品製造業)』、『仕事は好調だが、資材の高騰に苦しんでいる。儲からない(工務店)」、『客離れが怖く、値上げしないで頑張ってきたが、もう限界。値上げに踏み切った(飲食店)』、『SNS広告への移行がどんどん進み、経費削減で紙媒体の広告宣伝費を抑えている。売り上げ減の中での経費増は厳しい(印刷所)』といった声が上がっています。『インボイス導入の影響が痛い(ビジネス旅館)』、『社員を増やしたいが、思うような人材が集まらないので、仕事を受注できない(テレワーク)』といった課題も挙がっています」  ――国、県に要望したいことは何ですか。併せて3選した内堀雅雄知事に何を求めますか。  「20年前に世界2位を誇った国民一人当たりのGDP(国内総生産)は、今や27位にまで後退しています。2020年度に名目GDP600兆円を目標としていましたが、実際は536兆円に留まり、公的債務も1255兆円に膨らんでいます。  政府には原因をしっかりと分析し、日本の国力を取り戻せるよう、10年後、20年後のビジョンを明確に示してほしいですし、達成のために必要な戦略を練り上げてほしいです。日本はいまだにコロナの国産ワクチンが開発できていません。奨学金を返済できない若者がいるし、1日に3食を満足に取れない子どもたちがいます。子や孫の世代にツケを回さないように、いまの国民が痛みを分かち合うことになっても先を見据えた政策をすぐに実行すべきではないでしょうか。  一方で大倒産時代とならないよう、借り換え、追加融資、返済繰り延べ、条件変更などコロナ融資返済への柔軟な措置を取ってほしいです。また、浪江町に立地が決まった『福島国際研究教育機構』が、福島県の復興を後押しし、日本の産業競争力強化につながるよう、十分に機能を発揮できる体制づくりと予算付けをお願いしたいです。  なお、為替動向に一喜一憂しても仕方がありません。インバウンド観光はもちろん、国内に生産拠点を呼び戻す、地域を挙げて輸入に力を入れるなど、円安を逆手に取った戦略も考える必要があります。  偶然にも、知事がスローガンに掲げた『進化、新化、深化』と、商工会議所のテーマ『挑戦、シン化(進化、伸化、深化、新化)』が重なりました。思いは同じであり、ともにシン化を図って行きたいです」  ――JRいわき駅周辺の中心市街地活性化計画の進捗はどうですか。  「いわき市中心市街地活性化基本計画は、2017年4月に国の認定を受け、2022年の3月末をもって5年の計画期間が終了しました。しかし、並木通りの再開発事業や旧イトーヨーカドー平店跡地における都市計画変更などを勘案し、スムーズな開発が進められるよう、基本計画を1年延長しました。  主な整備内容としては、①平城本丸跡地の公園整備(歴史遺構の出土により計画は変更中)、②並木通り再開発(ミッドタワーいわき)、③旧イトーヨーカドー平店の開発があります。また基本計画に記載がないものとしては、④2023年1月に開業するJRいわき駅ビル(S-PAL)やホテル開発(ホテルB4Tいわき)、⑤2025年度を目標に進められている、駅北口の松村総合病院の移転があります。  市と商工会議所、まちづくり会社や商店会連合会などが一体となって事業を推進、支援しているところであり、まちの再生に大きな効果を発揮するものと期待しています」  ――サッカーのいわきFCがJ2に昇格しました。地元経済界として何に期待していますか。  「松本山雅との試合では約800人のサポーターがいわき市に来ました。湯本温泉や平のビジネスホテルが繁盛し、夜は飲食店に繰り出し街が活気づきました。白水阿弥陀堂や小名浜を観光した方も多いでしょう。J2昇格で1試合あたり、今までの2倍の観客動員数を見込んでいます。特に、山形、仙台、秋田、千葉、東京、大宮など、割と近くに対戦チームが多いです。試合の直接的な経済効果を求めつつ、いわきを好きになってくれるファン、リピーターを増やしていきたいです。  また、サッカーのインターハイがJヴィレッジで固定開催されます。いわきをサッカーの聖地にして全国から合宿を呼び込んだり、いわきFCのトレーニングのノウハウを一般にも活用し、メタボリック症候群の解消など市民の健康増進にも役立てていければと考えています」 いわき商工会議所ホームページ 政経東北【2022年12月号】

  • 【浅川町】江田文男町長インタビュー

    【浅川町】江田文男町長インタビュー

     1955年生まれ。2003年から町議4期。その間町議会副議長や監査委員を歴任、2018年の町長選で初当選。2022年10月の町長選で再選を果たした。  ――2022年10月の町長選で再選を果たしました。  「出馬表明をしたのが6月中旬で、対立候補陣営より動き出すのが遅かったので不安を抱いていました。しかし、町民の皆さまから〝町政を継続してほしい〟という激励の声が多数寄せられ、引き続き町政の舵取りを担わなければならないという思いを新たにしました。1期目同様、現場に足を運んで町民の声を聞き、町民のために汗をかき、町民目線の町政運営を進めていく所存です」  ――選挙戦で訴えていた目玉政策「浅川小学校跡地への役場庁舎移転」構想について。  「現在、浅川中学校校舎の建て替えを進めています。老朽化により耐力度調査を実施した結果、構造上危険な建物との判断となり、建て直す運びとなりました。関連予算が3月定例会で全会一致で可決され、2022年度、実施設計を進めています。コロナ禍やウクライナ情勢の影響により建設資材が高騰していますが、子どもたちの安心・安全が第一なので、早期完成に向けて注力していきます。  さらに同工事完了後、将来的に同敷地内に浅川小学校の校舎を新築移転し、JR浅川駅前にある同小学校舎を役場庁舎として利活用する構想を練っています。現庁舎は築年数が県内でも最長クラスで、耐震性などを考えると何かしらの措置を講じる必要があります。駅前に役場庁舎があれば人の流れが変わり、交流人口増加、商店街のにぎわい創出、町中心部の活性化に貢献すると考えています」  ――1期目から子育て支援の拡充や福祉向上に注力されてきました。  「まず町内の認定こども園の園庭を土曜日に一般開放し、町内の園児以外のお子さんも利用できるようにします。また、全国的に増加傾向にある不登校のお子さんが学校へ行ける環境整備に向けて教育長と協議を重ねています。子育て支援と福祉向上に終わりはありません。さらなる教育環境の充実と福祉向上に努め、子育て世代のみならず、町外からの移住者も住みやすいまちづくりを進めます」  ――2期目の抱負について。  「町民目線でさまざまな声を聞き、町民のために汗をかき、笑顔で住みよいまちづくりに1期目同様努めていきます。モットーにしているのは、〝町民が幸せなまちづくりを進める〟ということ。町民一人ひとりが幸せになることで、より多くの幸福が数珠つなぎに生まれていくものと考えています。〝文化とスポーツのまちづくり〟として、城山や花火、即身仏といった町の文化の魅力を広めていくとともに、小学生から高齢者までのスポーツ活動全般を支援し、町の活性化につなげていく考えです」 浅川町ホームページ 政経東北【2022年12月号】

  • 【相馬市】立谷秀清市長インタビュー

    【相馬市】立谷秀清市長インタビュー

     たちや・ひできよ 1951年生まれ。県立医大卒。95年から県議1期。2001年の市長選で初当選。現在6期目。18年6月から全国市長会会長を務める。  ――2022年3月に発生した福島県沖地震で相馬市は大きな被害を受けました。  「特徴的な被害として挙げられるのは、ほぼ100%の住宅が被災したことです。家財道具が倒れたり、食器類が割れるなどの被害はほとんどの住宅であったと思います。家屋損壊も相当数に上りました。生活の現場で市民はさまざまな苦労を余儀なくされ、それは発災から8カ月経った今も続いています。  屋根には未だにブルーシートが被せられ、屋根瓦の修繕も思うように進んでいません。大工さんもフル回転で対応していますが、ここ20年で大工さんの人数自体が減っており、修繕に当たる人員は不足しているのが実情です。それでも市民の多くは、何とか自宅を再建しようと努力を続けていますが、中には再建を諦め、市営住宅や民間アパートに転居された方も少なくありません。それぞれ事情が異なるので(再建を諦めるという選択は)仕方ないのでしょうが、生活の基盤となる住宅が元通りにならないと『相馬は復旧した』という気持ちにはなれませんね。  産業では、観光業の方々を中心に国のグループ補助金が適用され、復旧費の4分の3が補助されます。それはありがたいことなのですが、残り4分の1は自己負担になります。平時ならまかなう余力があっても、新型コロナウイルス感染症の影響で客足が落ち込む中、自己負担分が今後の経営に影響を与えないか心配されます。また、後継者問題に直面していた事業者の中には先行きが見通せないとして、今回の被災で事業を取りやめたところもあったようです。事業者は千差万別、いろいろと悩みながら今後の経営を考えている状況です。主要な工場については、相馬共同火力新地発電所は現在も一部運転再開に至っていませんが、その他の工場はほぼ稼働しています。  東日本大震災から11年8カ月経ちますが、復興を遂げつつあった中で2021年2月、2022年3月と立て続けに地震に襲われ、市民の間には『大地震がまた来るのではないか』という憂鬱感が広がっています。そこに追い打ちをかけているのが新型コロナの影響による閉塞感と国際情勢の不安定さです。災害から復旧を果たしても、新型コロナの影響があって商売が上手くいかない、そこに原油高、円安、物価高が重なり、相馬市は非常に厳しい状況にあるというのが実感です。  とはいえ、市民がみんな下を向いているかと言うと、そんなことはありません。市職員も同様です。東日本大震災の時も実感しましたが、相馬市民は根性があります。市長として、この難局を市民一丸となって乗り越えていきたいと考えています」  ――相馬市内の新型コロナ感染状況はいかがですか。  「相馬市はPDCAサイクル(※)に則り、市ワクチン接種メディカルセンター会議で議論しながらワクチン接種を進めてきました。例えば接種方法は、スポーツアリーナそうまを会場とした集団接種が85%、病院での個別接種が15%という割合です。集団接種会場では何が起きても安心・安全が保てるよう万全の態勢を整えていますが、接種により何らかのリスクが生じる恐れのある方は最初から病院(個別接種)で対応しています。また、強い副反応が出た方にはその後の接種を勧めていません。  ワクチン接種の効果ですが、相馬市独自のデータではこれまでに約2600人(9月25日まで)の市民が感染し、そのうち中等症以上になられた方は21人(0・8%)で、99%以上の方は軽症です。感染確率は、ワクチンを適正回数接種した方が4・4%、適正回数接種していない、あるいは全く接種していない方が17・8%で約13㌽の差がありました。  これらの結果から、ワクチン接種の効果は確実にあると言えます。ただし、接種しても感染するブレイクスルー感染も見られるので『効果は絶対ではない』という点は認識しなければなりませんし、中にはさまざまな理由から接種しない・できない方もいるので、そうした意向も尊重しなければならないと思っています。  さらに課題になるのが、新型コロナは感染症法上の2類相当になるため、感染者や濃厚接触者の長期離脱が社会・経済に悪影響を及ぼしてしまうことです。今後、同法上の扱いをどうしていくのか、具体的には5類に引き下げられるのか国の動向を注視する必要があります」  ――年末に向けては第8波が懸念されていますが。  「相馬市では11月1日からオミクロン株対応ワクチンの集団接種を開始しており、医師は10月22日に全員接種済みです。接種間隔をめぐっては3カ月あけるのか、5カ月あけるのかという議論がありましたが、私は全国市長会長として『3カ月で接種させてほしい。そうでなければ第8波に間に合わない』と政府に申し入れ、10月21日に了承が得られた経緯があります。計画通り進めば12月20日には希望者の接種を終える予定です。  第7波は、感染者は多かったが重症者は少ないものでした。第8波がどのような特徴を示すか分かりませんが、事前の準備をしっかり整えておきたいと思います」  ――福島第一原発の敷地内に溜まる汚染水の海洋放出について、国、東電に求めることは。  「しっかりとしたエビデンスに基づき最終的な処理方法を国の責任で決めること、それによって漁業者等に被害が出ることがあればきちんと補償すること、この二つは一貫して申し上げてきました。実際に海洋放出した場合、どういう被害が出て、どこまで補償が必要かは現時点で分かりませんが、国と東電には被害者の声に耳を傾け、誠実な対応を強く求めたい」  ――観光振興への取り組みは。  「3月の地震で通行止めが続いていた市道大洲松川線が10月20日に通行再開しました。同線は海岸堤防上などを走る観光道路で、2020年10月にオープンした浜の駅松川浦、2022年10月に物産館がリニューアルされた道の駅そうま、さらに磯部加工施設の直売所を有機的に結び付ける役割を担っています。各施設とも評判は上々ですが、今後の課題はこれらの施設を訪れた方々をどうやって街中に誘導するかです。例えば相馬市では現在、相馬で水揚げされる天然トラフグを『福とら』の名でブランド化してPRに努めており、街中でトラフグ料理を味わってもらうのも一つのアイデアだと思います。また、新型コロナや地震の影響で旅館などが厳しい状況にあるので、市内に整備したサッカー場、ソフトボール場、パークゴルフ場などを生かした合宿の誘致も検討したいですね」  ――最後に抱負を。  「ダメージからの回復、これに尽きます。1日でも早く、市民が普通の生活に戻れるよう市長として尽力していきます」 相馬市ホームページ 政経東北【2022年12月号】

  • 【福島県 建設業界インタビュー】髙萩俊 県南建設事務所 所長

    【県南建設事務所】髙萩俊所長インタビュー

    たかはぎ・たかし いわき市出身。室蘭工業大学土木工学科卒。1989年福島県入庁。まちづくり推進課主幹、港湾課長などを歴任し、2020年4月より現職。  ──福島県沖地震の被害について。  「当管内では、一部区間で道路を横断するボックスカルバートや、橋梁などの道路構造物と土工部の間で、小規模な段差、クラックなどが確認されましたが、特に大きな被害はありませんでした。今後も、地震が発生した場合等でも、被害を最小限に抑えられるように、適切に維持管理に努めていきます」  ──2022年10月2日に国道349号下関工区が全線開通しました。  「当該事業箇所は、茨城県境に近く、大型車両も比較的多く利用していますが、集落の中を通る非常に狭隘な区間で、地元にお住まいの方や、道路を利用される方々にご不便をおかけしていました。このたびの完成で、大型車のすれ違いが円滑となり、歩行空間も確保され、安全・安心な通行が実現されました。今後は、関東地方から福島県へ広域的な交流・物流の活性化や観光、産業振興が促進され、矢祭町をはじめとする県南地域が活力に満ちた魅力ある地域としてさらに発展していくものと期待しています」  ──2022年度の重点事業について。  「令和元年東日本台風で被災した公共土木施設153箇所のうち、151箇所で復旧が完了しています。残る2箇所は2022年度中に完了する見込みです。近年頻発する自然災害から生命や財産を守るため、渡良瀬川等の河川改修や、河道掘削、堤防補強、土砂災害対策等の防災・減災、国土強靱化を推進していきます。 また、県有施設について、戦略的に維持管理をするために、公共施設等総合管理計画に基づき、長寿命化対策を推進しています。  道路については、県土の復興と地方創生に欠かせない広域道路ネットワークの構築に向け、物流や交流人口の拡大を図る国道294号(白河市・白河バイパス)や県土連携軸(南部軸)である国道289号(鮫川村・渡瀬工区)等、復興関連事業の早期完成を図るとともに、幹線道路の整備も推進していきます。  建設業の担い手確保では、現場見学会を管内の小学校だけではなく、幼稚園、中学校まで拡大し、それぞれの年代に合わせた現場見学会を多数開催し、将来の担い手になるきっかけを作っています」  ──今後の抱負。  「『福島県総合計画』の部門別計画である『土木・建築総合計画』の地域別計画では『県境を越えた広域連携の中心として、自然、歴史、伝統文化をいかしながら、持続的に発展する県南地域』を基本目標に定め、この基本目標に向けて各種施策に取り組んでいきます。  県土の南部軸となる国道289号のほか、国道349号、国道118号等の広域的な道路ネットワークの強化や幹線道路の整備を推進することで、地域の物流の円滑化はもとより、産業や観光の更なる振興を支援し、活力あるまちづくりを目指していきます。また、各水系の流域治水や砂防事業、県有施設の長寿命化事業等にも重点的に取り組み、災害に強いまち、安全で安心なまちづくりを目指していきます。  県南地域が交通の利便性と防災力の高いまちとなり、更には関東に近い『地の利』を生かすことができれば、移住や二地域居住等の需要が高まり将来的な人口減少が抑制されるなど、地域全体の持続的な発展に期待が持てるようになります。  本県の復興創生を地域の方々に実感していただき、次世代にしっかりとした社会基盤を残すため、また、『地域の守り手』である建設業が地域の重要な産業として発展するよう関係機関や建設業界等の皆様と連携して様々な取り組みを行っていきます」 県南建設事務所ホームページ 政経東北【2022年12月号】

