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インタビュー

  • 【猪苗代町】二瓶盛一町長インタビュー

    【猪苗代町】二瓶盛一町長インタビュー

     にへい・せいいち 1953年生まれ。中央大学経済学部卒。1977年に福島民報社入社。2008年に退社後、ラジオ福島専務取締役、民報印刷代表取締役、道の駅猪苗代駅長などを務める。  ――6月に行われた町長選で初当選を果たされました。選挙戦を振り返っての感想について。 「選挙に出るのは初めての経験で、3月下旬に出馬表明し、3カ月足らずの中で何もかも手探りの状態でのスタートでした。3月初めに前後公前町長が引退を表明され、紆余曲折の末、急遽私に白羽の矢が立ち、町民の方々からも今後の猪苗代町を憂える声をお寄せいただき、町の将来のためにも無投票という事態はあってはならないという思いから出馬を決意しました。 狭いコミュニィーの選挙では、地道に顔と名前を覚えてもらうことが先決なので、町内をくまなく歩いて様々な会合等に顔を出し、自己アピールすることに徹しました。3度目の出馬で知名度が高い候補者もいましたが、後援会の基盤を前後前町長から引き継ぐ形になったこともあり、役員の皆さまや支持者の方々からご指導・ご鞭撻を受けながら選挙戦に臨みました。そうしたこともあって、今回短期決戦で初当選という結果を得られたものと考えています」 ――新聞社やラジオ局勤務に加え、前職は道の駅猪苗代の駅長を務められましたが、これらの経験を行政運営にどのように反映させていく考えですか。 「新聞社とラジオ局での勤務は畑が違うので行政に反映するという点では回答が難しいところですが、新聞社勤務では記者だけでなく管理・営業職も経験し、多くの経験を積んできたと思います。道の駅の勤務においても、スピード感を意識して職務を全うできたと実感しています。ですから、町長として行政運営に携わる立場においても、スピード感と責任感を持って取り組むことを心掛けたいと思っています。緊急の案件に関しては、トップダウン型で即座に実行できるような場合も時には必要になってくると考えます。 JR猪苗代駅を起点として町内や裏磐梯方面を走る磐梯東都バスが9月末で町内から撤退することになり、10月以降の路線バスの運用について現在協議を進めているところで、空白を生まないためにもスピード感と責任感を持ったうえで判断し、利用者の方々にご不便をおかけしないよう対処していきたい」 移住・定住促進に努める ――選挙戦では人口減少対策と産業振興が争点となりました。 「かつては全国で年間100万人を越えていた出生率が現在は80万人にまで低下し、これによって地方都市の少子高齢化が進行しているのは全国どの自治体も直面している問題と言えます。とはいえ、いち町村規模の自治体で出生率の向上や子どもの人口を増加させることはかなりの困難を伴います。であれば、こうした人口減少の中で行政が取り組むべきことは、いまいる町内の子どもたちが元気で明るく過ごせる、そして高齢者の方々に『猪苗代に住んで良かった』と思っていただけるようなまちづくりを進めるべきだと考えています。 私が生まれた1950年代は町の人口が約2万6000人でしたが、現在はその半分まで減少し、当時は人口のおよそ37%が15歳未満の子どもだったのに対して現在は10%程度にまで下がっています。本町では令和3年より出産手当を支給しており、第1子が5万円、第4子までで最大20万円を支給していますし、保育所の無料化に加え来年度からは小中学校の給食費が無料となるなど、福祉の向上に努めています。少子化というとマイナスな印象は拭えませんが、見方を変えれば子育て家庭への支援をより拡充できるという利点があります。全国的にも物価高騰に加えて収入の向上も見込めない中、少しでも子育て世代の費用負担を軽減したいという狙いがあり、それによって町民の皆さまにより良い暮らしを送っていただきたいと思っています。 令和4年度の道の駅猪苗代の来場者数は107万人を越え、売り上げも10億円近くまで到達するなど、本町の基幹産業である観光業が持つポテンシャルは高いと思っています。道の駅の好調の要因は磐梯山と猪苗代湖というロケーションに加えて高速道路を下りてすぐという好立地だと思います。町内には野口英世記念館をはじめ、観光資源がたくさんありますし、『はじまりの美術館』のようにまだまだ知られていない観光資源のピックアップに加えて、観光客の方々が好むようなおしゃれなカフェなどが点在しているので支援していきたい。それがモデルケースとなって地元の商店によい刺激を与えられるような形になればいいと思っています」 ――選挙公約について。 「基幹産業である農業や観光業をはじめ、商業・工業をバランスよく発展させるため情報を収集・分析しつつ、町の豊かな自然・観光資源を生かす知恵を絞りだすほか、JR猪苗代駅周辺の整備、市街地の商店街再生についても地元の商工業者と協議して活路を見いだしていきます。 猪苗代町は『花のまち』『星のまち』『水のまち』『雪のまち』であることをアピールし、魅力を発信し続けることで、町民の方々にはいつまでも住み続けたいと思ってもらえるような、そして町外の方には住んでみたいと思ってもらえるようなまちづくりを進め、移住・定住促進に努めていきます。 また、前町長の任期中にこども園、小学校・中学校の建物・環境整備はほぼ完了しているので、ソフト面に注力し、教育や福祉を充実させていく考えです。特に町の未来を担う子どもたちへの支援や補助は一層重視し、健全な人材育成に取り組んでいく考えです。 少子高齢化が進む中で、子育て環境の整備はもちろん、高齢者の方々に生きがいを見いだしてもらえるような方策を打ち出していくことも不可欠です。今後も様々な社会的な負担の増加が見込まれる中においても、健全な財政を維持しつつ、町民の皆さまが安全・安心を肌で感じられるまちづくりを目指していきます」 ――今後の抱負。 「町内の路線バスの見通しの確保や、統合により廃校となる施設の再利用策など、取り組まなければいけない課題は山積しています。一つ一つ着実に解決し、選挙戦で選んでいただいた方々の期待に応えるためにも、町民の皆さまから信頼を寄せていただける行政運営に努めます。 また、磐梯山周辺の自治体間の連携や耶麻郡町村会、会津地域全域での広域連携も重要になってくるので、本町の強みをアピールするだけでなく、苦手な部分は他自治体と協力・連携していきたい。他自治体の先進的な取り組みを、本町でも積極的に取り入れていきたいと考えています」

  • 【上杉謙太郎】衆議院議員インタビュー

    【上杉謙太郎】衆議院議員インタビュー

    うえすぎ・けんたろう 1975年生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。荒井広幸参院議員秘書などを経て2017年の衆院選(比例東北)で初当選。現在2期目。外務大臣政務官などを歴任。  衆議院小選挙区の区割り改定を受け、県南・県中地域からなっていたこれまでの3区は、新2区と新3区に再編された。県南を地盤とする自民党の上杉謙太郎衆院議員(48)は、小選挙区を離れて比例東北から立候補することになった。自身を育ててくれた支援者への思いと、今後の方針を聞いた。  ――区割り改定を受け県衆院比例区支部長に就任しました。次期衆院選では比例東北ブロックから立候補します。これまでの経緯と現在の心境を教えてください。 「今回の区割り変更によって次の選挙については選挙区から出馬できず比例に回ることとなりました。私自身大変残念でありますし、今は状況を受け入れておりますが、昨年以来自分の中で相当な葛藤がありました。それはやはり今までご支援いただいていた旧3区の皆様の直接的な支部長ではなくなってしまうからです。これは地元の代表たる代議士にとっては致命的なことです。加えて、旧3区の皆様には秘書時代から含めると20年弱お世話になっています。本当に大切な方々であります。支援者の皆様に大変心苦しく申し訳ない思いでおります。法改正により仕方のないこととはいっても、複雑な思いの中で了承いたしました。 新2区には旧3区から須賀川、田村、石川地方が再編されています。旧2区時代の選挙全てに根本匠先生が出馬しており、かつ1度を除き全勝しています。また根本先生は自民党県連会長であり、岸田文雄総裁が率いる派閥の事務総長でもあり、実績も多々あります。新2区の大票田となる郡山市を地盤としており、そもそも新2区における支部長選任にあたっては私は選択肢に入っていなかったようです。一方新3区は、そもそも3区支部長が私であったことと、新3区に残った県南は前回選挙で私が勝利していることから、私も菅家一郎先生とともに選択肢に上がっておりました。どちらを選挙区支部長にするかについて、会津と県南における有権者数、両地域における過去の選挙での得票数や選挙区での党員の確保数、参議院選挙をはじめ自らが選対本部長等を務める選挙での貢献度、会津地域の地域性が選定の基準となったようです。 最終的には党本部と県連、私も菅家先生も所属する派閥の清和会で調整が進みました。その結果、次回の選挙における新3区支部長には菅家先生、比例に私ということになりました。菅家先生は前回選挙で対立候補に負けている地域で巻き返し勝利すること、私は県南で菅家先生を勝たせること、つまり会津と県南で協力すれば、新3区での勝算はあるという判断からのことでした。 私は選挙区で戦えなくなってしまいましたが、一歩引いた形で黒子に徹し、次の選挙でお二人が当選できるよう、お二人の選対本部長として戦います。すでに各地域支部を両代議士に繋ぐ会や、私の若手の後援会の皆様との懇親会などスタートしています。挨拶回りもスタートしています。そういった形で2区に再編された須賀川、田村、石川地方では根本先生の支持を訴え、3区に残った県南では菅家先生への支持を訴えていきます。また選挙以外では今までと変わらず旧3区の皆様の要望を聞き、地元の声を国政に届ける活動をしていきます。私のその後については、3区でのコスタリカを含めて、まずは次の選挙でお二人の選挙を全力で戦うことで初めて道が拓けてくると考えています」 ――上杉議員が地盤としていた旧3区は新2区と新3区に分断されます。 「昨年夏以降複数回にわたって東京選出の先輩議員らから『東京で出ないか』との提案がありましたが、その度に即座にお断りしてきました。お世話になってきた旧3区の人たちと今後も活動していくことが私の使命だと考えているからです。比例東北で出るのであれば、比例は東北全域が選挙区となるので、分断された旧3区の地域も今までと変わらず私の選挙区ということになります。そういう意味では、考え方によっては、今までお世話になった党員や後援会の人たちと関係を続けていけるというプラスの面もあります。しかし、選挙で出馬し、『上杉謙太郎』と名前を書いてもらうからこそ代議士ですので、大変辛いことですし、法改正と党本部の判断によるものとは言え、ご支援いただいてきた方々には本当に申し訳なく思います。私は福島県で生まれ育った訳ではありませんが、骨を埋めるつもりで白河に来て家族共々住んでいます。子供達も白河で育っています。未熟な私ですが、地元の支援者の皆様に政治家として育てていただき、次の選挙では『対立候補に勝てるかもしれない』というところまで来ていました。それが、お世話になった選挙区が分断されただけでなく、小選挙区からも身を引かなければならなくなったこの現状は、本当のところかなり受け入れ難いことでしたし、戦いにおいてはまさに次こそが勝負という時でしたから、まさにはしごを外されたような感覚があります。 今は受け入れて話せていますが、昨年から今年の春までの選挙区調整期間は本当に『まな板の鯉』状態でした。『今の3区の皆さんとこれからも政治活動を続けていきます。動く気はありません』というのが揺るがぬ本心で、この点を党本部、県連に伝えてきました。とはいえ、私がいったん引くことで、党内も県連内も対立することなく収まる結果となったことはよかったと思います。しっかりと謙虚に受け止めて自分の与えられた職務を全うし邁進していきます」 ――新3区支部長の菅家一郎衆院議員とは、どのような関係性を築いていきたいですか。 「何が何でも菅家先生に当選してもらう、そのために一丸となります。新3区の県南地方では必ず対立候補以上の得票数が得られるよう県議の先生方や各地域支部の皆様と協力をして菅家先生を連れて歩きます。すでに始まっています。まずは県南で菅家先生が受け入れてもらえるようご理解をいただきながら活動していきます。自分以外の選挙でも汗を流す。それを一生懸命やることが比例支部長に与えられた職務とも考えています」 ――次期衆院選に向けて、有権者にメッセージをお願いします。 「比例に行くからといって今までのご縁が切れる、離れてしまうということは一切ありません。これからもお世話になりますし、今後は複雑な立ち位置になりますが、選挙においては根本先生と菅家先生の当選のために、おそらく旧3区地域の各選対に入り、支援者の皆様とともに選挙を戦います。ある意味、今まで候補者として街宣車で外に出てしまっていたので支援者の方々と会えるのがほんの一瞬ということが多かったのですが、今度は選挙区の候補者ではないので支援者の方々と近くで頻繁に顔を突き合わせてある意味一緒に選挙活動ができます。そのような形で両代議士をしっかりと当選させるのが、比例で優遇された私に与えられた責任です。 東北全部が選挙区になりますが、目下、旧3区と新3区の声を両代議士と県議の先生らと連携して地元の皆様の声を国政に届けていきます」 【上杉謙太郎】衆議院議員のホームページ

  • 【郡山市】品川萬里市長インタビュー

    【郡山市】品川萬里市長インタビュー

     しながわ・まさと 1944年生まれ。東京大学法学部を卒業後、旧郵政省に入省。郵政審議官を経てNTTデータ副社長、法政大学教授など。現在市長3期目。  ――新型コロナの感染症法上の位置付けが5類に引き下げられました。 「県の移行計画では9月末までに入院受け入れ医療機関を51医療機関から131医療機関へ、対応病床数も766病床から786病床へ段階的に拡大し、未対応であった医療機関に対しても働きかけを行うこととしています。外来診療体制も現在の689医療機関からすべての医療機関に働きかけ、インフルエンザと同等に幅広い医療機関による外来診療体制を構築することとしています。このことにより、これまで一部の医療機関での診療や入院であったものからすべての医療機関での診療等が可能となり、郡山市内においても診療可能となる医療機関の増加が想定されることから、診療や入院の受け入れを行ってきた医療機関の負担は軽減されると考えられます。 一方、これまで診療や入院の受け入れを行ってこなかった医療機関では新たな感染防止対策をとるなどの負担が考えられますが、県では必要となる感染防止等の設備整備の補助や院内感染発生に伴う休止・縮小に対する支援、個人防護具の配布等の財政支援措置を準備しています。市としては県や医師会などと連携してサポートを行っていきます。 ワクチン接種については5月8日から『令和5年春開始接種』が始まり、本市でも4月24日から接種券を発送しています。市民の皆様には羅患時の重症化リスクを低減し、ひいては医療機関の負担軽減に結び付くと考えられることから、接種についてご検討をお願い致します」 ――一家4人死亡事故を受け、市道を点検した結果、危険交差点が222カ所あることが判明しました。 「2月3日までに222カ所の点検を行い、180カ所で対策を検討していましたが、その後、郡山地区交通安全協会や郡山市交通対策協議会などから新たに61カ所の交差点の情報が寄せられ、それらの点検を行った結果、58カ所を追加し、238カ所の交差点で対策が必要であると判定しています。対策工事については市民の皆様の安全を確保するため迅速な対応に努め、昨年度中に区画線・路面表示の対策を5カ所実施し、現在は133カ所について工事発注の手続きを進めており、カラー舗装の工事を6月に、カーブミラーや路面標示などの工事を7月までに完了する見込みです。残り100カ所についても県公安委員会と連携し、1日も早い完了を目指します」 ――開成山公園と公園内の体育施設がPFIを導入した新しい公園・体育施設に生まれ変わります。 「開成山公園は2017年の都市公園法改正により創設されたPark―PFIを活用し整備を行うこととしました。体育施設はPFI法及び郡山市PFIガイドライン等に基づき19年度にPFI導入可能性調査を行った結果、施設改修と維持管理・運営を一体的に行うPFI事業としての効果が十分に発揮できると判断しました。開成山公園は目指すべき姿を『郡山の「未来を切り拓く」セントラルパーク』とし、自由広場の芝生化、駐車場の拡充及びトイレの改修・新築等といった公園施設の整備とともに、民間事業者による飲食店等の新設など市制施行100周年の節目となる2024年のリニューアルオープンを目指し、民間事業者との協奏による整備を行っていきます。さらには気候変動に対応する防災機能の強化、ベビーファースト、SDGsを実現させるべく、市民の財産である開成山公園をより有効活用し、秘めたる力を発揮させていくとともに、先人たちの偉業に思いを馳せながら『次の100年』を目指した公園整備を行っていきます。体育施設は年齢、障がいの有無などに関わらず、すべての市民がスポーツに親しみ、各種プロスポーツ大会や大規模大会が開催される市のスポーツの拠点形成を目指します。改修工事は宝来屋郡山体育館が今年10月から2024年9月まで、郡山ヒロセ開成山陸上競技場が24年2月から25年3月末まで、ヨーク開成山スタジアムが24年8月から25年3月末まで、開成山弓道場が24年12月から25年3月末までとなっており、オープン時期は施設により異なります」 ――今年度の重点施策について。 「少子高齢化・人口減少の中にあっても持続的発展を遂げる都市を目指すため、今年度の市政執行方針を『「ベビーファースト(子本主義)実現型」課題解決先進都市の創生』と定め、子どもの視点に立ったまちづくりを推進していきます。主な施策としては学校給食の公費負担を実施したことです。私は教科書が無償であるのと同様に『給食は食育教育の教科書である』と考えているため、本年度から市独自の施策として中学校の給食費を全額公費負担とし、小学校の給食費も国の地方創生臨時交付金を活用し、全額公費負担としたところです。また、DXの推進に加え、気候変動や地球温暖化対策といったGXの推進にも重点を置き、2050年の二酸化炭素排出量実質ゼロ目標の実現を目指します」  ――来年、市制施行100周年を迎えます。 「明治時代に行われた安積開拓をきっかけに全国各地から士族が移住してきました。安積疏水は農業の発展はもとより、疏水を利用した水力発電により養蚕などの産業や工業の発展をもたらしました。1924年に郡山町と小原田村が合併し郡山市となり、その後も幾度かの合併を経て65年の大合併により現在の形となりました。この間、東日本大震災や自然災害など幾多の困難もありましたが、多くの先人たちが築き上げた礎のおかげで、市制100周年を迎えることができると考えています。次の100年に向け、先人たちの思いをつなぎ、安積開拓の理念『開物成務』のもと、市民や事業者が自由かつ存分に活躍してもらえる、自治力のある都市の実現を図っていきます。 記念事業についてはオール郡山で記念事業に取り組むため、次代を担う世代の方々や市民活動団体関係者、報道機関などの22名で構成された『郡山市制施行100周年記念事業プロモーション委員会』において、市の政策との整合性にも留意しつつ、記念事業が次の100年を見据え、未来メッセージを発信していく意義のあるものとなるよう検討していただいています。委員会からは音楽イベントの開催、プロスポーツの記念試合開催などのほか、歴史・観光・子ども・産業などのアイデアをいただいており、今後、記念事業の内容について検討していきます」 ――今後の抱負を。 「『誰一人取り残されない』SDGsの基本理念のもと、市民・団体・事業者などの皆様との『公民協奏』『セーフコミュニティ活動』の推進を念頭に各種施策を総合的・持続的に実施することにより、市民・事業者の皆様が思う存分に活躍できるまちづくりを進めてまいります」 郡山市のホームページ

