Category

インタビュー

  • 【相双建設事務所】小池敏哉所長インタビュー

    【相双建設事務所】小池敏哉所長インタビュー

     こいけ・としや 1967年生まれ。宇都宮大学工学部土木工学科卒。1990年に県職員となり、土木部下水道課長、技術管理課長などを歴任。2022年から現職。  ――2月には県道広野小高線の富岡町の工区が完成し広野町から富岡町までの区間が結ばれました。 「一般県道広野小高線(通称・浜街道)は、広野町を起点に双葉郡の太平洋沿岸部を南北に縦断し南相馬市小高区に至る幹線道路で、このうち広野町から富岡町に至る区間約17・2㌔について、平成9年度から道路改良事業に着手しました。平成23年3月の東日本大震災後は、津波で甚大な被害を受けた被災地域の復興まちづくりを支援する道路として整備を推進し、令和5年2月に広野町から富岡町の区間を開通させることができました。広野町から富岡町までの改良道路により、安全で円滑な通行が可能となり、沿岸部における人と物の交流や地域間連携が一層図られ、産業の再生や観光の振興につながるなど、浜通りの復興を力強く後押しすることが期待されます」 ――昨年は福島県沖地震が発生し、相双地域は大きな被害がありました。 「令和4年福島県沖地震では、当事務所で管理する道路、河川、海岸において53箇所の被害が確認されたことから、早期復旧に取り組み、令和5年3月末時点で36箇所の復旧が完了しております。残りの被災箇所についても、令和6年度の完了を目指し、引き続き、道路等の復旧にしっかりと取り組んでいきます」 ――防災事業も重要です。 「令和元年東日本台風など、近年、激甚化・頻発化する自然災害に備え、河川の治水安全度を高めるため、『宇多川及び小泉川の改良復旧事業』等の河川整備を進めるとともに、河川堤防の強化を目的とした堤防天端の舗装や、河川の流下能力向上を目的とした河道掘削や伐木等を引き続き実施していきます。また、流域治水の考えに基づき、流域全体のあらゆる関係者が協働し、ソフト・ハードが一体となった防災・減災対策に取り組んでいきます。さらに、災害時の輸送を確保する道路ネットワークの強化や管理する各種公共土木施設の長寿命化対策を計画的に実施していきます」 ――震災・原発事故を受けての管内の整備状況について。 「県では、避難解除区域等と周辺の主要都市等を結ぶ幹線道路を『ふくしま復興再生道路』と位置づけ、住民帰還や移住促進、さらには地域の持続可能な発展の支援に取り組んでいます。当管内では国道114号、国道288号、県道原町川俣線、県道小野富岡線の4路線13工区でふくしま復興再生道路の整備を進めており、これまで国道288号(野上小塚工区)など、2路線9工区で供用を開始しています。残る2路線4工区についても引き続き整備を進め、相双地域の復興を着実に進めていきます。また、相双地域では、地域内において復旧・復興状況が異なっていることから、それぞれの状況に合わせた安全・安心な社会資本の整備にしっかりと取り組んでいきます」 ――今後の抱負。 「本年度は、県道小野富岡線(西ノ内工区)での一部区間供用や、令和元年東日本台風による災害復旧工事や宇多川改良復旧工事の完了を目指すとともに、国道114号(椚平工区)や復興シンボル軸(県道井手長塚線)の整備促進、県道浪江三春線(小出谷工区)の橋梁及びトンネルの設計着手、復興祈念公園における(仮称)公園橋の工事に着手するなど、相双地域の復興を着実に進めていきます。また、第2期復興・創生期間(令和3年~7年)の折り返しの年であり、地域の復旧・復興のステージを捉えながら、住民帰還へ向けたインフラの整備を着実に進めるとともに、適切な維持管理に、職員一丸となって取り組んでいきます」

  • 【福島県北建設事務所】長嶺勝広所長インタビュー

    【福島県北建設事務所】長嶺勝広所長インタビュー

    ながみね・かつひろ 1965年生まれ。会津若松市出身。新潟大卒。1987年に県職員になり、喜多方建設事務所長、土木部次長(道路担当、企画技術担当)などを歴任。昨年4月から現職。  ――県北建設事務所長に就任され1年が経過しました。この間を振り返って。 「令和4年度は、『ふくしま復興再生道路』の整備や、令和元年東日本台風等において、大規模な被災を受けた河川の再度災害防止に向けた河川改良などを職員が一丸となり、スピード感を持って取り組んだ1年でした。 また、令和4年3月16日の福島県沖を震源とする地震により、阿武隈川を渡る県管理の橋りょう3橋と桑折町管理の1橋の合計4橋が被災しましたが、そのうち2橋の復旧工事が完了し、残る2橋につきましても国による代行事業で実施することとなり、様々な事業が円滑に進捗しました。これも地域住民の皆様や国、市町村をはじめとする関係各位の御協力の賜であり感謝申し上げます」 ――管内における令和元年東日本台風の災害復旧事業をはじめ、河川、砂防事業の進捗状況についてうかがいます。 「令和元年東日本台風の災害復旧事業は概ね完了いたしましたが、甚大な被害を受けた移川・安達太田川(二本松市)、広瀬川(川俣町)、山舟生川(伊達市)において、再度災害防止に向け、災害復旧と併せた河川改良を、また、滝川(国見町)、濁川(福島市)、外3河川において背水(バックウォーター)対策として堤防の嵩上げ工事等を引き続き実施しています。さらに、河川の拡幅等と同時に橋梁の架け替え工事も行っています。 そのほか、治水安全度向上のため、古川(伊達市)、五百川(本宮市)などにおいて、築堤や護岸などの河川改修事業を進めていきます。砂防事業については、土石流対策として砂防えん堤を建設する大作沢(川俣町)や、がけ崩れ対策として防護柵を設置する椿舘(福島市)など、土砂災害が発生するおそれがある区域で、特に要配慮者利用施設が存在する場所を優先して対策事業を進めるとともに、小谷ノ沢(川俣町)や坊田沢(伊達市)など既存の砂防えん堤の補強工事にも取り組んでいます」 ――「ふくしま復興再生道路」として鋭意整備が進められてきた国道114号山木屋1・2・3工区、国道349号大綱木1・2工区が3月21日に完成の運びとなりました。開通による効果についてうかがいます。 「避難指示解除区域の産業振興や交流人口の拡大、安全で安心な車両交通環境の確保、通行時間の短縮などの利便性向上を目的として整備しました。地元の川俣町民から『以前は幅が狭いしカーブは急、その上、すぐ下は川、怖いので冬場に山木屋に出かけることができませんでした。でも、広くてまっすぐな道路ができて時間も以前よりかからず、本当に有り難く思っています』と嬉しいお話をいただきました。整備した道路が次の時代、次の世代に渡り利用され、ますますの県土の発展に寄与していくことを願っています」 ――その他の重点事業についてうかがいます。 「県北地域が高速交通体系の結節点であることを生かした県内外との広域交流の促進や都市内の日常生活を支える道づくりが必要と考えております。 主な事業として、東北中央道福島大笹生ICへのアクセス性の向上を目的とした福島市の上名倉飯坂伊達線大笹生2工区では、工事着手に向けた用地取得を進めていきます。伊達市から宮城県丸森町に至る国道349号五十沢地区では、国と連携して道路改良事業に着手するとともに、本宮市では通勤通学など地域の方々の生活を支える県道本宮三春線高木工区の完成を図っていきます」

  • 【福島県中建設事務所】芳賀英幸所長インタビュー

    【福島県中建設事務所】芳賀英幸所長インタビュー

     はが・ひでゆき 1967年生まれ。日本大学工学部土木工学科卒。1990年に県職員となり、土木部土木企画課長、道路管理課長などを歴任。今年4月から現職。  ――4月より県中建設事務所長に就任されました。前職は土木企画課長で県庁から出先事務所に異動しての勤務となりますが、管轄地域の印象等はいかがでしょうか。 「3月までは県庁勤務でしたが、土木企画課というのは情報共有の要で、各建設事務所の課題や問題解決のために動く縁の下の力持ちのような役割でした。今回は事務所長としての勤務ということで、直接事業に携わり、県民の方々とも直にお話ができる、いわば最前線で仕事ができるという点で非常にやりがいを感じています。県庁には6年間勤務していましたが、個人的には現場での仕事の方が好きなので、その点も踏まえて積極的に取り組んでいきたいと考えています。 県中建設事務所は郡山市に事務所を構えていますが、私自身、郡山市出身なので非常に愛着もありますし、地域のためだけでなく故郷に貢献していきたいと思いながら事業に取り組んでいきます」 ――ふくしま復興再生道路として整備が進められている、県道吉間田滝根線の事業進捗について。 「県道吉間田滝根線は県中地域と双葉地域を結び、浜通り地域の復興を加速化させる目的で整備が進められています。 その中でもあぶくま高原道路の小野ICから延びる9・2㌔のバイパス事業である広瀬工区は、うち2・6㌔を自動車専用道路区間、残りの6・6㌔区間を一般道区間として整備しています。現時点で外観的にはほぼ完成しているように見えますし、実際の事業進捗率としても90%以上が完了しています。今後は標識類の整備等に取り組み、今年度中に供用開始となる予定です」 ――昨年11月には国道118号鳳坂トンネルが開通しました。 「国道118号鳳坂トンネルについては天栄村の方から熱望されていた事業で、開通式後に地域の方から100年来の事業を実現してくれてありがとうという感謝のお声をいただきましたし、地域の方からそうしたお声を直接いただけて非常にやりがいを感じました。天栄村は県中地区に位置しますが、鳳坂トンネルの先はどちらかといえば会津地域と同じ気候で、役場と湯本地区との行き来が困難であったため、物流や観光、救急搬送においても大きな影響を与えていた経緯があります。トンネルの完成によって、それらが円滑に行えるということで非常に高い整備効果が得られたと見ています。また、県中地域の方が南会津方面に行かれる際にも鳳坂トンネルを利用されることが多いので、通勤利用という側面でも大きく貢献していると考えています」 ――今年度の重点事業について。 「先述した吉間田滝根線の年度内開通に加えて、石川町において水災害から地域の安全・安心を確保する千五沢ダムの再開発事業を進めており、昨年度には洪水吐き導流部コンクリートと下流護岸工が完成しましたので、今年度は残りの工事を進めて年度内の完成と試験湛水を行う予定です。 その他の事業として、災害に強い道路ネットワークの構築を目指す国道288号船引バイパスの整備事業を進めており、郡山市側の1工区は平成27年度に供用し、2工区の一部区間も昨年度に供用開始しました。今年度以降は2工区における残りの区間の工事と3工区の用地取得と工事を推進し、早期の全線開通に向けて取り組んでいきます。また、昨年度は、いわき石川線の石川バイパス2工区が供用開始となり、こちらについても残る1工区の工事を推進し、早期開通を目指して取り組んでいきます」

  • 【須賀川商工会議所】菊地大介 会頭インタビュー

    【須賀川商工会議所】菊地大介 会頭インタビュー

    きくち・だいすけ 1972年10月生まれ。㈱あおい代表取締役。東北学院大卒。2019年11月から須賀川商工会議所副会頭を務め、昨年11月から現職。  新型コロナウイルスの感染拡大がひと段落し、経済の動きの再生に期待が寄せられている。県内経済界ではどのように対応していく考えなのか。須賀川商工会議所の菊地大介会頭(㈱あおい代表取締役)にこの間の会員事業所の状況やアフターコロナに向けた展望、さらには物価高騰やデジタル化への対応などについて、語ってもらった。  ――昨年10月の臨時議員総会で新会頭に選任されました。就任から半年経過しましたが、現在の率直な感想を教えてください。 「3年前の副会頭就任後、すぐに新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、ほとんど大きな動きが取れなかった3年間でした。新型コロナウイルスの5類引き下げが決まり、徐々に社会の正常化が図られる中で会頭に就任させていただいたことを感慨深く受け止めています。 就任のあいさつでも述べましたが3年の任期中に、①物価高騰への対応、②デジタル化の推進、③アフターコロナに向けての対応に取り組んでいきたいと考えています。 新型コロナウイルスの感染拡大がひと段落し、人の動きが活発になっていますが、飲食業・観光業の事業所ではこの間、金融機関から借り入れしてきたところが多く、今後、本格的に返済が始まります。そうした事業所へのサポートを行っていきたいですね」 ――物価高騰が家計に深刻な影響を与えており、国では大手企業などに対して賃上げ要請を行っています。中小企業を支える商議所として、どのように対応していく考えですか。 「会員事業所には中小企業が多く、価格転嫁や賃上げなどに対応できず苦しんでいます。固定費が上昇する中で賃上げを行うのはとても勇気がいることですが、この時期に賃上げを行わなければ人手不足になってしまうという問題もあります。 私は建設業を経営していますが、国土交通省関東地方整備局では入札時、賃上げを行っている事業所に、ポイントが加算されるようになりました。今後、県・市町村発注の工事でも同じような仕組みが設けられる可能性があります。国の要請を受けて大手企業は賃上げを発表しており、中小企業も賃上げについて考えるときが来ていると思います」 ――デジタル化の推進を進めていますが、現在の進捗状況はいかがでしょうか。 「副会頭を務めていた昨年、『DX(デジタルトランスフォーメーション)推進研究会』を立ち上げました。今後アフターコロナに向かっていく中でDXを進めていかなければ立ち遅れてしまうと思います。高齢の方などは理解するのが難しい分野ではありますが、例えば商店街の中でグループラインでのやり取りを行うだけでも十分なDXです。 飲食店ではスマホで注文できるアプリを活用するなど、簡単なことでもできることが多いです。会員事業所には中小企業が多いだけに、商議所として積極的に支援していきたいと考えています」 インバウンド増加に期待  ――ウィズコロナ、アフターコロナを見据えて、今後どのような形で事業を展開していきたいと考えていますか。 「令和4年度末、令和5年度初めには懇親会や歓送迎会などが行われ、街なかにもかなり人出が戻ってきたようです。 期待しているのは国内も含めたインバウンドの増加です。特に今年は3月に福島空港が開港30周年を迎え、沖縄便をはじめベトナム便が12便来ます。福島空港では那覇空港とともに連絡促進協議会を立ち上げており、互いに連携しています。 私は同協議会の会長も兼任していますが、沖縄県は昨年本土復帰50年の節目を迎えたこともあり、注目を集めているので、県と連携しながら沖縄便再開に向けて動いていきたいと思います。 観光物産振興協会長も兼任していますが、コロナ禍を経て観光のスタイルが変わっています。自然とのふれあいや文化交流、アクティビティを楽しむ『アドベンチャーツーリズム』が人気を集め、高付加価値ツーリズムも注目されています。 体験型観光という面ではサッカー・いわきFCがJ2に昇格しましたが、来県するサポーターの福島空港利用を見越して、いわき商工会議所と協定を結びました。今後の仕掛け方によっては、観光で人を呼び寄せることができると思っています」 ――観光ということでは、昨年、「松明あかし」が3年ぶりに有観客開催となるなど、イベントも徐々に再開されるようになっています。今後の展望はいかがでしょうか。 「この間、夏の風物詩である須賀川市釈迦堂川花火大会は花火を打ち上げるだけで露店はなく、松明あかしは無観客で大松明に火をつけただけでした。それだけに、昨年の松明あかしの有観客開催は多くの市民が待ち望んでいたと思います。今年は花火大会に関しても通常開催され、さまざまな露店も従来通り出店される見通しです。 花火大会や松明あかしは一時的に交流人口が増えるイベントに過ぎませんが、市内には継続的に観光客が訪れる歴史的な史跡などがあるわけではないので、本市では意識的に数多くのイベントを開催してきた経緯があります。今後は先ほども話した通り、県とも連携を図りながら、今までとは違った観光を模索していきたいと思います」 ――昨年発生した福島県沖地震の影響について。 「令和元年東日本台風の被害やコロナ禍に加え、2年連続で地震が発生し、四重苦に苦しむ事業所も多い現状にあります。そういった事業所に対しては、商議所としても伴走型支援を続けていきたいと思います」 ――ウルトラマンによるまちづくりについて。 「震災・原発事故後、市と円谷プロダクションが協定を締結し、市中心部にモニュメントを建造するなど、互いに連携を図ってきました。メディアの露出も増加し相乗効果で市内の飲食店が紹介されるなど、大きな効果がありました。締結から10年目を迎え、あらためて市と同プロダクションがまちづくり連携協定を結びました。今後は市とともに、ソフト面でもウルトラマンのまちづくりを進めていきたいと思います。福島空港にも新たなモニュメントを建造する計画があり、空港を盛り上げていきたいと思います」 ――今後の抱負。 「100年に一度と言われるパンデミックやロシアのウクライナ侵攻など、社会情勢が大きく変化しています。人口減少が進む地方では地方創生が叫ばれ、各地域が競って地域振興に取り組んでいます。変化に乗り遅れないようにしつつ、住みやすく魅力ある須賀川市の実現のため、努力していきたいと思います」 須賀川商工会議所ホームページ 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 【福島県立医大】竹之下誠一理事長兼学長インタビュー

    【福島県立医大】竹之下誠一理事長兼学長インタビュー

    たけのした・せいいち 1951年生まれ。鹿児島市出身。群馬大医学部卒。福島県立医科大附属病院長、同医大副理事長などを歴任し、2017年4月から現職。  福島県立医科大学の新たな理事長兼学長に選考会議が竹之下誠一氏(3期)を選んだ。医大は、県民に高度な医療を提供し、医療従事者を育成するのが主な役割だが、浜通りに設置された福島国際研究教育機構の主要研究機関として先端研究の使命が課されている。竹之下氏に新しいフェーズにどう対応するのか聞いた。  ――意向投票後、委員たちによる選考会議で理事長兼学長に選ばれました。率直な感想をお聞かせください。 「福島県立医大は大震災・原発事故から12年を経て、復興を担う研究・医療機関としての新しいフェーズに入りました。福島国際研究教育機構が始動し、本学はその核となります。政府、他大学、他国の機関との連携も今以上に盛んになります。県民の皆様の健康に奉仕する従来の役割はもちろん、日本政府や海外からも研究で新たな役割を期待され、大きな視野でかじ取りをしていかなければならないと責任の重さを感じています。 1期目は前例のない事態にしなやかに対応する意味でレジリエンス、2期目は個人や組織が協力し、最大限の力を発揮することを狙いアライアンス(連携)を掲げました。3期目は新しいフェーズに対応できるよう、さらに機敏さや俊敏さを備えたアジリティの精神で取り組みます」 ――5月8日から新型コロナの感染症法上の位置付けが5類に引き下げられます。 「入院の調整もこれまで保健所が関わってきたものから医療機関同士の自主的なものに移行していきます。今まで以上に医療機関同士の連携が強く求められます。県と調整して受け入れ体制の維持に協力していきます。国、県の方針とこれまでに築いてきた『福島モデル』を組み合わせて連携していきます」 ――県内は医師・医療スタッフが不足しています。地域医療支援センターが行っている医師派遣について教えてください。 「県内医療機関からセンターへの医師派遣依頼に対し、2022年度は常勤医師・非常勤医師の派遣が延べ1856件ありました。そのうち、会津地方の派遣件数は会津・南会津合わせて延べ294件、浜通りは相双が延べ177件、いわきが延べ102件です。特に非常勤医師については、県が掲げる中期目標値である対応件数1000件以上(対応率80%以上)に対し、実際の対応件数は1379件(対応率87%)と5年連続で達成しています。 医師派遣で重要なのが、経験豊富な指導医、専門医を招いて派遣先で若手医師の育成に当たらせることです。若手は専門医の資格を取りキャリアアップを目指します。資格取得には、定められた研修プログラムを修了して試験に合格しなければなりません。若手一人だけが派遣されると、その期間は専門医になるための教育が受けられなくなるという問題があります。逆に、派遣先に指導する医師がいれば、専門医へのキャリアが継続できるし、むしろ進んで赴任する動機になります。 2021年度以降、計9人の指導医らを招いています。うち5人は浜通りの医療機関で地域医療に貢献していただいています。医師派遣と専門医育成を両立させる仕組みは軌道に乗ってきました」  ――福島国際研究教育機構(F―REI)が発足しました。 「『放射線科学・創薬医療』と『原子力災害に関するデータや知見の集積・発信』の2分野について、F―REIと連携を密にして取り組んでいます。4月5日には研究開発、人材育成、人材交流、施設・設備の相互利用などの協働活動を推進するために合意書を締結しました。国は『福島国際研究教育機構基本構想』で、『本学等との連携を進め、我が国における放射線の先端的医学利用や創薬技術開発等を目指していく』と明示しています。早速、今年1月には先行研究として『放射性治療薬開発に関する国際シンポジウムin福島』を南相馬市に国内外の研究者を集めて開きました。 放射線科学・創薬医療分野では本学は既に実績があります。アルファ線を放出するアスタチン211という人工の放射性元素を用いて、悪性褐色細胞腫という珍しい病気の治療薬の研究開発に取り組んでいます。臨床研究で人体に投与したのは世界で初めてです。これを他のがん治療へも応用しようと考えています。 放射性元素アスタチン211は半減期が7・2時間と短く、遠方へ運ぶ間に減衰してしまいます。新規薬剤の合成等には時間がかかり、放射線管理という点でも、学内で扱う必要があります。本学は治療目的の研究で世界をリードしていますから、自ずと、最先端の学術研究・臨床のフィールドは福島県内に定まります。世界中から優秀な研究者が集まり、研究はより進みます。こうして得られた最先端の知見をいち早く県民の皆様の医療に還元できます。最先端とは、必ずしも日本国外や都市部にあるわけではありません。福島で行っているのはまさに最先端と呼べる国際的な研究です。 『原子力災害に関するデータや知見の集積・発信』の分野に関しては、既に2020年度から福島イノベーション・コースト構想推進機構における『大学等の『復興知』を活用した人材育成基盤構築事業』に長崎大、福島大、東日本国際大とともに参加しています。災害・被ばく医療科学分野の人材育成や国際会議の開催を進めてきました。今後も医療分野でさらに貢献していきます」 ――地域包括ケアシステム導入が進められる中で総合診療医の役割がが期待されています。 「地域包括ケアシステムとは、可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けられるような支援・サービス提供体制を指します。多疾患の患者を診療し、介護福祉、地域社会とつなげていく役割を担うのが総合診療医です。 本学は総合診療医がまだ注目されていない2006年から育成を進めてきました。この実績が認められ、本学は厚生労働省から『総合的な診療能力を持つ医師養成の推進事業』に採択されました。総合内科・総合診療医センターを設置し、育成に取り組んでいます。本学で育った総合診療医が各地で活躍できるような体制を整備しつつ、岩手医科大との連携を進め、東北地方全体での総合診療医育成にも貢献していきます」 ――抱負を教えてください。 「大震災から12年が経ち、本学は新しいフェーズを迎えました。福島の地に根差す医療系総合大学として、今までと同じように医療を担うとともに、世界の知見や研究成果をあまねく地域と県民に還元し、健康を支える大学であり続けます。研究と医療、医療人の育成などいずれの分野でも最先端を切り拓く強い意志と覚悟を持って、福島県立医大の価値と存在感を高めていきます」 公立大学法人 福島県立医科大学ホームページ 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 【天栄村】添田勝幸村長インタビュー