  • 【福島県ビルメンテナンス協会】佐藤日出一会長インタビュー

    【福島県ビルメンテナンス協会】佐藤日出一会長インタビュー

     さとう・ひでいち 1955年4月生まれ。㈱東日取締役会長。2017年5月から福島県ビルメンテナンス協会会長を務める。  ――2022年3月に発生した福島県沖地震の影響は。 「相双地域で大きな被害が見られました。がれきなどを処理するための焼却炉が故障し、後片付けが進まなかったため、ビルメンテナンス業務ができなかった事業所があったと聞いています。その他の地域でも地震により建物が使用できない事態となり、郡山市では中央図書館が利用不可になりました。そのほか、ホテルなどで営業休止となりビルメンテナンス業務が困難になった事例もあり、少なからず影響を受けています」 ――新型コロナウイルス感染拡大の影響はいかがでしょうか。 「協会としての講習会や研修会は2年間開催を見送り、資料や回覧物を各会員に配布する形で講習会を開催してきました。先日、収容人数を限定した形ではありましたが、ようやく研修会を実施することができました。当協会が各種集会・行事を開催する際は、会員企業の意見も尊重したうえで、検温と手指消毒を徹底し、クラスター発生を未然に防ぐよう取り組んでいます」 ――会員企業数増加に向けた取り組みの進捗状況を教えてください。 「加入を勧める際には、まず会費が正会員の3分の1ほどで済む『準会員』として加入していただき、協会の取り組みや活動を見ていただくようにしてきました。その結果、準会員2社に正会員として加入していただきました。正会員26社、準会員7社、敷材などを提供していただいている賛助会員7社の計40社体制となっています。現在も引き続き勧誘を進めており、徐々にではありますが、会員数増加へと転じています。 当協会は公益社団法人であることも考慮すると、現在の倍は会員数がほしいというのが本音です。15年ほど前、正会員が10社脱退したことがありました。脱退した企業の呼び戻しも含め、会員企業の増強に向け取り組まなければなりません。脱退した企業の中には代替わりした会社もあるので、あらためてアプローチをかけていき、現状から10社増やすことを目標としています。 次に、県や自治体に、地元企業の積極的な採用を働きかけ、当協会の会員企業が優先的に入札に参加できる仕組みづくりを促したいと考えています。こうした取り組みを続けることで、会員数の増強につなげていきたいと考えています。 さらには、①建物の環境衛生の保全や維持向上を目的とした資格〝建築物清掃管理評価資格者(インスペクター)〟の養成、②建物から排出される温室効果ガスの削減のため、建物の利便性を維持しながら設備機器の運用改善を行う〝エコチューニング〟の推奨――も進めていきます。 このほか、県内の支援学校への講習会を通して、多くの生徒さんに技能講習を行っています。社会に出た後に取り組む就労支援などで役立てていただきたい所存です」 福島県ビルメンテナンス協会ホームページ 政経東北【2022年11月号】

  • 【磐城国道事務所】原田洋平所長インタビュー

    【磐城国道事務所】原田洋平所長インタビュー

     はらだ・ようへい 1982年12月生まれ。広島市出身。東大工学部卒。2005年に国土交通省入省。北海道開発局のほか総合政策局、内閣官房IT総合戦略室、道路局企画課評価室を経て今年4月から現職。  磐城国道事務所長に国土交通省道路局から原田洋平氏が4月に就任してから半年が過ぎた。3月の福島県沖地震で被害を受けた国道6号の復旧に始まり、東日本大震災・原発事故からの復興や防災に重要な国道の整備を指揮している。交通拠点の施策に取り組んできた経歴を生かして、浜通りの地域づくりを支援したいと意気込む。  ――4月に所長に就任されました。率直な感想と抱負をうかがいます。 「東北地方への赴任は初めてになります。福島県に来る時に最初に思い浮かんだのはやはり東日本大震災と原発事故でした。着任してすぐに地震・津波・原発の被害を実際に見て勉強しないといけないと思い、東日本大震災・原子力災害伝承館などのアーカイブ施設を一通り回りました。廃炉作業中の福島第一原子力発電所も視察しました。 着任するまで、震災と原発事故を当事者というよりは一歩引いて見ていたと思います。あの日から11年経ちました。被害はまだ残っている部分があること、同じ被災地でも復興のペースには違いがあることをまざまざと感じました。双葉町のように帰還がようやく始まった場所もあります。震災・原発事故の被災地にある国道事務所の所長として、どのように復興の手伝いができるか真剣に考えていきます。 前職の道路局で交通拠点を整備する施策を担当してきた経験を生かして、多方面から地域づくりに貢献していきたいです」 ――今年3月に発生した福島県沖地震で相馬地域には甚大な被害が発生しました。管内への影響をお聞きします。 「管轄の国道6号について述べたいと思います。相馬市内と新地町を通る相馬バイパスで一部道路が沈下して通行止めとなりました。応急復旧をして通行止めはすぐに解除できました。ただ、通行規制とならないまでも路面や橋の境目などに段差ができるなどあちこちが傷んだのでアスファルトの舗装を直しました。大きな被害までは至らなかったのは幸いでした」  ――ふくしま復興再生道路として整備が進められている国道399号「十文字工区」のバイパス道路が9月17日に開通しました。開通までの経緯と効果についてうかがいます。 「いわき市と川内村を結ぶ国道399号は『補助国道』に位置付けられ、福島県が管理をしています。補助とはいえ、復興再生道路に指定され重要な道路であることには変わりません。開通した十文字工区はぐねぐねした道と急な坂道ばかりでした。車のすれ違いは厳しく『酷道』と形容される類でした。 改良しようにも開発が難しい地形のため、トンネルを掘らざるを得ませんでした。穴を掘る際に水が出るなど困難もあり、トンネル区間は国が代行して整備をしました。十文字工区全体は6㌔で、うち2875㍍のトンネルを含む3㌔の区間を国道事務所で担当しました。工事は順調に終わり、昨年9月には県に引き渡しました。県がトンネル以外の部分を整備したうえで今年の9月に開通した次第です。 開通は通勤通学と救急搬送に大きな役割を果たします。川内村の住民は高校や職場があるいわき市に通いやすくなり、救急車も搬送時間を20分ほど短縮できます。国道399号は、今までは救急車が走行するのは困難でした。今までは川内村からいわき市への搬送は、富岡町に東進して常磐道を南下していました。 生活だけでなく、観光にもプラスになります。阿武隈高地の中央部に位置する川内村は豊かな自然を背景にワインや蕎麦などの観光資源に恵まれています。双葉郡といわき地域が行き来しやすくなったことで、交流が盛んになり被災が深刻だった地域への観光にもつながります。復興再生に寄与するように願っています」 ――国道6号の勿来バイパス事業の進捗状況についてうかがいます。 「いわき市と北茨城市をつなぐ国道6号のバイパス道路です。今までの道路は勿来地区では海のすぐ横を通っており、津波で浸水するおそれがありました。また沿道には店舗が並んでいるにもかかわらず、片側1車線のままなので渋滞を引き起こしています。山側にバイパスを整備してこれらを解消する狙いです。 2015年度に事業に着手し、19年度に着工しました。県をまたぐ事業であり、茨城県側は常陸河川国道事務所が事業を進めています。当事務所は、福島県側の2・5㌔区間を担っています。800㍍弱の勿来トンネルがあり、昨年度末から掘削を始めています。掘削作業が今まさに山場です」 ――国道49号の北好間改良事業の進捗状況についてうかがいます。 「国道49号はいわき市から郡山市、会津若松市へ抜ける道路です。事業実施地は常磐道のいわき中央ICから郡山方面に2㌔ほどの区間に当たります。勾配の急な坂道が多く、半径100㍍前後のきついカーブが連続しています。郡山方面から来ると長くて急な坂を下ったところに同ICの交差点があり、事故が発生しやすい個所となっています。交通安全と渋滞改善を図るためバイパスにします。 現在、用地確保を進めていて、整ったところについて測量、工事を順次進めています。なお、当該事業に隣接して、雨量による事前通行規制区間があり、大雨時には広域迂回が発生していることから、今後はこちらの対策も必要と考えています」 ――双葉地区の交通安全対策事業について。 「国道6号のJR双葉駅の東側から北に向かって2㌔ぐらいの区間に付加車線と歩道を整備します。伝承館や復興祈念公園の入口にあたるため一定の人通りが見込まれ、また、大型車両が多く行き交う地域でもあるため、事故防止と渋滞解消のために当事業を進めています。昨年度に事業着手し、今年度から工事が始まっています」 ――結びに、地域とどう向き合っていきたいですか。 「何をするにも地域を深く知らなくてはならないといつも思っています。また、行政が良かれと思って一方的に行っては意味がありません。地域の方々が何を望まれているのか、何がしたいのか、寄り添って、声を聞きながら、我々の役割は何かを考えて地域づくりを手伝っていきたいです。そのために自治体や商工団体をはじめ、幅広い方々からご意見をお伺いしたいです。道路は地域の構成要素の一つであり、渋滞や事故、防災等の交通課題にも着実に取り組みつつ、道路を起点として地域づくりにどう関わっていけるかを柔軟な発想で考えたいと思います」 磐城国道事務所ホームページ 政経東北【2022年11月号】

  • 【白河商工会議所】鈴木俊雄会頭インタビュー

    すずき・としお 1947年生まれ。国立平工業高等専門学校中退。アクティブワン代表取締役。2013年から白河商工会議所副会頭、昨年11月から現職。  白河商工会議所は昨秋の役員改選で、新会頭に鈴木俊雄氏(アクティブワン代表取締役)を選任した。鈴木氏は改選前まで副会頭を務めており、昇格という格好になる。就任間もない鈴木会頭に、今後の抱負や新型コロナウイルス感染症の会員事業所への影響、そのほかの課題などについて話を聞いた。  ――昨年11月に新会頭に就任しました。 「副会頭を9年間務めましたが、会頭という立場は階段を数段駆け上がったような大きな重みを感じています。会頭に就任してから数カ月が経過しましたが、会頭は全ての場面で表に立つ立場ですから、あらためて責任を実感しています。一方で副会頭を長らく経験してきたこともあり、他会議所等の人脈や経験もありますので、それを生かしながら進めていきたいと思います」 ――新型コロナの影響について。 「国内で感染予防を徹底しても海外から多くの観光客が移動すれば防ぎようがありません。そういった意味で集団免疫が出来るまでは仕方ないと感じています。スペイン風邪など、いままでの感染症の歴史を見ると、終息までに3年程度を要しています。しかもスペイン風邪の流行時はワクチンがありませんでした。それにもかかわらず3年で終息しています。今回は、ワクチンを接種して感染のスピードを緩やかにしつつも、結果的に3年が経過しています。集団免疫が出来つつありますが、それが出来上がるまでは感染が広がるのはやむを得ないと思います。ワクチンを接種し、重症化リスクを下げていくことで、積極的に経済活動を再開させていくべきだと思います。 そのためにも、まちなかの賑わいづくりに欠かせない事業所支援は必要です。会議所としても県や市に働きかけ様々な支援策を講じています。最近では、当会議所と大信・表郷・ひがし商工会が市の委託事業により『しらかわ生活応援クーポン』を配布しました。これは250円クーポンが12枚つづり(3000円分)になったもので、500円以上の買い物や飲食で使用でき、市民の皆さんにも好評を得ています。 それでも県内は震災復興が8合目を迎えた矢先で、加えて一昨年、昨年と大きな地震が発生し、被害を受けた事業所も多いのが現状です。そのため、こういった支援策を講じても、コロナ禍で3年が経過したことで飲食店をはじめとする小規模・中小企業事業者の多くは、限界を迎えています。加えて、今後、コロナウイルス支援対策で受けた融資制度の返済が始まればさらに苦しい状況に立たされます。国では返済期間の延長を考えてくれていますが、もともとあった後継者問題や、ロシアのウクライナへの侵略戦争に伴う影響、急激な円安による諸物価の高騰といった問題も出てきています。 会議所としては、先ほど話したクーポン事業等をはじめ、職員による補助金申請サポートといった支援策を講じているものの、会議所単独で行えることには限界がありますから、国や県にはさらなる支援策の拡充を望みたいと思います。 そんな中、国では防衛費の増額による増税やプライマリーバランスを黒字化するといった報道が出ていますが、いまこそ経済支援に目を向けるべきだと思います」 市街地活性化に努める  ――白河だるま市が今年は通常開催されるなど、コロナ対策によって中止していたイベント等も再開しつつあります。 「だるま市は3年振りに開催されることになったほか、イベント等も再開され、今後の経済活動の活性化には期待したいと思います。一方で、伝統的な祭りなどはコロナ禍によって人材や資金不足に陥っています。今後はそういった祭りを観光資源として生かせないか、議論していきたいと思います」 ――国道294号バイパスが間もなく全線開通を迎えます。利便性が向上する一方で、中心市街地への影響が懸念されます。 「今回のバイパス開通は会議所としても何度となく要望してきたものです。東北自動車道白河スマートICから市内に入り、国道289号まで一直線で行けるため、慢性的だった交通渋滞の解消、商工業の物流面、観光面に与える影響は大きく、期待を寄せています。今後この道路をどう生かしていくべきか問われると思います。 白河市や西白河・東白川地域等を加えた県南地域の人口は約13・5万人ですが、製造品出荷額等は約9380億円で県内ではいわき地域とほぼ一緒です。いわき市の人口は33万人以上と県内でも大きな都市ですが、その地域と製造品出荷額等が同じということはそれだけ白河地域にまだポテンシャルがある証拠だと思います。とはいえ、管内事業所は人材不足に苦しんでいます。そのためには他地域から人材を集める必要があり、寮などの整備議論も進んでいます。半面、若者がそういった企業に就職するため、地元の商店街や農家では後継者問題を抱えているのが現状です。そういったバランスを見ていかないとまちづくりはうまくいかないと思います。 一方で、田町や横町などの商店街はバイパス開通によってすでに影響を受け、さらにストロー現象の影響も懸念されます。また、本町地域には銀行の白河支店がありますが、二年後には、店舗を閉めて郊外に新たな店舗を建設します。旧店舗の利活用を含めて中心市街地活性化を進めていきたいと思います。 まちなかの事業者は高齢化が進んでいます。空き店舗になった建物は相続などが発生し所有権などの問題があるだけでなく、空き店舗とは言っても、併設する住宅部分には住民が住んでいるなど、空き店舗の有効活用は簡単ではありません。それでも、楽市白河が手掛けている賃貸マンション『レジデンス楽市』は好評で、現在は満室になっていることからも分かるように、街なかで暮らしたいと思う住民もいます。確かに白河駅まで徒歩3分で、買い物などにも不自由しません。医療体制も充実しており、運転免許返納後は街なかに住みたいと思う高齢者が増加するかもしれません。そういう意味では、いままでの考え方ではなく、環境を整えつつ歴史と文化の香りがする中心市街地に住んでみたいと思われる街にしていくべきだと思っています。市でも歴史的風致維持向上計画を立案し、古い歴史的建造物を保存し利活用していく考えです」 ――今後の抱負。 「白河市は県南地域の中核都市と言われますが、県内の7つの生活圏の一つとして、今後どのように成長していくかということを考えながら職務に当たっていきたいと思います。とはいえ、私一人で出来ることには限りがありますから、会議所役員の皆さんや職員と一緒になって取り組んでいきたいと思います」 白河商工会議所のホームページ 掲載号:政経東北【2023年2月号】