  • 【アレンザHD】浅倉俊一会長兼CEOインタビュー

    【アレンザHD】浅倉俊一会長兼CEOインタビュー

     あさくら・しゅんいち 1950年生まれ。聖光学院高卒。76年に㈱アサクラ(現ダイユーエイト)創業。2019年4月、経営統合で設立されたアレンザホールディングスの社長となり、今年5月、会長兼CEOに就任した。  ホームセンターのダイユーエイトなどを展開するアレンザホールディングス(福島市)は5月24日、定時株主総会と取締役会を開き、浅倉俊一社長が代表権のある会長兼最高経営責任者(CEO)に就き、後任にホームセンターバローの和賀登盛作氏が就任した。浅倉会長兼CEOに、現状や今後の見通しについて話を聞いた。 世代を担う人財を育てるのが私の役割  ――3月にダイユーエイトの会長兼CEOに就き、5月にはアレンザホールディングスの会長兼CEOにも就任しました。 「以前から70歳で後進に道を譲りたいと思っていましたが、コロナ禍で3年間先送りしている状況でした。アレンザホールディングスも今年で5年目となり、ちょうどいいタイミングだと考えました。次世代を担う人財を育てていくことが私の役割だと考えています」 ――アレンザホールディングスの2023年2月期連結決算(収益認識を除外した数値ベース)は、営業収益1583億4900万円(前期比100・9%)、営業利益52億8200万円(同84・1%)、経常利益59億0600万円(同86・3%)、当期純利益27億円(同66・0%)で、増収減益となりました。 「増収になった要因は、新店9店舗出店による売り上げ増と、昨年3月に発生した福島県沖地震の特需などによりダイユーエイト既存店の売り上げが伸びたことです。 減益となった要因は販管費の増加が大きかったです。前年同期比23億円増で、その内訳は水道光熱費6億円、人件費6億円、物流費用2億円、キャッシュレス・EC手数料2億円、その他新店の開業経費などとなっています。加えて、タイム社において、会計上の理由で繰延税金資産の取り崩しが約5億円発生したことも当期の利益に影響しました。 光熱費高の影響は大きかったですが、照明の明るさを下げたり、LEDに換えたりして電気代の節約に取り組みました。また、減益となった一方で、粗利率は0・5%改善しました。これは売り上げにおけるプライベートブランド(PB)商品の割合比率が11%から13・5%に向上したためです」 ――ダイユーエイトの既存店ベースで、客単価が前年同期比3・9%増加しましたが、来店客数が同3・6%減少したことにより、既存店売上高は0・1%の増加となりました。要因をお聞かせください。 「客数の減少は〝コロナ特需〟の反動減によるものです。2022年2月期は〝巣ごもり需要〟によってマスクなどの衛生用品のほか、DIY用品、インテリアの売り上げが伸びていました。一方、客単価が増加したのは、原価の値上げ分を適正に売価へ反映してきた結果、物価上昇分がそのまま上乗せとなったためです」 エイトプロ出店を加速  ――職人向けの工具などをそろえた「エイトプロ」の郡山安積店(郡山市)が新規オープンしました。福島店に次いでの出店となりました。 「概ね計画通りに進捗しています。特に主力の工具部門が好調で、予想を上回る売り上げを上げています。プロショップはまだまだ伸びしろがあると感じています。 今期は3店舗の新規出店を計画しており、そのうち岩沼店(宮城県岩沼市)と福島本内店(福島市)の2店舗はすでに具体的な物件を確保しています」 ――新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に引き下げられました。ダイユーエイトはじめ、アレンザホールディングス傘下の店舗において、売れ筋商品・売り場作りなどに変化はありましたか。 「マスクなど衛生用品の売り上げが大きく減少し、旅行などの需要回復に伴い来店客数が減少しています。今後はホームセンターの主力部門である園芸・植物での『地域一番店』を目指して、ドラッグストアやスーパーマーケットとの差別化を図っていきます。またDIY用品の強化や棚割り改革を行い、地域の需要にきめ細かく対応していきたいです」 ――ペットワールドアミーゴは屋島店(香川県高松市)をはじめ、3店舗の出店がありました。今後の戦略をお聞かせください。 「ペット事業は特需の反動減で一時低迷していましたが、その影響が昨年12月くらいに一巡し、それ以降は既存店ベースで前年並み、あるいは上回るところも出てきています。特に犬フード、猫フード、トリミング、ペットホテルが好調に推移しています」 ――福島県経済の今後の展望について、考えをお聞かください。 「東日本大震災・原発事故以降、だいぶ風評被害がありましたが、徐々に回復してきていると感じています。県内の農業や水産業は、高い品質と安全性があることから需要が高まりつつあります。観光業も、県内の温泉や自然景観などを生かした観光プランの開発によって回復傾向にあります。一方、流通・小売業では大手企業が活発に出店を進めており、商業施設やショッピングモールの開業が相次いでいます。 今後は、地域特性を生かした商品を生み出したり、地域の需要にきめ細かく対応するなどして、地元消費者の支持を獲得することが求められるようになると思います。またIT技術を活用し、店舗とオンラインショップを組み合わせた販売形態を構築したり、店舗内でイベントなどを開くなどして、顧客獲得にも積極的に取り組む必要があるでしょう」 ――ホールディングス発足4年を振り返って。 「企業が統合することによって生まれる『シナジー効果』を求めて、商品開発や物流コスト節減、粗利率の改善に取り組んできました。特に粗利率の改善については、メーカー統一による原価価格引き下げ、PB商品開発の拡大を進めてきました。2023年2月期と、経営統合前の2019年2月期の粗利率の差異は、ダイユーエイトが+1・9%、タイムが+0・8%、ホームセンターバローが+2・3%です。今後もPB商品の拡大に取り組んでいきます」 ――今期(2024年2月期)の経営方針として、商品力の向上、店舗力の向上、新規出店、差別化戦略、DX推進、SDGs推進、M&A戦略を掲げています。 「『商品力の向上』として、今期PB商品売り上げ構成比18%の実現を目標に掲げています。具体的には、単品販売力の向上や定番棚割りの見直しを行っていきます。PB商品における海外開発の割合は7割を占めていましたが、コロナ後は3割まで下がり、粗利率が低下しました。海外開発の割合をコロナ前の基準まで引き上げていきたいですね。 『店舗力の向上』として、ホームセンター11店舗、アミーゴ4店舗、MAX福島店の改装を実施し、14店舗の新規出店を計画しています」

  • 【福島県土木部】曳地利光部長インタビュー

    【福島県土木部】曳地利光部長インタビュー

     ひきち・としみつ 1964年生まれ。福島市出身。東北大学工学部卒。いわき建設事務所長、土木部次長(道路担当)などを歴任。昨年4月から現職。  本県は東日本大震災や令和元年の台風、一昨年、昨年の大地震、会津北部での豪雨と立て続けに災害に見舞われている。道路や橋梁の復旧に設備の強靭化と県土木部の役割は増す。復興への寄与と脱炭素の取り組みを就任2年目の曳地利光部長に聞いた。入札不正、収賄事件で低下した信頼を回復するための取り組みも尋ねた。 安全で安心な県土づくりを着実に進めていく  ――県土木部長に就任し1年2カ月が経ちました。 「就任直前の2022年2月、只見町の雪崩であいよし橋が流失し、同3月には福島県沖地震が襲いました。就任後の同8月には会津北部を中心に豪雨が発生するなど様々な自然災害の影響を受けた1年でした。新型コロナウイルスの影響下の中、災害対応やインフラの整備・維持管理などに取り組んでいただいた建設業に携わる皆様の御尽力に心から御礼申し上げます。 1年を振り返り、改めて安全で安心な県土づくりに取り組む必要があることを実感しました。昨年度からスタートした『福島県土木・建築総合計画』に基づき、県土の持続的な発展のために必要な取り組みを着実に進めていきます。 復興事業については、2015年度までの『集中復興期間』とこれに続く20年度までの『第1期復興・創生期間』に、津波被災地の災害復旧と防災集団移転などの事業がほぼ完了しています。 一方で、原子力災害による避難地域等のインフラについては、『第2期復興・創生期間』に復興を支える道路事業等を展開していますが、復興のステージが進むにつれて新たな課題が顕在化しています。 これらの課題を5月に初めて開いた『東北震災復興のみらいを語る懇談会』で、国土交通大臣、岩手・宮城両県知事及び仙台市長と共有し、連携を一層緊密に図りながら解決に取り組んでいくことを確認しました。 福島の復興はいまだ途上であり、今後も長く戦いが続きますが、引き続き土木部職員一丸となって安全で安心な県土づくりに取り組んでいきます」 不祥事を「自分事に」  ――県発注工事の入札で設計金額を教えた見返りに現金や飲食代などの賄賂を受け取ったとして、収賄容疑で県中流域下水道建設事務所の職員が逮捕・起訴されました。土木関連事業の入札に関する設計金額や非公表の工事単価などの情報漏洩が相次ぐ中、今後の対応についてうかがいます。 「土木部では、別の事件で1月に農林水産部職員が逮捕されたことを受け、入札前工事の設計金額を閲覧できる職員を必要最小限に限定するシステム改修を2月に実施しました。 土木部としては、コンプライアンスの徹底や服務規律の保持について、職員一人一人が不祥事案を『自分事』として捉えられるよう面談や研修などの取り組みを愚直に繰り返し行っていきます。さらに、今回の事件の事実関係や原因を踏まえ、第三者委員会からの意見をいただきながら、再発防止策がより効果的なものとなるよう取り組みます」 ――昨年度より、建設行政の新たな指針とする「福島県土木・建築総合計画」が始動しました。 「2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴う大津波による災害、東京電力福島第一原子力発電所事故による災害を踏まえ、土木部は国・市町村等と連携しながら被災地の復旧・復興に全力で取り組み、津波被災地における復興まちづくり、復興公営住宅の整備等による居住の安定確保、地域連携道路やふくしま復興再生道路等の整備による県内ネットワークの強化等を着実に進めてきました。 一方で、今なお多くの方が県内外で避難を続けているなど、復興は途上にあり、復興や住民帰還の進捗に伴って新たな課題も生じています。 気候変動により豪雨災害が激甚化・頻発化しており、令和元年東日本台風により本県でも大きな被害が発生しました。豪雨災害以外でも、2年連続で大規模な地震に見舞われるなど、あらためて人的被害を防止するため、社会資本の充実を図ることが、極めて重要であることを強く認識しました。 このような中、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行等の時代潮流の変化に対応し、30年後のありたい姿を実現するため、2021年に福島県総合計画が策定されました。その計画を具現化するために、土木部は22年度から30年度までの9年間を計画期間とした『福島県土木・建築総合計画』を同12月に策定しました。『安全・安心、豊かさを次代につなぐ県土づくり』を基本目標に、7つの目標と14の施策を設定しています。 この計画に基づき、震災からの復興と地方創生をさらに加速させます。防災・減災、国土強靱化や、建設業の振興を推進するため、国や市町村、建設業に携わる皆様と連携を一層密にしながら、社会資本の整備に取り組んでいきます」 ――ふくしま復興再生道路の進捗状況と効果について。 「ふくしま復興再生道路は、基幹的な道路に囲まれる範囲にある主要8路線、29工区について、これまでに福島市と浪江町を結ぶ国道114号の山木屋1・2・3工区など、22工区(3月末時点)が完了しております。本道路の整備によって、避難住民の帰還や帰還後の生活再建、産業再生や交流人口の拡大による地域活性化が図れます。引き続き、小名浜港と常磐道を結ぶ小名浜道路や、浜通りと中通りを結ぶ吉間田滝根線など、残る工区の早期供用に向けて整備を進めていきます」 ――その他の重要施策についてうかがいます。 「東日本大震災及び原子力災害によって失われた浜通り地域等の産業基盤の再構築を目指す福島イノベーション・コースト構想では、浪江町の水素製造拠点の開所や、南相馬市の福島ロボットテストフィールドでの活用事例の増加、さらには関連企業の立地など、これまでの取り組みの成果が着実に表れています。今年4月には、福島国際研究教育機構(F―REI)が設立されました。避難地域で行われている様々な取り組みを加速させるため、広域ネットワークの形成などインフラ整備を進めることが、土木部の重要な役割だと考えております。 土木部では、低炭素社会の実現に向け、環境に配慮した公共土木施設や建築物の整備を進めるとともに、小名浜港における次世代エネルギー受入環境の整備や脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化などを推進するため、『小名浜港港湾脱炭素化推進計画』を策定していきます。 建築物についても、室内温熱環境を向上しつつ大幅な省エネルギー化を実現することが重要課題となっていることから、県有建築物のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化を進めていきます」