    【天栄村】添田勝幸村長インタビュー

    そえた・かつゆき 1961年生まれ。岩瀬農業高校卒。1991年に㈲添田設備工業設立。2011年の村長選で初当選し、現在3期目。  ――昨年11月に国道118号鳳坂工区(鳳坂トンネル)が開通しました。 「本村の悲願であった『鳳坂トンネル』の開通は、買い物、通院、通学などの面で便利になり、住民から非常に喜ばれています。特に冬季間の路面凍結時の運転は非常に危険であったため、その負担軽減にもつながっています。また、郡山方面から羽鳥湖高原、岩瀬湯本・二岐温泉へのアクセスがよくなり、誘客の増加が見込めます。もう1つは、物流面がよくなりましたから、人、モノの交流がしやすくなります。この道路ができたことで、コロナ禍前のような賑わいを創出できればと考えています」 ――昨年の「米・食味分析鑑定コンクール」で天栄米が金賞を受賞したほか、「全国新酒鑑評会」では村内の2蔵元が金賞を受賞しました。 「村内生産者の方々は非常に良質なお米をつくっており、首都圏などにトップセールスに行った際も大変好評でした。近年は、コロナ禍で試食をしていただく機会がなかなかありませんでしたが、やはり実際に食べていただかないと天栄米のおいしさが分かりませんので、今後は自慢のお米を実際に味わっていただけるような取り組みを行い、販売促進に努めていきたいと思っています。また、今回、JR東日本の協力を得て、特別列車『TRAIN SUITE 四季島』で、天栄米を使っていただけることになりました。これも大きなPRとなり、販売促進につなげていければと考えています。 日本酒については、村内の2蔵元が全国新酒鑑評会で金賞を受賞し、新酒ができるとすぐに売り切れてしまうくらいの人気です。首都圏などでも認知されてきて、『おいしいですよね』と言っていただくことも増えてきたので、さらにPRしていきたいと思っています」 ――間もなく、3期目の任期を終えますが、今後の抱負を。 「これまで3年間、コロナ禍や原油・物価高騰で地域経済はかなり疲弊し、生活も厳しい状況が続いています。私は、何とかこれを再生させ、村民の方々の生活が少しでも豊かになっていくような村づくりをしていかなければならないと思っています。また、少子化・人口減少は大きな課題ではありますが、村としてできる限りの支援をしながら、移住・定住の促進、及び人口流出を防げるような対策を講じて、村民の方々が安全・安心に暮らせる村づくりをしていきたいと考えています。今後も、『天栄村に行ってみたい』『天栄村に暮らし続けたい』と思っていただけるように努めてまいります」 天栄村ホームページ 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 【大玉村】押山利一村長インタビュー

    【大玉村】押山利一村長インタビュー

    おしやま・としかづ 1949年生まれ。安達高、福島大行政社会学部卒。大玉村企画財政課長、総務課長、教育長などを歴任。2013年の村長選で初当選。現在3期目。  ――15歳未満の人口比率が県内1位です。 「3月31日現在の年少人口は1303人と全村民の14・8%を占めます。令和4年度の本村の転入者は304人、転出者は284人で、子どもがいる家庭が多く転入していることが要因と思われます。コロナ禍等で全国的に出生率が低下する中、年少人口が高い水準にあるのは嬉しい限りです」 ――子育て支援等を目的とした複合施設の建設を計画しています。 「老朽化した大山公民館の建て替えも兼ねて、子育て支援機能を持つ施設を計画しています。建物には村内の木材を使用し、完成は令和7年度の予定です。子育て支援機能として親子で遊べるスペース、公民館機能として調理室や会議室、子どもからお年寄りまで利用できる機能として図書室やカフェスペースを備えます。また、入口のオープンスペースにはマチュピチュ遺跡をイメージした階段を設け、シンボルにしたいと考えています」 ――昨年設立された農業振興公社について。 「理事長に副村長が就き、昨年12月にはJAふくしま未来が参画するなど今年から本格的に稼働します。農林業と畜産に関する事業を基本に村の堆肥センターの業務も指定管理としました。 地元農家の期待も大きく、耕作放棄地の問題やドローン等の技術活用にも注力する予定ですが、農業を取り巻く課題は多岐に渡るのでしっかりと取り組んでほしいと思います」 ――テレビの人気番組「ザ!鉄腕!DASH!!」のロケ地になっています。 「村でも全面協力していますが、村の名前を大きく出していただき嬉しく思っています。反響も非常に大きく、番組を見て若者が農業に興味を持ったり、移住者やふるさと納税の増加につながればありがたいですね」 ――(仮称)大玉スマートICの整備に向けた取り組みについて。 「2年前から検討のための勉強会を開いており、今年度前半には国に対して設置要望する予定です。併せて、現在休止中の高速バスストップの復活も目指します。これらの事業が順調に進めば、高速交通へのアクセス性向上に大きくつながるものと期待しています」 ――今後の抱負。 「村内は農地の大半が農業振興地域のため企業誘致が難しく、約50年前から様々な人口増加策を講じてきました。人口は国全体で見れば減っており、本村だけがいつまでも増えることはないでしょう。そうした状況の中で、『大玉村に住みたい』、村民には『大玉村に住んで良かった』と感じていただけるような村づくりを今後も進めていきたいと思います」 大玉村ホームページ 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 【泉崎村】箭内憲勝村長インタビュー

    【泉崎村】箭内憲勝村長インタビュー

    やんない・のりかつ 1954年8月生まれ。岩瀬農業高校卒。泉崎村参事兼総務課長、副村長などを歴任。2021年10月の村長選で初当選を果たした。  ──村長就任から1年半経過しました。 「選挙で掲げた公約達成のために精一杯取り組んできました。①JR泉崎駅東口開発、②学校給食センター建て替え、③泉崎南東北診療所の建て替え――という3つの課題に加え、財政再建期間に手付かずとなっていた道路補修などに重点的に取り組んできました。村民の皆さんの生の声を直接聞き、村政に反映させるよう心がけてきました。 村内を巡回している福祉バスの運行頻度を見直し、医療機関通院用の送迎サービスを実現する一方で、3人目以降が対象だった出産祝い金を1人目から助成対象としました。 分散していた福祉部門の部署を1カ所に集約しワンストップ対応できるようにしたほか、原地区と長峯地区の大規模圃場整備に向けて基盤整備推進室を別個で設けました」 ――5月8日から新型コロナウイルスが5類に引き下げられます。 「昨年秋からイベント等は通常開催に移行しており、村の一大イベント『収穫感謝祭』は多くの人でにぎわいました。あらためてイベントの重要性を再認識しました。今後も感染対策を実施し、にぎわい創出につながるイベントを実施していきます」 ――泉崎駅東口整備事業の進捗状況は。 「昨年度から駅周辺の土地利用計画とバリアフリー計画を策定しており、いずれも今年度中の完成を予定しています。詳細設計の段階で予算を上回り、仕切り直しとなった経緯があります。県と相談した結果、国の補助金を受けられる可能性があると分かり、手続きに必要な両計画の策定に費やしてきました。何としても策定にこぎ着け、診療所の建て替え移転地も周辺に持っていきたい考えで、構想を練っているところです」 ──人口減少対策について。 「本村では以前から幼稚園・義務教育の給食完全無料化、幼稚園の保育料・バス代無料化を実施しています。また、小学校のランドセルや中学校のかばんなども無償で提供し、子育て世代の負担軽減に努めています。 新築の戸建て住宅を家賃月3万9000円で貸し出しており、さらに20年間住み続けた場合、追加で50万円納めていただくと、所有権を村から移譲する制度も設けています。これまで8棟移譲してきました。 ほかにも、古い村営住宅地を整備し、無償で分譲する事業にも取り組んでおり、昨年度までで8区画分譲してきました。こちらは『子どもが2人以上の夫婦』という条件があるものの、多数の応募が寄せられています。まだ整備が終わっていない村営住宅地があるので、今後も無償分譲を続けていく考えです」 泉崎村のホームページ 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 【広野町】遠藤智町長インタビュー

    【広野町】遠藤智町長インタビュー

    えんどう・さとし 1961年生まれ。東京経済大学卒。広野町議2期を経て2013年11月の町長選で初当選。現在3期目。  ――新型コロナウイルスの影響によって中止されていたイベントなどが再開されつつありますが、現在の状況はいかがでしょうか。 「昨年度は参加いただく方々にご理解をいただきながら、3年ぶりに広野町サマーフェスティバル、ひろの童謡まつり、広野スタイルなどのイベントを執り行うことができました。『脱コロナ』に向けて、地域社会の方々が以前の生活に戻りつつありますが、引き続きワクチン接種をはじめとしたコロナ対策を講じながら住民周知を図っていきます」  ――移住支援金を支給するなど、移住促進に熱心に取り組まれています。 「本町は第2期復興創生期間満了となる2030年に向けて、1000人を上積みした人口6000人を目指しており、そのためにさまざまな施策を展開しています。一つは、移住定住を進めるための情報発信・情報共有です。国や県、市町村の職員、連携協定で協働している大学関係者などと連携し、1000人体制のネットワークを構築しました。二つは、子育て若者世代への積極的支援です。中でも『広野駅東ニュータウン住宅用地取得支援事業補助金』では当該地区の用地を購入した方に300万円を補助しています。三つは、本町ならではの海と山と川の美しい自然、歴史と伝統文化を守り、魅力ある故郷を継承していくことです。移住者との共生のまちを目指すため、伝統の祭りや行事の継承、後継者の育成を行っています」 ――浪江町に国際研究教育機構(F―REI)が整備されています。 「本町はバックオフィス的な役割を果たしていきたいですね。F―REIでの研究成果を産業に結びつけるためには、生産体制の構築や経済体制の確立が不可欠です。本町は、ふたば未来学園中高一貫校などの地域団体、地元企業を有しており、それら人材を生かした協業の場となることを期待しています」 ――交流人口増加策について。 「若者を中心にライフスタイルや働き方が多様化しており、都市部で生活しながら自らのルーツがある地方のコミュニティー活動に参加する人が増えています。そうした新しい動きに注目し、交流人口から関係人口に関わりを広げていく取り組みを行っていきます」 ――今後の抱負。 「東日本大震災から13年目を迎えました。さまざまな課題難題がありますが、これまで取り組んできた復興再生を踏まえ、『新たな時代に向けたまちづくり』を創出していきます。これまでにいただいたさまざまなご縁を大切にして、愛する故郷のため、多くの皆様と信頼を深めていきたいと思っています」 広野町のホームページ 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 【国見町】引地真町長インタビュー

    【国見町】引地真町長インタビュー

    ひきち・まこと 1959年12月生まれ。東北学院大法学部卒。国見町総務課長兼町民相談室長などを歴任。2020年3月に退職後、同年11月の国見町長選で初当選。 ――町長就任から2年4カ月経過しました。 「この間、新型コロナ感染症をはじめ、2021、22年に発生した震度6強を超える福島県沖地震、基幹産業である農業に被害を与えた凍霜害と降雹、昨年の過疎指定、昨今の物価高騰など、難しいかじ取りを強いられた2年4カ月でした。その都度、適切に判断しながら町民の生活支援と不安払しょくに努めてきました」 ――昨年3月16日に発生した本県沖地震の復旧状況について。 「昨年の地震による被害は一昨年に比べ甚大でした。全壊から一部損壊までの被害棟数は1500以上と前年の地震の2倍強で、生活再建の予算確保は至上命題でした。この間、できる限りの対策を講じたつもりです。町職員の高い危機対応意識で地震翌日には被災・罹災証明の受付窓口を開設しました。また、交流・連携を深める北海道ニセコ町、岩手県平泉町、栃木県茂木町、岐阜県池田町に救援依頼をしたところ、ブルーシートや土嚢袋など応急資材の提供や職員の派遣など迅速に対応していただきました。一昨年の地震の教訓から通常業務と地震対応業務の両立が図られたのだと思います。一方で、住家・非住家の公費解体に伴う国の災害査定に時間を要したり、建築業界の慢性的な人手不足や資材不足などの影響があったりして、丸1年が経過しても応急処置が施されたままの住宅があります。地震被害からの復旧はまだ道半ばで、生活再建支援に引き続き注力する考えです」 ――保・幼・小・中一貫教育を柱とする「くにみ学園構想」の進捗状況について。 「この構想は、第6次国見町総合計画と国見町過疎地域持続的発展計画に基づいて整備を進めたいと考えた、くにみ学園の基本理念をまとめたものです。町の将来や存続に関わる重要な事業に位置づけられます。現在、本町には保育所1所、幼稚園1園、小学校1校、中学校1校がありますが、町内に分散・点在しています。2014年度から取り組んできた『国見学園コミュニティ・スクール』事業では地域住民の協力を得ながら、自ら学ぶ力や郷土愛を育む教育を展開してきましたが、この10年で急激に少子化が進んだうえ、社会環境の変化による学力の二極化や運動能力の低下、支援が必要な子どもたちの増加などが顕著になっています。これらの課題を踏まえ、保・幼・小・中を1つに集約し、子育てと教育の充実、機能強化を図ることが同構想の基本理念です。くにみ学園構想は、教育と子育て施策の核となるものですから、議会も含め町民の皆さまとの対話を通して、基本構想への理解・共感を得ていきたいと考えています」 国見町ホームページ 掲載号:政経東北【2023年4月号】

  • 【川俣町】藤原一二町長インタビュー

    【川俣町】藤原一二町長インタビュー

    ふじわら・いちじ 1946年10月生まれ。法政大学法学部卒(通信課程)。川俣町収入役、済生会川俣病院事務長などを歴任し、2021年2月の川俣町長選で初当選。  ――原発事故に伴う山木屋地区への避難指示が解除されてから丸6年経過します。 「コロナ禍で開催見送りとなっていた『八坂神社の三匹獅子舞』など地区の伝統行事が復活しているほか、近年では移住する新規就農の若者も増えています。 水田の水を凍らせたスケートリンクとして知られる『かわまた田んぼリンク』が、山木屋に移住した新規就農者(大学院生)の2人が代表となる形でオープンしました。会員の高齢化により昨年解散した地元団体から運営を引き継いでくれました。新たな地域活性化の拠点として注目が集まっています。このほか、復興拠点商業施設『とんやの郷』で、地元住民の皆さんが組織したNPO法人が、毎月第1日曜日に『おきがるマルシェ』を開催するなど、にぎわいが生まれています。 一方で、避難解除後に山木屋地区へ戻ったのは160世帯332人(帰還率50%)、うち65%以上が高齢者です。引き続き帰還支援を継続していきますが、新たに人を呼び込む方にも注力していきたいと考えています」 ――ふくしま復興再生道路である国道114号山木屋工区の工事が完了しました。 「山木屋地区は町の中心部から約11㌔離れていますが、トンネルが開通したことでアクセスが大幅に向上し、町としての一体感が高まりました。浜通りと県都・福島市を結ぶ道路として、流通面などで大きな役割を果たすものと見ています」 ──新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類に引き下げとなりますが、今後の対応について。 「希望者へのワクチン接種を継続しつつ、慎重に事態を見極めていきます。マスクの着用は、基本的に個人の判断に委ねることになりますが、捉え方には個人差があると思うので、柔軟に対応していきます。コロナ禍で開催を見合わせていたフォルクローレの音楽祭『コスキン・エン・ハポン』は今年通常開催の予定です。新たなスタートを踏み出す1年にしたいと考えています」 ――その他重点事業について。 「4月から開園する『かわまた認定こども園』は0~5歳までのお子さんが対象です。子育て世代の負担軽減のため、給食費を無償にします。2023年度中の保育料完全無償化も目指しており、子育てしやすい環境を実現して若年層の移住増加につなげていく考えです。 また、食品スーパーのいちい(福島市)と協定を交わし、本町の廃校を利用したベニザケの養殖事業が進められています。2026(令和8)年の事業化を目指しており、地域振興に貢献することを期待しています」 川俣町ホームページ 掲載号:政経東北【2023年4月号】