  • 【星北斗】参議院議員インタビュー

    ほし・ほくと 1964年郡山市生まれ。安積高、東邦大医学部卒。医師。医系技官として旧厚生省に入省。退官後の現在、星総合病院理事長、県医師会副会長を務める。  昨年7月の参議院選挙福島県選挙区で初当選した星北斗氏(58、自民)は医師であり、病院経営者である立場から新型コロナウイルスの出口戦略を描き、政策に反映させようと奔走している。だが、内閣支持率は低迷しているのが現状だ。岸田文雄政権に苦難が待ち構える中、与党の一員として政権運営をどう捉えるのか。単刀直入に聞いた。  ――あらためて、初当選を果たした選挙戦を振り返ってどのような思いですか。 「大きく感じたことが三つあります。一つ目は『福島県は本当に広いんだなあ』ということ。二つ目は自分が身を置く医療界というのは、数ある業界の中の一つに過ぎないのだということ。農林水産業、商工業含めてあらゆる方々が苦心されているのを目の当たりにして感じました。三つ目は希望の持てる発見ですが、小さな町村の首長が元気で積極的ということ。それぞれの地域が独自性を打ち出し、魅力的な場所にしようと努力されています。広い県内を回り、そのことを強く認識しました。 参議院議員としてさまざまな立場の声を聞き、国政に反映させる責任は非常に重いですが、同時にやりがいを感じています」 ――新型コロナウイルス感染拡大が依然収束しませんが、今後の対応と出口戦略についてうかがいます。 「新型コロナウイルスはBA・5に変異が進み非常に感染しやすくなっています。ただ、ワクチン接種と治療薬の環境は整ってきています。あとは重症化対応のために医療をどう集約するかでしょう。政治判断や法の整備が必要になると思います。一般医療への影響を防ぐためにどうするか、出口戦略を今年度中に見いださなくてはなりません。 感染拡大の真っ只中に出口戦略を大々的に訴えるのはいかがなものかとの指摘もありますが、今真剣に考えておかなければなりません。感染が落ち着いてからだと、どうしても希望的観測が頭をよぎるからです。 2類相当から5類に変える場合には、国が一方的に決めるだけではだめです。国民が『これならいける』と納得する安心領域に入らないといけません。経済との天秤にかけるのではなく、自分の生活の中で新型コロナを5類の感染症として受け入れられるかどうか。そうでなければ出口は見えないと思います。 一般医療に感染を持ち込まないため、既にある発熱外来のような仕組みは5類になったとしても続けていく必要があるでしょう。新型コロナへの感染が疑われたら医療にアクセスできる仕組みはできています。環境が整っていれば『インフルエンザと同等』とあえて強弁しなくてもいいのではと思います。 5類になれば新型コロナの治療費や検査費が自己負担になることについては『自分を守るための出費』という考えが国民の間に一定程度浸透していると思います。例えばインフルエンザのワクチンは、重症化のリスクがある高齢者や子ども、あるいはエッセンシャルワーカーの方は接種するという考え方が定着しています。新型コロナのワクチンも全国民ということではなく、必要な方が必要に応じて接種する方向に徐々に変わっていくと見ています。 一方、自己負担についても全額負担してもらうのか、国が一部を補助するのかという方法論は検討の余地があります。補助の割合も半額なのか、2、3割なのかといった議論が必要で、国民の納得が得られる形にしなければなりません。治療費の補助は上限を決めるが、薬は無料といった柔軟策もあり得るでしょう。丁寧な議論を経ず、単に2類相当から5類に下げるだけではハレーションは大きくなると思います。国として丁寧な制度設計と準備、広報が必要です」 ――東京電力福島第一原発で増え続けるトリチウムなどを含んだALPS処理水の海洋放出をめぐり、安全性への懸念や風評被害を心配する声が未だに後を絶ちません。 「私は、科学的安全性に対する懸念はないと思っています。ただし、風評はどこまで行ってもなくなりません。漁業者らのために買い上げや基金を整えるほかに、多くの方々の意識を変えていく取り組みが必須です。そのためには、多くの方に福島第一原発を訪れてほしいと思います。敷地内に林立する大量の処理水タンクは、帰還が進む地域に暗い影を落としています。タンクの撤去なくして復興はないと思います。これだけのタンクをこのままにしておいていいのかという視点が必要です。 少なくとも、科学的安全性を私たち県民が受け入れなければ海外の人たちが納得しません。安全性だけで物事が動くとは思いませんし、漁業者の方々の心配する気持ちも分かります。ただ、自信を持って県産品を輸出するためには、国は手間と時間を惜しんではいけないと思います」 ――岸田内閣の支持率が低迷しています。とりわけ昨年末に浮上した防衛戦略と、それに伴う増税の考え方には多くの批判が上がりました。 「言葉を選ばずに言うと、私は自民党・岸田内閣に対する期待の大きさの裏返しと捉えています。事実、自民党の支持率自体は下がっていません。ウクライナ侵攻や台湾有事への懸念などを受け、防衛費増加の考え方は国民的コンセンサスが得られつつありました。そうした中で浮上した増税について、まだまだ国民の理解が進んでいないのであれば、それは説明不足だったという批判は真摯に受け入れなければなりません。ただ旧統一教会問題に関しても、熱心に野党との協議を重ね、100点とは言えなくてもスピーディーに解決への道筋を付けました。国会の短期決戦の中で岸田首相は並々ならぬ決意があったと思います。その過程で避けては通れぬ増税の話が出たので、期待がマイナスに変わったのではないでしょうか。 防衛費のために国債を発行し、将来世代にツケを回すのは正しい判断ではありません。それをしないための増税です。復興特別所得税の一部が充てられる点についても、内実は復興の財源が減るわけでなく『切り捨て』ではありません。説明を尽くしていくしかないでしょう。おそらく、衆院選後に発表するのは国民を欺くようで、岸田首相はできなかったのだと思います。真面目さの表れと捉えています」 ――今後の抱負を。 「5年半後の参院選で圧倒的に勝つ、これに尽きます。勝つことが目的ではありません。得票数・得票率は選んでくれた方に対する責任をどう果たしたかが表れる指標になるからです。有権者の方から『星北斗にもう一回やらしてみっぺ』と言われるように、何ができるかを常に考えていきます。  自民党は水平な組織です。1期生だろうが参議院議員だろうが、現場の実情に詳しく、アイデアがあれば政策に反映してくれます。そういう党の環境を最大限活用します。任期の6年間は第2期復興・創生期間の折り返しです。震災・原発事故で避難された皆さんが帰ってこられるまち、住みよいまちにするため首長や地元の方々と取り組んでいきます。次の選挙で相手陣営に『あいつには勝てない』と言われるような、替えの利かない国会議員を目指します」 星北斗参議院議員のホームページ 掲載号:政経東北【2023年2月号】

  • 【亀岡偉民】衆議院議員インタビュー

    かめおか・よしたみ 1955年生まれ。作新学院高、早稲田大卒。2005年の衆院選で初当選、現在5期目。この間、復興大臣政務官、衆院文部科学委員長、文部科学副大臣、復興副大臣などを歴任。現在、衆院拉致問題特別委員長を務める。  福島県の衆院小選挙区は5から4に減る。現1区の地盤が分断される亀岡偉民衆院議員(67、自民、比例東北)は「1票の格差」という人口を尺度にした考え方が都市と地方の格差をより広げていると問題視する。また、岸田文雄首相が訴える企業への賃上げ要請には、大都市と地方の経済格差是正の視点が必要と注文を付ける。  ――小選挙区の「10増10減」が行われました。亀岡議員が地盤とする福島1区は新たに福島市、伊達市、二本松市、伊達郡、安達郡に改定されました。影響を受ける議員としての見解をうかがいます。 「国会議員の意見をもっと聞くべきです。審議会が勝手に決めればいいというものではないですし、人口ベースで形式的に決めればいいというものでもありません。そもそも私は『1票の格差』という考えが、都市と地方の均衡の観点から間違っていると思います。『違憲状態』とされていますが、ある意味では地方の実情に合わせて憲法改正が必要になってきたのではないかと思います。地方のために『人口ベースの格差』という考えをなくすべきです」 ――新1区の支部長について、地元は亀岡議員を推薦し、自民党本部は「保留」としました。 「比例で2回復活したことを考えなければいけないのは確かだとしても、地元の方々の応援を受け、10万票以上を得て戦ってきました。『保留』という決定について、党執行部との協議は全然ありませんでした。県連から推薦が上がれば通常は公認されますが、おかしな話になっています。結論がいつになるか知りません。一生懸命地元の皆さんとやってきて支部長に認めないというのはあり得ないことと思っています。他県でも似たようなことが起きており、当該議員から反発が起きかねない状況です。一生懸命やってきた議員たちが自民党を離れる可能性すらあります」 注:2月10日、亀岡偉民氏が正式に新1区の支部長に就いた。 ――地元紙には、自民党本部が公認しなかった場合、無所属での立候補もあるという記事が載りました。 「出るに決まっています。我々はもともと自民党のために働いているわけではない。国民のために働いているんですから。その目的を達成するために、一緒に働く政党を自民党にしようと言っているだけです。勘違いしたら大変なことになります」 ――そのような中、現在描いている選挙戦略についてうかがいます。 「全く考えていません。支部長ではないので動けないのです。弊害ばかりです。どのような結果になろうとも、あとは有権者がどう判断するかです。ただ、選挙運動が上手いだけの人が勝つような社会ではどうしようもないと思います。私は30年以上政治の道を歩んできました。本当に国会議員に働いてほしかったら、働ける環境を作らないといけない。選挙運動ばかりやっていたら、政治家としての本来の仕事が何もできなくなってしまいます」 ――本県は震災・原発事故からの復興が道半ばです。一昨年2月、昨年3月には福島県沖地震が発生し、甚大な被害に見舞われました。 「福島県は多重災害に見舞われています。復旧・復興のために迅速に予算を確保する、これこそが国会議員の責務と奔走しました。激甚災害の指定を待っていたのでは遅いと考え、官邸や国交省と直接協議し、財務省には必要な予算をつけるよう強く働きかけました。『被災地の議員がやらなければ誰がやるんだ』という思いで仕事をしました。 県内の被災地は全て回りました。東日本大震災でも甚大な被害を受けたのに2年連続で大きな地震に見舞われ、とりわけ相馬地方は大変な状況でした。『補助金をもらって事業を続けており、借金の返済も残っているのでやめるにやめられない』と泣いている事業者の方もいました。被災者の置かれている状況を官邸や省庁は直視し、必要な支援策をさらに講じるべきです」 ――東京電力福島第一原発で増え続けるトリチウムなどを含んだALPS処理水の海洋放出をめぐり、安全性への懸念や風評被害を心配する声が後を絶ちません。 「私は、処理水タンクが存在すること自体が風評被害だと思っています。1000基以上のタンクを今後も並べたままで風評被害がなくなるかと言うとなくならないでしょう。決断の時期が来ているのは事実です。風評被害を絶対出さないようにしながら、危険性を煽る人たちには『落ち着いてくれ』と説得しなければなりません。世界で一番安心・安全な基準で海洋放出するのだから、それは認めてほしいとお願いしたい。理解を得て納得してもらうために努力を続けていくしかありません」 ――政府は防衛戦略の変更や装備の拡充を打ち出しています。 「ロシアによるウクライナ侵略を受け、国民の8割が防衛力を強化するべきだというアンケート結果をもとに政府は大きく舵を切ったのだと思います。敵基地攻撃力を有し『やられたらやり返す能力がある』ということを相手に示さないと、いいようにやられてしまいます。抑止力を持つことについては、納得してくれる国民は多いと思います」 ――防衛費増額の財源のうち、復興特別所得税の一部を事実上転用する形で財源を確保することに対して被災地から批判の声が上がっています。また、岸田内閣の支持率も低迷しています。 「2・1%の財源を1・1%にしたとしても、その分、税の徴収期間を延長するので内実は減りません。私たち被災地の議員はそこを理解したうえで同意しました。復興には長い時間を要するので、長い間財源が確保できることについて異論はありませんでした。 岸田首相は、支持率は下がってもやるべきことはやっている、国民はそう評価していると私は捉えています。岸田首相は物価・燃料・電気代高騰対策など必要な政策を迅速に打ち出し、国民の声に真摯に答えようとしていますが、これに対する野党の煽りと一部のマスコミ報道でマイナス評価につながっているのではないでしょうか」 ――最後に、有権者へのメッセージをお願いします。 「岸田首相は企業に対し賃上げを要請していますが、地方では人手不足に拍車がかかると懸念しています。首都圏で時給が上がったおかげで、地方から人材が流出しているからです。給料を上げるのはいいことですが、上げたくても上げられない地方の中小企業にとっては中央との格差が広がる一方です。大企業なら、首相から上げてほしいと言われれば上げられるでしょう。では、その分のしわ寄せがどこに行くかというと、地方の下請け企業に来る可能性があります。人手不足は進んでいるのに中小企業の給料は上がらない、こうした状況を解消しなければなりません。岸田内閣には都市と地方の格差を真剣に考えてほしい。 要するに衆院区割りと一緒です。『1票の格差』を解消すると言いながら、逆に都市と地方の格差を助長している。均衡な発展のため大都市中心主義の生活を是正し、どんな山の中にいても平等な生活ができる社会にしなければなりません。そのために私は今後も尽力していきます」 【亀岡偉民】衆議院議員のホームページ 掲載号:政経東北【2023年2月号】