  • 【磐梯町】佐藤淳一町長インタビュー

    【磐梯町】佐藤淳一町長インタビュー

    さとう・じゅんいち 1961年9月、磐梯町生まれ。日大工学部卒。磐梯リゾート開発取締役総支配人を経て、2015年の磐梯町議選で初当選。19年磐梯町長選で無投票初当選。今年6月の同町長選で無投票再選を果たした。  ――磐梯町長選挙では無投票で再選を果たされました。 「無投票で再選できましたことにあらためて感謝いたします。2期目のテーマは、『内部の変革と体制づくり』が重要だと認識しています。1期目では、デジタル変革(DX)戦略室を設置し、各部署の横断的かつ柔軟な業務対応と効率化を図りましたが、DXはあくまで手段であり、行政サービスの出口戦略に至るのに、一番重要なのは役場内部の変革です。 今や、行政は同じ仕事を日々こなしていくだけの時代はもう終わったといっても過言ではありません。職員一人ひとりが自ら考え、行動に移すことが求められています。一方、それらの定着化を図るうえで、まず職員を育てる必要がありますが、現在の役場の枠組みでは限界があります。2期目では、組織の変革による職員の意識改革と行政のスピードアップ化へ大きく舵を切る覚悟です。 この間、職員間のチャットツールを導入し、情報共有の徹底化を図ってきました。これにより、担当の職員が仕事を抱え込むことはなくなり、チーム内はもちろんチーム外の職員からも知恵やアイデアが出されるなど着実に成果が上がっています。 従前の行政の問題点の1つに、閉鎖的な職場環境による想像力の低下と視野狭窄が挙げられます。質の高い行政サービスを実現するためにも職員のスキルアップや能力開発が不可欠との観点から、民間企業をはじめ、外郭団体などで兼業してもらうことも検討しています。役場内の情報管理は全てクラウド化しているので業務に支障が出ることはない点を付言したいと思います。また、『攻守兼備の行政』の実現に向け、営業・マーケティング戦略と総務・管理、それぞれに特化した副町長二人制の導入を前向きに検討します」 ――2期目の重点施策について。 「再選を目指すにあたって以下の『5つの骨太方針』を示しました。今後は実現に向け粛々と取り組む所存です。 1つは、人口減少対策の基本となる施策である子育て・教育の充実です。『子ども子育てワンストップ窓口』を設置し、子育て支援を展開していきます。教育は個々の性格、家庭環境で育まれたものをサポートして伸ばすことであり、それが学習における習熟度、成長率を左右すると考えます。子どもたち一人ひとりに合わせた『インクルーシブ教育』の徹底を目指して議論を重ね、教育施策の柱に据える考えです。加えて、町内の保育・教育施設を一体的に運営する学園構想を推進し、0歳から15歳までにどういう教育を進めていくか、根本的に見直します。先ずは幼稚園と保育園を再編して認定こども園を作る方針で、協議会を立ち上げて具体的に検討します。 2つは、本町の基幹産業である農業振興です。農業振興公社を設立し、農業従事者の皆さまが継続して働ける仕組みを作ります。併せてマーケティングも行い、農産物の付加価値を向上させます。農業は魅力にあふれた事業だと思いますが、後継者不足が深刻です。十分な収入が得られ、休みもある仕事ならば就農希望者も増えると思いますが、現実はなかなか厳しいのが実態です。 問題は流通過程の中で生産者と消費者との距離が離れてしまうことです。生産者と消費者が直接つながり、『良質な農産物を供給してくれる』という信頼関係ができていれば、多少価格が高くても買い求めるようになりますし、SNSや口コミを通じて評判も広まっていくと思います。その結果、生産者の収入が上がれば、新規就農者も増えていくものと考えます。農業振興公社を中心にさまざまな施策を打ち出し『儲かる農業』を実現できるよう注力します。 3つは、観光振興と地域ブランド強化です。磐梯町がどこにあるのか分からない人も多いと思いますが、『会津磐梯山と名水のまち』と打ち出せば、イメージが掴みやすくなり、認知度が広まっていくと考えます。『磐梯町ブランド』が確立されれば、農産物の売り上げにもプラスになるはずです。認知度アップのために、民謡・会津磐梯山の磐梯町バージョンを作りイベント時には必ず流して、PRしていく考えです。 観光はコロナ禍で厳しい状況が続いてきましたが、民間の力を生かすため連携しながら支援していくことが何より重要と考えています。そのため、ばんだい振興公社を立ち上げ、町内の観光スポットである『道の駅ばんだい』、『史跡慧日寺跡』を一体として運用していく体制を構築しました。年間約82万人が訪れる道の駅ばんだいを拠点に、史跡慧日寺跡などを回遊していただく『滞在型観光』を目指します。集客面ではインバウンドも鋭意強化していく考えです。スキー場を訪れるオーストラリア、台湾からの個人客に加え、雪のない東南アジアへの営業強化、民間施設への集客支援を実施していきます。 4つは、移住定住の推進です。本町を知っていただいた方に、『住んでみたいまち』、『住みやすいまち』と思っていただけるようしっかり取り組みます。地方への移住定住は、まずそこで暮らしていくための環境を整備する必要があります。 本町では町唯一の大型商業施設が閉店したのを受け、2021年に『公有民営方式』で民間スーパーを誘致しました。さらに、地域おこし協力隊や地域活性化起業人を採用して、さまざまな形で地域を活性化させ魅力を向上させてきました。町内には有力企業の工場が進出しており、働き口の確保もサポートしていきます。移住定住関連の各種補助金も見直し、空き家バンクに加え空き地バンクを追加します。各地区を調査し、空き地を有効活用していくとともに町営住宅整備も計画する考えです。民間活力の導入を図り、民間アパートや分譲地も増やしていきます。 結びに、共創協働のまちづくりです。町民全員が幸せになるためには、行政の一方的な取り組みだけでは難しく、町民と共にまちづくりを進めていくことが重要です。町民と対話し、いろいろな課題を共有して、『まちをどうしていきたいか』という思いを一つにすることが大切であると認識しています。町民の思いを行政が支えていく形で、一緒に事業を進めていく所存です」 幸せに暮らせる環境を  ――町民へのメッセージを。 「人口減少社会は避けて通れない問題であるのは事実です。引き続き磐梯町の魅力をより大胆に発信しながら関係人口の創出、移住・定住の促進を図り、町内の活性化に注力するとともに、本町の日常生活に幸せを感じて暮らせるような仕組みづくりや環境づくりを鋭意進めていきます。併せて、町民の皆さまがオープンに議論できる機会を提供し、その内容を踏まえた新しい形での行政サービスを提供できるよう努めます」

  • 【南会津町】渡部正義町長インタビュー

    【南会津町】渡部正義町長インタビュー

     わたなべ・まさよし 1958年7月生まれ。県立田島高校卒。旧田島町役場入庁後、総合政策課長、総務課長などを歴任。南会津町副町長を経て昨年4月の町長選で初当選を果たした。  ――5月8日から新型コロナウイルスの感染症法の位置付けが2類相当から5類に引き下げられました。この間の町内における状況とアフターコロナ対策について。 「5月から6月にかけて総会シーズンを迎えましたが、終了後に懇親会が催されるケースが目立つなど、コロナ前の日常が戻りつつあると実感しています。町民は『しっかりと感染対策をしながら経済を回していくことが重要』と認識されているようで、最近では地域経済が非常に活発になってきたと思います。 一方、飲食業の方にお話を聞くと、昼の時間帯は客足が戻ってきたが、夜の時間帯までは完全に戻っていないとの声が聞かれます。生産工場や建設業では、集団感染が発生した場合、生産ラインを止めなくてはならない、あるいは作業現場を止めなくてはならない、といった不安やリスクを依然として感じているのではないかと考えます。 新型コロナが落ち着きつつある一方で、最近では、電気料金の値上げや物価高騰の影響が深刻です。当町では、その対策として、電気料金や燃料費高騰に苦しむ事業者に対し、100万円を上限とする原油価格等高騰対策事業(事業費4000万円)を4月から実施するなどして、支援に取り組んでいます。 そのほか、新型コロナや物価高の影響による消費低迷からの回復を図るため、地域振興緊急対策事業(同1410万円)としてプレミアム付商品券の発行に向け取り組んでいます。また、酪農家からは飼料代の高騰により相当影響が出ているとの声や、農家の方からは農業資材の高止まりに苦慮されている話が寄せられているので、的確な支援策を検討しています。今後補正予算などで、全体を見据えて、限られた財源を有効に使っていく考えです」 ――公約である子育て・医療福祉政策の充実をはじめ、結婚支援対策、若年層の定住対策の進捗状況についてうかがいます。 「子育て支援については、まず保育所の0~2歳児の保育料負担軽減対策(同1141万円)です。全額負担について検討を重ねましたが、最終的には町が半額支援するという結論に至りました。次いで、新たなお子さんが生まれた際に10万円分の商品券を贈呈して誕生を祝うとともに、必要なものを町内で消費していただくための当町単独事業『パパママ応援交付金事業』(同710万円)を実施しています。 国と連携した事業としては『妊娠出産21プロジェクト事業』(同853万円)で、母子手帳交付時に5万円、出生時に5万円の現金を支給するとともに、伴走型支援として保健師による一貫した訪問活動を展開しています。 そのほか、地域子育て支援拠点事業として、出産をはじめ、幼少期、学童期の子どもを持つ親からの相談にきめ細かに対応するため、健康福祉課内の『子育て世代包括支援センターえがお』を核とした相談・支援体制の構築に努めています。 医療福祉については、昨年12月に県立南会津病院の病院長が不在となることが懸念された中、この間、南会津郡内の首長・議長会と連携して実情を訴え、4月1日から確実に病院長を配置していただけるよう、県に要望活動を行ってきました。紆余曲折ありましたが、坂下厚生総合病院で病院長を経験された松井遵一郎先生が南会津病院長として就任され、今までと変わりなく診療が行われています。同病院の医療体制の強化は南会津郡で最優先課題に位置づけられます。現在、常勤医がいない産婦人科、精神科、眼科における常勤医の配置をはじめ、小児周産期医療体制の充実、人工透析専門医と看護師の増員について引き続き要望していきます。 結婚支援対策については、7人の縁結びサポーターによるお相手紹介・結構相談全般を担う『縁結びサポーター事業』をはじめ、南会津地方振興局と合同で開催する婚活イベントを1回、本町単独の婚活イベントを2回予定しています。そのほか、身だしなみやマナー、異性とのスマートな話し方を学ぶ『スキルアップセミナー』の実施、結婚して居住する費用もしくは引っ越し費用について60万円を上限に補助する『結婚新生活支援事業』を展開しています。 現在、若い職員たちによる結婚支援策の検討・立案により『あづまっぺ実行委員会』が設立されました。今の若者たちの結婚観を踏まえ、肩ひじ張らずさりげなく出会える機会の必要性から、町が運営するインターネットコミュニティサイト『#ミィズ』を立ち上げ、6月12日現在で56人の方が登録されています。併せて、南会津町結婚サポート企業の登録も始めました。町内に立地する事業所や団体に呼びかけ、結婚支援の官民連携を図っており、6月5日時点で22の事業所に参画いただいています。 若者の定住対策については、Uターン、Iターンの仕組み作りが重要だと考えます。住宅取得時の支援をはじめ、移住してきた方々が地域でしっかり馴染んで生活してもらうための体制構築などを『定住対策プロジェクト事業』に盛り込み、鋭意進めています。また、人手不足が慢性化する中、若者の定住も含めて、新たな求人活動や事業所をPRするための費用の一部を助成する取り組みについて、『働き手確保支援事業』として新規で着手したところです。南郷トマト生産を中心とする新規就農者への支援、林産業の雇用促進、町内で新たに起業・商売したい方の支援対策として、『ビジネスチャレンジ支援事業』も展開しています」 観光商品開発に努める  ――関係・交流人口の創出にも注力されています。 「首都圏を中心に多くの企業でコミュニケーション能力や提案能力を高める研修が求められている中、当町の地域資源を生かした研修でディスカッション能力や提案力の向上を図る『チームビルディングツーリズム事業』を試験的に実施しています。現在は、モニターツアーという形で実施していますが、研修を実施した事業所からは非常に好評であり、関係人口創出のポテンシャルを感じています。また、埼玉県の埼玉栄高校などを運営する学校法人佐藤栄学園、千葉県の市立船橋高校との『町有施設等の利用に関する協定』を通じた高校合宿誘致事業にも引き続き尽力する考えです。そのほか、農家の生活体験を教育プログラムに組み入れた教育旅行『南会津農村生活体験推進協議会支援事業』も実施しています。『星空誘客事業』では、当地域の星空がどのぐらい素晴らしいのかという魅力を再認識していただけるよう、住民向けの星空観察会を実施しています。今後は商品化に向けた事例調査を進めながら、宿泊を伴う観光商品の開発に努めていく考えです」

  • 【檜枝岐村】平野信之村長インタビュー

    【檜枝岐村】平野信之村長インタビュー

    ひらの・のぶゆき 1957年1月生まれ。喜多方工業高校卒。檜枝岐村役場で企画観光課長などを歴任。同村教育長、副村長などを経て、今年4月の村長選で初当選。  ――任期満了に伴う檜枝岐村長選において、無投票で初当選を果たしました。 「出馬にあたっては、村民の方々から要請をいただき、そうした声を真摯に受け止め立候補を決断した次第です。これまで副村長を務めてきましたが、実際に村長を務めると決断や責任が伴ううえ、立ち位置も明らかに異なります。あらためて職責の重さを実感しているところです」 ――1期目の抱負についてうかがいます。 「喫緊の課題は人口減少です。人口減に歯止めをかけるべく早急に対策に着手する考えです。また、震災・原発事故に伴う風評被害や新型コロナで落ち込んだ地域経済を何とか立て直したいと強く思います。今後は官民連携を一層強化し、民間からアイデアや知恵をお借りして実効性のある経済対策に努めていく考えです」 ――村の地域資源である尾瀬などの自然環境保護も長期的な課題となっています。 「かつて尾瀬観光に多くの観光客・登山客が訪れ、本村の規模に対し『オーバーユース』と言われた時代もありました。ただ、今は『アンダーユース』となり、利用されないために劣化する状況です。今後は関係機関の方々と協議を重ね、観光客の回復に注力する所存です。その一環として、バスを中心とする公共交通機関の利用促進を図っていきます。具体的には、本村―尾瀬―群馬県片品村間の相互移動の利便性を高め、観光ルートとしての魅力に磨きをかけながら観光客誘客を図ることで、宿泊業、飲食店、土産物屋も確実に潤うものと考えます。また、村内でのバス路線の維持は非常に厳しい状況ですが、観光客による利用増が図られれば乗車率のアップはもちろん、運行会社の収益性向上につながるなど、まさに『三方良し』となるはずです」 ――新型コロナウイルス感染症における感染症法の位置付けが5類に引き下げられました。この間、村の基幹産業に位置づけられる観光業の現状についてうかがいます。 「観光客は思ったほど戻っていないように感じます。本村は山岳観光地であり、感染症リスクは比較的低いため、この点を前面に打ち出していきたいと思います。教育旅行については回復している状況です」 ――その他今年度の重点事業について。 「村内のワーケーション施設が今年度中にリノベーションを経て完成する運びとなっています。結びに、村内の景観や若者受けする施設整備の一環として、檜枝岐川上流側に位置する中土合公園、ミニ尾瀬公園、癒しの空間の3公園を一体化する事業が今年度から着工する予定となっています」

  • 【楢葉町】松本幸英町長インタビュー

    【楢葉町】松本幸英町長インタビュー

    まつもと・ゆきえい 1960年12月生まれ。県立四倉高卒。1997年から楢葉町議4期、その間議長を2期務める。2012年4月の町長選で初当選を果たし、現在3期目。  ――移住・定住施策のため、昨年、相談窓口機能を備えたコドウがオープンしました。 「コドウの昨年度の移住相談実績は80件で、そのうち15名が移住に結び付きました。移住相談窓口以外にも大学生のフィールドワークの対応や、町内で新しいことをはじめたい方をサポートするスタートアップ支援も行っています。また、移住者の数だけを重視するのではなく、移住してきた方が、例えば起業して新たなサービス等を提供することによって住民の利便性が向上するなど、満足度の高い町になることが移住定住事業の重要なポイントだと考えています。そのために町としては今後、地域の担い手となる方や地域課題を捉え、起業を考える方をはじめ、多くの方に少しでもまちを知っていただくため、まずはぜひ足を運んでいただきたいと考えています」 ――農業の6次化に取り組んでいます。 「これまで農業再生について効率化・省力化に向けた担い手への農業集積や基盤整備、サツマイモの産地化など、特色ある新しい農業モデルに取り組んできました。新たなチャレンジとして地元農産物を活用した付加価値の高い特産品開発、商品化を進め、生産から処理、加工、さらには販売や販路へと一体的な流れを構築する6次産業化の第一歩として『楢葉町特産品開発センター』が4月に落成しました。この施設では主に甘藷・柚子・米を活用した加工品の開発や製造を行い、そのほかの町内産の農産物も幅広く活用しながら生産農家の経営安定を目指していきたいと考えています」 ――今後の抱負。 「震災から12年が過ぎ、ハード面の整備からソフト事業への移行が重要となる今『笑顔とチャレンジがあふれるまち ならは』の実現のための事業として、昨年オープンしたコドウやまかない付きシェアハウスでの事業に加え、新たに地域住民との交流拠点『まざらっせ』もオープンしました。これらを活用し、移住者と震災前から住む町民が互いに手を携え交流人口の拡大を図りつつ、さらに新しいステージへ邁進していきます。 役場機能についても、今年度から住民サービス向上のため、窓口業務一元化として町民税務課を設置しました。また、新規企業誘致や安定的な雇用の確保に注力し、観光資源の活用も今まで以上に進めるべく、産業創生課を設置して組織強化を図っています。さらにはDX推進体制の整備・強化を目指し、政策企画課内にDX推進室を設置しました。私たちが目指すのは、最終的には町民の幸せな暮らしの実現です。このことを肝に銘じて全職員心を一つに今後も精進してまいります」

  • 【双葉町】伊澤史朗町長インタビュー

    【双葉町】伊澤史朗町長インタビュー

    いざわ・しろう 1958年生まれ。麻布獣医科大学獣医学部卒。2003年から双葉町議を務め、2013年の町長選で初当選。現在3期目。  ――昨年、特定復興再生拠点区域の避難指示が解除されました。 「町長就任時は町に帰還することは想像できませんでした。この間、町民と町政懇談会を行ってきましたが、町民からの『いつ帰還できるのか』との質問に答えられない時もありました。そういった意味で故郷に戻ったことは感慨深く、ホッとしています。一方で、医療・福祉や教育面の充実など新たな課題も生まれています」  ――JR双葉駅西側には公営住宅が建設中で診療所もオープンしました。  「当町は被災自治体で最後に避難指示が解除されたため、復興は遅れています。そのため、他自治体と同様のことを行っても町民は納得しないというのがスタートでした。そういった意味で、被災自治体の中で一番誇れる災害公営住宅と再生賃貸住宅であると自信を持っています。  診療所はJA厚生連の協力もあって開所しました。現在は週3日だけですが、来年以降は診療日を多くとっていただけるよう厚生連にも働きかけていきたいと考えています。また、移動手段を持たない高齢者などが駅から歩いていける場所にしたいとの考えから駅前に整備しました。町役場も駅前にあり、いずれ飲食店や商店ができ、『駅前に行けば便利』と思っていただけるような環境づくりを進めていきたいと思っています」  ――4月には浅野撚糸の双葉事業所が開所するなど産業復興の動きも活発です。  「帰還して生活していくには仕事・雇用が必要です。そのため避難指示解除前から企業誘致に取り組み、20件、24社と協定を締結し、現在は16件が町内で動き始めました。誘致企業の中には町内居住が雇用の条件のところもあり、ありがたく思っています。誘致企業で働く他地域から来られた方で、町の良さを知って住んでみようと思う方が増える可能性もあると思っています」  ――農業面ではブロッコリー栽培が行われています。  「除染によって痩せた土地でも栽培しやすいブロッコリーを、県の営農再開支援事業を利用して60㌃ほど栽培しています。もちろん検査も行われており、安全面の問題はありません。私も食べましたが、身が締まっており美味しいですね」  ――今後の抱負を。  「復興は町長就任直後から頭から離れたことはありませんが、やっとそのスタートラインに立つことができたと思っています。今後も職員含め、心一つに進んでいきたいと思います」