  • 【西郷村】高橋廣志村長インタビュー

    【西郷村】高橋廣志村長インタビュー

    たかはし・ひろし 1954年生まれ。日大工学部卒。西郷村建設課長などを歴任。2015年の村議選で初当選。村議1期を経て、2018年2月の村長選で初当選。昨年2月に再選。  ――人口増加率は県内トップクラスです。 「村内に東北新幹線新白河駅、東北自動車道白河ICを有し、首都圏や地方都市へのアクセスが良く、地理的な利便性が高いことも一つの要因になっていると考えていますが、それに加えて、『コロナを克服』、『子育て支援の充実』、『学校教育の支援の充実』、『高齢者健康長寿支援』、『やりがいと魅力ある産業の振興』、『災害に強いむらづくり』の6つの目標を掲げ、職員一丸となって取り組みを進めています。 中でも、子育て支援や教育面での充実は、若い世代の移住・定住を促進して人口を維持していくために重視しています。出産祝い金の支給や、原油価格・物価高騰に対する特別給付金の支給により、子育て世帯の経済的負担を軽減するなど、安定した生活を送れるよう支援をしました。また、子育て支援センター内に子ども家庭総合支援拠点を設置し、妊娠期から子育て期に渡る切れ目のない支援体制を構築し、母子健康の保持促進に努めています。学校教育については、小・中学校に入学した児童・生徒に入学祝い金を支給、中学生の修学旅行の補助、さらには子どもたちが将来、国際的に活躍できるよう英語力をつけてほしいという思いから、ALTやタブレット端末を活用した英語教育に力を入れ、児童・生徒の学びの意欲の向上に努めています。令和5(2023)年度からは、村内の小中学生の給食費の無料化を実施します」 ――学校給食センター、役場庁舎の整備が計画されています。 「学校給食センターは、7割程度の進捗状況で計画通りに進んでおり、令和5(2023)年度2学期から使用開始となる見込みです。新庁舎整備事業については計画通り、令和7(2025)年度の開庁を目指して本体工事に着手していきたいと考えています」 ――今後の抱負を。 「第2期村人口ビジョンの人口推計では、他自治体と同様に人口が減少していく見込みですが、様々な取り組みを重ねていくことで人口の流入と定住促進を図り、人口減少を最小限に食い止め、村民の皆さんがいつまでも幸せに住み続けられる村をつくりあげていきたいと思います。本村は『2022年度自治体四季報全国自治体経営ランキング』において、全国1741自治体の中で2位になりました。一方で、まだまだ課題も多くあります。村民の皆様よりご意見、ご指摘を賜りながら『村民が主役で未来を築く』を念頭に、『未来へ限りなく前進する西郷村』、『選ばれる西郷村』、『誇れる西郷村』を実現できますよう鋭意努力していきます」 西郷村ホームページ 掲載号:政経東北【2023年4月号】

  • 【鮫川村】関根政雄村長インタビュー

    【鮫川村】関根政雄村長インタビュー

    せきね・まさお 1955年12月生まれ。東白農商(現・修明)高校卒業。鮫川村議4期。2019年8月の同村長選で初当選を果たす。  ――新型コロナウイルス感染症の5類引き下げ方針を見据えた施策について。 「この3年間は村内の各行事やイベントなどの中止・延期を余儀なくされました。また、集落内の事業や伝統祭事も開催できず、地域の絆や交流が希薄になりつつあります。これらの繋がりを元に戻すための地域力再生を図ると同時に、物価高騰等で低迷している産業の振興と担い手育成に全力を注ぎます」 ――環境公社設立の進捗状況について。 「遊休農地の管理や、公道沿いの支障木伐採など『美しい鮫川村』を維持すべく環境公社設立の準備を進めてきました。それに当たり、村内各事業所を訪問して課題を聞き取りした結果、①既存の建設業者や林業者の業務を奪うことにならないか、②シルバー人材センターとの連携を図るべきではないか、③公社設立後の収益事業と社員の人件費の確保等に困難はないか、などの課題が浮き彫りになりました。さらに各事業所では人材不足が深刻化していることから、まずは『特定地域づくり事業協同組合』の設立が最優先であると判断しました。組合設立に当たり、県から認可されるまでには、申請要件をクリアしなければならないため、一定の時間が必要です。加えて、関心を寄せる農家や事業所の理解を得るため、丁寧な説明会を開催しているところです」 ――国道289号のバイパス開通の効果と利活用策について。 「今年3月4日に村民待望の国道289号『渡瀬バイパス』が全面開通しました。この路線は新潟市といわき市を結ぶため、経済物流、観光振興、緊急医療対応に繋がる重要路線です。また、バイパス化により、本村随一の観光地である鹿角平観光牧場に接する路線となったことで、キャンパーを含む観光客の増大、いわき市や茨城県から村中心部の直売所『手まめ館』など観光地への集客数が膨らみ、本村や近隣町村への大きな経済効果が見込めると期待しています」 ――1期目を振り返って。 「『地域づくりは人づくり』をテーマに、青少年・女性を含む村民の提案やアイデアが生かせる村づくりを目指してきました。さらに『若者未来創出会議』や『中高生未来ジュク』、『農業者担い手会議』等を開催してきましたが、担い手たちが自主的に活動を発案するなど、具体的な成果が着実に表れ始めています。 さらに今年度は『村づくり推進室』を庁舎内に新設するなど、『公共施設中長期整備計画の素案づくり』、『移住定住子育て支援』、『村民の健康づくりと福祉の充実』、『観光資源の活用と産業の振興』、『自主財源の確保』の6つの重点施策に基づいて各事業を推進します」 鮫川村ホームページ 掲載号:政経東北【2023年4月号】

  • 【浪江町】吉田栄光町長インタビュー

    【浪江町】吉田栄光町長インタビュー

    よしだ・えいこう 1963年12月生まれ。浪江町出身。双葉高卒。県議を5期務め、自民党県連幹事長、県議会議長などを歴任。昨年7月の浪江町長選で初当選を果たした。  ――昨年7月に町長に就任しました。 「首長の仕事は想像以上に忙しいですね。職員とのチームワークも良くなっており、日々の行政執行は良い形でできています。当町は復興という大きなミッションがあります。前町長が行ってきた施策により、成熟しつつある分野と新たな分野がありますが、いずれも芽を出し始めており、民間企業からも多くの興味を示していただいています」 ――帰還困難区域の津島、末森、室原3地区内に設定された特定復興再生拠点区域の避難指示が3月31日、解除されます。 「3つの拠点に共通する産業は農業です。将来を見据えた農業の再建を進めるために、大規模化や効率化など、外部からの投資が活発化することを期待しています。 住民帰還に関しては、町民の5割以上が避難先で新たな居を構えていることや、帰還することの経済的な不安なども踏まえ、バランスよく考えていかなければなりません。ただ、この半年間、帰還意欲の高まりを感じています。福島国際研究教育機構(F―REI)やJR浪江駅周辺整備計画などの復興プランが表に出てきて、故郷とともに復興を肌で感じたい町民が多くなっているからだと思います」 ――F―REIと浪江駅周辺整備計画について。 「F―REIは浪江町だけのものではありません。浜通り全体として、研究者の方々の住みやすい環境を整えることが大切だと考えています。社会環境の変化や人口減少の時代を担う〝次の世代〟が競争力を持てる技術力や仕組みが必要であり、同機構にはその牽引役を担ってほしいです。浪江駅周辺整備事業は同機構におけるフロントの役割を担っています。復興まちづくりのためにこうした事業を成功させるには、周辺自治体を含めた国・県と町の協働(協同)が不可欠です」 ――育苗施設が供用を開始しました。 「既に稼働している『カントリーエレベーター』と育苗施設の完成によって、育苗から収穫後の乾燥までが担保されました。さらなる水田の利活用を促進するため、6次化を考えていかなければならないと思います。町の新たな特産品であるタマネギや花卉など、水稲以外にも多様化が必要だと思っています」 ――今後の抱負。 「今後、民間が投資しやすい環境を整え、経済の活性化を図っていきたい。現在、当町の町民は町内外にお住まいですが、興味を持っていただけることが、われわれにとって刺激になっています。町民が復興を支援できる・応援したくなるような町をつくっていくことが使命だと思っています」 浪江町ホームページ 掲載号:政経東北【2023年4月号】

  • 【会津坂下町】古川庄平町長インタビュー

    【会津坂下町】古川庄平町長インタビュー

    ふるかわ・しょうへい 1953年11月生まれ。喜多方工業高(現喜多方桐桜高)卒。アルス古川㈱相談役。会津坂下町議を連続5期、議長を6年務める。現在1期目。  ──町長就任から1年半が経過しました。 「『次世代に繫ぐまちづくり』に全力で取り組んできました。この間、切れ目のない伴走型の子育て支援として、不妊治療の検査に対する上限5万円の補助制度を創設しました。健康づくり事業では、阿賀川の支川の旧鶴沼川が国土強靭化の一環で堤塘(堤防)が舗装されたのでウオーキングコースとして整備しました。道の駅あいづ湯川・会津坂下西側の河川敷までの延長を検討しており、相乗効果を期待しています」 ──役場新庁舎整備事業の進捗について。 「まず第一に質の高い住民サービスを継続的に提供する拠点であるとの考えから、町民の安全・安心の確保や災害時における円滑な復旧・復興の拠点となりうる場所に建設するべきだと考えています。そのため、30年後を見据えて、町民の声やアンケート結果等を判断材料にしながら、2月22日の議会全員協議会において、建設場所を旧坂下厚生総合病院跡地へ変更することを発表しました。 今後、本町が会津西部地区の中核としての機能を果たせるよう、周辺地域との一体的な利活用を図るのに加えて、現役場庁舎周辺の利活用についても、町民の皆様や専門家のご意見を賜り、人が集まり、賑わいを創出する空間として整備していく考えです。今年度から新庁舎建設計画の具現化に向けて、基本構想・基本計画策定を進めていきます」 ──5月8日をめどに新型コロナウイルスの5類引き下げの方針が打ち出されましたが、これを見据えてどのような施策に取り組んでいきますか。 「関連する町の施策の総点検を進めています。特に感染防止の観点から中止を余儀なくされてきた各種事業についても、入念な準備のもと、町内へにぎわいと活気を呼び込んでいきたいです。また、高齢者の皆様の外出自粛による体力低下や孤立の集中的改善に向け、集いの場として各地区サロンを活用しながら、楽しく健康づくりに努めていきます」 ──今後の重点事業について。 「町の課題である財政健全化に引き続き取り組むのはもちろん、“人口が減少しても活力があり町民一人ひとりが生きがいを持てる持続可能なまち”を実現するため、令和4年度から『交流人口対策』『関係人口対策』『定住人口対策』の3つの人口対策に取り組んできました。 令和5年度からはそれらに『少子化対策』を加えた4つの人口対策を重点事業とした過疎対策事業を実施し、若者世代、子育て世代が住みやすく、町民の皆様が輝ける住み続けたいまちを目指してまいります」 会津坂下町ホームページ 掲載号:政経東北【2023年4月号】

  • 【JA福島五連】管野啓二会長インタビュー

    【JA福島五連】管野啓二会長インタビュー

     原発事故に伴う風評被害や、水害などの自然災害、コロナ禍での米価下落、さらには燃料高騰など、農業を取り巻く環境は厳しさを増している。昨年6月にJA福島五連会長に就任した管野啓二会長に、それら課題への対応や、「第41回JA福島大会」で決議された3カ年基本方針の進捗状況などについて話を聞いた。  かんの・けいじ 1952年生まれ。福島県農業短期大学校卒。JAたむら代表理事組合長、JA福島さくら代表理事専務、代表理事組合長を務め、昨年6月の総会でJA福島五連会長に選任された。  ――昨年6月の総会で会長に選任されてから8カ月ほどが経過しました。この間を振り返って、率直な感想をお聞かせください。 「仕事にも慣れてきて、落ち着いてきました。その中で感じたこととして、本県における最も大きな課題は、農業産出額を大震災・原発事故前の実績である2330億円に追いつくことだと再認識しています」 ――2021年11月に開かれた「第41回JA福島大会」では、農業総生産額の減少対策、農業者の高齢化・担い手の減少対策、風評払拭対策などを含む、2022年度から2024年度までの3カ年の基本方針が決議されました。それら事業・取り組みなどの進捗状況はいかがでしょうか。 「同大会の決議では『園芸ギガ団地構想』を柱に据え、2024年度までに各JAが1団地を形成できるよう取り組んでいます。 主な作物はきゅうり、ピーマン、トマト、ほうれん草、宿根カスミソウなどで、『もうかる農業の実現』がコンセプトです。 これらの品目について、2022年度の実績を振り返ると、昭和村のカスミソウの販売額は6億円を超えたほか、南郷トマトの販売額は11億円でした。また、夏秋きゅうりにおいて福島県は全国一の産地に成長しており、多くの品目で実績を残しています。 園芸ギガ団地構想によって、そういった実績をさらに加速できるようにしていきたいです。 担い手の減少対策は、新規就農者をいかに確保していくかが大きなテーマで、これまで我々JAは新規就農者に対して一元的な窓口対応ができる組織が欲しいと県に要望してきました。 先日、県の予算が開示され、4月から『福島県農業経営・就農支援センター』という名称でスタートすることが正式に決まりました。新規就農といっても、都会からUターンして就農する、親元で就農しながら新しい栽培品目を自分で開拓して始める、親が高齢になり後継者として代々受け継いできたものを継続する、などさまざまなパターンがあります。 同センターはそういった方々の相談や悩みに合わせたサポートをワンフロアで行うことが狙いです。栽培品目は何にするのか、そもそも農業のノウハウがあるのか、ノウハウがあったとしても資金繰りや雇用の対策ができているか、県と連携してサポートしていきます。 原発事故の避難指示が出された被災12市町村の農業復興については、震災による営農休止面積1万7298㌶のうち7369㌶が再開し、営農再開率は42・6%になっています。避難指示解除が早かった町村の再開率は高い一方で、やっと解除になった大熊町や双葉町などはこれから営農再開を目指していくことになります。特に双葉町では、トマトの施設栽培を目指しており、浜風ほうれん草の栽培も検討しています」 風評払拭に努める  ――東日本大震災・原発事故から間もなく丸12年が経過します。この間、福島県の農業は、いわゆる風評被害に苦しめられ、品目によっては未だに影響が出ているものもあると聞きますが、現在の県産農畜産物の市場評価についてはどう見ますか。また、「JAグループ福島東京電力原発事故農畜産物損害賠償対策福島県協議会」の原発賠償の状況についてうかがいます。 「原発賠償については、今年1月末時点で請求額が3567億円に対し、合意額(受取額)が3481億円で、賠償率は97・58%となっています。 県産農産物の市場評価については、明確に評価が低くなっていると言えるのはコメと牛肉です。米価は全国的に若干上がっていますが、県産米はまだまだ評価が低く、もっと努力していかなければならないと感じています。牛肉についても、品質のランク付けと価格単価のランク付けにギャップがある状況です。 県知事とともに、トップセールスなど風評被害の払しょくに向けてPRしていますが、依然としてリスクがあるとネガティブに捉えられていることは消せない事実です」 ――東京電力福島第一原発で保管されているALPS処理水の海洋放出が今春に迫っています。県内農業分野への影響についてはどう考えていますか。 「国民理解の醸成と責任ある風評抑止対策を前提として考えれば、やむを得ないと捉えています。しかし、いわゆる風評被害が発生してしまった場合は、いままで同様賠償を前提に国や東電と話し合いを続けます」 ――長引く新型コロナ、物価高、燃料費高騰が深刻な問題になっていますが、農産物の需要・価格(特に米価)にも影響は出ているのでしょうか。出ている場合は具体的な影響と対策・支援などについて。 「ものすごく値上がりしています。高騰対策として国が予算を組んでおり、値上がりした分の約7割は補填される仕組みになっています。現在、秋肥に対する助成の申請が進んでおり、今年春に作付けする分の肥料も取りまとめを行っていきます。 施設園芸においては、ハウス内で使用する燃料高騰への対応も国が打ち出していますので、それに対する助成申請も支援していきます。 畜産については、飼料の値上がりが起きています。配合飼料には価格安定基金というものがあり、値上がりした分の8割は補填を受けられますが、値上がりが大きすぎてその上限を超えてしまっています。こちらに関しても国が特別に対策を打ち出しており、対応いただいています。しかし、それ以外の牧草やワラなどの粗飼料には国が関与している制度がないので、牛などを飼育している経営者は危機を感じており、自給飼料が少ない経営は完全に赤字経営になっています。 そういった国の制度が行き届かないところを何とかしていただきたいと要望したいです」 ――今後の抱負は。 「暗い話ばかりになってしまいましたが、第一はギガ団地構想などの計画をスケジュール通りに進めることです。 また、毎年のように地震や水害、霜害・雹(ひょう)害などの自然災害が頻発していますが、今年はそういったことが起こらないことを願いながら、これまで以上の対策を練っていきたいと考えています」 JAグループふくしまのホームページ 掲載号:政経東北【2023年3月号】

  • 【古殿町】岡部光徳町長インタビュー

    【古殿町】岡部光徳町長インタビュー

    おかべ・みつのり 1959年1月生まれ。学校法人中央工学校卒。有限会社岡部設備工業取締役、株式会社トーホク・オカベ取締役を経て、2003年4月の町長選で初当選を果たした。現在5期目。  ――4月23日投開票の古殿町長選に、6選を目指して立候補することを表明しました。まずは立候補に至った経緯をお聞かせください。 「『5期で一区切り』と考えていましたが、後援会に相談したところ、『まだ若いんだからもう少し頑張ってみろ』と背中を押していただきました。あらためて熟慮した結果、町議会の昨年12月定例会で立候補を表明しました」 ――5期目の4年間を振り返って。 「令和元年東日本台風、新型コロナウイルスなど有事への対応に追われた印象が強いです。コロナ対策に関しては、感染対策の徹底やワクチン接種、各種支援などに全力で取り組み、不安払拭に努めてきたと自負しています。町民の皆さんにご協力いただいたこともあって、現在は感染状況がかなり落ち着きつつあり、重症化するケースも多くないようなので安堵しています」 ――昨年から祭りやイベントなども再開されるようになっていますが、古殿町ではいかがですか。 「できるだけ再開する方針を打ち出しています。昨年は、町が委託して古殿町商工会が主催している『憩いの森フェスタ』を実施しました。課単位の小規模な忘新年会に関しても、町職員には『自粛せずやってほしい』と話しています。町職員や町議が率先して経済を回す姿勢を示すことも必要だと思います」 ――人口減少が大きな課題となっています。町では体験宿泊施設を設けるなどして、移住定住人口の増加を目指しています。 「町民が案内人となって体験イベントを提供する取り組み〝フルドノタイム〟を昨年に引き続き実施する予定で、現在準備を進めています。27件のプログラムが行われる予定で、協力していただける町民には心から感謝しています。今後のまちの活性化につながっていくことを期待しています。 『大網庵』という茅葺屋根の古民家を改修して、宿泊・テレワーク需要に対応する施設を整備しました。利用者はまだ少ないですが徐々に増えています。このほか、『ふるさと工房おざわふぁーむ』など農業体験を受け入れている農業法人もあり、関係人口増加に貢献しています」 ――子育て支援・教育にも力を入れており、タブレット端末と電子黒板を導入しています。児童・生徒の反応は。 「新たな取り組みなので現場の反応を注視していましたが、ゲーム感覚で勉強できるのか、児童・生徒には大きな抵抗はなかったようです。むしろ指導する教員の方が付いていけない面があるようなので、ICTに精通している地域おこし協力隊を募集し、支援員として配置して、サポートをお願いしています。公共施設にはWi―Fi(公共無線LAN)が整備されています。自宅での学習も滞りなく進めるため、保護者の皆さんに意向調査を行ったうえで、インターネット環境整備へのご協力をお願いしているところです。 子育て支援策にも力を入れています。出産祝い金として第一子5万円、第二子10万円、第三子30万円、第四子以降50万円を支給しており、4月以降は、第三子も50万円に引き上げたいと考えています。 このほか、こども園の保育料や中学校までの給食費、高校生までの医療費を無料にしており、中学校までの各種検定試験費用、スポーツ活動で子どもたちにかかる交通費や宿泊費などの経費も町が負担しています」 ――高齢者が安心して暮らせる環境づくりについて。 「古殿町健康管理センター、古殿町社会福祉協議会と連携しながら、デイケアの利用など、高齢者の相談に応じる体制を構築しています。生活に支障が出てきた方の受け皿としては、社会福祉法人石川福祉会の特別養護老人ホーム『ふるどの荘』、旧大久田小学校舎を再利用した介護老人保健施設『大久田リハビリテーション・ケアセンター』があります。 旧鎌田小学校跡には、公募により高齢者向けグループホーム『けあビジョンホームふるどの』が入居しています。隣接地には、単身高齢者や高齢世帯を対象とした『古殿町高齢者居住施設』を整備し、家族が町外にいる高齢者世帯でも安心して暮らせる環境を整えています。 運転免許を返納した場合なども含め〝交通手段の確保〟が高齢者にとって大きな問題となっています。町では『へき地医療バス・福祉バス』を決まった時間に走らせていますが、さらに公共交通システムを充実させたいと考えており、デマンド交通を含めて研究しているところです。 併せて買い物難民の解消に向け、『道の駅ふるどの』を中心に配食サービスを展開したり、高齢者でも利用できるデジタル端末を配布する構想も検討しています。元気な高齢者が知識・技術を生かして活躍できる場も設けたいですね」 一次産業活性化が基本  ――6期目に実現したい施策を教えてください。 「本町の基幹産業は農林業であり、これら一次産業を活性化させる施策がまちづくりの基本と考えています。 具体的には、米価が下がっており、消費量も落ち込んでいるため、地元産米を学校給食として消費することで応援していきます。 本町の町土の約8割は森林が占めていますが、皆伐した後の対応については国・県による補助制度の対象となっています。森林環境譲与税も含め、補助制度を活用しながら林家が収入を得られる仕組みを確立したいですね。農業振興と交流人口増加につなげるべく、『道の駅ふるどの』の拡張も計画しています。 人口減少対策としては、住宅地の造成・整備を進めています。すでに6区画が分譲済みで、2軒の家が建っています。移住・定住も含めて、『これから暮らしていく場所』として、本町を選んでいただけるまちづくりを進めていきます。 そういう意味でも、重要になるのが教育環境の充実です。学校統合を進めた結果、町内の小中学校は古殿小学校・古殿中学校の2校になりました。今後、学力向上につなげていくにはどうすればいいか、ICT技術導入を進め、文部科学省の動向も見つつ、対応していきます。 高齢者福祉に関しては、先ほどもお話しした通り、どのような形でも町内で暮らせるように環境を充実していく考えです。 古殿町商工会、各事業所と一丸となって、町を元気にする施策を打ち出していきたいと思います」 ――町民に向けて一言。 「町民の皆さんにはさまざまな面でご意見・ご理解をいただきながら町政運営に取り組んできました。再び町政を預からせていただけるのであれば、『初心忘るべからず』という思いを持って頑張るので、よろしくお願いいたします」 古殿町のホームページ 掲載号:政経東北【2023年3月号】