  • 【相馬商工会議所】草野清貴会頭インタビュー

     くさの・きよたか 1946年生まれ。東京電機大卒。草野建設代表取締役会長。2013年から相馬商工会議所常議員を務め、2016年11月から会頭。現在3期目。  昨年秋、全国の商工会議所で役員の一斉改選があり、相馬商工会議所は草野清貴会頭(草野建設代表取締役会長)の続投が決まった。3期目の任期をスタートさせた草野会頭に、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う会員事業所への影響や、昨年3月の福島県沖地震からの復旧状況などについて話を聞いた。  ――3期目がスタートしました。 「東日本大震災以降も度重なる災害で大きな被害を受け、旅館などでは未だ再開できていないところもあります。加えて、コロナ禍に伴う消費低迷やエネルギー価格・資材高騰により、経済環境は悪化し各事業所の業績はますます低下しています。そうした中、会頭に再任したのは非常に身の引き締まる思いです。今後も職員と一緒に会員が少しでも元気を取り戻せるよう個々の課題に寄り添いながら重責を全うしていきたいと思います」 ――昨年3月に福島県沖を震源とする地震が発生しました。 「被害額は合計約81億円で、会員事業所93%に何らかの被害がありました。2021年2月の地震と比較すると5倍の被害額です。会議所では、直ちにグループ補助金適用の要望を行い、制度適用に至りました。ただ、2021年2月の地震でも申請している事業所が多く、職員も申請手続き支援を行いましたが、複雑な作業となりました。現時点で施設復旧のための見積金額は約91億円、うち補助金申請金額は約79億円となっています。一方で、二重の借金を抱えることになるところが多く、後継者問題もあって再開をためらう事業所が多いのが現状です。そんな中、市内に一軒だけあった豆腐店が震災の影響で閉店してしまい非常に残念です。宿泊施設は、再開を決めたものの、人手不足や資材調達遅延の影響もあり、まだ着工になっていない事業所もあります。県内では宿泊割引などが行われていますが、市内の事業所はそういった経緯から参画できなかったところも多くあるため、継続して宿泊割引支援を行ってほしいと思います」 ――コロナに加え、円高や物価高など厳しい状況が続いています。 「東日本大震災、新型コロナ、福島県沖地震など、際限なく苦境に立たされながら必死に営業努力を続ける管内事業所には敬意を表したいと思います。会議所としても、少しでも会員事業所のお役に立てるよう職員に呼び掛けています。 新型コロナに関しては、国の方針は新たな行動制限を行わず、感染拡大防止と社会経済活動両立を図る、まさにウィズコロナ社会となり、一定の安堵感はあるものの、会員事業所は依然として減収・減益の中、厳しい状況下に置かれています。 加えて円安や物価高の状況で、会員事業所の多くから『エネルギー価格や原材料価格高騰に対する価格転嫁ができていないため利益を見いだせない』との声も聞かれます。そのため、賃上げの意思はあるものの、対応できていない状況にあります。一方で、価格転嫁した事業所は新たなサービスや付加価値を持って対応を始めているところもあります。 また、誘致企業の多くは、コロナ禍により人員削減し、その後、再度人員募集を行っても人員が集まらない状況にあり、慢性的な人手不足が続いています。さらに、ここに来て世界情勢の影響を直で受けている企業も多くあり、企業努力では解決できない状況も生じています。足腰の弱い小規模事業所の中には、後継者不足もあって、廃業を検討しているところも少なくありません」 ――国や県に要望したいことは。 「コロナ禍に加え、二度の地震被害、さらには円安や物価高騰が続く中、今後も景気が厳しさを増すことが予想されます。そんな中で、国債を発行して防衛費を増額する案が出ていますが、社会保障や景気回復のための予算投下を優先させるべきと思います。また、これは県にも要望したいのですが、燃料費高騰に対する中小企業への支援措置の拡充をさらに進めてほしいと思います。原発処理水の海洋放出に関しては、海を生かした観光を進めているものの、未だに海産物の価格が戻らない中、さらなる風評被害につながることを懸念しています。そういった面では風評被害対策にしっかり取り組んでほしいと思います」 トラフグを新名物に  ――観光協会長も兼任しています。 「浜の駅松川浦には多くの観光客に訪れていただいています。今年は道の駅そうまもリニューアルオープンしました。また、昨年は新たに尾浜にビーチバレーボール場がオープンしたほか、サーフィンスポットとしても注目され、スポーツ目的で相馬に訪れる方が増加しています。最近は天然トラフグの水揚げが急増し、昨年は30㌧と過去最高となりました。新たな常磐もの『福とら』として売り出そうと『相馬市福とら利用促進協議会』を立ち上げ、PRに努めたことで、仙台やいわきなどからフグを目当てに訪れる観光客が増加しています。昨年は本場・下関の関係者を招き、指導を受けながら相馬産のフグを召し上がっていただきましたが、下関の関係者からも『下関産フグより一回り大きい』と太鼓判をいただきました。フグと言えば西の下関、東の相馬と呼ばれるようにしたいと思います。 また、最近は健康志向も重なりアオサノリの評判が上々です。加工品やアオサノリを使用したラーメン、そばなどといった開発も進み、地元米を使用した日本酒『夢そうま』とアオサノリをセットにした贈答品も人気があります。先日も宮城県に視察に行きましたが、缶詰などの加工品開発が進んでいました。県内でもいわきにはさんまのみりん干しといった加工品が多くありますが、相馬市の場合は加工品はあまり多くありませんでした。これまでは新鮮な海産物を首都圏で販売するという考えでしたが、どうしても生ものだけに頼ると飛躍できないと思います。今後も新たな加工品開発に力を入れ、それを観光に結び付けたいと思っています。相馬を訪れた観光客がお土産として加工品を購入し、地元企業も潤うという好循環を生み出したいと思っています。 また、最近はクルーズ船が相馬に停泊しています。東北中央道ができたことでクルーズ船の乗客が福島や米沢に行くコースも計画されているので、さらに福島や米沢との連携を強化していきたいと思います。ほかにも、海だけでなく城下町ならではの歴史や文化もありますから、海と歴史・文化を織り交ぜた観光開発も進めていきたいと思います」 ――今後の抱負を。 「度重なる震災やコロナ禍等により、中小企業や小規模事業所は未曾有の影響を受け、厳しい状況にあります。経営者の心が折れることなく、今後も事業継続に希望を持つことができるよう、職員一丸となって取り組んでいきたいと思います」 相馬商工会議所のホームページ 掲載号:政経東北【2023年2月号】

  • 【棚倉町】湯座一平町長インタビュー

    子育て・教育環境の充実と健康寿命の延伸を図る ゆざ・いっぺい 1961年生まれ。福島大経済学部卒。2012年9月の棚倉町長選で初当選。2020年8月の町長選で無投票での3選を果たした。  ――町長選で掲げた公約の進捗状況についてうかがいます。 「教育分野については、課題解決能力やコミュニケーション能力など〝生き抜く力〟の養成を主眼に置いた『キャリア教育』を推進しており、文部科学省からも高い評価を得ています。今後は、幼・保、小、中、高のトータルな連携強化を図りながら、さらなる充実を目指します。また、自分で学習目標を立て、その習熟度を可視化する『ロイロノート』を導入し、学力向上につなげていきます。 まちづくりについては、『棚倉町歴史的風致維持向上計画』に基づき、メーン通り一帯の街路灯の改修、棚倉城跡周辺道路整備や城下道路整備に取り組んでいます。 健康づくりについては、健康長寿のポイントが食事・運動・社会参加であるという観点から、地域サロンを拠点に、本町が委嘱する健康アンバサダーのもと、健康づくりの指導をはじめ、運動や生きがい活動などを展開しています。 デジタル化の推進については、この間、町税、水道料金、手数料などの電子決済が可能になる一方、今後は医療補助、水道の使用、健康診断等の申請業務のオンライン化を進めていきます」 ――新型コロナウイルス感染症や物価高騰に対する町独自の対策についてうかがいます。 「これまで、生活支援を図るとともに消費喚起を促す狙いから、『たなぐら応援クーポン券』を2回発行(1回目5000円、2回目1万円)しています。これまで約9割が使用されるなど、地域経済活性化をはじめ生活支援に寄与していると考えます。物価高騰対策としては、老人福祉施設や障がい者施設に対して光熱費などの助成事業を実施しています」 ――2023年度の重点事業について。 「教育・文化関連に関しては、新たに高校生を対象にした支援策として手当を給付するほか、小中学校施設整備事業を推進し、子育て・教育環境の充実を図ります。また、棚倉町文化センターの大規模改修や棚倉運動広場夜間照明灯設置工事を実施し、スポーツ・文化・芸術活動の発展に努めます。 福祉に関しては、新たに妊産婦医療費の無償化や健康づくり推進事業を実施し、疾病の早期発見・早期治療の促進や健康寿命の延伸を図っていきます。 事業所支援に関しては、起業活動の支援はもちろん、既存企業においても新たな事業への挑戦、本町への拠点機能の移転、サテライトの開設などを後押しすべく、『きぎょう支援』事業を展開し産業の振興を図っていく所存です」 棚倉町のホームページ 掲載号:政経東北【2023年2月号】

  • 【福島県建設業協会】長谷川浩一会長インタビュー

    県土と業界の発展に貢献する はせがわ・こういち 1962年2月生まれ。法政大卒。堀江工業社長。福島県建設業協会副会長を経て、2019年5月から現職。  ――最初に新年の抱負を。 「昨年は、国道118号鳳坂トンネルや国道252号本名バイパスの開通、令和元年東日本台風で被災した河川の改修など、本県の復旧・復興に向けたプロジェクトが大きく前進した年でありました。 一方で、3月の福島県沖地震や8月の豪雨災害、年末の鳥インフルエンザ発生など度重なる災害に見舞われた年でもありました。そうした中でも、会員企業が一致団結し災害対応等に尽力した結果、県民生活の安全安心の確保に努めることができたと考えています。 本年は、昨年末に成立した補正予算により、防災・減災、国土強靭化関連工事が相次いで発注される見込みであることに加え、復興関連の道路整備、令和元年東日本台風関連の河川整備も大詰めを迎えることから、会員企業の総力を挙げて施工体制を強化し、円滑な受注や工事進捗を図ることで県土の発展に貢献していきたいと考えています」 ――コロナ禍、物価高など中小企業を取り巻く環境は厳しいものとなっていますが、県内の建設業界においてはいかがでしょうか。 「長引く新型コロナウイルス感染症の影響に加え、ロシアのウクライナ侵攻以来、原油及び原材料価格が高騰し、世界経済に大きな影響が生じています。 本県建設業界においても、生コンクリートやアスファルト合材及び鋼材など各種建設資材の値上がりに伴うコスト増の影響により、民間建築を中心に工事の中止や先送りが相次ぎ厳しい受注状況が続いています。加えて経費の増大に伴う価格転嫁が困難なことから会員企業の経営環境にも大きな影響を及ぼしています」 ――2023年度の重点事業について。 「2024年4月から、建設業においても時間外労働時間の罰則付上限規制が適用となります。今後は働き方改革への取り組みがより重要になります。当協会としては、発注者の協力を得ながら遠隔臨場などICTを活用した工事管理の効率化を進めるとともに、協会内のワーキンググループにおいて好事例の情報共有を図るなど、各会員企業における働き方改革の取り組みを積極的に支援していきたいと考えています。 建設業は高齢化が進んでおり、担い手の確保が長年の課題となっています。若者に建設業を選んでもらうためには、建設業界全体で週休2日の実現や他業種に見劣りしない収入も必要です。 当協会としては、地域の暮らしを支えるやりがいのある仕事として、一層の労働環境の改善や、ものづくりの楽しさ、『地域の守り手』としての活躍を伝える広報などに取り組んでいきたいと考えています」 福島県建設業協会のホームページ 掲載号:政経東北【2023年2月号】

  • 【鏡石町】木賊正男町長インタビュー

    町民と共に個性ある地域づくりを進めていく とくさ・まさお 1956年11月生まれ。須賀川高卒。鏡石町総務課長、教育課長兼公民館長、税務町民課長などを歴任。2022年5月の町長選で無投票初当選。  ──町長就任から半年以上経過しました。まずは現在の率直な思いをお聞かせください。 「前町長から引き継いだ事業に無我夢中で取り組み、町民の皆さまの幸せの実現のために奔走した半年間でした。 昨年は本町の町制施行60周年の節目であり、記念式典(10月)をはじめ、全国田んぼアートサミット(7月)、鏡石駅伝・ロードレース大会(11月)、ふくしま駅伝(同)など多くのイベントが開催されました。 9月には就任後初めてとなる定例会の招集があり、主要な議題を無事に議決いただきました。本町出身の方で結成される『東京かがみいし会』の総会も3年ぶりに開催でき、さらに県選出国会議員の皆さまに本町の重点事業に関する要望活動を実施するなど、さまざまな活動に注力できたと考えています。 職員として勤めていた頃との景色の違いを強く感じています。町民の皆さまからの信頼に背くことなく町政に取り組む所存です」 ──物価高や燃料価格の高騰が続いていますが、町民への支援について。 「昨年7月に生活困窮者への支援として国・県の補助金を活用した定額給付を実施したほか、9月には施設園芸農家への燃料費一部助成を行いました。低所得者への影響を考慮して、定額給付金として一律5万円を支給しました。 加えて町内の中小企業・小規模事業者を対象に上限10万円の支援金を給付し、昨年12月には経済活性化策としてプレミアム商品券の第2弾を発行いたしました。プレミアム率は25%で、1万8000セットが完売し、総額9000万円分の経済効果が見込まれています。第1弾で約2億円の効果が得られたこともあり、年末年始に緊急的に実施しました。 新型コロナウイルス感染拡大による輸入飼料の高騰も課題です。畜産農家に対しては家畜一頭当たり2万円の支援金を給付するなど、営農継続のための補助金を給付する支援策を実施してきました」 ──今後の重点事業について。 「まずは昨年4月に策定された第六次総合計画を実現するため、各種事業を進めていくことが重要です。そうすることで、他の自治体と比べ個性ある地域が作られ、町民の皆さまにとって誇りの持てる自慢の町になっていくものと考えています。 今から40年前、鳥見山公園に唱歌『牧場の朝』の歌碑が建立されたのをきっかけに『牧場の朝』のまちづくりが始まりました。40年間のさまざまな事業を振り返りながら、個性ある地域づくりについて町民の皆さまと一緒に考えていきたいと思います」 鏡石町のホームページ 掲載号:政経東北【2023年2月号】