  • 【玄葉光一郎】衆議院議員インタビュー

    【玄葉光一郎】衆議院議員インタビュー

    げんば・こういちろう 1964年生まれ。安積高校、上智大学法学部卒。民主党政権時に外務大臣、国家戦略担当大臣、内閣府特命担当大臣、同党政策調査会長などを歴任。現在、立憲民主党東日本大震災復興対策本部長。10期目。  衆議院小選挙区の区割り変更に伴い、立憲民主党の玄葉光一郎衆院議員(59)は、地盤としてきた改定前の福島3区が分割されることになった。党内での候補者調整の経緯と新たな選挙区となる新福島2区での意気込みを、衆院解散の緊迫感が増す6月中旬に聞いた。支持率が低迷する同党の野党第一党としての責任についても尋ねてみた。  ――衆院小選挙区定数「10増10減」に伴い、定数1減の本県では区割りが変更となる中、立憲民主党は次の衆院選で新しい福島2区(郡山市、田村市、須賀川市、田村郡、岩瀬郡、石川郡)に玄葉代議士の擁立を決定しました。経緯と今後の選挙戦略についてうかがいます。 「中選挙区時代も含めると10期もお世話になってきた選挙区が二つに分割されるということで、体が引き裂かれる思いです。新2区、新3区のどちらを選んでも現職が既にいる状況が生まれてしまいました。 自分はどちらに重点を置いて活動すべきかということで、後援会の皆さんと丁寧に議論を重ねました。私が生まれ育ったのは田村で、主な地盤にしてきたのは田村、須賀川、岩瀬、石川地方です。一方、郡山も地元と言っていい。安積高校に通いましたし、郡山の経済圏で生活してきました。妻も郡山出身で縁が深い。最終的に新2区を活動の基盤にすると決めて、その上で馬場雄基代議士との競合をどうするかということになりました。 県連は当初からコスタリカ方式を進める方針でしたが、立憲民主党では比例枠がそもそも限られています。今後2回にわたり福島県で比例枠を一つずつ確保するのはかなり困難と予想されていました。 私自身、小選挙区で出る選択と比例で立候補し名簿順位で優遇を受ける選択の両方がありましたが、馬場代議士からは『まずは先輩が小選挙区で出てほしい』という話がありました。考え抜いた結果、私が小選挙区で当落のリスクを負うのが適切なのではないかと腹を据えました。ただし、そのためには馬場代議士が比例東北ブロック名簿で1位の優遇を受けることが前提になります。党本部に働きかけて、最終決定しました。 過去の選挙を振り返ると、当選を4回果たすまでは揺るがない支持をいただくために無我夢中でした。新しい区割りでの選挙は、若手時代と同様のチャレンジ精神が必要だと考えています。試練ではありますが、変化を新しいエネルギーに変えようと、原点に立ち返り精力的に選挙区内を回っています。新たな出会いの中に政治家の使命と喜びを日々見つけています」 ――日本維新の会が選挙の度に勢いを増していますが、野党第一党の座にある立憲民主党の現状をどのように捉えていますか。 「私は選挙に関しては、所属する党を前面に出して戦ったことはこれまで一度たりともありません。玄葉光一郎という政治家個人の力を訴えてきた姿勢は今後も変わりません。それで有権者を引き付けられなかったら、政治家としての魅力不足だと捉えています。 党の現状については、私は代表ではないので、責任を持って言える立場にありません。ただ個人的には、立憲民主、維新、国民民主による3派連合が望ましいと思っています。3派連合ができたら、いくつかの共通の公約を掲げ、選挙区調整をして、さらには共通の総理候補を立てて政権を狙う。もっとも、現状はそれができる段階ではありませんが。 維新や国民民主と現政権に代わる共通の総理候補を立てるまでの信頼関係を築けなかったことは、野党第一党の責任と捉えています。ただ、やはり政治に緊張感をもたらすために、野党は可能な限り協力すべきです」 ――5月8日から新型コロナウイルスの感染症法の位置付けが2類相当から5類に引き下げられました。今後求められる対策についてうかがいます。 「現政権に足りないのは、アフターコロナについて、地方に活力を与える分散型国土を目指し、人口減少抑止につなげようとする視点です。コロナ禍で一時、東京は転出超過になりました。私はコロナ禍を機に分散型国土を実現するため、思い切った手を打ってはどうかと予算委員会で岸田文雄総理に提案しました。例えば、私立大学の一学部でもいいので、地方に移してもらう。そのために協力してくれる私学には助成金を大幅に優遇する。また5G、6Gなどの次世代通信システムを東京から整備するのではなく、地方から整備するといった政策です。 しかし、コロナ禍が収束に向かうと、再び地方から都市への転入超過に戻ってしまいました。第二次安倍政権以降、東京一極集中はますます進んでいるように思います。自公政権は分散型国土を本気でつくる気がない。 少子化対策は、手当と同時に分散型国土の整備を進めなければ効果が得られません。 賃金が正規雇用よりも低い非正規雇用の割合が増え、結婚・出産に踏み切れない要因になっています。地方と都市の格差が広がり、若年層の所得が伸びていない点を直視しないと、少子化問題は克服できないと考えています」 ――東京電力福島第一原発でトリチウムを含んだ処理水の海洋放出が始まろうとしていますが、依然として安全性や風評被害を懸念する声が後を絶ちません。本県選出代議士として海洋放出の是非ならびに風評被害問題をどう解決すべきと考えますか。 「技術的には大丈夫なのだろうと信じたい。ただ『燃料デブリに触れた水』を海に流すのは歴史上初めてのことです。100%安心ではないという方の気持ちは分かります。 この間、私は二つのことを求めてきました。一つは、トリチウムの分離技術を最大限追求すること。もう一つは、海洋放出を福島県だけに押し付けるのではなく、県外でもタンク1杯分でいいから引き受けてもらってはどうか、と。残念ながら、それらに対する努力の形跡は全く見られていません。 科学的に大丈夫と示せても、残念ながら、近隣の韓国、中国だけではなくアメリカも含めた7割以上の人が『処理水が海に流れたら福島の農産品は買わない』というアンケート結果があります。他国から視察に来てもらい、丁寧に説明する必要があります。海外で安心して県産農産品を買ってもらうには、並大抵の努力では足りないと思います」 ――最後に、有権者にメッセージをお願いします。 「区割りの変化を新しいエネルギーに変えていきます。これまでお世話になった選挙区が引き裂かれてしまったことは大きな試練ですが、いまはチャレンジの機会と捉え直しています。有権者の皆さん、特に郡山の皆さんとは新たな出会いを通じ、しっかりとした絆を築けるようにしていきたい。お世話になった方々への恩を忘れず、多くの皆さんのためにしっかり汗をかき、必ず期待に応えていきたいと思っています」

  • 【福島県酒造組合】渡部謙一会長インタビュー

    【福島県酒造組合】渡部謙一会長インタビュー

     わたなべ・けんいち 1965年、南会津町生まれ。東京農業大学農学部卒。開当男山酒造醸造元。福島県酒造組合副会長を経て、2022年5月より現職。  ――会長に就任され1年が経過しました。この間を振り返って。 「昨年5月の総会で会長に就任しました。しばらくは新型コロナウイルス感染症の影響により活動が制約されましたが、同年9月以降は3年ぶりに東京・JR新橋駅西口広場(SL広場)で『ふくしまの酒まつり』が開催されるなど、徐々にではありますが、既存の事業が再開されました。特に今年5月の連休明けからは会議、総会、各種打ち合わせなどが本格的に復活しており、現在はフル稼働で走り回っている状況です」 ――2022酒造年度の日本酒の出来栄えを競う全国新酒鑑評会で、本県は金賞受賞数14銘柄を獲得し、惜しくも10回連続日本一とはなりませんでしたが、「福島県産の日本酒」は依然として高いレベルにあることを示しました。 「『日本一』というのはあくまで金賞を受賞した蔵数の話です。それぞれの蔵元は、ひと冬、一生懸命寝る間も惜しんで酒造りに励み、手間暇かけた日本酒を出品してきました。また来年に向け、技術の向上と出品酒の研究を重ねながら酒造りに挑む――というだけの話かと思います。全国どの蔵も金賞を狙って自慢の銘柄を出品している中でのこの結果であり、『日本一』は福島県という括りの中での話に過ぎません。全国新酒鑑評会の結果を踏まえ、反省を生かしながら粛々と酒造りに励み、より良い品質の向上を目指すことが重要です」 ――昨年度の出荷状況についてうかがいます。 「コロナ禍が収束を見ない中、出荷量は前年並み程度で推移しており、コロナ禍前の水準には回復していません。お酒を飲むスタイルや飲むシーンが変化した影響も相まって、これから先も出荷量の回復には時間がかかると思っています。 逆に言うと、新しい消費動向をいかに見極められるかが今後の課題と認識しています。全国各地に酒蔵があり、さまざまな酒類が流通している中で、本県の日本酒を手に取っていただくにはどうすべきか、ということについて組合員で熟慮を重ねながら事業展開していく考えです」 ――2023年度の事業展開について。 「まず、従来通り、清酒アカデミーの運営や高品質清酒研究会での議論など、それぞれの蔵による品質向上、技術力向上について組合がいかにバックアップできるかが重要です。また、『夢の香』、『福乃香』の2種類の本県産好適米の安定生産・安定供給に寄与すべく、生産者と蔵元の橋渡し役を担うのも組合の大切な役割なので、しっかり取り組む考えです」 ――今後の抱負について。 「この間、コロナ禍の規制が緩和される中、4年ぶりに開催されるイベントもありますので、組合の総力を結集して足を運んでくださるお客様に感謝しながら、本県の日本酒の品質の良さをPRしていきたいと思います」

  • 【福島県警備業協会】前田泰彦会長インタビュー

    【福島県警備業協会】前田泰彦会長インタビュー

     まえだ・やすひこ 1959年生まれ。東海大卒。綜合警備保障㈱第八地域本部長などを歴任し、2018年5月からALSOK福島㈱社長。同月、福島県警備業協会長に就任した。  ――新型コロナウイルスの影響によりイベントの縮小や中止が続いてきましたが、5月からは季節性インフルエンザと同様の5類に分類されました。現在の会員事業所の状況はいかがでしょうか。 「さまざまなイベントが復活してきたため、仕事が徐々に増えてきております。ありがたいことです。須賀川市の釈迦堂川花火大会は4年ぶりに通常開催となり、雑踏警備業務などの仕事が見込まれています。課題として、イベント警備の人手不足が深刻化しており、年々予算も厳しくなってきています。イベントの安全性を確保するためには適正な人数や警備単価が不可欠です。主催者である行政の財政状況が大変だということは重々承知していますが、なんとか工夫を凝らして予算を確保していただき、警備単価の適正化に努めていただければと思っています」 ――以前から適正料金確保と経営基盤強化を訴えられています。岸田政権でも賃上げを最重要課題に挙げていますが、今後の見通しは。 「適正料金確保の重要性については、国や関係各所にご理解いただきつつあると感じています。国土交通省は一般管理経費を含めた労務単価として、資格ありで2万4600円が妥当だと示しています。ただ公共事業では、警備業は建設業者の下請けとなっている現状があります。労務単価に理解を示していただくために、協会も指導していきますが、会員各社が丁寧に説明していくことが重要だと思っています。 引き続き安売りせず、ダンピング行為を排除し、公正な競争による適正料金の確保、経営基盤の強化を働きかけていきます」 ――本年度の重点目標について。 「①警備員の労働時間・健康の管理による『業界全体の健全化』、②研修会実施による『教育事業』、③機械導入によるデジタル化や人手不足の解消・働き方改革、④地域安全の社会貢献活動、⑤警備業務の適正化、⑥労働災害防止、⑦関係省庁、関係機関、団体などに対しての要望活動、⑧表彰制度、⑨広報活動です。労働災害防止については、今年初めて警備業務で亡くなられた方々の慰霊祭を行いました。1人も犠牲者が出ないよう努めることが大前提です。事故が起こらないように労災防止支援を徹底します。広報活動については、大相撲で大活躍している福島市出身の力士・大波三兄弟が8月の福島場所で〝凱旋〟するので、協会として協賛させていただき、業界全体をPRしていきたいと考えています」 ――今後の抱負を。 「適正料金の交渉や安全確保のための取り組みを引き続き行っていきます。会員事業所には警備業の役割と責任を自覚していただき、警備員をしっかり育ててほしいと思っています。協会としては資格の特別講習などを実施して、業界がさらに発展できるようにバックアップしていきます」

  • 【根本匠】衆議院議員インタビュー

    【根本匠】衆議院議員インタビュー

     ねもと・たくみ 1951年生まれ。安積高、東大経済学部卒業後、建設省入省。衆院議員当選後、厚生労働大臣、復興大臣などを歴任。現在衆院予算委員長を務める。  岸田文雄政権発足から約1年半を迎えた。岸田首相の盟友で宏池会(岸田派)の会長代行兼事務総長を務める根本匠衆院議員(72、9期)は、政権運営をどう見るのか。防衛力強化や異次元の少子化対策への評価を聞いた。大震災・原発事故からの復興への道筋と、衆院予算委員長の職責の重さと心構えについても聞いた。  ――岸田政権発足から約1年半が経過しました。 「岸田首相の強みは、『聞く力』と、判断力、そして決断力です。いろいろな意見に耳を傾けて課題を整理し、最後は迅速に決断します。新型コロナ対策は迅速で的確でしたし、ロシアによるウクライナ侵略に伴う資材価格、物価高騰に対しては、対策を切れ目なく行っています。ロシアによるウクライナ侵略は明々白々な国際法違反の暴挙です。ロシアに対してG7と足並みをそろえて経済制裁を行ってきました。ウクライナ電撃訪問は、首相の覚悟を示し、国際社会に向けて大きなメッセージになりました」 ――岸田政権が進める防衛力強化と異次元の子育て支援をどう見ますか。 「『ウクライナは明日の東アジア』との危機感を持って見るべきです。国民の命とくらしを守り抜くことは政治の使命であり、防衛力強化はわが国の未来にとって不可欠です。反撃能力を持つのはあくまで抑止力を高めるためで、防衛のために弾薬を十分に確保して継戦能力も高めねばなりません。サイバー攻撃や宇宙空間からの攻撃など新たな脅威もあります。自衛隊が拠点とする建物を耐震化していく必要もあります。 『次元の異なる少子化対策』については、経済的支援の強化、保育サービスの拡充、働き方改革が欠かせません。特に重要なのは、男性が育児休業を取得し、子育てに深く関わることです。企業もワークライフバランスを整えて応援する雰囲気になっています。子育てを社会全体で支えていくんだという意識を共有して財源も確保していく必要があります」  ――衆院予算委員長として、議事を取り仕切ってきました。 「国会の一番大事な仕事は予算を決めることです。内閣が作成した予算案を国民から選ばれた議員たちが議論し承認して初めて全ての政策が動きだします。予算委員会は、与野党ともに全力を傾注する、〝国会の主戦場〟であり〝花形委員会〟とも言われます。野党は首相や大臣の答弁が不十分だと抗議し、審議を止めろと言って議事が滞る。これをどうさばいていくかが予算委員長の職責です。全ての予算案に目を通すのはもちろん、関連法案も事前に頭の中で整理しています。 予算委員長は野党に7、与党に3の軸足を置いてさばきます。一方で盟友の岸田首相を支えなければならないとの心づもりもあります。源義経を支える弁慶のような心情です。予算委員長は受け身ではいけません。激しい議論をまとめるため、最後は自分がさばくんだという気迫と気概が必要です」 ――震災・原発事故から12年を迎えました。 「第2次安倍内閣で復興大臣を務めました。安倍さんは『全閣僚は被災地復興の役割がある、復興大臣はその司令塔』と位置付けました。自ら考えて、復興大臣が関係省庁を直接指揮できる仕組み『タスクフォース』を創りました。私は『匠フォース』のつもりですが、各省庁の縦割りを乗り越え引っ張っていくのが私の仕事でした。 この仕組みを生かして津波被災地の高台移転等では、用地取得の迅速化などを実現しました。ただし事業規模が大きく市町村だけでは対応できないので、独立行政法人都市再生機構(UR)をフル活用しました。URには長年培ってきたまちづくりのノウハウがあります。一例を挙げると、高台移転地整備のために山を削って出た土を運んで津波被災地のかさ上げに使いました。1日200台のダンプをもってしても6年かかると言われていましたが、URは長さ100㍍以上のベルトコンベアを用いて1年半で達成、工期を大幅に短縮できたのです。 URは民主党政権時、その存在意義が問われ、冬の時代でした。事業仕分けで『宅地開発等の開発事業は廃止』とされていました。URがなかったら、復興は大幅に遅れていました。これだけでも、政権奪還の意味が大きかったことがお分かりいただけるでしょう。 復興大臣時代、新たな施策として町外コミュニティーの核となる復興公営住宅整備など、特に子どもの屋内外の遊び場をつくる『子ども元気復活交付金』の創設を主導しました。初めに制度ができれば、その後も予算付けをして事業が動き続けます。あの時、動かすための仕組みを創ったのは大きいと思います。大臣主導で様々なアイデアを練り上げて実現し、やりがいがありました。 復興大臣を辞めてだいぶ経ちますが、今も復興政策に深く関わっています。復興加速化本部プロジェクトチーム座長として、『里山・広葉樹林再生プロジェクト』を林野庁と徹底的に議論して昨年創設しました。しいたけ原木としての利用が停滞している広葉樹林の計画的な伐採と更新を進めるもので、10年間に5000㌶を対象とする予定です。里山の除染とは、単に土壌を剥ぐのではなく里山を構成する広葉樹林を伐採し、新しく芽を出すよう促すことが本質です。誰も気づかなかった。初めて私が気づいたのです。 萌芽更新により里山が再生され、自然循環が蘇る。原発事故で滞った伐採を進め、里山にも復興を広げていきます」 ――東京電力は福島第一原発敷地内で溜まり続けるALPS処理水を春から夏ごろにかけて海洋放出する予定です。 「廃炉作業を促進するためには処理水を適切に処理するのが大前提です。トリチウムが出す放射線は極めて弱く、健康に影響を及ぼさないというのが科学的知見です。海洋放出する際にはトリチウム濃度を世界保健機関の飲料水基準値の7分の1程度にする計画で、国内外の原発でもトリチウム水は海に流しています。国際原子力機関(IAEA)など第三者機関の監視で安全・安心を担保することが必要です。風評被害については、対策の基金を設けており、迅速に対処します。万全の体制を整え国内外の理解を得る努力を続けていくしかありません」 ――衆院小選挙区の区割り改定を受け、地盤が新2区に再編されました。次期衆院選にはどのような戦略で臨みますか。 「これまでの選挙区に2市9町村が加わります。票数で見ると自民党が弱かった場所です。選挙活動に奇策はありません。やるべきことをやるだけです。私は政策を考えるのが好きで政治家になりました。課題があると、解決にはどのような制度が必要かと担当省庁と議論を交わして政策を実践し、実現してきました。新しい選挙区を回り、各地域の課題を発見すると『課題解決型政治家』としてのやる気がみなぎります。これまでと変わらず、地元の皆様の声に耳を傾けて政策に生かしていきたいです。これまでも、そしてこれからも、福島から国を動かす。選挙の結果は自ずと付いてくるはずです」 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 【菅家一郎】衆議院議員インタビュー