  • 【本宮市】高松義行市長インタビュー

    【本宮市】高松義行市長インタビュー

     たかまつ・ぎぎょう 1954年生まれ。大正大仏教学部卒。1995年から旧本宮町議。2007年から本宮市議、2011年1月の市長選で初当選。現在4期目。  ――無投票で4選されました。 「3期目に続いて4期目も無投票になり、これをどう捉えるかは有権者の皆さんがそれぞれ考えることだと思いますが、大きく分けて2つ言えると思います。1つは本宮市政に対して無関心な方の増加、もう1つは信任していただいたということです。どちらにしても、無投票で信任をいただいたことについては責任を重く感じています。また、政治や市政に全く関心がない市民がいることにも大きな責任を感じなければならないと思っています。いずれにしましても、無投票で4選を果たし、4年間の市政執行の機会をいただいたことについて、謙虚にその思いを受け止めながら一生懸命やっていきたいと考えています」 ――選挙後は人口減少対策を最優先課題に挙げていました。 「一言で『人口減少対策』と言っても難しい課題で、特効薬はありません。まずは市民サービスをバランスよく提供していくことによって住みよさや安心度、快適度、幸福度が生まれてくると思っています。子育てや教育面、学力向上などはもちろん、高齢福祉やインフラ整備など、一つひとつ丁寧に市民の方々の思いに寄り添った中で、バランスがとれた市民サービスをつくり上げていく必要があると思っています。 もう1つ、大切なのが発信力です。本宮市は住みやすくたくさんの方に住んでいただいています。そのことをしっかり発信していくことに加え、それをどこに発信するかも重要です。おかげ様でここ2年間は転出より転入が多く、社会動態は増加に転じていますが、県内の近隣自治体での人口移動では意味がありません。やはり首都圏や他県の方々にこの福島県、本宮市に住んでいただきたいと思っており、そのための施策を講じていきたいと思います。しっかりとした発信力を持ちつつどこに向けて発信していくかを重要視しながら、人口の減らない本宮市をつくっていきたいと思います」 ――以前から白沢地区の人口減少対策に取り組んでいます。 「様々な施策を展開してきましたが、なかなか実績として上がっていません。まずは焦らず白沢地区の良さを知ってもらう取り組みが必要と思い、交流人口や関係人口拡大に取り組んできました。白沢地区には岩角山や震災後にはプリンス・ウイリアムズ・パークが整備され、そういった白沢地区にある名所を生かしながらいい部分を発信してきました。 いま検討しているのがゲストハウスのような宿泊体験施設です。1週間ほどお試しで白沢地区に住んでいただき、白沢地区の住みよさを味わってほしいと思います。その宿泊体験で気に入っていただいた方に住居をどう提供していくかも大事ですが、せっかく農村に住むのだから、それぞれ古民家のような空き家に住みたい方、新居を建てるための土地が欲しい方、加えて農地も欲しい方など、好みがあると思います。その辺の思いを汲みながら、どう紹介していくかといったきめ細かいサービスを行うことが大切だと思います」 新たな公共交通を模索  ――子育て世代の転入を増やすうえでは教育面も重要です。 「教育環境は子育て世代にとって非常に大切です。家族で住むことになれば、高校進学のための学力を心配する方も多く、子育て世代へどう対応していくかというのは大事ですし、学力ばかりではなく体力向上も重要です。教育委員会でも、それぞれの学校において、課題を明確にしながらプログラムに沿って学力向上を目指す取り組みを行っています。 また、妊婦の方や出産後6カ月以内の産婦の方に向けて、市では『出産ママヘルプ事業』と銘打ち、家事や育児の支援が必要なご家庭に、ワンコインでヘルパーを派遣する事業を行っています。市内には子どもが遊べる場所が多く、いまは恵向公園の整備を行っており、子どもばかりでなく高齢者も楽しめる公園を提供できたらと思います。おかげさまで子育て世代の転入も増えていますが、今後も様々な施策を続けていきたいと思っています」 ――昨年からは定額タクシーの実証運行を行ってきました。 「市民の皆さんの様々な声を聞きながら、本宮市の新公共交通システムをつくりあげるべく取り組んでいますが、その1つが会員になれば定額料金で一般の小型タクシーを利用できる『まちタク』です。市内の一部の地域では、以前よりデマンドタクシーを行っていますが、行き先が限定されるなどサービスが行き届いていませんでした。そこで『まちタク』は、乗降できる施設を大幅に増やしました。また、いままでの巡回バスをコミュニティバスに変更するなど、市内の公共交通システムを大幅に変更する取り組みを行っています。これは福島大学の吉田樹准教授をアドバイザーに迎え、様々な年代の市民と一緒になってつくりあげています。実証運行を行っている『まちタク』は利用者の反応も良く、改善を加えながら10月1日を目標に新たな公共交通システムの一つとして導入を図りたいと思っています。 移動手段のない高齢者はもちろん、移住してきた方々には自家用車や免許を持たない方もいますから、そういった方々への一定の交通手段は確保できると思います。また、鉄道が運休した際の代替交通としてバスが活用されており、移動手段の選択肢の1つにこういった公共交通システムは必要と実感しています。当然、それを維持できる財政状況を守っていくことも必要です」 ――JR五百川駅周辺整備を進めています。 「駐停車場の整備工事が着工しました。駅前が狭く危険だったため、まずは安全な駐停車場の確保を目指しています。今後はJRとの協議でトイレやバリアフリー化の整備を随時進めていくことになります」 ――本宮インターチェンジ周辺の開発も進められています。 「五百川駅周辺整備や交通の利便性に加え、人を呼び込めるような施設を考えたとき、商業施設がいいのではと思い、様々な商業施設と交渉しています。ほかにも様々な企業と交渉を進めていますので、いい形にしていきたいと思います。完成すれば多くの人々が集まる場所になり、渋滞も予想されますので、そういった対策も合わせて進めていきたいと思います」 ――今後の抱負を。 「市民の皆様から4年間の舵取りを任されましたので、市民の方々と一緒になって元気な本宮市をつくる先頭に立っていきたいと思います。これまでの12年間は震災・原発事故や水害、地震、そして新型コロナウイルスなど市民の皆さんにも多くの苦労があったと思います。これからの4年間は市民の皆様が穏やかに過ごせて活気あるまちになるよう努力していきたいと思います」 本宮市のホームページ 掲載号:政経東北【2023年3月号】

  • 【福島市】木幡浩市長インタビュー

    【福島市】木幡浩市長インタビュー

     こはた・ひろし 1960年生まれ。東大経済学部卒。自治省(現総務省)に入省し岡山県副知事、消防大学校長、復興庁福島復興局長などを歴任。現在市長2期目。  ――2022年度の除雪関連の予算を過去最大の8303万円に拡大しました。1月の大寒波の影響をお聞きします。 「昨季の大雪では、除雪に対し市民の皆様から厳しいご意見をいただきましたが、今季は教訓を生かした対応ができたと思います。必要な予算の確保はもちろん、除雪を体系的に行うためのマニュアルを作りました。市民の皆様にもメールで降雪・凍結情報を即時に知らせています。 隅々まで除雪するには市民の皆様の協力が必要です。小型除雪機の貸し出しはこれまでも行っていましたが、今季は台数を増やし、周知を図りました。その結果、貸出実績は以前に比べるとかなり増えました。 岡部など東部地区の関係者とは、除雪アダプト制度という決めた範囲を責任を持って除雪する協定を締結しました。ありがたいことに丁寧な作業のおかげで生活道路の除雪体制は改善が図れたと思います」 ――政府は5月8日から新型コロナウイルス感染症の位置付けを5類に引き下げると発表しました。3月13日からはマスクの着用が緩和されます。「出口」が見えてきた中で市の経済や観光振興についての施策をお聞きします。 「『出口』に至るためには何よりも感染防止を徹底していくことが必須です。世代別で死者数が最も多い高齢者の感染は何としても防がなければなりません。高齢者と面会する場合のマスク着用などは、これまでと変わらず続けなくてはならないと考えています。 経済活性化に関して言えば、心強いのは『道の駅ふくしま』という地域活性化の核ができたことです。年間の目標来場者数は133万人でしたが、オープンから約9カ月で150万人に達し、売り上げも11億円を超えました。冬季の来場者が減る傾向にあるので、引き続きイベントやツアーなどを仕掛けていきますが、今春には『周遊スポット魅力アップ支援事業』を活用したスポットが続々オープンします。例えば、温泉旅館であれば魅力ある露天風呂を、観光農園であればインスタスポットを作り、点ではなく面で福島市を巡る楽しみを創出する仕組みを整え、それを物販にもつなげていきます。   福島市は新商品が生まれる傾向が弱い印象があるので、道の駅をベースに事業者同士の連携を深めて商品を作り出し、併せて発信もするというアンテナショップの役目をより強めていきます。  ふるさと納税の返礼品はその一環であり、私としては福島市のPRにとどまらず、マーケティングという地域経済活性化に即効性のあるものとして考えています」  ――福島駅東口で行われている市街地再開発事業について、当初計画より事業費や市が負担する補助金が増え、今後の精査によってはさらに増える可能性が指摘されています。 「資材が高騰しており、事業費増は避けられません。ただ精査をすることで、増えるだけではなく減らせる部分も見つかります。事業費圧縮に努めることを肝に銘じて精査を続けています。 国などからの補助金は通常であれば定率なので、資材が高騰しても増えるわけではありません。市としてはその状況を考慮し、さらに補助金を要請していきます。ただ国も、再開発事業が止まれば都市としての魅力が低下すると強く懸念しているので、負担軽減に向けた制度を作っている途中です。 また、完成後の運営を効率的に行うことも非常に大事です。今のうちから運営母体を決めて、その上で大規模・国際的な会議の誘致活動をしていきます。かかる経費はできるだけ収益で賄っていける基盤を作りたいと思っています」  ――市が昨年9月に発表した中期財政収支の見通しも非常に厳しい状況です。市債残高は膨らみ、2026年度には財政調整基金と減債基金の残高がなくなり、財源不足を埋められず必要な予算が立てられなくなると試算されています。 「財政は厳しいですが、やるべき事業はやっておかないと、後々の負担は逆に増えてしまうと考えます。いま手を打たなかったことで、都市の魅力が下がり、人口減少がますます進んでしまうことも危惧されます。そうなれば活力が失われ、街としてもっと苦しい状態に追い込まれてしまう。必要な事業を先送りすることなく実施していくことが大事だし、私はその精神でこれまでも取り組んできました。 人も富も集中する東京は民間が都市の魅力向上を果たしてくれる面が強い。しかし地方は、行政が主導的な役割を果たしていかないと都市としての存在感が低下していきます。私はそういう意識で、これからも市政運営に努めていきたいと思います。そのためにも行財政改革や事業の取捨選択、デジタル化などを進めていきます。 一方、『稼ぐ』という点では福島市が開発した全国的にも珍しい『議会答弁検討システム』を売り出していきます。本来は民間が稼げるようにするのが一番なのですが、行政自らが『稼ぐ』ことを意識し、財政の持続可能性を達成したいです」 ――老朽化する消防本部、市立図書館など、市内には建て替えが必要な公共施設が多数あります。どのように対応していきますか。 「すべての施設を建て替えるのは財政状況を考えると困難です。再編統合や規模縮小など多少痛みを伴うこともあるかもしれません。 とりわけ消防本部は災害対策の要ですから、耐震面に大きな問題がある状況は1日でも早く解消しなければなりません。 これから本庁舎西側で市民センターの建設が本格化します。同センターには市民会館や中央学習センターを再編統合した機能が備わります。一方、消防本部は市民会館の跡地に建設する計画です。市立図書館も老朽化が著しいですが、新たな建設場所などは決まっていません。財政状況にもよりますが、まずは消防本部の建て替えを優先し、その後、市立図書館の建設に着手できるよう検討を進めたいと思います」 ――念願だった古関裕而さんの野球殿堂入りが実現しました。 「祝賀ムードを維持しながら古関裕而記念館での発信に努めていきます。野球殿堂入りの証しとなるレリーフを展示し、多くの方に見に来てもらえるようにしたいと思います。 野球の試合を県営あづま球場で開き、古関さん作曲の歌で応援合戦をするのも一つのアイデアだと思います。今回の野球殿堂入りを機に、福島市を野球の聖地の一つにできないかと密かに考えています。 古関さんの曲は親しみがあって心地よい、古びないメロディーです。世代を超えて古関さんへの愛着を継承できる仕掛けを街なかに作っていきたいと思います」 福島市のホームページ 掲載号:政経東北【2023年3月号】  

  • 【伊達市】須田博行町長インタビュー

    【伊達市】須田博行市長インタビュー

     すだ・ひろゆき 1958年生まれ。宇都宮大農学部卒。福島県に入庁し県北農林事務所長などを歴任。2018年1月の伊達市長選で初当選、22年1月に再選。  ――2期目の市長選挙で公約に掲げた「安心・安全の確保」、「雇用の場の確保」、「子育て・教育の充実」、「健幸・福祉のまちづくり」の進捗状況についてお聞きします。 「『安心・安全の確保』については、1期4年の間に令和元年東日本台風が発生し、新型コロナウイルス感染症が感染拡大したのを受け、2期目でも最優先課題に位置付けました。 災害対策として大型排水ポンプ車を導入し、いつ水災害が発生しても速やかに出動できる体制を整備しました。この間、幸いにも出動する機会はありませんが、引き続き伊達市建設業協会と締結した『排水ポンプ車による緊急排水業務の支援に関する協定書』に基づいた機動的な対応をはじめ、職員も稼働に携われるよう訓練を進めていきます。 危機管理対策の一環としては『伊達市防災アプリ』の運用を始めたほか、雨量計や河川監視カメラを設置するなど、災害に関する情報収集や監視機能の強化を図っています。コロナ対策としては、重症化を防ぐ観点からワクチン接種が重要となります。集団接種は終了しましたが、伊達医師会との連携のもと市内の各医療施設で接種できる体制を整えており、接種機会の確保に取り組んでいます。 『雇用の場の確保』については、本市の基幹産業である農業の担い手確保が喫緊の課題です。この間、新規就農者の経済的負担軽減のため、農地の賃料補助や農業機械の購入補助、家賃・生活費の補助などきめ細かな支援策を展開してきました。一方で、本市は、モモ、キュウリ、製法確立100周年を迎えたあんぽ柿など全国に誇れる特産品があります。今後もブランド力の維持はもちろん、その裏付けとなる生産量をしっかり確保していくことが求められます。引き続きトップセールスやメディアを通した戦略的なPR活動を展開しながら販売促進の強化に努め、農業所得の向上につなげていきます。 若者定住の促進も見込んだ伊達市新工業団地も完成の運びとなり、販売面積の約9割が成約となっています。2024(令和6)から本格的に進出事業所が開業する見通しなので、雇用創出効果が期待できると思います。また、同年度には、大型商業施設『イオンモール北福島(仮称)』がオープン予定で、約3000人の雇用が見込まれるなど、多様な形の雇用の創出が期待されます。 『子育て・教育の充実』については、働く世代が子どもを安心して預けられる環境づくりが重要との観点から、市内3カ所に認定こども園を整備しました。放課後児童クラブや屋内遊び場などのさらなる充実を図るとともに、伊達小学校改築や霊山中学校の耐震化など子どもたちが安心・安全に学べる環境整備にも取り組んできました。そのほか、各児童・生徒へのタブレット端末の配布と各学校への大型電子黒板の導入、総合型地域スポーツクラブ設立による地域スポーツの充実を図ってきました。 『健幸・福祉のまちづくり』については、健康寿命の延伸がキーポイントです。本市では、運動習慣化支援として、地区集会所を拠点に参加者同士が交流しながら気軽に楽しく運動を行う『元気づくり会』事業を展開するなど、健康増進活動の定着を図ってきました。コロナ禍による影響で活動が制限された期間もありましたが、現在は130団体を数えるなど活発に展開しています」  ――政府では、5月8日より新型コロナウイルス感染症を感染症法の2類相当から5類に引き下げる方針を示しました。 「本市としては、引き下げ以降も引き続き感染防止対策は必要と考えています。政府には今後の感染状況を注視しながら国民が不安を覚えたり、医療現場が混乱することがないよう現場の声に耳を傾ける対応をお願いしたいと思います。そのほか、高齢者施設や医療施設のクラスター対策をはじめ、ワクチン接種の公費負担延長、コロナ禍で冷え込んだ地域経済の再生に向けた経済支援策の継続を切に願います」 ――コロナ禍により地域経済が疲弊する一方、最近は光熱費の高騰による影響が深刻です。市としてどのような対策を講じていますか。 「昨年7月から12月まで、プレミアム率40%の『伊達市プレミアム4応援券』を計5万3500セット(紙仕様、デジタル仕様)発行し、すでに完売しました(利用率99%)。消費喚起に加えて、物価高による影響も緩和できたと感じます。 一方、エネルギー価格や物価高騰の影響を受け、売り上げが前年の同じ月と比べ20%以上減少している市内中小企業には『伊達市中小企業エネルギー等高騰対策事業継続応援金(申請は2月15日終了、1事業所一律10万円)』を交付するなどタイムリーな経済対策を講じています」 ――国道349号整備の見通しについて。 「月舘、霊山、保原、梁川を南北に結ぶ幹線道路です。生活や物流のみならず、国道4号、東北自動車道、相馬福島道路の代替路線に位置付けられ、緊急搬送や災害物資輸送道路としても重要な機能を発揮します。現在、県境を接する宮城県丸森町では国直轄事業として鋭意整備が進められています(2024年度の開通予定)。本県側でも宮城県境から兜町までの300㍍区間が一体的に整備されており、兜町以南の2・2㌔区間はルート検討に向けた測量調査業務が実施されています。本県側も遅れることのないよう、県や関係機関に早期着工を強く働き掛けていきます」  ――2023年度の重点事業についてうかがいます。 「防災体制のさらなる整備をはじめ、現在改修を進める伊達市保健センターへの子どもの養育相談や発達教育支援の集約化、イオンモール北福島内のアンテナショップ出店に向けた検討・準備、商店街活性化に向けた新規事業や起業の支援、行政手続きのオンライン化、デジタル弱者対策、集落支援員の配置による地域問題の相談や問題の共有化、アプリを活用したマイナンバーカードの普及とさらなる行政事務等の効率化を図ります。 伊達市では、10年後の本市のあるべき姿を実現するための指針として伊達市第三次総合計画を策定しました。計画期間は2023(令和5)年から2032(令和14)年の10年間で、将来像として『人と緑と歴史が結び合うひかり輝く田園空間・伊達市』と定めました。お互いを思いやるやさしい人間性を象徴する『人』、農業や豊かな自然を象徴する『緑』、そして、伊達氏発祥の地、北畠顕家が国府を開いた霊山などを象徴する『歴史』。これら3つの宝を守り伸ばしながら、本市が光り輝く田園都市となるようまちづくりを進めていきます」 伊達市のホームページ 掲載号:政経東北【2023年3月号】