  • 【下郷町】星學町長インタビュー

     ほし・まなぶ 1947年1月生まれ。日本大学東北工業高卒。下郷町建設課長、助役、副町長などを経て、2013年9月の町長選で初当選。2017年9月の町長選で再選、2021年9月の町長選で3選を果たした。  ――新型コロナウイルスの町内への影響と対策について。  「当町は大内宿や湯野上温泉に代表されるように県内有数の観光地があり、新型コロナウイルス感染症の影響は他市町村と比較しても大きいものがあります。今年度に入り、観光客数は増加傾向にあったものの、第8波の到来により、観光客数が減少し、地域経済の停滞が懸念されます。一般家庭においても、原油・物価の高騰もあり、収入の減少やそれに伴う個人消費の落ち込みが予想され、経済面・生活面の両方での対応が不可欠と考えています。  そこで町では、昨年11月の第2回臨時議会において、消費の下支えを通じた生活者の支援や地域経済の活性化を図ることを目的に、全ての町民を対象とした町内店舗で利用できる商品券を一人当たり1万円発行する『電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金』の予算を計上しました。さらには、電力・ガス・食料品等の価格高騰対策として、非課税世帯等1世帯当たり5万円を給付する『電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金』の予算を計上し、経済面・生活面の両方から住民の皆さまを支援していく所存です。  また、昨年12月より『Welcome しもごう ご褒美 宿プラン』を実施しており、こちらは対象となる町内の民宿・旅館で宿泊料金税込み5500円以上の利用に対して45%の割引を付与するなど、観光振興にも注力しており、町内経済の活性化を図ってまいります。  町内のワクチン接種率については、昨年12月2日時点で60歳以上の方々の4回目接種率が88・9%、75歳以上の方々については91・8%となっており、県の平均よりも上回っていると見ています。5回目接種も始まっているので、より多くの方々が接種を受けられるよう円滑に進めていく考えです」  ――今年度は第6次下郷町総合計画の3年目となっています。  「新型コロナウイルス感染症の影響により、各種イベントや式典等が中止となっておりますが、新型コロナウイルス感染症が終息し、人の流れが戻ってきたタイミングに備えて、観光資源の磨き上げと新たな素材の創出に取り組んでいきます。全国でも珍しい茅葺の駅舎である湯野上温泉駅は、多くの観光客が訪れることもあり、現在駅前広場の整備を進めており、今後、住民と観光客の交流の場となる観光産業の拠点としての役割が期待されています。また、紅葉シーズンに多くの観光客が訪れる観音沼森林公園においては、屋外で楽しめるイベントの創出と観光客の長期滞在化を目的に、ライトアップ事業を実施し、新型コロナウイルスの感染拡大のさなかにあっても、歩みを止めない、さらに町を発展させていくための施策を講じてまいります。新型コロナウイルス感染症が終息したあかつきには、第6次下郷町総合計画において目標に掲げた、観光入込客数230万人を達成すべく取り組んでまいります」 人口減対策に注力  ――2025年度の開通に向けて整備が進められている国道121号湯野上バイパス事業について、開通効果と今後の展望をうかがいます。  「会津縦貫南道路の開通により、町の空洞化を懸念される方もいらっしゃるかと思いますが、湯野上バイパスの整備事業によって町が活性化するチャンスであると私は捉えています。将来的に会津縦貫南道路、その先の栃木西部・会津南道路が開通することで、関東方面へのアクセスが向上し、観光客の皆さまには下郷町をもっと身近に感じていただける絶好のチャンスになると考えていますし、下郷町を訪れる観光客の増加も期待しています。  また、大内宿はゴールデンウイークや紅葉シーズンになると、国道121号の渋滞が目立つことが長年の課題でしたが、会津縦貫南道路の開通によって生活車両と観光車両が分散し、渋滞緩和につながると見込まれるため、多くの観光客の方々が利用しやすく、今までよりも魅力的な観光地と感じていただけるのではないかと考えています。  今後もさらに既存の観光資源の磨き上げや新たな素材の創出、観光資源のルート化に努め、観光客の皆さまを飽きさせない、また来たいと思っていただけるようなまちづくりを進めていく所存です。  さらに、会津縦貫南道路の開通によるアクセス向上は観光面だけでなく産業面にも大きく寄与するところなので、今後は積極的な企業誘致や工場立地を推し進めるほか、定住人口の増加にも役立てていきたい所存です。いずれにせよ、会津縦貫南道路の開通は本町のみならず会津地域全体に経済効果をもたらすことが期待されるため、早期開通に向けてこれからも国・県と連携を図ってまいります」  ――移住・定住政策は全国どの自治体でも喫緊の課題です。 「本町の人口は1955(昭和30)年の1万4979人をピークに、昨年4月時点で5231人まで減少しており、移住・定住政策は本町におきましても喫緊の課題となっています。本町は少子高齢化が著しく、若い世代の方々の移住・定住を推し進めることがまず重要であり、そのためには安心して子育てできる環境づくりが不可欠であると考えています。その一環として、子育て世代の負担軽減を図るため、子宝祝金や給食費の無償化などに取り組んでいます。  今年度からは、新婚生活応援のために結婚者1組につき10万円の『しもごろー商品券』を給付する結婚祝金事業や、独身男女の婚姻促進のために結婚マッチングシステム会員登録補助事業も実施しており、結婚から子育てへと繋げ、人口増加を目指す施策の充実を図っているところであります。  また、空き家・空き地バンク事業も展開しており、実際に制度を利用して移住した方々も増えてきているので、町内の空き家・空き地を解消するとともに定住人口増加へと繋げていきたい所存です」  ――今後の抱負について。  「まず一番は第6次総合計画の進行が重要で、諸所の課題解決に向けて着実に取り組んでいかなければなりませんし、私のスローガンでもある〝よりそう行政 挑戦する下郷〟の実現を目指します。これまで高齢者を対象にタクシー料金の一部助成や一人暮らしの高齢者の方々の生活の安全確保のために除雪作業の援助を行っているほか、学校給食や保育所の無償化という形で子育て世代への支援も並行しており、多くの町民に寄り添いながら、会津縦貫南道路の早期開通など新規事業の整備によって町内に新たな風を呼び込み、町政発展に努めてまいります」 下郷町のホームページ 掲載号:政経東北【2023年1月号】

  • 【湯川村】三澤豊隆村長インタビュー

    1949年生まれ。会津高校中退後、就農。湯川村議を連続4期務め、その間村議会議長などを歴任。2015年の村長選で初当選、現在2期目。  ――新型コロナウイルスの感染拡大による村内の影響についてうかがいます。  「このところ、子どもから親に感染する家庭内感染や高齢の感染者の死亡が目立っており、第8波を痛感しています。地域内連携やコミュニティーにも影を落としている状況です。一方で、規模縮小など制約はありますが、文化活動やイベントを段階的に再開し、にぎわいや活気を取り戻しつつあります」  ――新型コロナウイルス関連の村独自の支援策についてうかがいます。  「この間、コロナ禍により冷え込んだ地域経済の再生を図るべく、湯川村商工会と連携し、村民1人当たり5000円分の『あじさい商品券』を交付したのをはじめ、地元飲食店の利用促進を狙いとする『がんばる地元の飲食店応援券』、『ゆがわまいちゃん20%プレミアム商品券』など、消費刺激策を講じてきました。村民からも好評で一定の成果が挙がったと実感しています。併せて非農家世帯に対して1人当たり5㌔分の『お米券』を配布し家計の負担軽減を図りました」  ――本年度の重点事業について。  「1つは、本村の基幹産業である農業支援です。この間、コロナ禍の影響や米価下落など、ただでさえ厳しい環境にあった中、今年度は燃料、肥料、資材などの物価高騰が追い打ちをかけている状況です。村では農業経営の安定化を図るため、夏季に『湯川米生産意欲向上対策』として10㌃当たり4100円、秋季に『湯川村農家支援助成金』として10㌃当たり2500円を支給するなど対策を講じています。2つは、村とJA会津よつばとの共同出資による農業法人㈱会津湯川ファームを旗振り役とする大規模農業の振興です。現在の生産面積30㌶から50㌶まで拡大させる考えです。3つは、道の駅あいづ湯川・会津坂下における販売力向上とそれに伴う農業出荷量の維持です。現在、コメをメーンに魅力ある地元産品を提供していますが、今後は年間100万人を超える利用者をさらに取り込むため、商品開発や販売戦略の構築に努めていきます」  ――結びに抱負についてうかがいます。  「約1200年の歴史を誇る国宝・勝常寺を核とした、歴史が息づく村づくりに取り組みたいと考えます。現在、屋根の葺き替えが完了し、勝常地区の住民による『黒塀プロジェクト』、『角屋プロジェクト』の新設などにより、門前町としての景観や参道の整備が着実に進んでいます。今後も、村民とともに観光資源としての磨き上げに努め、道の駅との相乗効果が発揮できるよう魅力ある情報発信を展開していく考えです」  湯川村のホームページ 掲載号:政経東北【2023年1月号】

  • 【会津若松商工会議所】澁川惠男会頭インタビュー

     しぶかわ・ともお 1947年生まれ。会津高、日大商学部卒。澁川問屋会長。会津若松商工会議所副会頭などを経て、2016年から現職。現在3期目。    澁川問屋会長の澁川惠男氏が会津若松商工会議所の会頭に再任され、3期目が始動した。経済は新型コロナウイルスによる打撃から回復傾向にあるが、円安、物価高、燃料高騰が企業の経営を圧迫。澁川氏は「全国旅行支援」の効果をより高めるため、観光のオフシーズンにも実施することを提言する。  ――会頭職3期目を迎えました。これまでを振り返っての感想をお聞かせください。  「2016年に初めて会頭に選任いただいた時から、長期的視野による『持続可能な地域の創生』をテーマに掲げ、2500会員の負託に応えるべく、地域経済発展の牽引役として全力で取り組んでまいりました。若者が暮らして楽しいまちづくりを目指す『市街地再開発事業』をはじめ、行政とともに実施した『プレミアム商品券事業』、国のコロナ対策に合わせた『独自の事業者支援制度』、正常な企業活動再開に向けた『コロナワクチン職域接種事業』など、数々のコロナ対策事業を実践し、これらの事業展開が会員の皆様から大きな支持を得ることにつながって、今回3期目の職責をお任せいただくことになったと受け止めております。気を引き締めて負託に応えられるよう努めてまいります」  ――新型コロナウイルスの第8波が到来しています。管内の経済状況を教えてください。  「日本商工会議所の11月調査によると、新型コロナによる経営への影響は、『続いている』とした回答がようやく6割を下回りました。インバウンド復活や全国旅行支援により活動回復が進み、業界は改善傾向にあります。ただ、感染拡大の兆候から消費マインドの低下を懸念する声もあります。  コロナ禍での忘年会シーズンは3度目となります。大半の飲食業にとって12月は最も売り上げが伸びる書き入れ時です。第8波の影響は懸念されますが、行動制限が緩和されていますので、客足回復の兆しが見られています。『コロナ禍前にはほど遠いが、前年よりは増えている』といった状況だと思います」  ――円安、物価高、燃料高騰が続いていますが、管内への影響について教えてください。  「物価高で仕入価格が上昇し、利幅が小さくなっていることに加え、電気代やガス代などの光熱費も上昇し、経営を圧迫しています。深刻なのは『儲けが出ない』ということです。全業種的にB tо Bにおけるコスト増加分の価格転嫁についても、なかなか進んでおりません。価格転嫁できた企業は1割にも満たず、約2割の企業では協議すらできていない状況です。  そのような中、公的資金のゼロゼロ融資が終了した一方、元本返済の据え置き期間が終わり、コロナ融資の返済が本格的に始まりました。金融機関では柔軟な対応をしていただいているようですが、資金繰りは厳しい見通しとなっています。  経済活動は正常化に向かっておりますが、経営課題は山積している状況ですので、政府の経済対策等をいち早く管内事業者に周知しながら、徹底した事業所支援を行っていきます」  ――10月より全国旅行支援が始まりました。観光業への影響はどうですか。  「確かに客足が回復する後押しになったと思います。ただ、その効果を問われると何と言っていいのか分かりません。もともと秋は観光シーズンであり、紅葉とJR只見線の再開通で、地元・東山温泉の予約状況は好調でした。そこに全国旅行支援が重なり、いわゆる予約の付け替え作業が発生しました。また、コロナ禍による感染防止対策として、食事会場へのパーテーション設置や入場人数の制限などにより、全体のキャパシティーが縮小している上、人手不足が深刻で、予約を受けきれないという売り上げ機会を逃す状況となっています。  支援は延長されるようですが、繁忙期ではなく、降雪後のパタッと客足が落ちる閑散期にこそ実施すべき施策だと思っています。  また、経済活動が正常化に向かう中、人手不足を訴える声は観光業以外にも多く聞かれます。解決策の一つとして、外国人の雇用が再び注目されていますので、会員向けの勉強会を開催していくことにしています」  ――JR只見線が全線再開通しました。反響はどうですか。  「只見線は鉄道と自然が織り成す風景が独特で、景色の良さを競うローカル線の人気投票で常に上位にランクインしています。そのため外国人観光客にとても人気で、特に台湾や中国、ベトナム、タイから多く来訪がありました。再開通は昨年10月1日でしたが、話題性に加え、紅葉や全国旅行支援などが重なり、座れないほどの混雑となりました。JR東日本は臨時列車の運行と増車を行っています。  只見町では、宿泊施設や飲食店の予約が取れないほどの活況ぶりで、金山、三島両町を流れる只見川での観光用渡し舟『霧幻峡の渡し』も予約でいっぱい、11月中旬になってようやく落ち着いたと聞きました。  沿線への波及効果に確かな手応えを感じています。ただ便数と乗車時間の関係からツアー商品がつくりにくい、冬はどうしても閑散期となってしまうなどおもてなしにロスが出ている実情があります。インバウンドに関しては、冬景色と只見線の競演で、日本らしい観光が提供できると期待しています。観光入込の平準化のためにも、県、沿線自治体、観光関係者が知恵を出し合いながら対策の検討を進めるしかないと思っています。  会津若松は只見線の起点であり、会津観光の玄関口です。日光、仙台、新潟からお越しになるケースも多く、これらの都市との連携は非常に重要であると思います。新潟県佐渡市が世界遺産登録を目指していることもあり、行政では相互誘客や広域的な観光周遊ルートの構築を目指しておりますので、商工会議所としても民間ならではの交流を進めていきたいと思っています」  ――今後の抱負をお聞かせください。  「市街地再開発事業への取り組みをより進めます。2020年に実施した市民アンケートの結果をもとに有識者による検討委員会を立ち上げ、市内5つの主要な土地の有効活用についてまとめました。昨年は『街なか再開発構想』として行政に提言しましたので、今年は実現に向けて不退転の決意で臨んでいきます。  事業所の変化を後押しします。ポストコロナ時代だからこそ、チャレンジが必要で、新たな事業計画策定などの支援業務が重要になってきます。管内商工業に明るい展望が見えるよう、意識改革を促しながら経済を牽引していく所存です」 会津商工会議所のホームページ 掲載号:政経東北【2023年1月号】

  • 【富岡町】山本育男町長インタビュー

     1958年8月生まれ。原町高、東京農業大卒。町議を連続5期務め、副議長などを歴任。2021年7月の富岡町長選で初当選を果たした。  ――夜の森・大菅地区の特定復興再生拠点区域で、来春の避難指示解除に向けた準備が進められています。  「避難指示解除が現実的なものとなるまで長い年月を要しましたが、再び生活できる地域として生まれ変わろうとしているのは大変喜ばしいことです。本町では、故郷での生活を希望する方々が心地よく暮らしていける環境を整え、いつでも『おかえりなさい』と言える状況を築き上げていきます」  ――2021年、拠点区域外の地域に関しても「除染して希望するすべての住民が帰還できるよう2020年代をかけて避難指示の解除を進める」という政府方針が示されました。政府に求めることは。  「帰還困難区域を有する自治体の『再生を決してあきらめない』という気持ちと、団結した姿勢により実現した政府方針だと考えています。ただ、我々が求めているのはあくまで〝早期〟の帰還であり、町の全域除染です。現在の方針では帰還を望む人の家だけ除染されることになりますが、隣家の空間線量が高ければ意味がない。政府には住民の意向に沿った方針を示してほしいと思います」  ――「復興まちづくり」の見通しについて。  「将来を切り開くための基礎はできつつありますが、医療、福祉、教育、産業、絆の維持、住宅、移住促進など、取り組まなければならないことは多いです。希望と笑顔あふれるまちにするため、町民一人ひとりの声を丁寧に聞いて、着実に取り組んでいきます。今後はソフト事業に注力していく考えです。具体的には、元々住んでいた住民と、移住してきた方々をつなぐイベントを積極的に開き、交流を促していきます」  ――そのほか取り組んでいる重点事業は。  「短期的には、帰還者の多くが高齢者であることから、2022年開設した『共生型サポートセンター』を円滑に運営し、福祉の充実を図っていきます。一方で、子どもたちの健全育成を目的に造られた『富岡わんぱくパーク』を生かし、子どもの体力向上や運動不足の解消及び子育て世代の交流を促進していきます  中長期的には、人材育成・確保が重要になると考えているので、教育費用の無償化、移住者への住宅支援などに努めていきます」  ――今後の抱負。  「本町は全町避難した自治体なので、これから復興・再生していくにはかなりの労力・時間を要するものと考えています。それでも、将来を見据えた町政運営を進めていくのが我々の使命です。全国に避難している町民が少しでも早く故郷で生活したいと思える環境を整備していきます」 富岡町ホームページ 政経東北【2022年12月号】