    【菅家一郎】衆議院議員インタビュー

     かんけ・いちろう 1955年生まれ。会津高校、早稲田大学社会科学部卒。会津若松市議、福島県議、会津若松市長を経て2012年の衆院選で初当選。環境大臣政務官、復興副大臣などを歴任。  衆議院小選挙区の区割り改定で、本県は5議席から4議席に減った。会津地方と県南地方は新3区に再編され、自民党の新3区支部長には会津地方を地盤とする菅家一郎衆院議員(67、4期、比例東北)が就任。地元の範囲が広がり、有権者の声をどのように受け止め国政に届けていくのか、菅家氏に地方創生の在り方を聞いた。  ――衆議院小選挙区の区割り改定に伴う候補者調整の末、本県新3区の支部長に就任しました。経緯と選挙戦略についてうかがいます。 「本県は五つの選挙区から四つの選挙区に1議席減る結果となりました。旧第4選挙区は新たに県南を含めた第3選挙区に区割りが決まり、会津地方を中心に取り組んできた私と県南を中心に活動してきた上杉謙太郎先生との調整が党本部で慎重に検討されてきた経緯があります。 私は会津若松市長時代には大震災・原発事故が起こり、被災者の受け入れ、衆議院議員になってからはJR只見線の復旧、会津縦貫北道路、甲子道路の全線開通など地元の要望の実現に一つ一つ取り組んできました。その実績を評価していただいたのだと捉えています。今までの選挙結果は僅差で対立候補に力及ばなかったことは重く受け止めていますが、党本部が総合的に判断して、私を新3区の支部長として決定した責任を果たしていこうと思います。 上杉先生は、旧第3選挙区では地盤の県南地方で毎回票を積み上げ、前回衆院選では対立候補である玄葉光一郎氏を上回りました。有権者からの支持を党本部が評価し、比例代表の支部長として、名簿の上位に位置付けしました。新3区の市町村をまとめると、県内では最も広い面積です。上杉先生のお力をいただいて、私も上杉先生のために働いて連携を図っていきます。 地元の範囲が県内最大となりますが、有権者の皆様の声を一つ一つ受け止め、地方政治の最前線にいる市町村長と市町村議、県会議員のご助言も得て、それを与党議員として国政に届ければ、有権者からの応援という結果は付いてくると思います」 ――県南地方を地盤とする上杉謙太郎代議士は県衆院比例区支部長として比例東北で優遇措置となる運びですが、今後どのような協力関係を築いていきますか。 「自民党所属の県議の先生方は、会津地方には6人、県南地方には3人います。選挙区の面積は広くなりますが、上杉先生、9人の県議などあらゆる政治家とこれまで以上に密接な関係が築けます。一緒に選挙に臨めるのは心強いです。 次の選挙に関しては、私と上杉先生が積み上げてきた与党議員の経験を生かせるように2人とも議席を維持することが福島県のためになると思います。私自身に言い聞かせているのですが、『お任せ』ではだめだと。私は県南で上杉先生のお力を借りながら自分なりのネットワークを構築するのはもちろん、上杉先生には私の会津の知り合いを積極的に紹介し、つないでいきます。県内の声を政治に生かすという共通目標のために、小選挙区、比例区ともに票を上積みしていきたいです」 ――5月8日から新型コロナウイルス感染症の感染症法の位置付けが5類相当に引き下げられます。政府の対応の評価並びに、「ウィズコロナ」を見据えた経済対策についてどう取り組むべきですか。 「ワクチン接種をはじめ感染対策が浸透し、感染者は減少傾向です。現状に合うように法律を見直すのは必要だと思います。基礎疾患を抱える方、高齢の方が感染しないように医療機関や福祉施設での感染拡大を防いだ上で、感染症法の位置付けを引き下げるのは妥当だと考えます。 コロナ禍で飲食店、観光が大きなダメージを受け、それが長引きました。国も補償などで対応してきました。この間、感染者数は減少傾向が続いていましたが、感染拡大からの3年間は『日常生活を取り戻す』という気分に国民はなれなかったと思います。5類への引き下げで、職場の歓送迎会、地域住民の方々が懇親会などを臆することなく開けるようになったのは大きいです。自然と、地域経済が活性化へ向けて息を吹き返していくのではないでしょうか。 会津地方は県内でも有数の観光地です。海外からのインバウンドを増やし、交流人口を増やしていくことが、人口減少時代の地方創生の形だと思います。コロナの5類引き下げに合うタイミングで、只見線は昨年の10月に全線再開通し、観光路線として大いに賑わっています。 県南については、国道289号の甲子トンネルは首都圏から県への玄関口である白河市、西郷村と大内宿がある下郷町をつなぎます。県外からの観光客は戻りつつあり、観光に関しては県南と会津地方が結びついて相乗効果が見込めるのではないでしょうか」 ――自身が代表を務める「首都直下型地震対策バックヤード構想推進研究会」におけるこれまでの活動と今後の展開についてうかがいます。 「東京への人口・政府機能の過度な集中と、今後30年間で起きる可能性が高い首都直下型地震への対応を考えた政策です。国会の委員会が、首都圏が災害や有事で打撃を受けた時に代わりに機能を担う場、つまり『バックヤード』の最有力候補地の一つに挙げたのが福島県でした。 緊急事態下の首都圏を支えるには、安全で高速な交通網が整備されていなければなりません。バックヤードの一つである本県では、東北新幹線と上越新幹線のミッシングリンク(分断された路線)が磐越西線です。ここが高速鉄道でつながれば、環状新幹線となり、平時は東京から地方への分散の受け皿、緊急時は物資の供給や避難者の受け入れに役立ちます。研究会の活動が実り、国会で『地域公共交通の活性化及び再生に関する法律』の改正につながりました。 構想で特に重要なのが政府の司令塔機能の移転です。これはまだ明確に示されていないので、今夏には国土交通省の国土形成計画に取りまとめる予定です。政府機能の分散は政府自体がその方針を示すべきではないのか、そのような思いで私たち研究会は提言をまとめ、昨年12月に国土交通大臣と国土強靱化担当大臣に要望しました。我々研究会の意見を政策に生かせるようにさらに継続して活動していきます」 ――有権者へのメッセージをお願いします。 「新3区の支部長に就任させていただいたことに深く感謝申し上げます。厳しい選挙にもかかわらず応援していただいたおかげだと思っています。県南、会津地方と広い地域にまたがる選挙区の支部長ですが、その重みをひしひしと感じています。 全国で人口減少が進んでいますが、会津地方は特に影響が著しい地域です。高齢の方々が手厚い支援で健やかに暮らせるようにするのはもちろん、若い人が居心地の良い故郷にもう1回戻って、そこで安心して安全に仕事や子育てができるような環境を整えるよう尽力していきたいです。県南地方は、首都圏からの玄関口に当たり、地方分散の受け皿として重要です。両地方で、若い人たちが夢と希望を持って住み続けられるよう全力で取り組んでいきます」 【菅家一郎】衆議院議員のホームページ 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 【いわき市】内田広之市長インタビュー

    【いわき市】内田広之市長インタビュー

    うちだ・ひろゆき 1972年3月生まれ。東北大教育学部卒。東大大学院教育学研究科修了。文部科学省教育改革推進室長、福島大理事兼事務局長などを歴任し、2021年9月の市長選で初当選。  ――市長就任から1年半が経過しました。この間を振り返って。 「就任当時、市が抱えているさまざまな課題について、『見える化』が図られておらず、青写真も示されていない現状にありました。そのため、昨年1年かけて議論を重ねながら『いわき版骨太の方針』を策定し、今後のビジョンをお示ししました。 教育・子育て、農林水産業の担い手不足、医師不足、産業振興、若者の雇用確保、公共交通整備などについて、骨格をつくり見通しを示しました。さらに各地区の区長を中心とした話し合いの場に足を運び、課題や取り組み状況を共有しました」 ――優先的に取り組みたい課題は。 「特に重視しているのが、若者の人口流出です。高校卒業後、進学・就職で約6割が首都圏などに流出します。人口減少につなげないためには、地元に帰りたいと思ってもらえる環境づくりが大事であり、産業振興や若者の雇用確保を生み出すことが大事です。本市は製造品出荷額等が東北で1位の都市であり、ものづくりや素材産業の分野で、いかに若者にとって魅力的な雇用を生み出せるかがポイントになると思います。 4月1日、浪江町に福島国際研究教育機構(エフレイ)が開設されました。これらを見据えて、本市では課長級のエフレイ連携企画官を2人配置しました。また、4月15日には市役所内郷支所にエフレイの出張所が開設され、市内で設立記念シンポジウムが開催されました。世界トップレベルの研究者が集まる同機構と連携し、市内の既存産業と研究が融合していくことで、専門性が高い分野の若者に市内で働いていただけることを期待しています。若い力が活発になることが真の復興であり、今年はスタートの年だと思っています」 ――新型コロナウイルスの5類移行に伴い、観光振興をはじめコロナ禍で制限されてきた事業に着手できることと思います。 「コロナ禍前の市内入り込み客数は約800万人でしたが、2022年は約540万人でした。今後はウィズコロナの時代になり、一時的に感染者が増加しても、行動制限・イベント自粛を呼び掛けるのではなく、各自が対策しながら開催していくことになると思います。 本市では昨年から花火大会、いわき七夕まつり、いわきサンシャインマラソンなどのイベントを順次復活しており、海水浴場もオープンしました。今年はそのほかのイベントも本格的に再開する予定で、市外から訪れる人をしっかりおもてなししていきたいと考えています。 入り込み客数増加という意味では、サッカー・いわきFCのJ2昇格により、同チームや対戦チームのサポーターが多く足を運ぶようになったことも大きいです。先日、JR磐越東線のいわき―小野新町駅間が赤字になっているという発表がありましたが、いわきFCの試合などと連携し利用を促すのも一つの方法だと思います。沿岸部にサイクリングロード『いわき七浜街道』を整備しているので、自転車関連の合宿なども積極的に誘致したいですね」  ――市では健康ポータルサイトを設立し、健康指標改善に取り組んでいますが、今後の展望は。 「65歳の人が元気で自立して暮らせる年数を算出した『お達者度』を県内13市で比較すると、本市は男女とも県内最下位です。特定健康診断の受診率もワーストで心臓・脳血管疾患による死亡割合は他市と比べて高い。健診を怠り、病気が悪化して治療が遅れる傾向が読み取れます。塩分摂取率は全国平均より高く、生活習慣も健康指標の低さに影響していると思われます。 子どものうちからの啓発が必要だと考え、現在、市内のモデル校の中学2年生を対象とした事業を実施しています。実際に早期指導は改善効果があることが分かったので、今後対象校を拡大し、学校を通して家庭に健康意識が広まることを期待しています。また、高齢者向けにフレイル(加齢により心身が衰えた状態)の疑いがないか検査を実施したり、スポーツイベントで血液検査や血圧測定を行ったり、シルバーリハビリ体操を普及させることで、介護予防の取り組みも広めています。加えていわき市医師会、いわき市病院協議会と連携協定を締結し、健康寿命を延ばす取り組みも進めています」 ――近年、激甚化する自然災害への対策が不可欠となっています。 「さまざまな対策を講じていますが、その中から2つ紹介します。 1つは要支援者の把握です。東日本大震災や令和元年東日本台風では、思うように動けない要支援者が逃げ遅れて亡くなったケースが確認されました。そこで個別に避難計画を策定することを決め、特に、災害リスクが高い地域の要支援者からヒアリング調査を実施し、災害時の避難体制の整備を進めています。次の災害時は『逃げ遅れゼロ』を実現したいと思います。 もう一つは防災士の活用です。本市には防災士の資格を持つ人が県内最多となる900人以上います。市内には町内会が529団体あり、403団体の自主防災組織が立ち上げられていますが、人口減少や高齢化の進展の中、訓練などの活動状況に差が生じてきているようです。そこで、防災士に災害時における地域のリーダーとして活躍してもらおうと考え、昨年、全国初となる『登録防災士』制度を作りました。 令和元年東日本台風で越水した夏井川や好間川は川底の掘削がだいぶ進んでおり、同じ規模の雨が降っても水害は防げそうですが、自然災害の甚大化が進んでいるので、防災対策が重要になると考えています」 ――国・東京電力は福島第一原発敷地内に溜まるALPS処理水の海洋放出を春から夏にかけて実施する方針です。沿岸部の自治体としてどのように受け止めていますか。 「国・東電は住民向けの説明会を開いたり、福島県産品のPRイベントを開催しており、アンケートなどを見る限り、国民への理解も少しずつ広まっているように思います。ただ、まだ合意が整う途上にあります。国・東電は漁業関係者の皆さんに対し『関係者の理解なしにいかなる処分も行わない』と約束しているので、まずは理解醸成をしっかりやってほしい。そのためには、対話を重ねるしかないのではないでしょうか」 ――今年度の重点事業について。 「特に強調しておきたいのが、子育て関係の施策です。国の方で異次元の子育て支援策を掲げているので、本市でも連動して手厚くしていきたい。子育て世帯の支援としては、部活動などで全国大会などに出場する選手への支援メニューを充実したり、インフルエンザの予防接種費用の助成を実施しました。学校給食の無償化についても全国で議論になっているので、市長会を通じて国へ伝えていきたいと思います」 いわき市のホームページ 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 【矢祭町】佐川正一郎町長インタビュー