  • 【相双建設事務所】小池敏哉所長インタビュー

     こいけ・としや 1967年生まれ。宇都宮大学工学部土木工学科卒。1990年に県職員となり、土木部下水道課長、技術管理課長などを歴任。2022年から現職。  ――2月には県道広野小高線の富岡町の工区が完成し広野町から富岡町までの区間が結ばれました。 「一般県道広野小高線(通称・浜街道)は、広野町を起点に双葉郡の太平洋沿岸部を南北に縦断し南相馬市小高区に至る幹線道路で、このうち広野町から富岡町に至る区間約17・2㌔について、平成9年度から道路改良事業に着手しました。平成23年3月の東日本大震災後は、津波で甚大な被害を受けた被災地域の復興まちづくりを支援する道路として整備を推進し、令和5年2月に広野町から富岡町の区間を開通させることができました。広野町から富岡町までの改良道路により、安全で円滑な通行が可能となり、沿岸部における人と物の交流や地域間連携が一層図られ、産業の再生や観光の振興につながるなど、浜通りの復興を力強く後押しすることが期待されます」 ――昨年は福島県沖地震が発生し、相双地域は大きな被害がありました。 「令和4年福島県沖地震では、当事務所で管理する道路、河川、海岸において53箇所の被害が確認されたことから、早期復旧に取り組み、令和5年3月末時点で36箇所の復旧が完了しております。残りの被災箇所についても、令和6年度の完了を目指し、引き続き、道路等の復旧にしっかりと取り組んでいきます」 ――防災事業も重要です。 「令和元年東日本台風など、近年、激甚化・頻発化する自然災害に備え、河川の治水安全度を高めるため、『宇多川及び小泉川の改良復旧事業』等の河川整備を進めるとともに、河川堤防の強化を目的とした堤防天端の舗装や、河川の流下能力向上を目的とした河道掘削や伐木等を引き続き実施していきます。また、流域治水の考えに基づき、流域全体のあらゆる関係者が協働し、ソフト・ハードが一体となった防災・減災対策に取り組んでいきます。さらに、災害時の輸送を確保する道路ネットワークの強化や管理する各種公共土木施設の長寿命化対策を計画的に実施していきます」 ――震災・原発事故を受けての管内の整備状況について。 「県では、避難解除区域等と周辺の主要都市等を結ぶ幹線道路を『ふくしま復興再生道路』と位置づけ、住民帰還や移住促進、さらには地域の持続可能な発展の支援に取り組んでいます。当管内では国道114号、国道288号、県道原町川俣線、県道小野富岡線の4路線13工区でふくしま復興再生道路の整備を進めており、これまで国道288号(野上小塚工区)など、2路線9工区で供用を開始しています。残る2路線4工区についても引き続き整備を進め、相双地域の復興を着実に進めていきます。また、相双地域では、地域内において復旧・復興状況が異なっていることから、それぞれの状況に合わせた安全・安心な社会資本の整備にしっかりと取り組んでいきます」 ――今後の抱負。 「本年度は、県道小野富岡線(西ノ内工区)での一部区間供用や、令和元年東日本台風による災害復旧工事や宇多川改良復旧工事の完了を目指すとともに、国道114号(椚平工区)や復興シンボル軸(県道井手長塚線)の整備促進、県道浪江三春線(小出谷工区)の橋梁及びトンネルの設計着手、復興祈念公園における(仮称)公園橋の工事に着手するなど、相双地域の復興を着実に進めていきます。また、第2期復興・創生期間(令和3年~7年)の折り返しの年であり、地域の復旧・復興のステージを捉えながら、住民帰還へ向けたインフラの整備を着実に進めるとともに、適切な維持管理に、職員一丸となって取り組んでいきます」

  • 【福島県北建設事務所】長嶺勝広所長インタビュー

    ながみね・かつひろ 1965年生まれ。会津若松市出身。新潟大卒。1987年に県職員になり、喜多方建設事務所長、土木部次長(道路担当、企画技術担当)などを歴任。昨年4月から現職。  ――県北建設事務所長に就任され1年が経過しました。この間を振り返って。 「令和4年度は、『ふくしま復興再生道路』の整備や、令和元年東日本台風等において、大規模な被災を受けた河川の再度災害防止に向けた河川改良などを職員が一丸となり、スピード感を持って取り組んだ1年でした。 また、令和4年3月16日の福島県沖を震源とする地震により、阿武隈川を渡る県管理の橋りょう3橋と桑折町管理の1橋の合計4橋が被災しましたが、そのうち2橋の復旧工事が完了し、残る2橋につきましても国による代行事業で実施することとなり、様々な事業が円滑に進捗しました。これも地域住民の皆様や国、市町村をはじめとする関係各位の御協力の賜であり感謝申し上げます」 ――管内における令和元年東日本台風の災害復旧事業をはじめ、河川、砂防事業の進捗状況についてうかがいます。 「令和元年東日本台風の災害復旧事業は概ね完了いたしましたが、甚大な被害を受けた移川・安達太田川(二本松市)、広瀬川(川俣町)、山舟生川(伊達市)において、再度災害防止に向け、災害復旧と併せた河川改良を、また、滝川(国見町)、濁川(福島市)、外3河川において背水(バックウォーター)対策として堤防の嵩上げ工事等を引き続き実施しています。さらに、河川の拡幅等と同時に橋梁の架け替え工事も行っています。 そのほか、治水安全度向上のため、古川(伊達市)、五百川(本宮市)などにおいて、築堤や護岸などの河川改修事業を進めていきます。砂防事業については、土石流対策として砂防えん堤を建設する大作沢(川俣町)や、がけ崩れ対策として防護柵を設置する椿舘(福島市)など、土砂災害が発生するおそれがある区域で、特に要配慮者利用施設が存在する場所を優先して対策事業を進めるとともに、小谷ノ沢(川俣町)や坊田沢(伊達市)など既存の砂防えん堤の補強工事にも取り組んでいます」 ――「ふくしま復興再生道路」として鋭意整備が進められてきた国道114号山木屋1・2・3工区、国道349号大綱木1・2工区が3月21日に完成の運びとなりました。開通による効果についてうかがいます。 「避難指示解除区域の産業振興や交流人口の拡大、安全で安心な車両交通環境の確保、通行時間の短縮などの利便性向上を目的として整備しました。地元の川俣町民から『以前は幅が狭いしカーブは急、その上、すぐ下は川、怖いので冬場に山木屋に出かけることができませんでした。でも、広くてまっすぐな道路ができて時間も以前よりかからず、本当に有り難く思っています』と嬉しいお話をいただきました。整備した道路が次の時代、次の世代に渡り利用され、ますますの県土の発展に寄与していくことを願っています」 ――その他の重点事業についてうかがいます。 「県北地域が高速交通体系の結節点であることを生かした県内外との広域交流の促進や都市内の日常生活を支える道づくりが必要と考えております。 主な事業として、東北中央道福島大笹生ICへのアクセス性の向上を目的とした福島市の上名倉飯坂伊達線大笹生2工区では、工事着手に向けた用地取得を進めていきます。伊達市から宮城県丸森町に至る国道349号五十沢地区では、国と連携して道路改良事業に着手するとともに、本宮市では通勤通学など地域の方々の生活を支える県道本宮三春線高木工区の完成を図っていきます」

  • 【福島県中建設事務所】芳賀英幸所長インタビュー

     はが・ひでゆき 1967年生まれ。日本大学工学部土木工学科卒。1990年に県職員となり、土木部土木企画課長、道路管理課長などを歴任。今年4月から現職。  ――4月より県中建設事務所長に就任されました。前職は土木企画課長で県庁から出先事務所に異動しての勤務となりますが、管轄地域の印象等はいかがでしょうか。 「3月までは県庁勤務でしたが、土木企画課というのは情報共有の要で、各建設事務所の課題や問題解決のために動く縁の下の力持ちのような役割でした。今回は事務所長としての勤務ということで、直接事業に携わり、県民の方々とも直にお話ができる、いわば最前線で仕事ができるという点で非常にやりがいを感じています。県庁には6年間勤務していましたが、個人的には現場での仕事の方が好きなので、その点も踏まえて積極的に取り組んでいきたいと考えています。 県中建設事務所は郡山市に事務所を構えていますが、私自身、郡山市出身なので非常に愛着もありますし、地域のためだけでなく故郷に貢献していきたいと思いながら事業に取り組んでいきます」 ――ふくしま復興再生道路として整備が進められている、県道吉間田滝根線の事業進捗について。 「県道吉間田滝根線は県中地域と双葉地域を結び、浜通り地域の復興を加速化させる目的で整備が進められています。 その中でもあぶくま高原道路の小野ICから延びる9・2㌔のバイパス事業である広瀬工区は、うち2・6㌔を自動車専用道路区間、残りの6・6㌔区間を一般道区間として整備しています。現時点で外観的にはほぼ完成しているように見えますし、実際の事業進捗率としても90%以上が完了しています。今後は標識類の整備等に取り組み、今年度中に供用開始となる予定です」 ――昨年11月には国道118号鳳坂トンネルが開通しました。 「国道118号鳳坂トンネルについては天栄村の方から熱望されていた事業で、開通式後に地域の方から100年来の事業を実現してくれてありがとうという感謝のお声をいただきましたし、地域の方からそうしたお声を直接いただけて非常にやりがいを感じました。天栄村は県中地区に位置しますが、鳳坂トンネルの先はどちらかといえば会津地域と同じ気候で、役場と湯本地区との行き来が困難であったため、物流や観光、救急搬送においても大きな影響を与えていた経緯があります。トンネルの完成によって、それらが円滑に行えるということで非常に高い整備効果が得られたと見ています。また、県中地域の方が南会津方面に行かれる際にも鳳坂トンネルを利用されることが多いので、通勤利用という側面でも大きく貢献していると考えています」 ――今年度の重点事業について。 「先述した吉間田滝根線の年度内開通に加えて、石川町において水災害から地域の安全・安心を確保する千五沢ダムの再開発事業を進めており、昨年度には洪水吐き導流部コンクリートと下流護岸工が完成しましたので、今年度は残りの工事を進めて年度内の完成と試験湛水を行う予定です。 その他の事業として、災害に強い道路ネットワークの構築を目指す国道288号船引バイパスの整備事業を進めており、郡山市側の1工区は平成27年度に供用し、2工区の一部区間も昨年度に供用開始しました。今年度以降は2工区における残りの区間の工事と3工区の用地取得と工事を推進し、早期の全線開通に向けて取り組んでいきます。また、昨年度は、いわき石川線の石川バイパス2工区が供用開始となり、こちらについても残る1工区の工事を推進し、早期開通を目指して取り組んでいきます」

  • 【須賀川商工会議所】菊地大介 会頭インタビュー

    きくち・だいすけ 1972年10月生まれ。㈱あおい代表取締役。東北学院大卒。2019年11月から須賀川商工会議所副会頭を務め、昨年11月から現職。  新型コロナウイルスの感染拡大がひと段落し、経済の動きの再生に期待が寄せられている。県内経済界ではどのように対応していく考えなのか。須賀川商工会議所の菊地大介会頭(㈱あおい代表取締役)にこの間の会員事業所の状況やアフターコロナに向けた展望、さらには物価高騰やデジタル化への対応などについて、語ってもらった。  ――昨年10月の臨時議員総会で新会頭に選任されました。就任から半年経過しましたが、現在の率直な感想を教えてください。 「3年前の副会頭就任後、すぐに新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、ほとんど大きな動きが取れなかった3年間でした。新型コロナウイルスの5類引き下げが決まり、徐々に社会の正常化が図られる中で会頭に就任させていただいたことを感慨深く受け止めています。 就任のあいさつでも述べましたが3年の任期中に、①物価高騰への対応、②デジタル化の推進、③アフターコロナに向けての対応に取り組んでいきたいと考えています。 新型コロナウイルスの感染拡大がひと段落し、人の動きが活発になっていますが、飲食業・観光業の事業所ではこの間、金融機関から借り入れしてきたところが多く、今後、本格的に返済が始まります。そうした事業所へのサポートを行っていきたいですね」 ――物価高騰が家計に深刻な影響を与えており、国では大手企業などに対して賃上げ要請を行っています。中小企業を支える商議所として、どのように対応していく考えですか。 「会員事業所には中小企業が多く、価格転嫁や賃上げなどに対応できず苦しんでいます。固定費が上昇する中で賃上げを行うのはとても勇気がいることですが、この時期に賃上げを行わなければ人手不足になってしまうという問題もあります。 私は建設業を経営していますが、国土交通省関東地方整備局では入札時、賃上げを行っている事業所に、ポイントが加算されるようになりました。今後、県・市町村発注の工事でも同じような仕組みが設けられる可能性があります。国の要請を受けて大手企業は賃上げを発表しており、中小企業も賃上げについて考えるときが来ていると思います」 ――デジタル化の推進を進めていますが、現在の進捗状況はいかがでしょうか。 「副会頭を務めていた昨年、『DX(デジタルトランスフォーメーション)推進研究会』を立ち上げました。今後アフターコロナに向かっていく中でDXを進めていかなければ立ち遅れてしまうと思います。高齢の方などは理解するのが難しい分野ではありますが、例えば商店街の中でグループラインでのやり取りを行うだけでも十分なDXです。 飲食店ではスマホで注文できるアプリを活用するなど、簡単なことでもできることが多いです。会員事業所には中小企業が多いだけに、商議所として積極的に支援していきたいと考えています」 インバウンド増加に期待  ――ウィズコロナ、アフターコロナを見据えて、今後どのような形で事業を展開していきたいと考えていますか。 「令和4年度末、令和5年度初めには懇親会や歓送迎会などが行われ、街なかにもかなり人出が戻ってきたようです。 期待しているのは国内も含めたインバウンドの増加です。特に今年は3月に福島空港が開港30周年を迎え、沖縄便をはじめベトナム便が12便来ます。福島空港では那覇空港とともに連絡促進協議会を立ち上げており、互いに連携しています。 私は同協議会の会長も兼任していますが、沖縄県は昨年本土復帰50年の節目を迎えたこともあり、注目を集めているので、県と連携しながら沖縄便再開に向けて動いていきたいと思います。 観光物産振興協会長も兼任していますが、コロナ禍を経て観光のスタイルが変わっています。自然とのふれあいや文化交流、アクティビティを楽しむ『アドベンチャーツーリズム』が人気を集め、高付加価値ツーリズムも注目されています。 体験型観光という面ではサッカー・いわきFCがJ2に昇格しましたが、来県するサポーターの福島空港利用を見越して、いわき商工会議所と協定を結びました。今後の仕掛け方によっては、観光で人を呼び寄せることができると思っています」 ――観光ということでは、昨年、「松明あかし」が3年ぶりに有観客開催となるなど、イベントも徐々に再開されるようになっています。今後の展望はいかがでしょうか。 「この間、夏の風物詩である須賀川市釈迦堂川花火大会は花火を打ち上げるだけで露店はなく、松明あかしは無観客で大松明に火をつけただけでした。それだけに、昨年の松明あかしの有観客開催は多くの市民が待ち望んでいたと思います。今年は花火大会に関しても通常開催され、さまざまな露店も従来通り出店される見通しです。 花火大会や松明あかしは一時的に交流人口が増えるイベントに過ぎませんが、市内には継続的に観光客が訪れる歴史的な史跡などがあるわけではないので、本市では意識的に数多くのイベントを開催してきた経緯があります。今後は先ほども話した通り、県とも連携を図りながら、今までとは違った観光を模索していきたいと思います」 ――昨年発生した福島県沖地震の影響について。 「令和元年東日本台風の被害やコロナ禍に加え、2年連続で地震が発生し、四重苦に苦しむ事業所も多い現状にあります。そういった事業所に対しては、商議所としても伴走型支援を続けていきたいと思います」 ――ウルトラマンによるまちづくりについて。 「震災・原発事故後、市と円谷プロダクションが協定を締結し、市中心部にモニュメントを建造するなど、互いに連携を図ってきました。メディアの露出も増加し相乗効果で市内の飲食店が紹介されるなど、大きな効果がありました。締結から10年目を迎え、あらためて市と同プロダクションがまちづくり連携協定を結びました。今後は市とともに、ソフト面でもウルトラマンのまちづくりを進めていきたいと思います。福島空港にも新たなモニュメントを建造する計画があり、空港を盛り上げていきたいと思います」 ――今後の抱負。 「100年に一度と言われるパンデミックやロシアのウクライナ侵攻など、社会情勢が大きく変化しています。人口減少が進む地方では地方創生が叫ばれ、各地域が競って地域振興に取り組んでいます。変化に乗り遅れないようにしつつ、住みやすく魅力ある須賀川市の実現のため、努力していきたいと思います」 須賀川商工会議所ホームページ 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 【福島県立医大】竹之下誠一理事長兼学長インタビュー