  • 【福島商工会議所】渡邊博美会頭インタビュー

     わたなべ・ひろみ 1946年生まれ。福島大学経済学部卒業後、福島ヤクルト販売入社。2012年に福島商工会議所副会頭。13年11月に会頭就任。現在4期目。  福島商工会議所は2022年11月、会頭に渡邊博美氏=福島ヤクルト販売会長=を再任し、新体制がスタートした。渡邊会頭は、企業や商店の足腰を強くするため力を注いでいくことを4期目の抱負に掲げる。人口減少とコロナ禍が重くのしかかる県内だが、県庁所在地の商工会議所として、駅前再開発をエンジンに街に賑わいを取り戻そうと模索している。  ――会頭4期目の任期が始まりました。抱負をお聞かせください。  「震災後の2013年に就任してから9年、無我夢中で取り組んできました。新型コロナの拡大は、ワクチンで一時は改善が進むも、変異株でまた感染が広がるといったように、影響がなくなったわけではありません。いかに拡大防止と経済を両立させていくかにかかっています。  新型コロナ禍で経済活性化には課題が残り、あらゆる取り組みを講じても効果は実感できるには至りませんでした。経済活性化のために引き続き自分が頑張らなければならないと会頭再任をお引き受けしました。  今期は一つ一つの企業や商店の足腰を強くしていくことに力を注ぎたいです。市、県、国は支援策を用意していますがそれは一過性に過ぎません。いずれは民間が自力で事業を継続し、地元に雇用を生むようにならないといけません。職員や会議所の議員らとこの意識を共有し、最大限の力を発揮していきます。  副会頭には、新たに東邦銀行専務の須藤英穂氏が加わりました。事業承継を控える企業もあり、足腰を強くするには金融が今まで以上に重要となります。東邦銀行さんにはコンサルタント役を期待しています。経済と金融機関が一体となり地元経済を支えることを意識した布陣です」  ――円安や物価高、燃料費高騰が深刻な問題となっています。  「企業は、材料費、光熱費、社用車の燃料代がかさみます。企業努力にも限界があります。何よりも人口減少が消費を冷え込ませています。  福島県はピーク時は約210万人の人口(1997年)でしたが、現在は約180万人で30万人ほど減っています。『人口が1人減ると食費だけで年間100万円減る』と言われます。30万人減ったということは3000億円減ったということです。あらゆる商売に影響しているでしょう。人口減少は地域の努力だけでは解決できません。お子さんが欲しい方々が子どもを産んで育てやすい社会にするために、行政は抜本的な対策を打ち出す必要があります」  ――福島県商工会議所連合会の会長も務めています。国、県に要望したいことは何ですか。併せて3選した内堀雅雄知事に求めることは。  「経済団体の重要な仕事は行政への要望活動です。市や議会と同じ価値観で結集し、省庁や与党に要望に赴きます。東北中央道開通や国道13号福島西道路延長でも要望を重ねてきました。まちづくりに要望は不可欠で、今後はより力を入れなくてはならないと思います。  福島県は女性の転出者数が全国で最も多く最下位ということに問題意識を持っています。2012~2021年の10年間にわたり、4万1283人に上ります。女性が働きたくなるような仕事や条件を用意できない企業にも責任があると思っています。このままではますます人口減が進んでしまう。  多くの信任を得て再選した内堀知事には、あらゆる課題に切り口を変えてチャレンジする姿勢を見せてほしいと思います。知事は国とのパイプがあり、堅実なのが評価されています。これだけ信任されているのだから、優先順位を付けて一歩進んでメリハリをつけてもいい。  原発からの処理水対応に関しては『簡単ではない』『白か黒かではない』と誰もが理解しています。ただし、県民の立場で国、東電に言うべきことは言ってもいいと思います。  我々民間業者が危惧するのは風評被害です。福島県産農産物はまだ一部の国で海外への輸出が規制されています。これは福島県だけの問題ではありません。東電だけでなく、国が責任を持って『漁業者、加工業者に対し一切責任を持つ』と言ってもらわないといけません」  ――3年ぶりにわらじまつりが街中で開催されるなどイベントが復活しつつあります。  「コロナ後は、わらじまつりはウェブで開きました。ただ祭りはリアルでないといけないとの声が根強かったです。2022年は参加団体と時間を制限してリアル開催ができました。  街中で短距離走をする『ももりんダッシュ』も3年ぶりに行いました。古関裕而記念音楽祭も開かれました。毎週末のように何かしらイベントが開かれていますが、一方で周知不足を課題に感じています。主催の市、商店街、民間団体が連携して情報発信をするのが重要と考えます。『週末に行けば何かやっている』『フラッといったら楽しかった』。小規模なイベントを重ねて街中をそのように認識してもらえればいいのかなと思っています」  ――福島駅前再開発事業が本格始動しました。「福島駅東西エリア一体化推進協議会」の会長を務めていますが、駅前再開発、中心市街地活性化はどうあるべきと考えますか。  「事業は2026年までかかります。国道13号福島西道路を南へ延ばし、福島市南部で国道4号とつながる時期と重なります。西道路を北へ延ばす計画も国交省に要望しています。実現すれば、市街地を通る国道の完全なバイパスになるでしょう。  現在、大型トラックも市街地を通ります。事故の危険性も高まり、歩行者にも優しくありません。何よりもパセオ通りと駅前が国道で分断されています。  西道路に交通を逃がせれば、街中が一体化しイベントも行いやすくなります。福島駅東口の再開発と併せて福島市のポテンシャルが上がります。駅前には福島学院大学、医大の保健科学部キャンパスがあるので、若者の活気を得て街づくりができるのではないかと期待しています。  2022年秋田市で行われた東北絆まつり(東北六魂祭)はヒントでした。感染対策のため会場はスタジアムで酒類の提供もありませんでした。ですが、売り上げは良かったそうです。祭りと一緒に集結した東北のグルメに皆さんが舌鼓を打ったそうで、『酒が出せないなら儲けがない』と出店しなかった事業者が悔やむほどの盛況ぶりだったようです。コロナ禍でも経済は両立できると実証してくれました。  東北と新潟を合わせた7県で、あるいは福島市と東北中央道でつながる相馬、米沢と連携した街づくりも効果的なのではないでしょうか。福島県が震災・原発事故で打撃を受けたのは確かですが、助けを求めるだけではもう通用しません。力強く立ち上がって魅力ある地域にしていかなければなりません」 福島商工会議所ホームページ 政経東北【2022年12月号】

  • 【二本松商工会議所】菅野京一 会頭インタビュー

     すげの・きょういち 1954年2月生まれ。福島大経済学部卒。糸屋ニット・菅野繊維代表取締役。二本松商工会議所副会頭2期を経て11月から現職。  2022年11月1日、二本松商工会議所の臨時議員総会が開かれ、新会頭に菅野京一副会頭(68、糸屋ニット・菅野繊維代表取締役)が選出された。コロナ禍、物価高、少子高齢化、後継者問題など、地方の中小企業は深刻な課題に直面している。そうした課題に対し、同商工会議所ではどう対応していく考えなのか。菅野新会頭に話を聞いた。  ――2022年11月に開かれた臨時議員総会で新会頭に選出されました。率直な感想は。  「二本松市は中核市である福島市や郡山市の中間地点に位置していますが、『二本松の提灯祭り』が毎年大いに盛り上がることからも分かる通り、郷土愛の強い地域で、100年続く会員事業所も少なくありません。私自身、故郷を離れて一度地元に帰ったとき、安達太良山を見て郷愁にかられ、あらためて郷土への誇りを感じた記憶があります。  だからこそ、まちを活性化していくには市外から移住してくる人や一度故郷を離れた若い力を積極的に受け入れ、活用していくことが重要です。そういう意味では会議所だけではなく、『オールにほんまつ』で盛り立てていくことが重要だと思います。  管内には安達太良山のほか、岳温泉、『二本松の提灯祭り』、『二本松の菊人形』など観光資源が多い。もっと言えば、坂道が多い地形など、地元に住んでいる人間にとって当たり前になっているものでも、十分観光資源になり得ます。市やさまざまな団体と連携し、地元の魅力を見つけて磨く作業を続けていきたいと思います」  ――新型コロナウイルスは感染拡大から3年以上経過しましたが、収束の見通しが立ちません。地方経済にも大きな影響を与えていますが、会員事業所の経営状況はいかがでしょうか。  「飲食業・宿泊業は特に厳しい状況にあります。今まで国や県から出ていた補助金がなくなり、補償も全くない中で店を閉めた所も少なくありません。これは会議所だけで解決できる課題ではありません。  当会議所ではコロナ対策を万全にして徐々に会合などを再開させたいと考えており、年始の賀詞交歓会はあだたら商工会と合同で3年ぶりに開催する予定です。ただ、県内では業績不振となった結婚式場が閉鎖しており、当管内でも大人数を収容できるコンベンション会場が少なくなっているのが悩みの種です」  ――コロナ禍や国際情勢の悪化で物価が高騰しています。会議所としてどのように対応していくべきだと思いますか。  「企業にとって電力値上げの影響は大きく、特に新電力に切り替えた事業所は苦しんでいます。会議所では経営指導に力を入れていますが、それで乗り切るのも限度があります。国には電気料金の負担軽減策の拡充を行ってほしいと思います。  今後、厳しい状況が続けば事業所をたたむケースが増えることも懸念されます。ただでさえ、中小企業は後継者問題を抱えています。昨今は銀行から送られる事業承継やM&Aの案内もよく目にするようになりました。子どもがいても、家業を引き継がず、自分自身で目標を持って別なことをするケースが増加しているようです。  商店街の空き店舗解消にも直結する重要な問題ですが、大胆な政策が無ければ解決しないと思います。一方であえて家業を継いで、時代に合わせた新しい形で経営する若手経営者もいます。会議所としてはさまざまな経営者のサポートを継続していきたいと考えています。  市外から移住者を受け入れ、まちを活性化させるためにも、特色を出すようにして、『この土地で商売をしたい』と思われる地域にしていかなければいけないと思います」  ――3選を果たした内堀雅雄知事に望むことは。  「真摯に県政に向き合っていると思うので、今の姿勢を崩さず続けてほしいですね。内堀知事は『オールふくしま』という言葉をよく使いますが、今後も県全体の発展に努めてほしいと思います」  ――「二本松の提灯祭り」、「二本松の菊人形」が3年振りに通常開催されるなど、今まで中止・延期になっていたイベントが復活しつつあります。今後、どのように観光振興を図っていくべきとお考えでしょうか。  「提灯祭りには予想以上に大勢の方が訪れ、露店も盛況でした。こういった行事やイベントが待ち望まれているとはっきり分かりました。  提灯祭りは観光振興という意味でも大事ですが、旧二本松市民にとって精神的支柱であり、祭りがないと活気が生まれません。経済効果も大きいので、たとえコロナ前と形は変わっても、継続していかなければならないと感じました。  菊人形も予想以上の盛況ぶりでした。〝お城山〟の紅葉が見ごろを迎え、菊が満開のタイミングで開催期間が終了したのが残念でした。  菊人形の季節には、寺社、事業所、店舗、住宅の前に、菊の鉢植えや菊の花を花器に浮かべた『菊手水』が飾られ、まち全体が菊の花に染まります。1本の茎から1000もの花を咲かせる千輪咲は、日本菊花全国大会で内閣総理大臣賞を獲得しています。  そういう意味で市を代表する行事であり、今後も『菊のまち』をアピールしていきたいと思います」 意見聞きながら舵取り  ――菊人形の会場近くの商店街もにぎわっていたようですね。  「空き店舗を活用した喫茶店や洋菓子店が開業しており、開催期間の週末は多くの来店客でにぎわっていました。SNSなども上手に活用してPRしていたようです。コロナ禍でインバウンド客は少なくなっていますが、海外まで情報が届けば需要の増大にもつながります。発信の重要性をあらためて感じました。  個々の事業所の発信をコーディネートして連携していけば、点同士がつながり、さらなるまちの活性化につながっていくと思います。喫茶店目当てで市内に訪れた観光客が、別な所に足を運ぶという展開も生まれるはずです。そうした考え方が今後は重要になると思います」  ――今後の抱負。  「3年間の任期がスタートしたばかりですが、会員事業所や市民の皆さんに『良くなった』と思われるような実績を残したいと思います。ある意味、激動の3年間になるかもしれません。  会頭に選出されましたが、私は一人で引っ張っていくタイプではないと思っています。皆さんの意見をとりまとめながら進む性格なので、意見を吸い上げながら、舵取りを行っていきたいと思います。  副会頭、議員、会議所職員には素晴らしい方が数多くいます。そういった方々と力を合わせて、これまでとは違う会議所を作り上げていきたいと思います」 二本松商工会議所ホームページ 政経東北【2022年12月号】

  • 【原町商工会議所】高橋隆助会頭インタビュー

     たかはし・りゅうすけ 1951年生まれ。原町高、拓殖大卒。㈱高良代表取締役。原町商工会議所副会頭を経て2010年11月から現職。現在5期目。  2022年度は全国の商工会議所の一斉改選があり、原町商工会議所は高橋隆助会頭の続投が決まった。高橋会頭は5期目に入り、この間、震災・原発事故や新型コロナウイルス感染症など、厳しい環境の中で地元経済の舵取り役を担ってきた。再任間もない高橋会頭に管内の状況や課題、今後の抱負などを聞いた。  ――5期目に入りました。  「皆さま方からのご推挙により会頭に選任され、誠に身の引き締まる思いであり、引き続き誠心誠意努力する覚悟を新たにしています。2010(平成22)年11月に会頭に就任してから、これまでの4期12年間は、東日本大震災による地震・津波・原発事故といった未曾有の被害や近年の台風・大雨、福島県沖地震と、自然災害が重なりました。さらには新型コロナウイルス感染拡大防止対策としての経済活動の規制や自粛は経済人にとっては翼をもがれた鳥のようでした。また、ロシアによるウクライナ侵攻に起因した経済問題も深刻化しています。  当面の課題が3つ挙げられます。1つはALPS処理水の処分や進まない住民帰還等の復旧・振興に直結する課題。2つはコロナ禍の中で、いかに経済を維持していくのか。3つはロシア、ウクライナ両国の日本経済に与える影響が、企業をはじめ、食料品・生活用品の値上げなど家庭にまで押し寄せていること。この様々な状況下にある原町区内の事業所は経営を続けることさえ困難な状況に陥っています。こうした点を踏まえ11月1日から始まった5期目の3年間は、商工会議所が果たすべき役割などを念頭に次の3つを基本方針にしたいと思っています。  1つ目は東日本大震災からの復旧・復興です。任期3年間は国の第2期復興・創生期間の残り3年度と時期が重なっています。この期間は人と人、商工業者と商工業者のつながりや、会員事業所が希望や生きがいを持って前を向いていくことができる地域経済環境の整備に取り組み、次の世代の人たちが安心して経済活動ができる地域経済環境の整備に取り組んでいきます。そのためには福島イノベーション・コースト構想を活用して産業交流事業を促進し、新たな取り引きを図りたいと思います。  2つ目は相談業務、事業所支援の充実です。国は9月に『withコロナに向けた政策の考え方』を決定し、ウィズコロナの新たな段階に移行しました。全数届出の見直しなど保健医療体制の強化を進めていくことになりましたが、コロナに関する収束が宣言されていない現在においては、感染症対策は継続する必要があると感じます。また、ロシアによるウクライナ侵攻は世界の経済成長にも大きな影響を与えているばかりでなく、地域事業所の経営にまで影響が及んでいます。この課題に対応するため、会員事業所、地域の商工業者に対して相手の立場に立ち、ていねいな仕事を心掛けながら伴走型支援を実施していくことが重要です。また、より高度な専門的見地を必要とする場合は、ハンズオン支援につなげていきます。同時に会員事業所の意見を集約して要望活動などを行っていきます。  3つ目は関係機関との連携強化です。日本商工会議所をはじめ全国515商工会議所、東北商工会議所連合会との連携をより強化していきます。また、県や市との協力関係も重要ですから、推進していきたいと考えています」  ――新型コロナの影響について。  「一向に収束しない感染者数や落ち込んだ経済活動により、商工業者は大きな損害が出ています。今後いかに経済活動をしていくか、難しい課題を抱えたままとなっています」  ――円安や物価高、燃料費高騰も深刻な問題です。  「ロシアによるウクライナ侵攻は深刻な人道危機を招いているだけではなく、各国の経済成長に大きな影響をもたらしています。両国は一次生産のサプライヤーで、世界全体で小麦が約30%。トウモロコシや無機質肥料、天然ガスが約20%。石油が約11%を両国で占めています。また、半導体の製造に使用されるアルゴン(不活性ガス)、航空機に用いられるスポンジチタンの一大生産国でウランの資源量も高い。加えて金属輸出も重要な役割を担っています。これら一次生産品の価格はロシアのウクライナ侵攻以降、急速に上昇しており、世界経済の成長を鈍化させてインフレ圧力を高めています。侵攻以前はほとんどの国で新型コロナからの回復傾向にありましたが、侵攻によって2022年1年間で世界の経済成長率は1%以上押し下げられインフレ率も2・5%上昇すると試算されています。日本を含めたアジア太平洋地域の先進国やアメリカは欧州地域に比べてロシアとの貿易・投資関係は弱いものの、国際的な需要低下と物価上昇は、企業をはじめ家計まで深刻な影響を与えています」 復興関連施設の影響  ――2022年は3年振りに相馬野馬追が通常開催されました。   「ウィズコロナの新たな段階に移行し、保健医療体制の強化を進めていくことになりましたが、収束が宣言されておらず、第8波が迫る中、従来通りの感染対策の必要性を感じています。一方で、経済活動の停止・自粛等は経営者の活力を大きく減衰させ、非常に苦しくもどかしいものでした。コロナ禍で中止されたイベント等の復活は経済を回していくためには重要です。しかし、いまの状況下では、自分が感染しない、人にも感染させないという意識が重要だとあらためて感じています」  ――福島ロボットテストフィールドなどの復興関連施設が地域経済に与える影響について。  「先ほども述べたように、5期目の任期は国の第2期復興・創生期間と重なっています。この期間は人と人、商工業者と商工業者のつながりや会員事業所が希望や生きがいを持って前を向いていくことができる地域経済環境の整備に取り組んでいきます。10月には当商工会議所役員議員と進出企業の交流会を行いました。出席頂いた6社の進出企業紹介の後、短い時間でしたが交流会を行いました。その後、アンケート調査を行ったところ、今後の取り引きにつながる可能性として『感じられた』『やや感じられた』を合わせると80%超でした。また、交流会の満足度も高く、このような交流会は今回が初めてで、感染対策による制限もありましたが、積極的にそういった機会を設けることの重要性を再認識することができました。今後も福島イノベーション・コースト構想を活用して産業交流事業を促進し、新たな取り引きにつなげたいと思っています」  ――今後の抱負を。  「伴走型支援を実践し、会員事業所が安心して経済活動ができる環境づくりに力を尽くしていきたいと思います」 原町商工会議所ホームページ 政経東北【2022年12月号】