    【矢祭町】佐川正一郎町長インタビュー

    さがわ・しょういちろう 1951年11月生まれ。茨城県立大子第一高校、富士短大卒。家業の㈱佐川商店を経営。矢祭町議1期を経て、2019年4月の町長選で初当選。現在2期目。  ――4月の町長選で無投票再選されました。 「1期4年間の役割の重要さをあらためて実感しましたし、1期目の中での積み重ねがあったからこそ、今回、無投票でまた町政の舵取りを担う立場に立てたと考えています。自分の考えを住民の皆様に伝えるという意味では選挙態勢を整えるのは不可欠ですが、選挙のための政治ではなく、町民本位の行政でなければならないので、これからも町民を思い、共創のまちづくりを進めていきます」 ――今年度の重点事業について。 「笑顔あふれる共創のまちづくりをコンセプトに、町民と地域行政が一体となって魅力あるまちづくりを目指す、というのが2期目の大きな目標です。それを実現するため、6月からは4年ぶりとなる地域懇談会を実施するほか、各地域の住民の皆様にもまちづくりに参加できるような場を提供し、皆様の要望や提言を真摯に受け止めて町政に反映し、共同参加型のまちづくりに取り組んでいきます。 また、町内の空き家対策も重要課題で、3月末には㈱AGE technologiesと連携協定を結び、空き家の適正管理・活用に努めているほか、町内に発足したNPO団体に空き家バンク制度を有効活用してもらい、地域の課題に密着した施策を打ち出していく考えです」 ――2期目の抱負について。 「本町を取り巻く課題は様々あり、人口減に対してはどうしてもマイナスに捉えられてしまいますが、教育面は子ども一人ひとりに対してより多くのリソースを割くことが可能になります。マイナス面ばかりに目を向けるのではなく、人口減だからこそできる施策も開拓していきたいと考えています。また、本町を含めた県南地域の交流人口・関係人口創出という意味では、行政間の連携も必要不可欠です。加えて本町は茨城県とも隣接しており、関東圏との玄関口に当たるので、水郡線の活性化や久慈川の防災、国道118号のインフラ整備など、茨城県との交流深化にも努めていきます。 本町にゆかりのある偉人として吉岡艮太夫という人物がおり、日米修好通商条約批准の際に若き日の勝海舟やジョン万次郎、福沢諭吉らと軍艦・咸臨丸に乗り込んで日本初の太平洋横断任務に就き、帰国後は幕臣として徳川家に忠義を尽くしました。その生涯や足跡を周知していきたいと考えています。 ほかにも道の駅構想の具体化や駅前開発、公民館改修といったハード面の整備、町内事業者の担い手不足解消や空き店舗解消といったソフト面の問題解決に尽力し、町民の皆様の期待に応えていきたいと思っています」

  • 【三島町】矢澤源成町長インタビュー

    【三島町】矢澤源成町長インタビュー

     やざわ・げんせい 1951年生まれ。東洋大学経済学部卒。76年に三島町職員となり、生涯学習課長、政策担当課長などを歴任。町教育長を経て、2015年の町長選で初当選。今年4月の町長選で3選を果たした。  ――4月23日投票の三島町長選では、激戦を制し3選を果たしました。選挙戦を振り返って。 「私が今まで進めてきた取り組み、2期務めてきた実績、今後の4年間を見据えた本町の方向性について、町民の皆さんに訴えたことが認められたのかな、とあらためて実感しています。町長の任に就かせていただくにあたって、国、県の動きを見ると、これからの時代は経済成長を前提とした施策ではなく、ある程度成熟社会を踏まえた方向性に転換していると実感します。本町でも、医療・介護・福祉・保健・環境・自然保護・再生という言葉をキーワードとする地域社会の創造が私の使命であると痛感しています」 ――2期8年の総括を。 「この間、特に注力してきた分野が医療・福祉です。地域住民の生活を守るため、地域包括支援センターや在宅医療の充実に努めてきました。また、本町をはじめ、柳津町、金山町、昭和村の医療圏を構成する4町村での連携のもと、県に対し、老朽化が著しい県立宮下病院の改善策について要望を重ねてきました。そうした中で、町民運動場への移転・新築が決定し、『有床診療所』として2027年度に開院の予定です。これに伴い、在宅医療センターも新設されるなど、県内でも特に過疎化や高齢化率が高い特性に合わせた地域医療の拡充が期待されます。 今後も構成自治体同士がしっかりとスクラムを組みながら同病院と一体となり、過疎地域における医療拡充を図っていく必要があります。医療・介護・保健・福祉が集約される地域包括的役割を担う同センターは、地域住民が安心・安全に暮らせる心のよりどころと言っても過言ではありません。 一方、同病院整備を足掛かりに道路整備にもつなげていきたいと考えます。現在、財政難や公共事業の削減も相まって本町の雇用を下支えする建設業は厳しい状況です。今後の建設予算の獲得には相応の合理性が一層問われるものと考えます。同病院移転を契機に周辺の道路のみならず、医療圏内の交通を円滑にするための道路整備が必要となるので、今後も関係機関に対し積極的に働きかけを行っていきます。そのほか、柳津町・三島町学校給食センターの整備、子育て支援策として給食費と保育料の無料化や紙おむつの支給、町営バスの減免制度創設、若者定住促進事業を展開してきました」 ――3期目で目指す町政運営の方針についてうかがいます。 「私の政治哲学は〝本町の守るべきものはしっかり守り、変えるべきものはしっかり変えていく〟であり、端的に言えば『温故知新』と『不易流行』に尽きます。それらに基づいた町政運営を展開していきます。 1974(昭和49)年以降、本町では、5つの運動を展開してきた経緯があります。具体的には、①都市と農村の交流を通した地域活性化を狙いとする『ふるさと運動』、②伝統行事の数々を集落の誇りとして守り連帯意識を醸成する『1地区1プライド運動』、③伝統的なモノづくりの技と自然や地域資源を現代生活に生かしながら交流人口創出を図る『生活工芸運動』、④県立宮下病院の拡充や健康寿命の延伸を狙いとする『健康づくり運動』、⑤健康づくりと農業の連携・融合を目指した『有機農業運動』――であり、まちづくりの根幹になっています。地域をどのように活性化するのか、そのためには地域の資源をどう活用するのか、引き続き『温故知新』と『不易流行』の精神で取り組む考えです」 広域連携で活性化図る  ――周辺自治体との広域連携の重要性について訴えてきました。 「周辺自治体を巻き込んだ広域連携のメリットは、各々の自治体における短所を互いに補い合える点のみならず、各自治体が持つ長所を認め合いながら相乗効果を発揮して『点から面』への地域振興を図っていける点だと考えています。そのためにも周辺各自治体と『Win―Win(ウィンウィン)』の関係を構築していきたいと強く思います。 現在、本町の人口は1400人で、人口減少と少子高齢化が加速している状況にあります。この問題に対処するためにも広域連携は大変重要になっていきますし、本町を含む過疎地を抱える山村の自治体が豊かさを維持するための至上命題と言えます。現時点では、先述した宮下病院を中核とする4町村の医療圏構想などで具現化しています。 柳津町、昭和村との連携による『特定地域づくり』の活用も重要です。教育や文化も含めた『総合的企業』という観点で、地域の文化の香りを生かした広域連携を展開し、活性化を図っていく考えです」 ――3期目の重点事業について。 「1つは、『結婚・出産・子育てしやすい環境の整備』です。結婚祝い金制度の充実をはじめ、世代間の垣根を超えたさまざまな交流、きめ細かな子育て支援策、保育所や学童保育の充実を図っていく考えです。 2つは、『地域資源を生かした仕事を創る』です。環境に配慮した地域産業創生を目指し、4年間にわたり、環境省からご指導いただきながら取り組んできました。この間、『三島町における木質バイオマス活用を契機とした地域循環共生圏構築事業』、『三島町ゼロカーボンビジョン』など、環境省と連携しながら協定を締結し、環境問題についていろいろ議論を重ねてきました。 再生可能エネルギーにも注目しています。森林を生かした木質バイオマス発電、水を活用する小水力発電を積極的に展開して『産業化』を図り、循環型地域経済社会の創造を目指していきます。また、桐や編み組、温泉、会津地鶏、カスミソウ、健康野菜、山菜など魅力ある地域資源をさらに磨き上げ、地場産業の振興による雇用の拡大、農・商・工連携による地域で稼いだお金を地域に還元する地域経済循環の構造を一層盤石にする考えです。 3つは、『交流人口から関係人口・定住人口につながる流れをつくる』です。『サイノカミ』をはじめ、雛流し、虫供養など本町独自の地域文化をはじめ、自然との共有による豊かな暮らしなど、本町の魅力を積極的に発信し、交流人口の拡大はもちろん、関係人口の創出、ひいては定住人口の向上に努めていきたいと考えます。併せて、町内の空き家等の利活用にも注力していきます。 結びに、『生涯活き活きと過ごせる魅力ある地域を創る』です。『みしま健康ポイント事業』、有機農業などの健康づくりをはじめ、生涯学習の充実、町内集落における民俗文化の魅力発信による元気なまちづくりに向け鋭意努めていきます。そのほか、会津地鶏加工場の建設をはじめ、ガソリンスタンドや通信情報施設の整備にも着手します」 三島町のホームページ

  • 【川内村】遠藤雄幸村長インタビュー

    【川内村】遠藤雄幸村長インタビュー

    えんどう・ゆうこう 1955年1月生まれ。原町高、福島大教育学部卒。㈲わたや社長。川内村議を経て、2004年の村長選で初当選。20年4月の村長選で5選を果たした。  ――新型コロナウイルスの位置づけが5類に引き下げられました。 「5類引き下げに伴い対策本部を解散しましたが、今後感染拡大が続いた時には再度立ち上げるなど柔軟に対応していきます。今後の感染状況を見ながら必要に応じた支援をしていきたいと思います。 村内事業所はコロナ禍と燃料費高騰で打撃を受けており、村としても支援してきました。飲食店に関しては、各種会合が再開されるなど、少しずつ回復している実感があります。 イベントも、例年より規模を縮小するなどしてマラソン大会や秋祭りなどが再開されてきています。感染状況を見ながらですが、今年は通常通り開催したいと考えています」 ――村内産ワインの反響はいかがですか。 「昨年春に白ワイン、秋に赤ワイン、12月にスパークリングワインを販売したところ、おかげさまで在庫がなくなるほど反響をいただきました。今年は出荷量を増やし、全12銘柄、約1万3000本の出荷を見込んでいます。販売店や首都圏でPRを兼ねた即売会・試飲会を開催しており、ふるさと納税の返礼品としても検討しています。 村内には、生食用のブドウの栽培農家も約40軒あり、こちらも高評価をいただいています。ビニールハウスを活用して栽培している稲作農家もいます」 ――村といわき市小川町をつなぐ国道399号十文字工区が昨年開通しました。 「いわき方面から村内の入浴施設などを訪れるようになっています。詩人・草野心平とゆかりが深い本村と小川町の商工会が連携し、誘客事業を展開していく動きも生まれています。さらに整備中の県道36号小野富岡線が開通すれば、田村市や郡山市に行きやすくなり、あぶくま高原道路を経由することで須賀川市や白河市も生活圏になります。道路インフラが整備されることで医療、通勤・通学面での選択肢が増え、復興加速につながっていくことが期待されます」 ――今年度の重点施策について。 「役場庁舎が築50年超となり、度重なる地震で損傷していることもあって、建て替えを予定しています。有識者を交えた検討委員会で検討を重ねた結果、『新庁舎を新築することが適当』との答申をいただきました。職員や村民等の声も聞きながら、今後、基本・実施設計を策定し、庁舎建設を行っていくことになります。新たな庁舎は村の防災拠点かつシンボリックな存在にしたいですね。 庁舎建設と併せて、義務教育学校設立により廃校となった旧川内中学校の利活用も検討していきたいと考えています」 川内村のホームページ

  • 【会津美里町】杉山純一町長インタビュー

    【会津美里町】杉山純一町長インタビュー

    すぎやま・じゅんいち 1957年生まれ。東京農業大農学部卒。衆議院議員秘書を経て、2003年から県議連続5期、その間議長を務めた。2021年4月の会津美里町長選で初当選。  ――町長就任から2年が経過しました。 「就任当初から新型コロナウイルスの感染が広がり、ワクチン接種や感染防止対策はこれまで未経験だったので大変苦労しました。 選挙公約に掲げた中では、一番重要なのが人口減少対策で、若者定住支援や子育て世代の支援に注力しました。また、町長就任前から町内の温泉施設の売却・譲渡の話があり、本郷温泉湯陶里は令和2年に無事譲渡でき、新鶴温泉は、昨年あらためて公募をかけ、会津若松市の会社に売却が決定し、今年4月に『新鶴温泉んだ』として生まれ変わりました」 ――昨年末に㈱ウェルソックと地域包括連携協定を締結しました。 「本町と㈱ウェルソックの包括連携協定は、高速通信網を活用した『産業のDX』や『暮らしのDX』の推進等を図ることを目的としています。協定内容は、①町内における各種産業のスマート化実証実験の誘致促進に関すること、②ロボットやIoT等の最新技術の実装促進に関すること、③地震等の災害発生時における町民の安全確保に関すること、④町民の安全・安心の向上に寄与すること、⑤その他、高速無線通信網の活用促進、地域振興に関すること、です。主な取り組みとして、昨年度に整備を進めた町内Wi―Fi環境を活用したインターネット接続サービスを4月28日から開始しており、今後は防災や防犯など様々な分野に活用していきます」 ――本郷庁舎の改修が進められています。 「本郷庁舎は『町民が集い、自ら学び、活動を支援し、人と地域をつなぐ拠点』を基本理念に、生涯学習センター機能とともに支所機能と福祉センターの一部機能を備えた施設になります。令和6年1月の開館に向けて準備を進めており、進捗率は5月末時点で89・2%と、予定より早い進捗になっています」 ――今年度の重点事業について。 「今年度は第三次総合計画後期基本計画3年目の中間年度となり、これまでの取り組みへの評価を行いながら、職員一丸となって事業を効果的に進めていきたいと考えています。 特に重点的に進めていきたいのが教育環境の充実と人口減少対策です。教育については、ICTを活用した教育環境整備のため、デジタル教科書導入や家庭でのタブレット学習を推進するほか、9年間教育の先進的実践を進めるため、本郷地域に本町初となる義務教育学校の開校を令和6年度を目標に進めていきます。人口減少対策については、移住対策の充実を図るほか、本年度は新たに小中学校入学児、中学校卒業生徒の保護者に対して子育て支援金を交付し、経済的な支援を充実させていきます」 会津美里町のホームページ