    たけのした・せいいち 1951年生まれ。鹿児島市出身。群馬大医学部卒。福島県立医科大附属病院長、同医大副理事長などを歴任し、2017年4月から現職。  福島県立医科大学の新たな理事長兼学長に選考会議が竹之下誠一氏(3期)を選んだ。医大は、県民に高度な医療を提供し、医療従事者を育成するのが主な役割だが、浜通りに設置された福島国際研究教育機構の主要研究機関として先端研究の使命が課されている。竹之下氏に新しいフェーズにどう対応するのか聞いた。  ――意向投票後、委員たちによる選考会議で理事長兼学長に選ばれました。率直な感想をお聞かせください。 「福島県立医大は大震災・原発事故から12年を経て、復興を担う研究・医療機関としての新しいフェーズに入りました。福島国際研究教育機構が始動し、本学はその核となります。政府、他大学、他国の機関との連携も今以上に盛んになります。県民の皆様の健康に奉仕する従来の役割はもちろん、日本政府や海外からも研究で新たな役割を期待され、大きな視野でかじ取りをしていかなければならないと責任の重さを感じています。 1期目は前例のない事態にしなやかに対応する意味でレジリエンス、2期目は個人や組織が協力し、最大限の力を発揮することを狙いアライアンス(連携)を掲げました。3期目は新しいフェーズに対応できるよう、さらに機敏さや俊敏さを備えたアジリティの精神で取り組みます」 ――5月8日から新型コロナの感染症法上の位置付けが5類に引き下げられます。 「入院の調整もこれまで保健所が関わってきたものから医療機関同士の自主的なものに移行していきます。今まで以上に医療機関同士の連携が強く求められます。県と調整して受け入れ体制の維持に協力していきます。国、県の方針とこれまでに築いてきた『福島モデル』を組み合わせて連携していきます」 ――県内は医師・医療スタッフが不足しています。地域医療支援センターが行っている医師派遣について教えてください。 「県内医療機関からセンターへの医師派遣依頼に対し、2022年度は常勤医師・非常勤医師の派遣が延べ1856件ありました。そのうち、会津地方の派遣件数は会津・南会津合わせて延べ294件、浜通りは相双が延べ177件、いわきが延べ102件です。特に非常勤医師については、県が掲げる中期目標値である対応件数1000件以上(対応率80%以上)に対し、実際の対応件数は1379件(対応率87%)と5年連続で達成しています。 医師派遣で重要なのが、経験豊富な指導医、専門医を招いて派遣先で若手医師の育成に当たらせることです。若手は専門医の資格を取りキャリアアップを目指します。資格取得には、定められた研修プログラムを修了して試験に合格しなければなりません。若手一人だけが派遣されると、その期間は専門医になるための教育が受けられなくなるという問題があります。逆に、派遣先に指導する医師がいれば、専門医へのキャリアが継続できるし、むしろ進んで赴任する動機になります。 2021年度以降、計9人の指導医らを招いています。うち5人は浜通りの医療機関で地域医療に貢献していただいています。医師派遣と専門医育成を両立させる仕組みは軌道に乗ってきました」  ――福島国際研究教育機構(F―REI)が発足しました。 「『放射線科学・創薬医療』と『原子力災害に関するデータや知見の集積・発信』の2分野について、F―REIと連携を密にして取り組んでいます。4月5日には研究開発、人材育成、人材交流、施設・設備の相互利用などの協働活動を推進するために合意書を締結しました。国は『福島国際研究教育機構基本構想』で、『本学等との連携を進め、我が国における放射線の先端的医学利用や創薬技術開発等を目指していく』と明示しています。早速、今年1月には先行研究として『放射性治療薬開発に関する国際シンポジウムin福島』を南相馬市に国内外の研究者を集めて開きました。 放射線科学・創薬医療分野では本学は既に実績があります。アルファ線を放出するアスタチン211という人工の放射性元素を用いて、悪性褐色細胞腫という珍しい病気の治療薬の研究開発に取り組んでいます。臨床研究で人体に投与したのは世界で初めてです。これを他のがん治療へも応用しようと考えています。 放射性元素アスタチン211は半減期が7・2時間と短く、遠方へ運ぶ間に減衰してしまいます。新規薬剤の合成等には時間がかかり、放射線管理という点でも、学内で扱う必要があります。本学は治療目的の研究で世界をリードしていますから、自ずと、最先端の学術研究・臨床のフィールドは福島県内に定まります。世界中から優秀な研究者が集まり、研究はより進みます。こうして得られた最先端の知見をいち早く県民の皆様の医療に還元できます。最先端とは、必ずしも日本国外や都市部にあるわけではありません。福島で行っているのはまさに最先端と呼べる国際的な研究です。 『原子力災害に関するデータや知見の集積・発信』の分野に関しては、既に2020年度から福島イノベーション・コースト構想推進機構における『大学等の『復興知』を活用した人材育成基盤構築事業』に長崎大、福島大、東日本国際大とともに参加しています。災害・被ばく医療科学分野の人材育成や国際会議の開催を進めてきました。今後も医療分野でさらに貢献していきます」 ――地域包括ケアシステム導入が進められる中で総合診療医の役割がが期待されています。 「地域包括ケアシステムとは、可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けられるような支援・サービス提供体制を指します。多疾患の患者を診療し、介護福祉、地域社会とつなげていく役割を担うのが総合診療医です。 本学は総合診療医がまだ注目されていない2006年から育成を進めてきました。この実績が認められ、本学は厚生労働省から『総合的な診療能力を持つ医師養成の推進事業』に採択されました。総合内科・総合診療医センターを設置し、育成に取り組んでいます。本学で育った総合診療医が各地で活躍できるような体制を整備しつつ、岩手医科大との連携を進め、東北地方全体での総合診療医育成にも貢献していきます」 ――抱負を教えてください。 「大震災から12年が経ち、本学は新しいフェーズを迎えました。福島の地に根差す医療系総合大学として、今までと同じように医療を担うとともに、世界の知見や研究成果をあまねく地域と県民に還元し、健康を支える大学であり続けます。研究と医療、医療人の育成などいずれの分野でも最先端を切り拓く強い意志と覚悟を持って、福島県立医大の価値と存在感を高めていきます」 公立大学法人 福島県立医科大学ホームページ 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 【天栄村】添田勝幸村長インタビュー

    そえた・かつゆき 1961年生まれ。岩瀬農業高校卒。1991年に㈲添田設備工業設立。2011年の村長選で初当選し、現在3期目。  ――昨年11月に国道118号鳳坂工区(鳳坂トンネル)が開通しました。 「本村の悲願であった『鳳坂トンネル』の開通は、買い物、通院、通学などの面で便利になり、住民から非常に喜ばれています。特に冬季間の路面凍結時の運転は非常に危険であったため、その負担軽減にもつながっています。また、郡山方面から羽鳥湖高原、岩瀬湯本・二岐温泉へのアクセスがよくなり、誘客の増加が見込めます。もう1つは、物流面がよくなりましたから、人、モノの交流がしやすくなります。この道路ができたことで、コロナ禍前のような賑わいを創出できればと考えています」 ――昨年の「米・食味分析鑑定コンクール」で天栄米が金賞を受賞したほか、「全国新酒鑑評会」では村内の2蔵元が金賞を受賞しました。 「村内生産者の方々は非常に良質なお米をつくっており、首都圏などにトップセールスに行った際も大変好評でした。近年は、コロナ禍で試食をしていただく機会がなかなかありませんでしたが、やはり実際に食べていただかないと天栄米のおいしさが分かりませんので、今後は自慢のお米を実際に味わっていただけるような取り組みを行い、販売促進に努めていきたいと思っています。また、今回、JR東日本の協力を得て、特別列車『TRAIN SUITE 四季島』で、天栄米を使っていただけることになりました。これも大きなPRとなり、販売促進につなげていければと考えています。 日本酒については、村内の2蔵元が全国新酒鑑評会で金賞を受賞し、新酒ができるとすぐに売り切れてしまうくらいの人気です。首都圏などでも認知されてきて、『おいしいですよね』と言っていただくことも増えてきたので、さらにPRしていきたいと思っています」 ――間もなく、3期目の任期を終えますが、今後の抱負を。 「これまで3年間、コロナ禍や原油・物価高騰で地域経済はかなり疲弊し、生活も厳しい状況が続いています。私は、何とかこれを再生させ、村民の方々の生活が少しでも豊かになっていくような村づくりをしていかなければならないと思っています。また、少子化・人口減少は大きな課題ではありますが、村としてできる限りの支援をしながら、移住・定住の促進、及び人口流出を防げるような対策を講じて、村民の方々が安全・安心に暮らせる村づくりをしていきたいと考えています。今後も、『天栄村に行ってみたい』『天栄村に暮らし続けたい』と思っていただけるように努めてまいります」 天栄村ホームページ 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 【大玉村】押山利一村長インタビュー

    おしやま・としかづ 1949年生まれ。安達高、福島大行政社会学部卒。大玉村企画財政課長、総務課長、教育長などを歴任。2013年の村長選で初当選。現在3期目。  ――15歳未満の人口比率が県内1位です。 「3月31日現在の年少人口は1303人と全村民の14・8%を占めます。令和4年度の本村の転入者は304人、転出者は284人で、子どもがいる家庭が多く転入していることが要因と思われます。コロナ禍等で全国的に出生率が低下する中、年少人口が高い水準にあるのは嬉しい限りです」 ――子育て支援等を目的とした複合施設の建設を計画しています。 「老朽化した大山公民館の建て替えも兼ねて、子育て支援機能を持つ施設を計画しています。建物には村内の木材を使用し、完成は令和7年度の予定です。子育て支援機能として親子で遊べるスペース、公民館機能として調理室や会議室、子どもからお年寄りまで利用できる機能として図書室やカフェスペースを備えます。また、入口のオープンスペースにはマチュピチュ遺跡をイメージした階段を設け、シンボルにしたいと考えています」 ――昨年設立された農業振興公社について。 「理事長に副村長が就き、昨年12月にはJAふくしま未来が参画するなど今年から本格的に稼働します。農林業と畜産に関する事業を基本に村の堆肥センターの業務も指定管理としました。 地元農家の期待も大きく、耕作放棄地の問題やドローン等の技術活用にも注力する予定ですが、農業を取り巻く課題は多岐に渡るのでしっかりと取り組んでほしいと思います」 ――テレビの人気番組「ザ!鉄腕!DASH!!」のロケ地になっています。 「村でも全面協力していますが、村の名前を大きく出していただき嬉しく思っています。反響も非常に大きく、番組を見て若者が農業に興味を持ったり、移住者やふるさと納税の増加につながればありがたいですね」 ――(仮称)大玉スマートICの整備に向けた取り組みについて。 「2年前から検討のための勉強会を開いており、今年度前半には国に対して設置要望する予定です。併せて、現在休止中の高速バスストップの復活も目指します。これらの事業が順調に進めば、高速交通へのアクセス性向上に大きくつながるものと期待しています」 ――今後の抱負。 「村内は農地の大半が農業振興地域のため企業誘致が難しく、約50年前から様々な人口増加策を講じてきました。人口は国全体で見れば減っており、本村だけがいつまでも増えることはないでしょう。そうした状況の中で、『大玉村に住みたい』、村民には『大玉村に住んで良かった』と感じていただけるような村づくりを今後も進めていきたいと思います」 大玉村ホームページ 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 【泉崎村】箭内憲勝村長インタビュー

    やんない・のりかつ 1954年8月生まれ。岩瀬農業高校卒。泉崎村参事兼総務課長、副村長などを歴任。2021年10月の村長選で初当選を果たした。  ──村長就任から1年半経過しました。 「選挙で掲げた公約達成のために精一杯取り組んできました。①JR泉崎駅東口開発、②学校給食センター建て替え、③泉崎南東北診療所の建て替え――という3つの課題に加え、財政再建期間に手付かずとなっていた道路補修などに重点的に取り組んできました。村民の皆さんの生の声を直接聞き、村政に反映させるよう心がけてきました。 村内を巡回している福祉バスの運行頻度を見直し、医療機関通院用の送迎サービスを実現する一方で、3人目以降が対象だった出産祝い金を1人目から助成対象としました。 分散していた福祉部門の部署を1カ所に集約しワンストップ対応できるようにしたほか、原地区と長峯地区の大規模圃場整備に向けて基盤整備推進室を別個で設けました」 ――5月8日から新型コロナウイルスが5類に引き下げられます。 「昨年秋からイベント等は通常開催に移行しており、村の一大イベント『収穫感謝祭』は多くの人でにぎわいました。あらためてイベントの重要性を再認識しました。今後も感染対策を実施し、にぎわい創出につながるイベントを実施していきます」 ――泉崎駅東口整備事業の進捗状況は。 「昨年度から駅周辺の土地利用計画とバリアフリー計画を策定しており、いずれも今年度中の完成を予定しています。詳細設計の段階で予算を上回り、仕切り直しとなった経緯があります。県と相談した結果、国の補助金を受けられる可能性があると分かり、手続きに必要な両計画の策定に費やしてきました。何としても策定にこぎ着け、診療所の建て替え移転地も周辺に持っていきたい考えで、構想を練っているところです」 ──人口減少対策について。 「本村では以前から幼稚園・義務教育の給食完全無料化、幼稚園の保育料・バス代無料化を実施しています。また、小学校のランドセルや中学校のかばんなども無償で提供し、子育て世代の負担軽減に努めています。 新築の戸建て住宅を家賃月3万9000円で貸し出しており、さらに20年間住み続けた場合、追加で50万円納めていただくと、所有権を村から移譲する制度も設けています。これまで8棟移譲してきました。 ほかにも、古い村営住宅地を整備し、無償で分譲する事業にも取り組んでおり、昨年度までで8区画分譲してきました。こちらは『子どもが2人以上の夫婦』という条件があるものの、多数の応募が寄せられています。まだ整備が終わっていない村営住宅地があるので、今後も無償分譲を続けていく考えです」 泉崎村のホームページ 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 【広野町】遠藤智町長インタビュー

    えんどう・さとし 1961年生まれ。東京経済大学卒。広野町議2期を経て2013年11月の町長選で初当選。現在3期目。  ――新型コロナウイルスの影響によって中止されていたイベントなどが再開されつつありますが、現在の状況はいかがでしょうか。 「昨年度は参加いただく方々にご理解をいただきながら、3年ぶりに広野町サマーフェスティバル、ひろの童謡まつり、広野スタイルなどのイベントを執り行うことができました。『脱コロナ』に向けて、地域社会の方々が以前の生活に戻りつつありますが、引き続きワクチン接種をはじめとしたコロナ対策を講じながら住民周知を図っていきます」  ――移住支援金を支給するなど、移住促進に熱心に取り組まれています。 「本町は第2期復興創生期間満了となる2030年に向けて、1000人を上積みした人口6000人を目指しており、そのためにさまざまな施策を展開しています。一つは、移住定住を進めるための情報発信・情報共有です。国や県、市町村の職員、連携協定で協働している大学関係者などと連携し、1000人体制のネットワークを構築しました。二つは、子育て若者世代への積極的支援です。中でも『広野駅東ニュータウン住宅用地取得支援事業補助金』では当該地区の用地を購入した方に300万円を補助しています。三つは、本町ならではの海と山と川の美しい自然、歴史と伝統文化を守り、魅力ある故郷を継承していくことです。移住者との共生のまちを目指すため、伝統の祭りや行事の継承、後継者の育成を行っています」 ――浪江町に国際研究教育機構(F―REI)が整備されています。 「本町はバックオフィス的な役割を果たしていきたいですね。F―REIでの研究成果を産業に結びつけるためには、生産体制の構築や経済体制の確立が不可欠です。本町は、ふたば未来学園中高一貫校などの地域団体、地元企業を有しており、それら人材を生かした協業の場となることを期待しています」 ――交流人口増加策について。 「若者を中心にライフスタイルや働き方が多様化しており、都市部で生活しながら自らのルーツがある地方のコミュニティー活動に参加する人が増えています。そうした新しい動きに注目し、交流人口から関係人口に関わりを広げていく取り組みを行っていきます」 ――今後の抱負。 「東日本大震災から13年目を迎えました。さまざまな課題難題がありますが、これまで取り組んできた復興再生を踏まえ、『新たな時代に向けたまちづくり』を創出していきます。これまでにいただいたさまざまなご縁を大切にして、愛する故郷のため、多くの皆様と信頼を深めていきたいと思っています」 広野町のホームページ 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 【国見町】引地真町長インタビュー

    ひきち・まこと 1959年12月生まれ。東北学院大法学部卒。国見町総務課長兼町民相談室長などを歴任。2020年3月に退職後、同年11月の国見町長選で初当選。 ――町長就任から2年4カ月経過しました。 「この間、新型コロナ感染症をはじめ、2021、22年に発生した震度6強を超える福島県沖地震、基幹産業である農業に被害を与えた凍霜害と降雹、昨年の過疎指定、昨今の物価高騰など、難しいかじ取りを強いられた2年4カ月でした。その都度、適切に判断しながら町民の生活支援と不安払しょくに努めてきました」 ――昨年3月16日に発生した本県沖地震の復旧状況について。 「昨年の地震による被害は一昨年に比べ甚大でした。全壊から一部損壊までの被害棟数は1500以上と前年の地震の2倍強で、生活再建の予算確保は至上命題でした。この間、できる限りの対策を講じたつもりです。町職員の高い危機対応意識で地震翌日には被災・罹災証明の受付窓口を開設しました。また、交流・連携を深める北海道ニセコ町、岩手県平泉町、栃木県茂木町、岐阜県池田町に救援依頼をしたところ、ブルーシートや土嚢袋など応急資材の提供や職員の派遣など迅速に対応していただきました。一昨年の地震の教訓から通常業務と地震対応業務の両立が図られたのだと思います。一方で、住家・非住家の公費解体に伴う国の災害査定に時間を要したり、建築業界の慢性的な人手不足や資材不足などの影響があったりして、丸1年が経過しても応急処置が施されたままの住宅があります。地震被害からの復旧はまだ道半ばで、生活再建支援に引き続き注力する考えです」 ――保・幼・小・中一貫教育を柱とする「くにみ学園構想」の進捗状況について。 「この構想は、第6次国見町総合計画と国見町過疎地域持続的発展計画に基づいて整備を進めたいと考えた、くにみ学園の基本理念をまとめたものです。町の将来や存続に関わる重要な事業に位置づけられます。現在、本町には保育所1所、幼稚園1園、小学校1校、中学校1校がありますが、町内に分散・点在しています。2014年度から取り組んできた『国見学園コミュニティ・スクール』事業では地域住民の協力を得ながら、自ら学ぶ力や郷土愛を育む教育を展開してきましたが、この10年で急激に少子化が進んだうえ、社会環境の変化による学力の二極化や運動能力の低下、支援が必要な子どもたちの増加などが顕著になっています。これらの課題を踏まえ、保・幼・小・中を1つに集約し、子育てと教育の充実、機能強化を図ることが同構想の基本理念です。くにみ学園構想は、教育と子育て施策の核となるものですから、議会も含め町民の皆さまとの対話を通して、基本構想への理解・共感を得ていきたいと考えています」 国見町ホームページ 掲載号:政経東北【2023年4月号】

  • 【川俣町】藤原一二町長インタビュー

    ふじわら・いちじ 1946年10月生まれ。法政大学法学部卒(通信課程)。川俣町収入役、済生会川俣病院事務長などを歴任し、2021年2月の川俣町長選で初当選。  ――原発事故に伴う山木屋地区への避難指示が解除されてから丸6年経過します。 「コロナ禍で開催見送りとなっていた『八坂神社の三匹獅子舞』など地区の伝統行事が復活しているほか、近年では移住する新規就農の若者も増えています。 水田の水を凍らせたスケートリンクとして知られる『かわまた田んぼリンク』が、山木屋に移住した新規就農者(大学院生)の2人が代表となる形でオープンしました。会員の高齢化により昨年解散した地元団体から運営を引き継いでくれました。新たな地域活性化の拠点として注目が集まっています。このほか、復興拠点商業施設『とんやの郷』で、地元住民の皆さんが組織したNPO法人が、毎月第1日曜日に『おきがるマルシェ』を開催するなど、にぎわいが生まれています。 一方で、避難解除後に山木屋地区へ戻ったのは160世帯332人(帰還率50%)、うち65%以上が高齢者です。引き続き帰還支援を継続していきますが、新たに人を呼び込む方にも注力していきたいと考えています」 ――ふくしま復興再生道路である国道114号山木屋工区の工事が完了しました。 「山木屋地区は町の中心部から約11㌔離れていますが、トンネルが開通したことでアクセスが大幅に向上し、町としての一体感が高まりました。浜通りと県都・福島市を結ぶ道路として、流通面などで大きな役割を果たすものと見ています」 ──新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類に引き下げとなりますが、今後の対応について。 「希望者へのワクチン接種を継続しつつ、慎重に事態を見極めていきます。マスクの着用は、基本的に個人の判断に委ねることになりますが、捉え方には個人差があると思うので、柔軟に対応していきます。コロナ禍で開催を見合わせていたフォルクローレの音楽祭『コスキン・エン・ハポン』は今年通常開催の予定です。新たなスタートを踏み出す1年にしたいと考えています」 ――その他重点事業について。 「4月から開園する『かわまた認定こども園』は0~5歳までのお子さんが対象です。子育て世代の負担軽減のため、給食費を無償にします。2023年度中の保育料完全無償化も目指しており、子育てしやすい環境を実現して若年層の移住増加につなげていく考えです。 また、食品スーパーのいちい(福島市)と協定を交わし、本町の廃校を利用したベニザケの養殖事業が進められています。2026(令和8)年の事業化を目指しており、地域振興に貢献することを期待しています」 川俣町ホームページ 掲載号:政経東北【2023年4月号】