  • 【いわき商工会議所】小野栄重会頭インタビュー

     おの・えいじゅう 1954年10月生まれ。慶應義塾大商学部卒。オノエー㈱社長。いわき商工会議所副会頭を経て2011年5月から現職。現在5期目。  いわき商工会議所会頭にオノエー(株)社長の小野栄重氏が再任され新体制がスタートした。コロナ禍や物価高など様々な課題が経済を覆うが「挑戦」と進化・伸化などあらゆる意味を持たせた「シン化」をテーマに解決に取り組む。JRいわき駅前の再開発や、いわきFCのJ2昇格はその起爆剤となりうるか。小野会頭に今後の見通しを聞いた。  ――5期目の抱負を教えてください。  「現在、いわき地域は、自然災害、原発事故、コロナ禍からの復興に加え、エネルギー・仕入価格の高騰、世界的なインフレの進行、AIやデジタル技術の進展、カーボンニュートラルへの対応、若者流出や長寿社会の到来などさまざまな課題に直面しています。こうした課題を乗り越え、次のステージへ進むためには、事業所も、事業所を支える人財も地域も、大きく変化する環境に果敢に『挑戦』し、新化して行くことが重要です。商工会議所のミッションは、ネットワーク力を生かしながら、こうした挑戦を支援し、地域全体の持続力、革新力、成長力を底上げすることにあると考えます。  今期3年間のテーマを『挑戦、シン化(進化、伸化、深化、新化)。そして未来へ』としました。『世界に誇れる復興モデル都市の実現』に向けて取り組んでまいります」  ――新型コロナの影響について会員事業者からどのような声が寄せられていますか。  「国・県の需要喚起策により、幅広い業種で売り上げは回復傾向にあります。しかし、観光業や飲食業においては、コロナ前の水準にまでは需要が回復しない中、コロナ融資の返済を危ぶむ事業主が多いです。観光旅館は『全国旅行支援のスタートにより、団体客・個人客ともに増えてきているが、コロナ前の7割程度の回復に留まっている』、また飲食店からは『ゼロゼロ融資の返済が始まったが、返済財源の確保が難しい』といった声が上がっています」  ――円安や物価高、燃料高騰の影響を教えてください。  「コスト上昇が収益を圧迫し、資金繰りが悪化している会員事業所からの相談が日を追うごとに増えています。『30%コストアップしたが、取引先との交渉が上手くいかず、価格転嫁は10%しかできない(部品製造業)』、『仕事は好調だが、資材の高騰に苦しんでいる。儲からない(工務店)」、『客離れが怖く、値上げしないで頑張ってきたが、もう限界。値上げに踏み切った(飲食店)』、『SNS広告への移行がどんどん進み、経費削減で紙媒体の広告宣伝費を抑えている。売り上げ減の中での経費増は厳しい(印刷所)』といった声が上がっています。『インボイス導入の影響が痛い(ビジネス旅館)』、『社員を増やしたいが、思うような人材が集まらないので、仕事を受注できない(テレワーク)』といった課題も挙がっています」  ――国、県に要望したいことは何ですか。併せて3選した内堀雅雄知事に何を求めますか。  「20年前に世界2位を誇った国民一人当たりのGDP(国内総生産)は、今や27位にまで後退しています。2020年度に名目GDP600兆円を目標としていましたが、実際は536兆円に留まり、公的債務も1255兆円に膨らんでいます。  政府には原因をしっかりと分析し、日本の国力を取り戻せるよう、10年後、20年後のビジョンを明確に示してほしいですし、達成のために必要な戦略を練り上げてほしいです。日本はいまだにコロナの国産ワクチンが開発できていません。奨学金を返済できない若者がいるし、1日に3食を満足に取れない子どもたちがいます。子や孫の世代にツケを回さないように、いまの国民が痛みを分かち合うことになっても先を見据えた政策をすぐに実行すべきではないでしょうか。  一方で大倒産時代とならないよう、借り換え、追加融資、返済繰り延べ、条件変更などコロナ融資返済への柔軟な措置を取ってほしいです。また、浪江町に立地が決まった『福島国際研究教育機構』が、福島県の復興を後押しし、日本の産業競争力強化につながるよう、十分に機能を発揮できる体制づくりと予算付けをお願いしたいです。  なお、為替動向に一喜一憂しても仕方がありません。インバウンド観光はもちろん、国内に生産拠点を呼び戻す、地域を挙げて輸入に力を入れるなど、円安を逆手に取った戦略も考える必要があります。  偶然にも、知事がスローガンに掲げた『進化、新化、深化』と、商工会議所のテーマ『挑戦、シン化(進化、伸化、深化、新化)』が重なりました。思いは同じであり、ともにシン化を図って行きたいです」  ――JRいわき駅周辺の中心市街地活性化計画の進捗はどうですか。  「いわき市中心市街地活性化基本計画は、2017年4月に国の認定を受け、2022年の3月末をもって5年の計画期間が終了しました。しかし、並木通りの再開発事業や旧イトーヨーカドー平店跡地における都市計画変更などを勘案し、スムーズな開発が進められるよう、基本計画を1年延長しました。  主な整備内容としては、①平城本丸跡地の公園整備(歴史遺構の出土により計画は変更中)、②並木通り再開発(ミッドタワーいわき)、③旧イトーヨーカドー平店の開発があります。また基本計画に記載がないものとしては、④2023年1月に開業するJRいわき駅ビル(S-PAL)やホテル開発(ホテルB4Tいわき)、⑤2025年度を目標に進められている、駅北口の松村総合病院の移転があります。  市と商工会議所、まちづくり会社や商店会連合会などが一体となって事業を推進、支援しているところであり、まちの再生に大きな効果を発揮するものと期待しています」  ――サッカーのいわきFCがJ2に昇格しました。地元経済界として何に期待していますか。  「松本山雅との試合では約800人のサポーターがいわき市に来ました。湯本温泉や平のビジネスホテルが繁盛し、夜は飲食店に繰り出し街が活気づきました。白水阿弥陀堂や小名浜を観光した方も多いでしょう。J2昇格で1試合あたり、今までの2倍の観客動員数を見込んでいます。特に、山形、仙台、秋田、千葉、東京、大宮など、割と近くに対戦チームが多いです。試合の直接的な経済効果を求めつつ、いわきを好きになってくれるファン、リピーターを増やしていきたいです。  また、サッカーのインターハイがJヴィレッジで固定開催されます。いわきをサッカーの聖地にして全国から合宿を呼び込んだり、いわきFCのトレーニングのノウハウを一般にも活用し、メタボリック症候群の解消など市民の健康増進にも役立てていければと考えています」 いわき商工会議所ホームページ 政経東北【2022年12月号】

  • 【浅川町】江田文男町長インタビュー

     1955年生まれ。2003年から町議4期。その間町議会副議長や監査委員を歴任、2018年の町長選で初当選。2022年10月の町長選で再選を果たした。  ――2022年10月の町長選で再選を果たしました。  「出馬表明をしたのが6月中旬で、対立候補陣営より動き出すのが遅かったので不安を抱いていました。しかし、町民の皆さまから〝町政を継続してほしい〟という激励の声が多数寄せられ、引き続き町政の舵取りを担わなければならないという思いを新たにしました。1期目同様、現場に足を運んで町民の声を聞き、町民のために汗をかき、町民目線の町政運営を進めていく所存です」  ――選挙戦で訴えていた目玉政策「浅川小学校跡地への役場庁舎移転」構想について。  「現在、浅川中学校校舎の建て替えを進めています。老朽化により耐力度調査を実施した結果、構造上危険な建物との判断となり、建て直す運びとなりました。関連予算が3月定例会で全会一致で可決され、2022年度、実施設計を進めています。コロナ禍やウクライナ情勢の影響により建設資材が高騰していますが、子どもたちの安心・安全が第一なので、早期完成に向けて注力していきます。  さらに同工事完了後、将来的に同敷地内に浅川小学校の校舎を新築移転し、JR浅川駅前にある同小学校舎を役場庁舎として利活用する構想を練っています。現庁舎は築年数が県内でも最長クラスで、耐震性などを考えると何かしらの措置を講じる必要があります。駅前に役場庁舎があれば人の流れが変わり、交流人口増加、商店街のにぎわい創出、町中心部の活性化に貢献すると考えています」  ――1期目から子育て支援の拡充や福祉向上に注力されてきました。  「まず町内の認定こども園の園庭を土曜日に一般開放し、町内の園児以外のお子さんも利用できるようにします。また、全国的に増加傾向にある不登校のお子さんが学校へ行ける環境整備に向けて教育長と協議を重ねています。子育て支援と福祉向上に終わりはありません。さらなる教育環境の充実と福祉向上に努め、子育て世代のみならず、町外からの移住者も住みやすいまちづくりを進めます」  ――2期目の抱負について。  「町民目線でさまざまな声を聞き、町民のために汗をかき、笑顔で住みよいまちづくりに1期目同様努めていきます。モットーにしているのは、〝町民が幸せなまちづくりを進める〟ということ。町民一人ひとりが幸せになることで、より多くの幸福が数珠つなぎに生まれていくものと考えています。〝文化とスポーツのまちづくり〟として、城山や花火、即身仏といった町の文化の魅力を広めていくとともに、小学生から高齢者までのスポーツ活動全般を支援し、町の活性化につなげていく考えです」 浅川町ホームページ 政経東北【2022年12月号】

  • 【相馬市】立谷秀清市長インタビュー

     たちや・ひできよ 1951年生まれ。県立医大卒。95年から県議1期。2001年の市長選で初当選。現在6期目。18年6月から全国市長会会長を務める。  ――2022年3月に発生した福島県沖地震で相馬市は大きな被害を受けました。  「特徴的な被害として挙げられるのは、ほぼ100%の住宅が被災したことです。家財道具が倒れたり、食器類が割れるなどの被害はほとんどの住宅であったと思います。家屋損壊も相当数に上りました。生活の現場で市民はさまざまな苦労を余儀なくされ、それは発災から8カ月経った今も続いています。  屋根には未だにブルーシートが被せられ、屋根瓦の修繕も思うように進んでいません。大工さんもフル回転で対応していますが、ここ20年で大工さんの人数自体が減っており、修繕に当たる人員は不足しているのが実情です。それでも市民の多くは、何とか自宅を再建しようと努力を続けていますが、中には再建を諦め、市営住宅や民間アパートに転居された方も少なくありません。それぞれ事情が異なるので(再建を諦めるという選択は)仕方ないのでしょうが、生活の基盤となる住宅が元通りにならないと『相馬は復旧した』という気持ちにはなれませんね。  産業では、観光業の方々を中心に国のグループ補助金が適用され、復旧費の4分の3が補助されます。それはありがたいことなのですが、残り4分の1は自己負担になります。平時ならまかなう余力があっても、新型コロナウイルス感染症の影響で客足が落ち込む中、自己負担分が今後の経営に影響を与えないか心配されます。また、後継者問題に直面していた事業者の中には先行きが見通せないとして、今回の被災で事業を取りやめたところもあったようです。事業者は千差万別、いろいろと悩みながら今後の経営を考えている状況です。主要な工場については、相馬共同火力新地発電所は現在も一部運転再開に至っていませんが、その他の工場はほぼ稼働しています。  東日本大震災から11年8カ月経ちますが、復興を遂げつつあった中で2021年2月、2022年3月と立て続けに地震に襲われ、市民の間には『大地震がまた来るのではないか』という憂鬱感が広がっています。そこに追い打ちをかけているのが新型コロナの影響による閉塞感と国際情勢の不安定さです。災害から復旧を果たしても、新型コロナの影響があって商売が上手くいかない、そこに原油高、円安、物価高が重なり、相馬市は非常に厳しい状況にあるというのが実感です。  とはいえ、市民がみんな下を向いているかと言うと、そんなことはありません。市職員も同様です。東日本大震災の時も実感しましたが、相馬市民は根性があります。市長として、この難局を市民一丸となって乗り越えていきたいと考えています」  ――相馬市内の新型コロナ感染状況はいかがですか。  「相馬市はPDCAサイクル(※)に則り、市ワクチン接種メディカルセンター会議で議論しながらワクチン接種を進めてきました。例えば接種方法は、スポーツアリーナそうまを会場とした集団接種が85%、病院での個別接種が15%という割合です。集団接種会場では何が起きても安心・安全が保てるよう万全の態勢を整えていますが、接種により何らかのリスクが生じる恐れのある方は最初から病院(個別接種)で対応しています。また、強い副反応が出た方にはその後の接種を勧めていません。  ワクチン接種の効果ですが、相馬市独自のデータではこれまでに約2600人(9月25日まで)の市民が感染し、そのうち中等症以上になられた方は21人(0・8%)で、99%以上の方は軽症です。感染確率は、ワクチンを適正回数接種した方が4・4%、適正回数接種していない、あるいは全く接種していない方が17・8%で約13㌽の差がありました。  これらの結果から、ワクチン接種の効果は確実にあると言えます。ただし、接種しても感染するブレイクスルー感染も見られるので『効果は絶対ではない』という点は認識しなければなりませんし、中にはさまざまな理由から接種しない・できない方もいるので、そうした意向も尊重しなければならないと思っています。  さらに課題になるのが、新型コロナは感染症法上の2類相当になるため、感染者や濃厚接触者の長期離脱が社会・経済に悪影響を及ぼしてしまうことです。今後、同法上の扱いをどうしていくのか、具体的には5類に引き下げられるのか国の動向を注視する必要があります」  ――年末に向けては第8波が懸念されていますが。  「相馬市では11月1日からオミクロン株対応ワクチンの集団接種を開始しており、医師は10月22日に全員接種済みです。接種間隔をめぐっては3カ月あけるのか、5カ月あけるのかという議論がありましたが、私は全国市長会長として『3カ月で接種させてほしい。そうでなければ第8波に間に合わない』と政府に申し入れ、10月21日に了承が得られた経緯があります。計画通り進めば12月20日には希望者の接種を終える予定です。  第7波は、感染者は多かったが重症者は少ないものでした。第8波がどのような特徴を示すか分かりませんが、事前の準備をしっかり整えておきたいと思います」  ――福島第一原発の敷地内に溜まる汚染水の海洋放出について、国、東電に求めることは。  「しっかりとしたエビデンスに基づき最終的な処理方法を国の責任で決めること、それによって漁業者等に被害が出ることがあればきちんと補償すること、この二つは一貫して申し上げてきました。実際に海洋放出した場合、どういう被害が出て、どこまで補償が必要かは現時点で分かりませんが、国と東電には被害者の声に耳を傾け、誠実な対応を強く求めたい」  ――観光振興への取り組みは。  「3月の地震で通行止めが続いていた市道大洲松川線が10月20日に通行再開しました。同線は海岸堤防上などを走る観光道路で、2020年10月にオープンした浜の駅松川浦、2022年10月に物産館がリニューアルされた道の駅そうま、さらに磯部加工施設の直売所を有機的に結び付ける役割を担っています。各施設とも評判は上々ですが、今後の課題はこれらの施設を訪れた方々をどうやって街中に誘導するかです。例えば相馬市では現在、相馬で水揚げされる天然トラフグを『福とら』の名でブランド化してPRに努めており、街中でトラフグ料理を味わってもらうのも一つのアイデアだと思います。また、新型コロナや地震の影響で旅館などが厳しい状況にあるので、市内に整備したサッカー場、ソフトボール場、パークゴルフ場などを生かした合宿の誘致も検討したいですね」  ――最後に抱負を。  「ダメージからの回復、これに尽きます。1日でも早く、市民が普通の生活に戻れるよう市長として尽力していきます」 相馬市ホームページ 政経東北【2022年12月号】