  • 【猪苗代町】二瓶盛一町長インタビュー

     にへい・せいいち 1953年生まれ。中央大学経済学部卒。1977年に福島民報社入社。2008年に退社後、ラジオ福島専務取締役、民報印刷代表取締役、道の駅猪苗代駅長などを務める。  ――6月に行われた町長選で初当選を果たされました。選挙戦を振り返っての感想について。 「選挙に出るのは初めての経験で、3月下旬に出馬表明し、3カ月足らずの中で何もかも手探りの状態でのスタートでした。3月初めに前後公前町長が引退を表明され、紆余曲折の末、急遽私に白羽の矢が立ち、町民の方々からも今後の猪苗代町を憂える声をお寄せいただき、町の将来のためにも無投票という事態はあってはならないという思いから出馬を決意しました。 狭いコミュニィーの選挙では、地道に顔と名前を覚えてもらうことが先決なので、町内をくまなく歩いて様々な会合等に顔を出し、自己アピールすることに徹しました。3度目の出馬で知名度が高い候補者もいましたが、後援会の基盤を前後前町長から引き継ぐ形になったこともあり、役員の皆さまや支持者の方々からご指導・ご鞭撻を受けながら選挙戦に臨みました。そうしたこともあって、今回短期決戦で初当選という結果を得られたものと考えています」 ――新聞社やラジオ局勤務に加え、前職は道の駅猪苗代の駅長を務められましたが、これらの経験を行政運営にどのように反映させていく考えですか。 「新聞社とラジオ局での勤務は畑が違うので行政に反映するという点では回答が難しいところですが、新聞社勤務では記者だけでなく管理・営業職も経験し、多くの経験を積んできたと思います。道の駅の勤務においても、スピード感を意識して職務を全うできたと実感しています。ですから、町長として行政運営に携わる立場においても、スピード感と責任感を持って取り組むことを心掛けたいと思っています。緊急の案件に関しては、トップダウン型で即座に実行できるような場合も時には必要になってくると考えます。 JR猪苗代駅を起点として町内や裏磐梯方面を走る磐梯東都バスが9月末で町内から撤退することになり、10月以降の路線バスの運用について現在協議を進めているところで、空白を生まないためにもスピード感と責任感を持ったうえで判断し、利用者の方々にご不便をおかけしないよう対処していきたい」 移住・定住促進に努める ――選挙戦では人口減少対策と産業振興が争点となりました。 「かつては全国で年間100万人を越えていた出生率が現在は80万人にまで低下し、これによって地方都市の少子高齢化が進行しているのは全国どの自治体も直面している問題と言えます。とはいえ、いち町村規模の自治体で出生率の向上や子どもの人口を増加させることはかなりの困難を伴います。であれば、こうした人口減少の中で行政が取り組むべきことは、いまいる町内の子どもたちが元気で明るく過ごせる、そして高齢者の方々に『猪苗代に住んで良かった』と思っていただけるようなまちづくりを進めるべきだと考えています。 私が生まれた1950年代は町の人口が約2万6000人でしたが、現在はその半分まで減少し、当時は人口のおよそ37%が15歳未満の子どもだったのに対して現在は10%程度にまで下がっています。本町では令和3年より出産手当を支給しており、第1子が5万円、第4子までで最大20万円を支給していますし、保育所の無料化に加え来年度からは小中学校の給食費が無料となるなど、福祉の向上に努めています。少子化というとマイナスな印象は拭えませんが、見方を変えれば子育て家庭への支援をより拡充できるという利点があります。全国的にも物価高騰に加えて収入の向上も見込めない中、少しでも子育て世代の費用負担を軽減したいという狙いがあり、それによって町民の皆さまにより良い暮らしを送っていただきたいと思っています。 令和4年度の道の駅猪苗代の来場者数は107万人を越え、売り上げも10億円近くまで到達するなど、本町の基幹産業である観光業が持つポテンシャルは高いと思っています。道の駅の好調の要因は磐梯山と猪苗代湖というロケーションに加えて高速道路を下りてすぐという好立地だと思います。町内には野口英世記念館をはじめ、観光資源がたくさんありますし、『はじまりの美術館』のようにまだまだ知られていない観光資源のピックアップに加えて、観光客の方々が好むようなおしゃれなカフェなどが点在しているので支援していきたい。それがモデルケースとなって地元の商店によい刺激を与えられるような形になればいいと思っています」 ――選挙公約について。 「基幹産業である農業や観光業をはじめ、商業・工業をバランスよく発展させるため情報を収集・分析しつつ、町の豊かな自然・観光資源を生かす知恵を絞りだすほか、JR猪苗代駅周辺の整備、市街地の商店街再生についても地元の商工業者と協議して活路を見いだしていきます。 猪苗代町は『花のまち』『星のまち』『水のまち』『雪のまち』であることをアピールし、魅力を発信し続けることで、町民の方々にはいつまでも住み続けたいと思ってもらえるような、そして町外の方には住んでみたいと思ってもらえるようなまちづくりを進め、移住・定住促進に努めていきます。 また、前町長の任期中にこども園、小学校・中学校の建物・環境整備はほぼ完了しているので、ソフト面に注力し、教育や福祉を充実させていく考えです。特に町の未来を担う子どもたちへの支援や補助は一層重視し、健全な人材育成に取り組んでいく考えです。 少子高齢化が進む中で、子育て環境の整備はもちろん、高齢者の方々に生きがいを見いだしてもらえるような方策を打ち出していくことも不可欠です。今後も様々な社会的な負担の増加が見込まれる中においても、健全な財政を維持しつつ、町民の皆さまが安全・安心を肌で感じられるまちづくりを目指していきます」 ――今後の抱負。 「町内の路線バスの見通しの確保や、統合により廃校となる施設の再利用策など、取り組まなければいけない課題は山積しています。一つ一つ着実に解決し、選挙戦で選んでいただいた方々の期待に応えるためにも、町民の皆さまから信頼を寄せていただける行政運営に努めます。 また、磐梯山周辺の自治体間の連携や耶麻郡町村会、会津地域全域での広域連携も重要になってくるので、本町の強みをアピールするだけでなく、苦手な部分は他自治体と協力・連携していきたい。他自治体の先進的な取り組みを、本町でも積極的に取り入れていきたいと考えています」

  • 【上杉謙太郎】衆議院議員インタビュー

    うえすぎ・けんたろう 1975年生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。荒井広幸参院議員秘書などを経て2017年の衆院選(比例東北)で初当選。現在2期目。外務大臣政務官などを歴任。  衆議院小選挙区の区割り改定を受け、県南・県中地域からなっていたこれまでの3区は、新2区と新3区に再編された。県南を地盤とする自民党の上杉謙太郎衆院議員(48)は、小選挙区を離れて比例東北から立候補することになった。自身を育ててくれた支援者への思いと、今後の方針を聞いた。  ――区割り改定を受け県衆院比例区支部長に就任しました。次期衆院選では比例東北ブロックから立候補します。これまでの経緯と現在の心境を教えてください。 「今回の区割り変更によって次の選挙については選挙区から出馬できず比例に回ることとなりました。私自身大変残念でありますし、今は状況を受け入れておりますが、昨年以来自分の中で相当な葛藤がありました。それはやはり今までご支援いただいていた旧3区の皆様の直接的な支部長ではなくなってしまうからです。これは地元の代表たる代議士にとっては致命的なことです。加えて、旧3区の皆様には秘書時代から含めると20年弱お世話になっています。本当に大切な方々であります。支援者の皆様に大変心苦しく申し訳ない思いでおります。法改正により仕方のないこととはいっても、複雑な思いの中で了承いたしました。 新2区には旧3区から須賀川、田村、石川地方が再編されています。旧2区時代の選挙全てに根本匠先生が出馬しており、かつ1度を除き全勝しています。また根本先生は自民党県連会長であり、岸田文雄総裁が率いる派閥の事務総長でもあり、実績も多々あります。新2区の大票田となる郡山市を地盤としており、そもそも新2区における支部長選任にあたっては私は選択肢に入っていなかったようです。一方新3区は、そもそも3区支部長が私であったことと、新3区に残った県南は前回選挙で私が勝利していることから、私も菅家一郎先生とともに選択肢に上がっておりました。どちらを選挙区支部長にするかについて、会津と県南における有権者数、両地域における過去の選挙での得票数や選挙区での党員の確保数、参議院選挙をはじめ自らが選対本部長等を務める選挙での貢献度、会津地域の地域性が選定の基準となったようです。 最終的には党本部と県連、私も菅家先生も所属する派閥の清和会で調整が進みました。その結果、次回の選挙における新3区支部長には菅家先生、比例に私ということになりました。菅家先生は前回選挙で対立候補に負けている地域で巻き返し勝利すること、私は県南で菅家先生を勝たせること、つまり会津と県南で協力すれば、新3区での勝算はあるという判断からのことでした。 私は選挙区で戦えなくなってしまいましたが、一歩引いた形で黒子に徹し、次の選挙でお二人が当選できるよう、お二人の選対本部長として戦います。すでに各地域支部を両代議士に繋ぐ会や、私の若手の後援会の皆様との懇親会などスタートしています。挨拶回りもスタートしています。そういった形で2区に再編された須賀川、田村、石川地方では根本先生の支持を訴え、3区に残った県南では菅家先生への支持を訴えていきます。また選挙以外では今までと変わらず旧3区の皆様の要望を聞き、地元の声を国政に届ける活動をしていきます。私のその後については、3区でのコスタリカを含めて、まずは次の選挙でお二人の選挙を全力で戦うことで初めて道が拓けてくると考えています」 ――上杉議員が地盤としていた旧3区は新2区と新3区に分断されます。 「昨年夏以降複数回にわたって東京選出の先輩議員らから『東京で出ないか』との提案がありましたが、その度に即座にお断りしてきました。お世話になってきた旧3区の人たちと今後も活動していくことが私の使命だと考えているからです。比例東北で出るのであれば、比例は東北全域が選挙区となるので、分断された旧3区の地域も今までと変わらず私の選挙区ということになります。そういう意味では、考え方によっては、今までお世話になった党員や後援会の人たちと関係を続けていけるというプラスの面もあります。しかし、選挙で出馬し、『上杉謙太郎』と名前を書いてもらうからこそ代議士ですので、大変辛いことですし、法改正と党本部の判断によるものとは言え、ご支援いただいてきた方々には本当に申し訳なく思います。私は福島県で生まれ育った訳ではありませんが、骨を埋めるつもりで白河に来て家族共々住んでいます。子供達も白河で育っています。未熟な私ですが、地元の支援者の皆様に政治家として育てていただき、次の選挙では『対立候補に勝てるかもしれない』というところまで来ていました。それが、お世話になった選挙区が分断されただけでなく、小選挙区からも身を引かなければならなくなったこの現状は、本当のところかなり受け入れ難いことでしたし、戦いにおいてはまさに次こそが勝負という時でしたから、まさにはしごを外されたような感覚があります。 今は受け入れて話せていますが、昨年から今年の春までの選挙区調整期間は本当に『まな板の鯉』状態でした。『今の3区の皆さんとこれからも政治活動を続けていきます。動く気はありません』というのが揺るがぬ本心で、この点を党本部、県連に伝えてきました。とはいえ、私がいったん引くことで、党内も県連内も対立することなく収まる結果となったことはよかったと思います。しっかりと謙虚に受け止めて自分の与えられた職務を全うし邁進していきます」 ――新3区支部長の菅家一郎衆院議員とは、どのような関係性を築いていきたいですか。 「何が何でも菅家先生に当選してもらう、そのために一丸となります。新3区の県南地方では必ず対立候補以上の得票数が得られるよう県議の先生方や各地域支部の皆様と協力をして菅家先生を連れて歩きます。すでに始まっています。まずは県南で菅家先生が受け入れてもらえるようご理解をいただきながら活動していきます。自分以外の選挙でも汗を流す。それを一生懸命やることが比例支部長に与えられた職務とも考えています」 ――次期衆院選に向けて、有権者にメッセージをお願いします。 「比例に行くからといって今までのご縁が切れる、離れてしまうということは一切ありません。これからもお世話になりますし、今後は複雑な立ち位置になりますが、選挙においては根本先生と菅家先生の当選のために、おそらく旧3区地域の各選対に入り、支援者の皆様とともに選挙を戦います。ある意味、今まで候補者として街宣車で外に出てしまっていたので支援者の方々と会えるのがほんの一瞬ということが多かったのですが、今度は選挙区の候補者ではないので支援者の方々と近くで頻繁に顔を突き合わせてある意味一緒に選挙活動ができます。そのような形で両代議士をしっかりと当選させるのが、比例で優遇された私に与えられた責任です。 東北全部が選挙区になりますが、目下、旧3区と新3区の声を両代議士と県議の先生らと連携して地元の皆様の声を国政に届けていきます」 【上杉謙太郎】衆議院議員のホームページ

  • 【郡山市】品川萬里市長インタビュー

     しながわ・まさと 1944年生まれ。東京大学法学部を卒業後、旧郵政省に入省。郵政審議官を経てNTTデータ副社長、法政大学教授など。現在市長3期目。  ――新型コロナの感染症法上の位置付けが5類に引き下げられました。 「県の移行計画では9月末までに入院受け入れ医療機関を51医療機関から131医療機関へ、対応病床数も766病床から786病床へ段階的に拡大し、未対応であった医療機関に対しても働きかけを行うこととしています。外来診療体制も現在の689医療機関からすべての医療機関に働きかけ、インフルエンザと同等に幅広い医療機関による外来診療体制を構築することとしています。このことにより、これまで一部の医療機関での診療や入院であったものからすべての医療機関での診療等が可能となり、郡山市内においても診療可能となる医療機関の増加が想定されることから、診療や入院の受け入れを行ってきた医療機関の負担は軽減されると考えられます。 一方、これまで診療や入院の受け入れを行ってこなかった医療機関では新たな感染防止対策をとるなどの負担が考えられますが、県では必要となる感染防止等の設備整備の補助や院内感染発生に伴う休止・縮小に対する支援、個人防護具の配布等の財政支援措置を準備しています。市としては県や医師会などと連携してサポートを行っていきます。 ワクチン接種については5月8日から『令和5年春開始接種』が始まり、本市でも4月24日から接種券を発送しています。市民の皆様には羅患時の重症化リスクを低減し、ひいては医療機関の負担軽減に結び付くと考えられることから、接種についてご検討をお願い致します」 ――一家4人死亡事故を受け、市道を点検した結果、危険交差点が222カ所あることが判明しました。 「2月3日までに222カ所の点検を行い、180カ所で対策を検討していましたが、その後、郡山地区交通安全協会や郡山市交通対策協議会などから新たに61カ所の交差点の情報が寄せられ、それらの点検を行った結果、58カ所を追加し、238カ所の交差点で対策が必要であると判定しています。対策工事については市民の皆様の安全を確保するため迅速な対応に努め、昨年度中に区画線・路面表示の対策を5カ所実施し、現在は133カ所について工事発注の手続きを進めており、カラー舗装の工事を6月に、カーブミラーや路面標示などの工事を7月までに完了する見込みです。残り100カ所についても県公安委員会と連携し、1日も早い完了を目指します」 ――開成山公園と公園内の体育施設がPFIを導入した新しい公園・体育施設に生まれ変わります。 「開成山公園は2017年の都市公園法改正により創設されたPark―PFIを活用し整備を行うこととしました。体育施設はPFI法及び郡山市PFIガイドライン等に基づき19年度にPFI導入可能性調査を行った結果、施設改修と維持管理・運営を一体的に行うPFI事業としての効果が十分に発揮できると判断しました。開成山公園は目指すべき姿を『郡山の「未来を切り拓く」セントラルパーク』とし、自由広場の芝生化、駐車場の拡充及びトイレの改修・新築等といった公園施設の整備とともに、民間事業者による飲食店等の新設など市制施行100周年の節目となる2024年のリニューアルオープンを目指し、民間事業者との協奏による整備を行っていきます。さらには気候変動に対応する防災機能の強化、ベビーファースト、SDGsを実現させるべく、市民の財産である開成山公園をより有効活用し、秘めたる力を発揮させていくとともに、先人たちの偉業に思いを馳せながら『次の100年』を目指した公園整備を行っていきます。体育施設は年齢、障がいの有無などに関わらず、すべての市民がスポーツに親しみ、各種プロスポーツ大会や大規模大会が開催される市のスポーツの拠点形成を目指します。改修工事は宝来屋郡山体育館が今年10月から2024年9月まで、郡山ヒロセ開成山陸上競技場が24年2月から25年3月末まで、ヨーク開成山スタジアムが24年8月から25年3月末まで、開成山弓道場が24年12月から25年3月末までとなっており、オープン時期は施設により異なります」 ――今年度の重点施策について。 「少子高齢化・人口減少の中にあっても持続的発展を遂げる都市を目指すため、今年度の市政執行方針を『「ベビーファースト(子本主義)実現型」課題解決先進都市の創生』と定め、子どもの視点に立ったまちづくりを推進していきます。主な施策としては学校給食の公費負担を実施したことです。私は教科書が無償であるのと同様に『給食は食育教育の教科書である』と考えているため、本年度から市独自の施策として中学校の給食費を全額公費負担とし、小学校の給食費も国の地方創生臨時交付金を活用し、全額公費負担としたところです。また、DXの推進に加え、気候変動や地球温暖化対策といったGXの推進にも重点を置き、2050年の二酸化炭素排出量実質ゼロ目標の実現を目指します」  ――来年、市制施行100周年を迎えます。 「明治時代に行われた安積開拓をきっかけに全国各地から士族が移住してきました。安積疏水は農業の発展はもとより、疏水を利用した水力発電により養蚕などの産業や工業の発展をもたらしました。1924年に郡山町と小原田村が合併し郡山市となり、その後も幾度かの合併を経て65年の大合併により現在の形となりました。この間、東日本大震災や自然災害など幾多の困難もありましたが、多くの先人たちが築き上げた礎のおかげで、市制100周年を迎えることができると考えています。次の100年に向け、先人たちの思いをつなぎ、安積開拓の理念『開物成務』のもと、市民や事業者が自由かつ存分に活躍してもらえる、自治力のある都市の実現を図っていきます。 記念事業についてはオール郡山で記念事業に取り組むため、次代を担う世代の方々や市民活動団体関係者、報道機関などの22名で構成された『郡山市制施行100周年記念事業プロモーション委員会』において、市の政策との整合性にも留意しつつ、記念事業が次の100年を見据え、未来メッセージを発信していく意義のあるものとなるよう検討していただいています。委員会からは音楽イベントの開催、プロスポーツの記念試合開催などのほか、歴史・観光・子ども・産業などのアイデアをいただいており、今後、記念事業の内容について検討していきます」 ――今後の抱負を。 「『誰一人取り残されない』SDGsの基本理念のもと、市民・団体・事業者などの皆様との『公民協奏』『セーフコミュニティ活動』の推進を念頭に各種施策を総合的・持続的に実施することにより、市民・事業者の皆様が思う存分に活躍できるまちづくりを進めてまいります」 郡山市のホームページ