  • 【西郷村】高橋廣志村長インタビュー

    たかはし・ひろし 1954年生まれ。日大工学部卒。西郷村建設課長などを歴任。2015年の村議選で初当選。村議1期を経て、2018年2月の村長選で初当選。昨年2月に再選。  ――人口増加率は県内トップクラスです。 「村内に東北新幹線新白河駅、東北自動車道白河ICを有し、首都圏や地方都市へのアクセスが良く、地理的な利便性が高いことも一つの要因になっていると考えていますが、それに加えて、『コロナを克服』、『子育て支援の充実』、『学校教育の支援の充実』、『高齢者健康長寿支援』、『やりがいと魅力ある産業の振興』、『災害に強いむらづくり』の6つの目標を掲げ、職員一丸となって取り組みを進めています。 中でも、子育て支援や教育面での充実は、若い世代の移住・定住を促進して人口を維持していくために重視しています。出産祝い金の支給や、原油価格・物価高騰に対する特別給付金の支給により、子育て世帯の経済的負担を軽減するなど、安定した生活を送れるよう支援をしました。また、子育て支援センター内に子ども家庭総合支援拠点を設置し、妊娠期から子育て期に渡る切れ目のない支援体制を構築し、母子健康の保持促進に努めています。学校教育については、小・中学校に入学した児童・生徒に入学祝い金を支給、中学生の修学旅行の補助、さらには子どもたちが将来、国際的に活躍できるよう英語力をつけてほしいという思いから、ALTやタブレット端末を活用した英語教育に力を入れ、児童・生徒の学びの意欲の向上に努めています。令和5(2023)年度からは、村内の小中学生の給食費の無料化を実施します」 ――学校給食センター、役場庁舎の整備が計画されています。 「学校給食センターは、7割程度の進捗状況で計画通りに進んでおり、令和5(2023)年度2学期から使用開始となる見込みです。新庁舎整備事業については計画通り、令和7(2025)年度の開庁を目指して本体工事に着手していきたいと考えています」 ――今後の抱負を。 「第2期村人口ビジョンの人口推計では、他自治体と同様に人口が減少していく見込みですが、様々な取り組みを重ねていくことで人口の流入と定住促進を図り、人口減少を最小限に食い止め、村民の皆さんがいつまでも幸せに住み続けられる村をつくりあげていきたいと思います。本村は『2022年度自治体四季報全国自治体経営ランキング』において、全国1741自治体の中で2位になりました。一方で、まだまだ課題も多くあります。村民の皆様よりご意見、ご指摘を賜りながら『村民が主役で未来を築く』を念頭に、『未来へ限りなく前進する西郷村』、『選ばれる西郷村』、『誇れる西郷村』を実現できますよう鋭意努力していきます」 西郷村ホームページ 掲載号:政経東北【2023年4月号】

  • 【鮫川村】関根政雄村長インタビュー

    せきね・まさお 1955年12月生まれ。東白農商(現・修明)高校卒業。鮫川村議4期。2019年8月の同村長選で初当選を果たす。  ――新型コロナウイルス感染症の5類引き下げ方針を見据えた施策について。 「この3年間は村内の各行事やイベントなどの中止・延期を余儀なくされました。また、集落内の事業や伝統祭事も開催できず、地域の絆や交流が希薄になりつつあります。これらの繋がりを元に戻すための地域力再生を図ると同時に、物価高騰等で低迷している産業の振興と担い手育成に全力を注ぎます」 ――環境公社設立の進捗状況について。 「遊休農地の管理や、公道沿いの支障木伐採など『美しい鮫川村』を維持すべく環境公社設立の準備を進めてきました。それに当たり、村内各事業所を訪問して課題を聞き取りした結果、①既存の建設業者や林業者の業務を奪うことにならないか、②シルバー人材センターとの連携を図るべきではないか、③公社設立後の収益事業と社員の人件費の確保等に困難はないか、などの課題が浮き彫りになりました。さらに各事業所では人材不足が深刻化していることから、まずは『特定地域づくり事業協同組合』の設立が最優先であると判断しました。組合設立に当たり、県から認可されるまでには、申請要件をクリアしなければならないため、一定の時間が必要です。加えて、関心を寄せる農家や事業所の理解を得るため、丁寧な説明会を開催しているところです」 ――国道289号のバイパス開通の効果と利活用策について。 「今年3月4日に村民待望の国道289号『渡瀬バイパス』が全面開通しました。この路線は新潟市といわき市を結ぶため、経済物流、観光振興、緊急医療対応に繋がる重要路線です。また、バイパス化により、本村随一の観光地である鹿角平観光牧場に接する路線となったことで、キャンパーを含む観光客の増大、いわき市や茨城県から村中心部の直売所『手まめ館』など観光地への集客数が膨らみ、本村や近隣町村への大きな経済効果が見込めると期待しています」 ――1期目を振り返って。 「『地域づくりは人づくり』をテーマに、青少年・女性を含む村民の提案やアイデアが生かせる村づくりを目指してきました。さらに『若者未来創出会議』や『中高生未来ジュク』、『農業者担い手会議』等を開催してきましたが、担い手たちが自主的に活動を発案するなど、具体的な成果が着実に表れ始めています。 さらに今年度は『村づくり推進室』を庁舎内に新設するなど、『公共施設中長期整備計画の素案づくり』、『移住定住子育て支援』、『村民の健康づくりと福祉の充実』、『観光資源の活用と産業の振興』、『自主財源の確保』の6つの重点施策に基づいて各事業を推進します」 鮫川村ホームページ 掲載号:政経東北【2023年4月号】

  • 【浪江町】吉田栄光町長インタビュー

    よしだ・えいこう 1963年12月生まれ。浪江町出身。双葉高卒。県議を5期務め、自民党県連幹事長、県議会議長などを歴任。昨年7月の浪江町長選で初当選を果たした。  ――昨年7月に町長に就任しました。 「首長の仕事は想像以上に忙しいですね。職員とのチームワークも良くなっており、日々の行政執行は良い形でできています。当町は復興という大きなミッションがあります。前町長が行ってきた施策により、成熟しつつある分野と新たな分野がありますが、いずれも芽を出し始めており、民間企業からも多くの興味を示していただいています」 ――帰還困難区域の津島、末森、室原3地区内に設定された特定復興再生拠点区域の避難指示が3月31日、解除されます。 「3つの拠点に共通する産業は農業です。将来を見据えた農業の再建を進めるために、大規模化や効率化など、外部からの投資が活発化することを期待しています。 住民帰還に関しては、町民の5割以上が避難先で新たな居を構えていることや、帰還することの経済的な不安なども踏まえ、バランスよく考えていかなければなりません。ただ、この半年間、帰還意欲の高まりを感じています。福島国際研究教育機構(F―REI)やJR浪江駅周辺整備計画などの復興プランが表に出てきて、故郷とともに復興を肌で感じたい町民が多くなっているからだと思います」 ――F―REIと浪江駅周辺整備計画について。 「F―REIは浪江町だけのものではありません。浜通り全体として、研究者の方々の住みやすい環境を整えることが大切だと考えています。社会環境の変化や人口減少の時代を担う〝次の世代〟が競争力を持てる技術力や仕組みが必要であり、同機構にはその牽引役を担ってほしいです。浪江駅周辺整備事業は同機構におけるフロントの役割を担っています。復興まちづくりのためにこうした事業を成功させるには、周辺自治体を含めた国・県と町の協働(協同)が不可欠です」 ――育苗施設が供用を開始しました。 「既に稼働している『カントリーエレベーター』と育苗施設の完成によって、育苗から収穫後の乾燥までが担保されました。さらなる水田の利活用を促進するため、6次化を考えていかなければならないと思います。町の新たな特産品であるタマネギや花卉など、水稲以外にも多様化が必要だと思っています」 ――今後の抱負。 「今後、民間が投資しやすい環境を整え、経済の活性化を図っていきたい。現在、当町の町民は町内外にお住まいですが、興味を持っていただけることが、われわれにとって刺激になっています。町民が復興を支援できる・応援したくなるような町をつくっていくことが使命だと思っています」 浪江町ホームページ 掲載号:政経東北【2023年4月号】

  • 【会津坂下町】古川庄平町長インタビュー

    ふるかわ・しょうへい 1953年11月生まれ。喜多方工業高(現喜多方桐桜高)卒。アルス古川㈱相談役。会津坂下町議を連続5期、議長を6年務める。現在1期目。  ──町長就任から1年半が経過しました。 「『次世代に繫ぐまちづくり』に全力で取り組んできました。この間、切れ目のない伴走型の子育て支援として、不妊治療の検査に対する上限5万円の補助制度を創設しました。健康づくり事業では、阿賀川の支川の旧鶴沼川が国土強靭化の一環で堤塘(堤防)が舗装されたのでウオーキングコースとして整備しました。道の駅あいづ湯川・会津坂下西側の河川敷までの延長を検討しており、相乗効果を期待しています」 ──役場新庁舎整備事業の進捗について。 「まず第一に質の高い住民サービスを継続的に提供する拠点であるとの考えから、町民の安全・安心の確保や災害時における円滑な復旧・復興の拠点となりうる場所に建設するべきだと考えています。そのため、30年後を見据えて、町民の声やアンケート結果等を判断材料にしながら、2月22日の議会全員協議会において、建設場所を旧坂下厚生総合病院跡地へ変更することを発表しました。 今後、本町が会津西部地区の中核としての機能を果たせるよう、周辺地域との一体的な利活用を図るのに加えて、現役場庁舎周辺の利活用についても、町民の皆様や専門家のご意見を賜り、人が集まり、賑わいを創出する空間として整備していく考えです。今年度から新庁舎建設計画の具現化に向けて、基本構想・基本計画策定を進めていきます」 ──5月8日をめどに新型コロナウイルスの5類引き下げの方針が打ち出されましたが、これを見据えてどのような施策に取り組んでいきますか。 「関連する町の施策の総点検を進めています。特に感染防止の観点から中止を余儀なくされてきた各種事業についても、入念な準備のもと、町内へにぎわいと活気を呼び込んでいきたいです。また、高齢者の皆様の外出自粛による体力低下や孤立の集中的改善に向け、集いの場として各地区サロンを活用しながら、楽しく健康づくりに努めていきます」 ──今後の重点事業について。 「町の課題である財政健全化に引き続き取り組むのはもちろん、“人口が減少しても活力があり町民一人ひとりが生きがいを持てる持続可能なまち”を実現するため、令和4年度から『交流人口対策』『関係人口対策』『定住人口対策』の3つの人口対策に取り組んできました。 令和5年度からはそれらに『少子化対策』を加えた4つの人口対策を重点事業とした過疎対策事業を実施し、若者世代、子育て世代が住みやすく、町民の皆様が輝ける住み続けたいまちを目指してまいります」 会津坂下町ホームページ 掲載号:政経東北【2023年4月号】

  • 【JA福島五連】管野啓二会長インタビュー

     原発事故に伴う風評被害や、水害などの自然災害、コロナ禍での米価下落、さらには燃料高騰など、農業を取り巻く環境は厳しさを増している。昨年6月にJA福島五連会長に就任した管野啓二会長に、それら課題への対応や、「第41回JA福島大会」で決議された3カ年基本方針の進捗状況などについて話を聞いた。  かんの・けいじ 1952年生まれ。福島県農業短期大学校卒。JAたむら代表理事組合長、JA福島さくら代表理事専務、代表理事組合長を務め、昨年6月の総会でJA福島五連会長に選任された。  ――昨年6月の総会で会長に選任されてから8カ月ほどが経過しました。この間を振り返って、率直な感想をお聞かせください。 「仕事にも慣れてきて、落ち着いてきました。その中で感じたこととして、本県における最も大きな課題は、農業産出額を大震災・原発事故前の実績である2330億円に追いつくことだと再認識しています」 ――2021年11月に開かれた「第41回JA福島大会」では、農業総生産額の減少対策、農業者の高齢化・担い手の減少対策、風評払拭対策などを含む、2022年度から2024年度までの3カ年の基本方針が決議されました。それら事業・取り組みなどの進捗状況はいかがでしょうか。 「同大会の決議では『園芸ギガ団地構想』を柱に据え、2024年度までに各JAが1団地を形成できるよう取り組んでいます。 主な作物はきゅうり、ピーマン、トマト、ほうれん草、宿根カスミソウなどで、『もうかる農業の実現』がコンセプトです。 これらの品目について、2022年度の実績を振り返ると、昭和村のカスミソウの販売額は6億円を超えたほか、南郷トマトの販売額は11億円でした。また、夏秋きゅうりにおいて福島県は全国一の産地に成長しており、多くの品目で実績を残しています。 園芸ギガ団地構想によって、そういった実績をさらに加速できるようにしていきたいです。 担い手の減少対策は、新規就農者をいかに確保していくかが大きなテーマで、これまで我々JAは新規就農者に対して一元的な窓口対応ができる組織が欲しいと県に要望してきました。 先日、県の予算が開示され、4月から『福島県農業経営・就農支援センター』という名称でスタートすることが正式に決まりました。新規就農といっても、都会からUターンして就農する、親元で就農しながら新しい栽培品目を自分で開拓して始める、親が高齢になり後継者として代々受け継いできたものを継続する、などさまざまなパターンがあります。 同センターはそういった方々の相談や悩みに合わせたサポートをワンフロアで行うことが狙いです。栽培品目は何にするのか、そもそも農業のノウハウがあるのか、ノウハウがあったとしても資金繰りや雇用の対策ができているか、県と連携してサポートしていきます。 原発事故の避難指示が出された被災12市町村の農業復興については、震災による営農休止面積1万7298㌶のうち7369㌶が再開し、営農再開率は42・6%になっています。避難指示解除が早かった町村の再開率は高い一方で、やっと解除になった大熊町や双葉町などはこれから営農再開を目指していくことになります。特に双葉町では、トマトの施設栽培を目指しており、浜風ほうれん草の栽培も検討しています」 風評払拭に努める  ――東日本大震災・原発事故から間もなく丸12年が経過します。この間、福島県の農業は、いわゆる風評被害に苦しめられ、品目によっては未だに影響が出ているものもあると聞きますが、現在の県産農畜産物の市場評価についてはどう見ますか。また、「JAグループ福島東京電力原発事故農畜産物損害賠償対策福島県協議会」の原発賠償の状況についてうかがいます。 「原発賠償については、今年1月末時点で請求額が3567億円に対し、合意額(受取額)が3481億円で、賠償率は97・58%となっています。 県産農産物の市場評価については、明確に評価が低くなっていると言えるのはコメと牛肉です。米価は全国的に若干上がっていますが、県産米はまだまだ評価が低く、もっと努力していかなければならないと感じています。牛肉についても、品質のランク付けと価格単価のランク付けにギャップがある状況です。 県知事とともに、トップセールスなど風評被害の払しょくに向けてPRしていますが、依然としてリスクがあるとネガティブに捉えられていることは消せない事実です」 ――東京電力福島第一原発で保管されているALPS処理水の海洋放出が今春に迫っています。県内農業分野への影響についてはどう考えていますか。 「国民理解の醸成と責任ある風評抑止対策を前提として考えれば、やむを得ないと捉えています。しかし、いわゆる風評被害が発生してしまった場合は、いままで同様賠償を前提に国や東電と話し合いを続けます」 ――長引く新型コロナ、物価高、燃料費高騰が深刻な問題になっていますが、農産物の需要・価格(特に米価)にも影響は出ているのでしょうか。出ている場合は具体的な影響と対策・支援などについて。 「ものすごく値上がりしています。高騰対策として国が予算を組んでおり、値上がりした分の約7割は補填される仕組みになっています。現在、秋肥に対する助成の申請が進んでおり、今年春に作付けする分の肥料も取りまとめを行っていきます。 施設園芸においては、ハウス内で使用する燃料高騰への対応も国が打ち出していますので、それに対する助成申請も支援していきます。 畜産については、飼料の値上がりが起きています。配合飼料には価格安定基金というものがあり、値上がりした分の8割は補填を受けられますが、値上がりが大きすぎてその上限を超えてしまっています。こちらに関しても国が特別に対策を打ち出しており、対応いただいています。しかし、それ以外の牧草やワラなどの粗飼料には国が関与している制度がないので、牛などを飼育している経営者は危機を感じており、自給飼料が少ない経営は完全に赤字経営になっています。 そういった国の制度が行き届かないところを何とかしていただきたいと要望したいです」 ――今後の抱負は。 「暗い話ばかりになってしまいましたが、第一はギガ団地構想などの計画をスケジュール通りに進めることです。 また、毎年のように地震や水害、霜害・雹(ひょう)害などの自然災害が頻発していますが、今年はそういったことが起こらないことを願いながら、これまで以上の対策を練っていきたいと考えています」 JAグループふくしまのホームページ 掲載号:政経東北【2023年3月号】

  • 【古殿町】岡部光徳町長インタビュー

    おかべ・みつのり 1959年1月生まれ。学校法人中央工学校卒。有限会社岡部設備工業取締役、株式会社トーホク・オカベ取締役を経て、2003年4月の町長選で初当選を果たした。現在5期目。  ――4月23日投開票の古殿町長選に、6選を目指して立候補することを表明しました。まずは立候補に至った経緯をお聞かせください。 「『5期で一区切り』と考えていましたが、後援会に相談したところ、『まだ若いんだからもう少し頑張ってみろ』と背中を押していただきました。あらためて熟慮した結果、町議会の昨年12月定例会で立候補を表明しました」 ――5期目の4年間を振り返って。 「令和元年東日本台風、新型コロナウイルスなど有事への対応に追われた印象が強いです。コロナ対策に関しては、感染対策の徹底やワクチン接種、各種支援などに全力で取り組み、不安払拭に努めてきたと自負しています。町民の皆さんにご協力いただいたこともあって、現在は感染状況がかなり落ち着きつつあり、重症化するケースも多くないようなので安堵しています」 ――昨年から祭りやイベントなども再開されるようになっていますが、古殿町ではいかがですか。 「できるだけ再開する方針を打ち出しています。昨年は、町が委託して古殿町商工会が主催している『憩いの森フェスタ』を実施しました。課単位の小規模な忘新年会に関しても、町職員には『自粛せずやってほしい』と話しています。町職員や町議が率先して経済を回す姿勢を示すことも必要だと思います」 ――人口減少が大きな課題となっています。町では体験宿泊施設を設けるなどして、移住定住人口の増加を目指しています。 「町民が案内人となって体験イベントを提供する取り組み〝フルドノタイム〟を昨年に引き続き実施する予定で、現在準備を進めています。27件のプログラムが行われる予定で、協力していただける町民には心から感謝しています。今後のまちの活性化につながっていくことを期待しています。 『大網庵』という茅葺屋根の古民家を改修して、宿泊・テレワーク需要に対応する施設を整備しました。利用者はまだ少ないですが徐々に増えています。このほか、『ふるさと工房おざわふぁーむ』など農業体験を受け入れている農業法人もあり、関係人口増加に貢献しています」 ――子育て支援・教育にも力を入れており、タブレット端末と電子黒板を導入しています。児童・生徒の反応は。 「新たな取り組みなので現場の反応を注視していましたが、ゲーム感覚で勉強できるのか、児童・生徒には大きな抵抗はなかったようです。むしろ指導する教員の方が付いていけない面があるようなので、ICTに精通している地域おこし協力隊を募集し、支援員として配置して、サポートをお願いしています。公共施設にはWi―Fi(公共無線LAN)が整備されています。自宅での学習も滞りなく進めるため、保護者の皆さんに意向調査を行ったうえで、インターネット環境整備へのご協力をお願いしているところです。 子育て支援策にも力を入れています。出産祝い金として第一子5万円、第二子10万円、第三子30万円、第四子以降50万円を支給しており、4月以降は、第三子も50万円に引き上げたいと考えています。 このほか、こども園の保育料や中学校までの給食費、高校生までの医療費を無料にしており、中学校までの各種検定試験費用、スポーツ活動で子どもたちにかかる交通費や宿泊費などの経費も町が負担しています」 ――高齢者が安心して暮らせる環境づくりについて。 「古殿町健康管理センター、古殿町社会福祉協議会と連携しながら、デイケアの利用など、高齢者の相談に応じる体制を構築しています。生活に支障が出てきた方の受け皿としては、社会福祉法人石川福祉会の特別養護老人ホーム『ふるどの荘』、旧大久田小学校舎を再利用した介護老人保健施設『大久田リハビリテーション・ケアセンター』があります。 旧鎌田小学校跡には、公募により高齢者向けグループホーム『けあビジョンホームふるどの』が入居しています。隣接地には、単身高齢者や高齢世帯を対象とした『古殿町高齢者居住施設』を整備し、家族が町外にいる高齢者世帯でも安心して暮らせる環境を整えています。 運転免許を返納した場合なども含め〝交通手段の確保〟が高齢者にとって大きな問題となっています。町では『へき地医療バス・福祉バス』を決まった時間に走らせていますが、さらに公共交通システムを充実させたいと考えており、デマンド交通を含めて研究しているところです。 併せて買い物難民の解消に向け、『道の駅ふるどの』を中心に配食サービスを展開したり、高齢者でも利用できるデジタル端末を配布する構想も検討しています。元気な高齢者が知識・技術を生かして活躍できる場も設けたいですね」 一次産業活性化が基本  ――6期目に実現したい施策を教えてください。 「本町の基幹産業は農林業であり、これら一次産業を活性化させる施策がまちづくりの基本と考えています。 具体的には、米価が下がっており、消費量も落ち込んでいるため、地元産米を学校給食として消費することで応援していきます。 本町の町土の約8割は森林が占めていますが、皆伐した後の対応については国・県による補助制度の対象となっています。森林環境譲与税も含め、補助制度を活用しながら林家が収入を得られる仕組みを確立したいですね。農業振興と交流人口増加につなげるべく、『道の駅ふるどの』の拡張も計画しています。 人口減少対策としては、住宅地の造成・整備を進めています。すでに6区画が分譲済みで、2軒の家が建っています。移住・定住も含めて、『これから暮らしていく場所』として、本町を選んでいただけるまちづくりを進めていきます。 そういう意味でも、重要になるのが教育環境の充実です。学校統合を進めた結果、町内の小中学校は古殿小学校・古殿中学校の2校になりました。今後、学力向上につなげていくにはどうすればいいか、ICT技術導入を進め、文部科学省の動向も見つつ、対応していきます。 高齢者福祉に関しては、先ほどもお話しした通り、どのような形でも町内で暮らせるように環境を充実していく考えです。 古殿町商工会、各事業所と一丸となって、町を元気にする施策を打ち出していきたいと思います」 ――町民に向けて一言。 「町民の皆さんにはさまざまな面でご意見・ご理解をいただきながら町政運営に取り組んできました。再び町政を預からせていただけるのであれば、『初心忘るべからず』という思いを持って頑張るので、よろしくお願いいたします」 古殿町のホームページ 掲載号:政経東北【2023年3月号】