  • 【県南建設事務所】髙萩俊所長インタビュー

    たかはぎ・たかし いわき市出身。室蘭工業大学土木工学科卒。1989年福島県入庁。まちづくり推進課主幹、港湾課長などを歴任し、2020年4月より現職。  ──福島県沖地震の被害について。  「当管内では、一部区間で道路を横断するボックスカルバートや、橋梁などの道路構造物と土工部の間で、小規模な段差、クラックなどが確認されましたが、特に大きな被害はありませんでした。今後も、地震が発生した場合等でも、被害を最小限に抑えられるように、適切に維持管理に努めていきます」  ──2022年10月2日に国道349号下関工区が全線開通しました。  「当該事業箇所は、茨城県境に近く、大型車両も比較的多く利用していますが、集落の中を通る非常に狭隘な区間で、地元にお住まいの方や、道路を利用される方々にご不便をおかけしていました。このたびの完成で、大型車のすれ違いが円滑となり、歩行空間も確保され、安全・安心な通行が実現されました。今後は、関東地方から福島県へ広域的な交流・物流の活性化や観光、産業振興が促進され、矢祭町をはじめとする県南地域が活力に満ちた魅力ある地域としてさらに発展していくものと期待しています」  ──2022年度の重点事業について。  「令和元年東日本台風で被災した公共土木施設153箇所のうち、151箇所で復旧が完了しています。残る2箇所は2022年度中に完了する見込みです。近年頻発する自然災害から生命や財産を守るため、渡良瀬川等の河川改修や、河道掘削、堤防補強、土砂災害対策等の防災・減災、国土強靱化を推進していきます。 また、県有施設について、戦略的に維持管理をするために、公共施設等総合管理計画に基づき、長寿命化対策を推進しています。  道路については、県土の復興と地方創生に欠かせない広域道路ネットワークの構築に向け、物流や交流人口の拡大を図る国道294号(白河市・白河バイパス)や県土連携軸(南部軸)である国道289号(鮫川村・渡瀬工区)等、復興関連事業の早期完成を図るとともに、幹線道路の整備も推進していきます。  建設業の担い手確保では、現場見学会を管内の小学校だけではなく、幼稚園、中学校まで拡大し、それぞれの年代に合わせた現場見学会を多数開催し、将来の担い手になるきっかけを作っています」  ──今後の抱負。  「『福島県総合計画』の部門別計画である『土木・建築総合計画』の地域別計画では『県境を越えた広域連携の中心として、自然、歴史、伝統文化をいかしながら、持続的に発展する県南地域』を基本目標に定め、この基本目標に向けて各種施策に取り組んでいきます。  県土の南部軸となる国道289号のほか、国道349号、国道118号等の広域的な道路ネットワークの強化や幹線道路の整備を推進することで、地域の物流の円滑化はもとより、産業や観光の更なる振興を支援し、活力あるまちづくりを目指していきます。また、各水系の流域治水や砂防事業、県有施設の長寿命化事業等にも重点的に取り組み、災害に強いまち、安全で安心なまちづくりを目指していきます。  県南地域が交通の利便性と防災力の高いまちとなり、更には関東に近い『地の利』を生かすことができれば、移住や二地域居住等の需要が高まり将来的な人口減少が抑制されるなど、地域全体の持続的な発展に期待が持てるようになります。  本県の復興創生を地域の方々に実感していただき、次世代にしっかりとした社会基盤を残すため、また、『地域の守り手』である建設業が地域の重要な産業として発展するよう関係機関や建設業界等の皆様と連携して様々な取り組みを行っていきます」 県南建設事務所ホームページ 政経東北【2022年12月号】

  • 【福島県ビルメンテナンス協会】佐藤日出一会長インタビュー

     さとう・ひでいち 1955年4月生まれ。㈱東日取締役会長。2017年5月から福島県ビルメンテナンス協会会長を務める。  ――2022年3月に発生した福島県沖地震の影響は。 「相双地域で大きな被害が見られました。がれきなどを処理するための焼却炉が故障し、後片付けが進まなかったため、ビルメンテナンス業務ができなかった事業所があったと聞いています。その他の地域でも地震により建物が使用できない事態となり、郡山市では中央図書館が利用不可になりました。そのほか、ホテルなどで営業休止となりビルメンテナンス業務が困難になった事例もあり、少なからず影響を受けています」 ――新型コロナウイルス感染拡大の影響はいかがでしょうか。 「協会としての講習会や研修会は2年間開催を見送り、資料や回覧物を各会員に配布する形で講習会を開催してきました。先日、収容人数を限定した形ではありましたが、ようやく研修会を実施することができました。当協会が各種集会・行事を開催する際は、会員企業の意見も尊重したうえで、検温と手指消毒を徹底し、クラスター発生を未然に防ぐよう取り組んでいます」 ――会員企業数増加に向けた取り組みの進捗状況を教えてください。 「加入を勧める際には、まず会費が正会員の3分の1ほどで済む『準会員』として加入していただき、協会の取り組みや活動を見ていただくようにしてきました。その結果、準会員2社に正会員として加入していただきました。正会員26社、準会員7社、敷材などを提供していただいている賛助会員7社の計40社体制となっています。現在も引き続き勧誘を進めており、徐々にではありますが、会員数増加へと転じています。 当協会は公益社団法人であることも考慮すると、現在の倍は会員数がほしいというのが本音です。15年ほど前、正会員が10社脱退したことがありました。脱退した企業の呼び戻しも含め、会員企業の増強に向け取り組まなければなりません。脱退した企業の中には代替わりした会社もあるので、あらためてアプローチをかけていき、現状から10社増やすことを目標としています。 次に、県や自治体に、地元企業の積極的な採用を働きかけ、当協会の会員企業が優先的に入札に参加できる仕組みづくりを促したいと考えています。こうした取り組みを続けることで、会員数の増強につなげていきたいと考えています。 さらには、①建物の環境衛生の保全や維持向上を目的とした資格〝建築物清掃管理評価資格者(インスペクター)〟の養成、②建物から排出される温室効果ガスの削減のため、建物の利便性を維持しながら設備機器の運用改善を行う〝エコチューニング〟の推奨――も進めていきます。 このほか、県内の支援学校への講習会を通して、多くの生徒さんに技能講習を行っています。社会に出た後に取り組む就労支援などで役立てていただきたい所存です」 福島県ビルメンテナンス協会ホームページ 政経東北【2022年11月号】

  • 【磐城国道事務所】原田洋平所長インタビュー

     はらだ・ようへい 1982年12月生まれ。広島市出身。東大工学部卒。2005年に国土交通省入省。北海道開発局のほか総合政策局、内閣官房IT総合戦略室、道路局企画課評価室を経て今年4月から現職。  磐城国道事務所長に国土交通省道路局から原田洋平氏が4月に就任してから半年が過ぎた。3月の福島県沖地震で被害を受けた国道6号の復旧に始まり、東日本大震災・原発事故からの復興や防災に重要な国道の整備を指揮している。交通拠点の施策に取り組んできた経歴を生かして、浜通りの地域づくりを支援したいと意気込む。  ――4月に所長に就任されました。率直な感想と抱負をうかがいます。 「東北地方への赴任は初めてになります。福島県に来る時に最初に思い浮かんだのはやはり東日本大震災と原発事故でした。着任してすぐに地震・津波・原発の被害を実際に見て勉強しないといけないと思い、東日本大震災・原子力災害伝承館などのアーカイブ施設を一通り回りました。廃炉作業中の福島第一原子力発電所も視察しました。 着任するまで、震災と原発事故を当事者というよりは一歩引いて見ていたと思います。あの日から11年経ちました。被害はまだ残っている部分があること、同じ被災地でも復興のペースには違いがあることをまざまざと感じました。双葉町のように帰還がようやく始まった場所もあります。震災・原発事故の被災地にある国道事務所の所長として、どのように復興の手伝いができるか真剣に考えていきます。 前職の道路局で交通拠点を整備する施策を担当してきた経験を生かして、多方面から地域づくりに貢献していきたいです」 ――今年3月に発生した福島県沖地震で相馬地域には甚大な被害が発生しました。管内への影響をお聞きします。 「管轄の国道6号について述べたいと思います。相馬市内と新地町を通る相馬バイパスで一部道路が沈下して通行止めとなりました。応急復旧をして通行止めはすぐに解除できました。ただ、通行規制とならないまでも路面や橋の境目などに段差ができるなどあちこちが傷んだのでアスファルトの舗装を直しました。大きな被害までは至らなかったのは幸いでした」  ――ふくしま復興再生道路として整備が進められている国道399号「十文字工区」のバイパス道路が9月17日に開通しました。開通までの経緯と効果についてうかがいます。 「いわき市と川内村を結ぶ国道399号は『補助国道』に位置付けられ、福島県が管理をしています。補助とはいえ、復興再生道路に指定され重要な道路であることには変わりません。開通した十文字工区はぐねぐねした道と急な坂道ばかりでした。車のすれ違いは厳しく『酷道』と形容される類でした。 改良しようにも開発が難しい地形のため、トンネルを掘らざるを得ませんでした。穴を掘る際に水が出るなど困難もあり、トンネル区間は国が代行して整備をしました。十文字工区全体は6㌔で、うち2875㍍のトンネルを含む3㌔の区間を国道事務所で担当しました。工事は順調に終わり、昨年9月には県に引き渡しました。県がトンネル以外の部分を整備したうえで今年の9月に開通した次第です。 開通は通勤通学と救急搬送に大きな役割を果たします。川内村の住民は高校や職場があるいわき市に通いやすくなり、救急車も搬送時間を20分ほど短縮できます。国道399号は、今までは救急車が走行するのは困難でした。今までは川内村からいわき市への搬送は、富岡町に東進して常磐道を南下していました。 生活だけでなく、観光にもプラスになります。阿武隈高地の中央部に位置する川内村は豊かな自然を背景にワインや蕎麦などの観光資源に恵まれています。双葉郡といわき地域が行き来しやすくなったことで、交流が盛んになり被災が深刻だった地域への観光にもつながります。復興再生に寄与するように願っています」 ――国道6号の勿来バイパス事業の進捗状況についてうかがいます。 「いわき市と北茨城市をつなぐ国道6号のバイパス道路です。今までの道路は勿来地区では海のすぐ横を通っており、津波で浸水するおそれがありました。また沿道には店舗が並んでいるにもかかわらず、片側1車線のままなので渋滞を引き起こしています。山側にバイパスを整備してこれらを解消する狙いです。 2015年度に事業に着手し、19年度に着工しました。県をまたぐ事業であり、茨城県側は常陸河川国道事務所が事業を進めています。当事務所は、福島県側の2・5㌔区間を担っています。800㍍弱の勿来トンネルがあり、昨年度末から掘削を始めています。掘削作業が今まさに山場です」 ――国道49号の北好間改良事業の進捗状況についてうかがいます。 「国道49号はいわき市から郡山市、会津若松市へ抜ける道路です。事業実施地は常磐道のいわき中央ICから郡山方面に2㌔ほどの区間に当たります。勾配の急な坂道が多く、半径100㍍前後のきついカーブが連続しています。郡山方面から来ると長くて急な坂を下ったところに同ICの交差点があり、事故が発生しやすい個所となっています。交通安全と渋滞改善を図るためバイパスにします。 現在、用地確保を進めていて、整ったところについて測量、工事を順次進めています。なお、当該事業に隣接して、雨量による事前通行規制区間があり、大雨時には広域迂回が発生していることから、今後はこちらの対策も必要と考えています」 ――双葉地区の交通安全対策事業について。 「国道6号のJR双葉駅の東側から北に向かって2㌔ぐらいの区間に付加車線と歩道を整備します。伝承館や復興祈念公園の入口にあたるため一定の人通りが見込まれ、また、大型車両が多く行き交う地域でもあるため、事故防止と渋滞解消のために当事業を進めています。昨年度に事業着手し、今年度から工事が始まっています」 ――結びに、地域とどう向き合っていきたいですか。 「何をするにも地域を深く知らなくてはならないといつも思っています。また、行政が良かれと思って一方的に行っては意味がありません。地域の方々が何を望まれているのか、何がしたいのか、寄り添って、声を聞きながら、我々の役割は何かを考えて地域づくりを手伝っていきたいです。そのために自治体や商工団体をはじめ、幅広い方々からご意見をお伺いしたいです。道路は地域の構成要素の一つであり、渋滞や事故、防災等の交通課題にも着実に取り組みつつ、道路を起点として地域づくりにどう関わっていけるかを柔軟な発想で考えたいと思います」 磐城国道事務所ホームページ 政経東北【2022年11月号】