  • 【本宮市】高松義行市長インタビュー

     たかまつ・ぎぎょう 1954年生まれ。大正大仏教学部卒。1995年から旧本宮町議。2007年から本宮市議、2011年1月の市長選で初当選。現在4期目。  ――無投票で4選されました。 「3期目に続いて4期目も無投票になり、これをどう捉えるかは有権者の皆さんがそれぞれ考えることだと思いますが、大きく分けて2つ言えると思います。1つは本宮市政に対して無関心な方の増加、もう1つは信任していただいたということです。どちらにしても、無投票で信任をいただいたことについては責任を重く感じています。また、政治や市政に全く関心がない市民がいることにも大きな責任を感じなければならないと思っています。いずれにしましても、無投票で4選を果たし、4年間の市政執行の機会をいただいたことについて、謙虚にその思いを受け止めながら一生懸命やっていきたいと考えています」 ――選挙後は人口減少対策を最優先課題に挙げていました。 「一言で『人口減少対策』と言っても難しい課題で、特効薬はありません。まずは市民サービスをバランスよく提供していくことによって住みよさや安心度、快適度、幸福度が生まれてくると思っています。子育てや教育面、学力向上などはもちろん、高齢福祉やインフラ整備など、一つひとつ丁寧に市民の方々の思いに寄り添った中で、バランスがとれた市民サービスをつくり上げていく必要があると思っています。 もう1つ、大切なのが発信力です。本宮市は住みやすくたくさんの方に住んでいただいています。そのことをしっかり発信していくことに加え、それをどこに発信するかも重要です。おかげ様でここ2年間は転出より転入が多く、社会動態は増加に転じていますが、県内の近隣自治体での人口移動では意味がありません。やはり首都圏や他県の方々にこの福島県、本宮市に住んでいただきたいと思っており、そのための施策を講じていきたいと思います。しっかりとした発信力を持ちつつどこに向けて発信していくかを重要視しながら、人口の減らない本宮市をつくっていきたいと思います」 ――以前から白沢地区の人口減少対策に取り組んでいます。 「様々な施策を展開してきましたが、なかなか実績として上がっていません。まずは焦らず白沢地区の良さを知ってもらう取り組みが必要と思い、交流人口や関係人口拡大に取り組んできました。白沢地区には岩角山や震災後にはプリンス・ウイリアムズ・パークが整備され、そういった白沢地区にある名所を生かしながらいい部分を発信してきました。 いま検討しているのがゲストハウスのような宿泊体験施設です。1週間ほどお試しで白沢地区に住んでいただき、白沢地区の住みよさを味わってほしいと思います。その宿泊体験で気に入っていただいた方に住居をどう提供していくかも大事ですが、せっかく農村に住むのだから、それぞれ古民家のような空き家に住みたい方、新居を建てるための土地が欲しい方、加えて農地も欲しい方など、好みがあると思います。その辺の思いを汲みながら、どう紹介していくかといったきめ細かいサービスを行うことが大切だと思います」 新たな公共交通を模索  ――子育て世代の転入を増やすうえでは教育面も重要です。 「教育環境は子育て世代にとって非常に大切です。家族で住むことになれば、高校進学のための学力を心配する方も多く、子育て世代へどう対応していくかというのは大事ですし、学力ばかりではなく体力向上も重要です。教育委員会でも、それぞれの学校において、課題を明確にしながらプログラムに沿って学力向上を目指す取り組みを行っています。 また、妊婦の方や出産後6カ月以内の産婦の方に向けて、市では『出産ママヘルプ事業』と銘打ち、家事や育児の支援が必要なご家庭に、ワンコインでヘルパーを派遣する事業を行っています。市内には子どもが遊べる場所が多く、いまは恵向公園の整備を行っており、子どもばかりでなく高齢者も楽しめる公園を提供できたらと思います。おかげさまで子育て世代の転入も増えていますが、今後も様々な施策を続けていきたいと思っています」 ――昨年からは定額タクシーの実証運行を行ってきました。 「市民の皆さんの様々な声を聞きながら、本宮市の新公共交通システムをつくりあげるべく取り組んでいますが、その1つが会員になれば定額料金で一般の小型タクシーを利用できる『まちタク』です。市内の一部の地域では、以前よりデマンドタクシーを行っていますが、行き先が限定されるなどサービスが行き届いていませんでした。そこで『まちタク』は、乗降できる施設を大幅に増やしました。また、いままでの巡回バスをコミュニティバスに変更するなど、市内の公共交通システムを大幅に変更する取り組みを行っています。これは福島大学の吉田樹准教授をアドバイザーに迎え、様々な年代の市民と一緒になってつくりあげています。実証運行を行っている『まちタク』は利用者の反応も良く、改善を加えながら10月1日を目標に新たな公共交通システムの一つとして導入を図りたいと思っています。 移動手段のない高齢者はもちろん、移住してきた方々には自家用車や免許を持たない方もいますから、そういった方々への一定の交通手段は確保できると思います。また、鉄道が運休した際の代替交通としてバスが活用されており、移動手段の選択肢の1つにこういった公共交通システムは必要と実感しています。当然、それを維持できる財政状況を守っていくことも必要です」 ――JR五百川駅周辺整備を進めています。 「駐停車場の整備工事が着工しました。駅前が狭く危険だったため、まずは安全な駐停車場の確保を目指しています。今後はJRとの協議でトイレやバリアフリー化の整備を随時進めていくことになります」 ――本宮インターチェンジ周辺の開発も進められています。 「五百川駅周辺整備や交通の利便性に加え、人を呼び込めるような施設を考えたとき、商業施設がいいのではと思い、様々な商業施設と交渉しています。ほかにも様々な企業と交渉を進めていますので、いい形にしていきたいと思います。完成すれば多くの人々が集まる場所になり、渋滞も予想されますので、そういった対策も合わせて進めていきたいと思います」 ――今後の抱負を。 「市民の皆様から4年間の舵取りを任されましたので、市民の方々と一緒になって元気な本宮市をつくる先頭に立っていきたいと思います。これまでの12年間は震災・原発事故や水害、地震、そして新型コロナウイルスなど市民の皆さんにも多くの苦労があったと思います。これからの4年間は市民の皆様が穏やかに過ごせて活気あるまちになるよう努力していきたいと思います」 本宮市のホームページ 掲載号:政経東北【2023年3月号】

  • 【福島市】木幡浩市長インタビュー

     こはた・ひろし 1960年生まれ。東大経済学部卒。自治省(現総務省)に入省し岡山県副知事、消防大学校長、復興庁福島復興局長などを歴任。現在市長2期目。  ――2022年度の除雪関連の予算を過去最大の8303万円に拡大しました。1月の大寒波の影響をお聞きします。 「昨季の大雪では、除雪に対し市民の皆様から厳しいご意見をいただきましたが、今季は教訓を生かした対応ができたと思います。必要な予算の確保はもちろん、除雪を体系的に行うためのマニュアルを作りました。市民の皆様にもメールで降雪・凍結情報を即時に知らせています。 隅々まで除雪するには市民の皆様の協力が必要です。小型除雪機の貸し出しはこれまでも行っていましたが、今季は台数を増やし、周知を図りました。その結果、貸出実績は以前に比べるとかなり増えました。 岡部など東部地区の関係者とは、除雪アダプト制度という決めた範囲を責任を持って除雪する協定を締結しました。ありがたいことに丁寧な作業のおかげで生活道路の除雪体制は改善が図れたと思います」 ――政府は5月8日から新型コロナウイルス感染症の位置付けを5類に引き下げると発表しました。3月13日からはマスクの着用が緩和されます。「出口」が見えてきた中で市の経済や観光振興についての施策をお聞きします。 「『出口』に至るためには何よりも感染防止を徹底していくことが必須です。世代別で死者数が最も多い高齢者の感染は何としても防がなければなりません。高齢者と面会する場合のマスク着用などは、これまでと変わらず続けなくてはならないと考えています。 経済活性化に関して言えば、心強いのは『道の駅ふくしま』という地域活性化の核ができたことです。年間の目標来場者数は133万人でしたが、オープンから約9カ月で150万人に達し、売り上げも11億円を超えました。冬季の来場者が減る傾向にあるので、引き続きイベントやツアーなどを仕掛けていきますが、今春には『周遊スポット魅力アップ支援事業』を活用したスポットが続々オープンします。例えば、温泉旅館であれば魅力ある露天風呂を、観光農園であればインスタスポットを作り、点ではなく面で福島市を巡る楽しみを創出する仕組みを整え、それを物販にもつなげていきます。   福島市は新商品が生まれる傾向が弱い印象があるので、道の駅をベースに事業者同士の連携を深めて商品を作り出し、併せて発信もするというアンテナショップの役目をより強めていきます。  ふるさと納税の返礼品はその一環であり、私としては福島市のPRにとどまらず、マーケティングという地域経済活性化に即効性のあるものとして考えています」  ――福島駅東口で行われている市街地再開発事業について、当初計画より事業費や市が負担する補助金が増え、今後の精査によってはさらに増える可能性が指摘されています。 「資材が高騰しており、事業費増は避けられません。ただ精査をすることで、増えるだけではなく減らせる部分も見つかります。事業費圧縮に努めることを肝に銘じて精査を続けています。 国などからの補助金は通常であれば定率なので、資材が高騰しても増えるわけではありません。市としてはその状況を考慮し、さらに補助金を要請していきます。ただ国も、再開発事業が止まれば都市としての魅力が低下すると強く懸念しているので、負担軽減に向けた制度を作っている途中です。 また、完成後の運営を効率的に行うことも非常に大事です。今のうちから運営母体を決めて、その上で大規模・国際的な会議の誘致活動をしていきます。かかる経費はできるだけ収益で賄っていける基盤を作りたいと思っています」  ――市が昨年9月に発表した中期財政収支の見通しも非常に厳しい状況です。市債残高は膨らみ、2026年度には財政調整基金と減債基金の残高がなくなり、財源不足を埋められず必要な予算が立てられなくなると試算されています。 「財政は厳しいですが、やるべき事業はやっておかないと、後々の負担は逆に増えてしまうと考えます。いま手を打たなかったことで、都市の魅力が下がり、人口減少がますます進んでしまうことも危惧されます。そうなれば活力が失われ、街としてもっと苦しい状態に追い込まれてしまう。必要な事業を先送りすることなく実施していくことが大事だし、私はその精神でこれまでも取り組んできました。 人も富も集中する東京は民間が都市の魅力向上を果たしてくれる面が強い。しかし地方は、行政が主導的な役割を果たしていかないと都市としての存在感が低下していきます。私はそういう意識で、これからも市政運営に努めていきたいと思います。そのためにも行財政改革や事業の取捨選択、デジタル化などを進めていきます。 一方、『稼ぐ』という点では福島市が開発した全国的にも珍しい『議会答弁検討システム』を売り出していきます。本来は民間が稼げるようにするのが一番なのですが、行政自らが『稼ぐ』ことを意識し、財政の持続可能性を達成したいです」 ――老朽化する消防本部、市立図書館など、市内には建て替えが必要な公共施設が多数あります。どのように対応していきますか。 「すべての施設を建て替えるのは財政状況を考えると困難です。再編統合や規模縮小など多少痛みを伴うこともあるかもしれません。 とりわけ消防本部は災害対策の要ですから、耐震面に大きな問題がある状況は1日でも早く解消しなければなりません。 これから本庁舎西側で市民センターの建設が本格化します。同センターには市民会館や中央学習センターを再編統合した機能が備わります。一方、消防本部は市民会館の跡地に建設する計画です。市立図書館も老朽化が著しいですが、新たな建設場所などは決まっていません。財政状況にもよりますが、まずは消防本部の建て替えを優先し、その後、市立図書館の建設に着手できるよう検討を進めたいと思います」 ――念願だった古関裕而さんの野球殿堂入りが実現しました。 「祝賀ムードを維持しながら古関裕而記念館での発信に努めていきます。野球殿堂入りの証しとなるレリーフを展示し、多くの方に見に来てもらえるようにしたいと思います。 野球の試合を県営あづま球場で開き、古関さん作曲の歌で応援合戦をするのも一つのアイデアだと思います。今回の野球殿堂入りを機に、福島市を野球の聖地の一つにできないかと密かに考えています。 古関さんの曲は親しみがあって心地よい、古びないメロディーです。世代を超えて古関さんへの愛着を継承できる仕掛けを街なかに作っていきたいと思います」 福島市のホームページ 掲載号:政経東北【2023年3月号】  

  • 【伊達市】須田博行市長インタビュー

     すだ・ひろゆき 1958年生まれ。宇都宮大農学部卒。福島県に入庁し県北農林事務所長などを歴任。2018年1月の伊達市長選で初当選、22年1月に再選。  ――2期目の市長選挙で公約に掲げた「安心・安全の確保」、「雇用の場の確保」、「子育て・教育の充実」、「健幸・福祉のまちづくり」の進捗状況についてお聞きします。 「『安心・安全の確保』については、1期4年の間に令和元年東日本台風が発生し、新型コロナウイルス感染症が感染拡大したのを受け、2期目でも最優先課題に位置付けました。 災害対策として大型排水ポンプ車を導入し、いつ水災害が発生しても速やかに出動できる体制を整備しました。この間、幸いにも出動する機会はありませんが、引き続き伊達市建設業協会と締結した『排水ポンプ車による緊急排水業務の支援に関する協定書』に基づいた機動的な対応をはじめ、職員も稼働に携われるよう訓練を進めていきます。 危機管理対策の一環としては『伊達市防災アプリ』の運用を始めたほか、雨量計や河川監視カメラを設置するなど、災害に関する情報収集や監視機能の強化を図っています。コロナ対策としては、重症化を防ぐ観点からワクチン接種が重要となります。集団接種は終了しましたが、伊達医師会との連携のもと市内の各医療施設で接種できる体制を整えており、接種機会の確保に取り組んでいます。 『雇用の場の確保』については、本市の基幹産業である農業の担い手確保が喫緊の課題です。この間、新規就農者の経済的負担軽減のため、農地の賃料補助や農業機械の購入補助、家賃・生活費の補助などきめ細かな支援策を展開してきました。一方で、本市は、モモ、キュウリ、製法確立100周年を迎えたあんぽ柿など全国に誇れる特産品があります。今後もブランド力の維持はもちろん、その裏付けとなる生産量をしっかり確保していくことが求められます。引き続きトップセールスやメディアを通した戦略的なPR活動を展開しながら販売促進の強化に努め、農業所得の向上につなげていきます。 若者定住の促進も見込んだ伊達市新工業団地も完成の運びとなり、販売面積の約9割が成約となっています。2024(令和6)から本格的に進出事業所が開業する見通しなので、雇用創出効果が期待できると思います。また、同年度には、大型商業施設『イオンモール北福島(仮称)』がオープン予定で、約3000人の雇用が見込まれるなど、多様な形の雇用の創出が期待されます。 『子育て・教育の充実』については、働く世代が子どもを安心して預けられる環境づくりが重要との観点から、市内3カ所に認定こども園を整備しました。放課後児童クラブや屋内遊び場などのさらなる充実を図るとともに、伊達小学校改築や霊山中学校の耐震化など子どもたちが安心・安全に学べる環境整備にも取り組んできました。そのほか、各児童・生徒へのタブレット端末の配布と各学校への大型電子黒板の導入、総合型地域スポーツクラブ設立による地域スポーツの充実を図ってきました。 『健幸・福祉のまちづくり』については、健康寿命の延伸がキーポイントです。本市では、運動習慣化支援として、地区集会所を拠点に参加者同士が交流しながら気軽に楽しく運動を行う『元気づくり会』事業を展開するなど、健康増進活動の定着を図ってきました。コロナ禍による影響で活動が制限された期間もありましたが、現在は130団体を数えるなど活発に展開しています」  ――政府では、5月8日より新型コロナウイルス感染症を感染症法の2類相当から5類に引き下げる方針を示しました。 「本市としては、引き下げ以降も引き続き感染防止対策は必要と考えています。政府には今後の感染状況を注視しながら国民が不安を覚えたり、医療現場が混乱することがないよう現場の声に耳を傾ける対応をお願いしたいと思います。そのほか、高齢者施設や医療施設のクラスター対策をはじめ、ワクチン接種の公費負担延長、コロナ禍で冷え込んだ地域経済の再生に向けた経済支援策の継続を切に願います」 ――コロナ禍により地域経済が疲弊する一方、最近は光熱費の高騰による影響が深刻です。市としてどのような対策を講じていますか。 「昨年7月から12月まで、プレミアム率40%の『伊達市プレミアム4応援券』を計5万3500セット(紙仕様、デジタル仕様)発行し、すでに完売しました(利用率99%)。消費喚起に加えて、物価高による影響も緩和できたと感じます。 一方、エネルギー価格や物価高騰の影響を受け、売り上げが前年の同じ月と比べ20%以上減少している市内中小企業には『伊達市中小企業エネルギー等高騰対策事業継続応援金(申請は2月15日終了、1事業所一律10万円)』を交付するなどタイムリーな経済対策を講じています」 ――国道349号整備の見通しについて。 「月舘、霊山、保原、梁川を南北に結ぶ幹線道路です。生活や物流のみならず、国道4号、東北自動車道、相馬福島道路の代替路線に位置付けられ、緊急搬送や災害物資輸送道路としても重要な機能を発揮します。現在、県境を接する宮城県丸森町では国直轄事業として鋭意整備が進められています(2024年度の開通予定)。本県側でも宮城県境から兜町までの300㍍区間が一体的に整備されており、兜町以南の2・2㌔区間はルート検討に向けた測量調査業務が実施されています。本県側も遅れることのないよう、県や関係機関に早期着工を強く働き掛けていきます」  ――2023年度の重点事業についてうかがいます。 「防災体制のさらなる整備をはじめ、現在改修を進める伊達市保健センターへの子どもの養育相談や発達教育支援の集約化、イオンモール北福島内のアンテナショップ出店に向けた検討・準備、商店街活性化に向けた新規事業や起業の支援、行政手続きのオンライン化、デジタル弱者対策、集落支援員の配置による地域問題の相談や問題の共有化、アプリを活用したマイナンバーカードの普及とさらなる行政事務等の効率化を図ります。 伊達市では、10年後の本市のあるべき姿を実現するための指針として伊達市第三次総合計画を策定しました。計画期間は2023(令和5)年から2032(令和14)年の10年間で、将来像として『人と緑と歴史が結び合うひかり輝く田園空間・伊達市』と定めました。お互いを思いやるやさしい人間性を象徴する『人』、農業や豊かな自然を象徴する『緑』、そして、伊達氏発祥の地、北畠顕家が国府を開いた霊山などを象徴する『歴史』。これら3つの宝を守り伸ばしながら、本市が光り輝く田園都市となるようまちづくりを進めていきます」 伊達市のホームページ 掲載号:政経東北【2023年3月号】