  • 【アレンザHD】浅倉俊一会長兼CEOインタビュー

     あさくら・しゅんいち 1950年生まれ。聖光学院高卒。76年に㈱アサクラ(現ダイユーエイト)創業。2019年4月、経営統合で設立されたアレンザホールディングスの社長となり、今年5月、会長兼CEOに就任した。  ホームセンターのダイユーエイトなどを展開するアレンザホールディングス(福島市)は5月24日、定時株主総会と取締役会を開き、浅倉俊一社長が代表権のある会長兼最高経営責任者(CEO)に就き、後任にホームセンターバローの和賀登盛作氏が就任した。浅倉会長兼CEOに、現状や今後の見通しについて話を聞いた。 世代を担う人財を育てるのが私の役割  ――3月にダイユーエイトの会長兼CEOに就き、5月にはアレンザホールディングスの会長兼CEOにも就任しました。 「以前から70歳で後進に道を譲りたいと思っていましたが、コロナ禍で3年間先送りしている状況でした。アレンザホールディングスも今年で5年目となり、ちょうどいいタイミングだと考えました。次世代を担う人財を育てていくことが私の役割だと考えています」 ――アレンザホールディングスの2023年2月期連結決算(収益認識を除外した数値ベース)は、営業収益1583億4900万円(前期比100・9%)、営業利益52億8200万円(同84・1%)、経常利益59億0600万円(同86・3%)、当期純利益27億円(同66・0%)で、増収減益となりました。 「増収になった要因は、新店9店舗出店による売り上げ増と、昨年3月に発生した福島県沖地震の特需などによりダイユーエイト既存店の売り上げが伸びたことです。 減益となった要因は販管費の増加が大きかったです。前年同期比23億円増で、その内訳は水道光熱費6億円、人件費6億円、物流費用2億円、キャッシュレス・EC手数料2億円、その他新店の開業経費などとなっています。加えて、タイム社において、会計上の理由で繰延税金資産の取り崩しが約5億円発生したことも当期の利益に影響しました。 光熱費高の影響は大きかったですが、照明の明るさを下げたり、LEDに換えたりして電気代の節約に取り組みました。また、減益となった一方で、粗利率は0・5%改善しました。これは売り上げにおけるプライベートブランド(PB)商品の割合比率が11%から13・5%に向上したためです」 ――ダイユーエイトの既存店ベースで、客単価が前年同期比3・9%増加しましたが、来店客数が同3・6%減少したことにより、既存店売上高は0・1%の増加となりました。要因をお聞かせください。 「客数の減少は〝コロナ特需〟の反動減によるものです。2022年2月期は〝巣ごもり需要〟によってマスクなどの衛生用品のほか、DIY用品、インテリアの売り上げが伸びていました。一方、客単価が増加したのは、原価の値上げ分を適正に売価へ反映してきた結果、物価上昇分がそのまま上乗せとなったためです」 エイトプロ出店を加速  ――職人向けの工具などをそろえた「エイトプロ」の郡山安積店(郡山市)が新規オープンしました。福島店に次いでの出店となりました。 「概ね計画通りに進捗しています。特に主力の工具部門が好調で、予想を上回る売り上げを上げています。プロショップはまだまだ伸びしろがあると感じています。 今期は3店舗の新規出店を計画しており、そのうち岩沼店(宮城県岩沼市)と福島本内店(福島市)の2店舗はすでに具体的な物件を確保しています」 ――新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に引き下げられました。ダイユーエイトはじめ、アレンザホールディングス傘下の店舗において、売れ筋商品・売り場作りなどに変化はありましたか。 「マスクなど衛生用品の売り上げが大きく減少し、旅行などの需要回復に伴い来店客数が減少しています。今後はホームセンターの主力部門である園芸・植物での『地域一番店』を目指して、ドラッグストアやスーパーマーケットとの差別化を図っていきます。またDIY用品の強化や棚割り改革を行い、地域の需要にきめ細かく対応していきたいです」 ――ペットワールドアミーゴは屋島店(香川県高松市)をはじめ、3店舗の出店がありました。今後の戦略をお聞かせください。 「ペット事業は特需の反動減で一時低迷していましたが、その影響が昨年12月くらいに一巡し、それ以降は既存店ベースで前年並み、あるいは上回るところも出てきています。特に犬フード、猫フード、トリミング、ペットホテルが好調に推移しています」 ――福島県経済の今後の展望について、考えをお聞かください。 「東日本大震災・原発事故以降、だいぶ風評被害がありましたが、徐々に回復してきていると感じています。県内の農業や水産業は、高い品質と安全性があることから需要が高まりつつあります。観光業も、県内の温泉や自然景観などを生かした観光プランの開発によって回復傾向にあります。一方、流通・小売業では大手企業が活発に出店を進めており、商業施設やショッピングモールの開業が相次いでいます。 今後は、地域特性を生かした商品を生み出したり、地域の需要にきめ細かく対応するなどして、地元消費者の支持を獲得することが求められるようになると思います。またIT技術を活用し、店舗とオンラインショップを組み合わせた販売形態を構築したり、店舗内でイベントなどを開くなどして、顧客獲得にも積極的に取り組む必要があるでしょう」 ――ホールディングス発足4年を振り返って。 「企業が統合することによって生まれる『シナジー効果』を求めて、商品開発や物流コスト節減、粗利率の改善に取り組んできました。特に粗利率の改善については、メーカー統一による原価価格引き下げ、PB商品開発の拡大を進めてきました。2023年2月期と、経営統合前の2019年2月期の粗利率の差異は、ダイユーエイトが+1・9%、タイムが+0・8%、ホームセンターバローが+2・3%です。今後もPB商品の拡大に取り組んでいきます」 ――今期(2024年2月期)の経営方針として、商品力の向上、店舗力の向上、新規出店、差別化戦略、DX推進、SDGs推進、M&A戦略を掲げています。 「『商品力の向上』として、今期PB商品売り上げ構成比18%の実現を目標に掲げています。具体的には、単品販売力の向上や定番棚割りの見直しを行っていきます。PB商品における海外開発の割合は7割を占めていましたが、コロナ後は3割まで下がり、粗利率が低下しました。海外開発の割合をコロナ前の基準まで引き上げていきたいですね。 『店舗力の向上』として、ホームセンター11店舗、アミーゴ4店舗、MAX福島店の改装を実施し、14店舗の新規出店を計画しています」

  • 【福島県土木部】曳地利光部長インタビュー

     ひきち・としみつ 1964年生まれ。福島市出身。東北大学工学部卒。いわき建設事務所長、土木部次長(道路担当)などを歴任。昨年4月から現職。  本県は東日本大震災や令和元年の台風、一昨年、昨年の大地震、会津北部での豪雨と立て続けに災害に見舞われている。道路や橋梁の復旧に設備の強靭化と県土木部の役割は増す。復興への寄与と脱炭素の取り組みを就任2年目の曳地利光部長に聞いた。入札不正、収賄事件で低下した信頼を回復するための取り組みも尋ねた。 安全で安心な県土づくりを着実に進めていく  ――県土木部長に就任し1年2カ月が経ちました。 「就任直前の2022年2月、只見町の雪崩であいよし橋が流失し、同3月には福島県沖地震が襲いました。就任後の同8月には会津北部を中心に豪雨が発生するなど様々な自然災害の影響を受けた1年でした。新型コロナウイルスの影響下の中、災害対応やインフラの整備・維持管理などに取り組んでいただいた建設業に携わる皆様の御尽力に心から御礼申し上げます。 1年を振り返り、改めて安全で安心な県土づくりに取り組む必要があることを実感しました。昨年度からスタートした『福島県土木・建築総合計画』に基づき、県土の持続的な発展のために必要な取り組みを着実に進めていきます。 復興事業については、2015年度までの『集中復興期間』とこれに続く20年度までの『第1期復興・創生期間』に、津波被災地の災害復旧と防災集団移転などの事業がほぼ完了しています。 一方で、原子力災害による避難地域等のインフラについては、『第2期復興・創生期間』に復興を支える道路事業等を展開していますが、復興のステージが進むにつれて新たな課題が顕在化しています。 これらの課題を5月に初めて開いた『東北震災復興のみらいを語る懇談会』で、国土交通大臣、岩手・宮城両県知事及び仙台市長と共有し、連携を一層緊密に図りながら解決に取り組んでいくことを確認しました。 福島の復興はいまだ途上であり、今後も長く戦いが続きますが、引き続き土木部職員一丸となって安全で安心な県土づくりに取り組んでいきます」 不祥事を「自分事に」  ――県発注工事の入札で設計金額を教えた見返りに現金や飲食代などの賄賂を受け取ったとして、収賄容疑で県中流域下水道建設事務所の職員が逮捕・起訴されました。土木関連事業の入札に関する設計金額や非公表の工事単価などの情報漏洩が相次ぐ中、今後の対応についてうかがいます。 「土木部では、別の事件で1月に農林水産部職員が逮捕されたことを受け、入札前工事の設計金額を閲覧できる職員を必要最小限に限定するシステム改修を2月に実施しました。 土木部としては、コンプライアンスの徹底や服務規律の保持について、職員一人一人が不祥事案を『自分事』として捉えられるよう面談や研修などの取り組みを愚直に繰り返し行っていきます。さらに、今回の事件の事実関係や原因を踏まえ、第三者委員会からの意見をいただきながら、再発防止策がより効果的なものとなるよう取り組みます」 ――昨年度より、建設行政の新たな指針とする「福島県土木・建築総合計画」が始動しました。 「2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴う大津波による災害、東京電力福島第一原子力発電所事故による災害を踏まえ、土木部は国・市町村等と連携しながら被災地の復旧・復興に全力で取り組み、津波被災地における復興まちづくり、復興公営住宅の整備等による居住の安定確保、地域連携道路やふくしま復興再生道路等の整備による県内ネットワークの強化等を着実に進めてきました。 一方で、今なお多くの方が県内外で避難を続けているなど、復興は途上にあり、復興や住民帰還の進捗に伴って新たな課題も生じています。 気候変動により豪雨災害が激甚化・頻発化しており、令和元年東日本台風により本県でも大きな被害が発生しました。豪雨災害以外でも、2年連続で大規模な地震に見舞われるなど、あらためて人的被害を防止するため、社会資本の充実を図ることが、極めて重要であることを強く認識しました。 このような中、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行等の時代潮流の変化に対応し、30年後のありたい姿を実現するため、2021年に福島県総合計画が策定されました。その計画を具現化するために、土木部は22年度から30年度までの9年間を計画期間とした『福島県土木・建築総合計画』を同12月に策定しました。『安全・安心、豊かさを次代につなぐ県土づくり』を基本目標に、7つの目標と14の施策を設定しています。 この計画に基づき、震災からの復興と地方創生をさらに加速させます。防災・減災、国土強靱化や、建設業の振興を推進するため、国や市町村、建設業に携わる皆様と連携を一層密にしながら、社会資本の整備に取り組んでいきます」 ――ふくしま復興再生道路の進捗状況と効果について。 「ふくしま復興再生道路は、基幹的な道路に囲まれる範囲にある主要8路線、29工区について、これまでに福島市と浪江町を結ぶ国道114号の山木屋1・2・3工区など、22工区(3月末時点)が完了しております。本道路の整備によって、避難住民の帰還や帰還後の生活再建、産業再生や交流人口の拡大による地域活性化が図れます。引き続き、小名浜港と常磐道を結ぶ小名浜道路や、浜通りと中通りを結ぶ吉間田滝根線など、残る工区の早期供用に向けて整備を進めていきます」 ――その他の重要施策についてうかがいます。 「東日本大震災及び原子力災害によって失われた浜通り地域等の産業基盤の再構築を目指す福島イノベーション・コースト構想では、浪江町の水素製造拠点の開所や、南相馬市の福島ロボットテストフィールドでの活用事例の増加、さらには関連企業の立地など、これまでの取り組みの成果が着実に表れています。今年4月には、福島国際研究教育機構(F―REI)が設立されました。避難地域で行われている様々な取り組みを加速させるため、広域ネットワークの形成などインフラ整備を進めることが、土木部の重要な役割だと考えております。 土木部では、低炭素社会の実現に向け、環境に配慮した公共土木施設や建築物の整備を進めるとともに、小名浜港における次世代エネルギー受入環境の整備や脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化などを推進するため、『小名浜港港湾脱炭素化推進計画』を策定していきます。 建築物についても、室内温熱環境を向上しつつ大幅な省エネルギー化を実現することが重要課題となっていることから、県有建築物のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化を進めていきます」

  • 【磐梯町】佐藤淳一町長インタビュー

    さとう・じゅんいち 1961年9月、磐梯町生まれ。日大工学部卒。磐梯リゾート開発取締役総支配人を経て、2015年の磐梯町議選で初当選。19年磐梯町長選で無投票初当選。今年6月の同町長選で無投票再選を果たした。  ――磐梯町長選挙では無投票で再選を果たされました。 「無投票で再選できましたことにあらためて感謝いたします。2期目のテーマは、『内部の変革と体制づくり』が重要だと認識しています。1期目では、デジタル変革(DX)戦略室を設置し、各部署の横断的かつ柔軟な業務対応と効率化を図りましたが、DXはあくまで手段であり、行政サービスの出口戦略に至るのに、一番重要なのは役場内部の変革です。 今や、行政は同じ仕事を日々こなしていくだけの時代はもう終わったといっても過言ではありません。職員一人ひとりが自ら考え、行動に移すことが求められています。一方、それらの定着化を図るうえで、まず職員を育てる必要がありますが、現在の役場の枠組みでは限界があります。2期目では、組織の変革による職員の意識改革と行政のスピードアップ化へ大きく舵を切る覚悟です。 この間、職員間のチャットツールを導入し、情報共有の徹底化を図ってきました。これにより、担当の職員が仕事を抱え込むことはなくなり、チーム内はもちろんチーム外の職員からも知恵やアイデアが出されるなど着実に成果が上がっています。 従前の行政の問題点の1つに、閉鎖的な職場環境による想像力の低下と視野狭窄が挙げられます。質の高い行政サービスを実現するためにも職員のスキルアップや能力開発が不可欠との観点から、民間企業をはじめ、外郭団体などで兼業してもらうことも検討しています。役場内の情報管理は全てクラウド化しているので業務に支障が出ることはない点を付言したいと思います。また、『攻守兼備の行政』の実現に向け、営業・マーケティング戦略と総務・管理、それぞれに特化した副町長二人制の導入を前向きに検討します」 ――2期目の重点施策について。 「再選を目指すにあたって以下の『5つの骨太方針』を示しました。今後は実現に向け粛々と取り組む所存です。 1つは、人口減少対策の基本となる施策である子育て・教育の充実です。『子ども子育てワンストップ窓口』を設置し、子育て支援を展開していきます。教育は個々の性格、家庭環境で育まれたものをサポートして伸ばすことであり、それが学習における習熟度、成長率を左右すると考えます。子どもたち一人ひとりに合わせた『インクルーシブ教育』の徹底を目指して議論を重ね、教育施策の柱に据える考えです。加えて、町内の保育・教育施設を一体的に運営する学園構想を推進し、0歳から15歳までにどういう教育を進めていくか、根本的に見直します。先ずは幼稚園と保育園を再編して認定こども園を作る方針で、協議会を立ち上げて具体的に検討します。 2つは、本町の基幹産業である農業振興です。農業振興公社を設立し、農業従事者の皆さまが継続して働ける仕組みを作ります。併せてマーケティングも行い、農産物の付加価値を向上させます。農業は魅力にあふれた事業だと思いますが、後継者不足が深刻です。十分な収入が得られ、休みもある仕事ならば就農希望者も増えると思いますが、現実はなかなか厳しいのが実態です。 問題は流通過程の中で生産者と消費者との距離が離れてしまうことです。生産者と消費者が直接つながり、『良質な農産物を供給してくれる』という信頼関係ができていれば、多少価格が高くても買い求めるようになりますし、SNSや口コミを通じて評判も広まっていくと思います。その結果、生産者の収入が上がれば、新規就農者も増えていくものと考えます。農業振興公社を中心にさまざまな施策を打ち出し『儲かる農業』を実現できるよう注力します。 3つは、観光振興と地域ブランド強化です。磐梯町がどこにあるのか分からない人も多いと思いますが、『会津磐梯山と名水のまち』と打ち出せば、イメージが掴みやすくなり、認知度が広まっていくと考えます。『磐梯町ブランド』が確立されれば、農産物の売り上げにもプラスになるはずです。認知度アップのために、民謡・会津磐梯山の磐梯町バージョンを作りイベント時には必ず流して、PRしていく考えです。 観光はコロナ禍で厳しい状況が続いてきましたが、民間の力を生かすため連携しながら支援していくことが何より重要と考えています。そのため、ばんだい振興公社を立ち上げ、町内の観光スポットである『道の駅ばんだい』、『史跡慧日寺跡』を一体として運用していく体制を構築しました。年間約82万人が訪れる道の駅ばんだいを拠点に、史跡慧日寺跡などを回遊していただく『滞在型観光』を目指します。集客面ではインバウンドも鋭意強化していく考えです。スキー場を訪れるオーストラリア、台湾からの個人客に加え、雪のない東南アジアへの営業強化、民間施設への集客支援を実施していきます。 4つは、移住定住の推進です。本町を知っていただいた方に、『住んでみたいまち』、『住みやすいまち』と思っていただけるようしっかり取り組みます。地方への移住定住は、まずそこで暮らしていくための環境を整備する必要があります。 本町では町唯一の大型商業施設が閉店したのを受け、2021年に『公有民営方式』で民間スーパーを誘致しました。さらに、地域おこし協力隊や地域活性化起業人を採用して、さまざまな形で地域を活性化させ魅力を向上させてきました。町内には有力企業の工場が進出しており、働き口の確保もサポートしていきます。移住定住関連の各種補助金も見直し、空き家バンクに加え空き地バンクを追加します。各地区を調査し、空き地を有効活用していくとともに町営住宅整備も計画する考えです。民間活力の導入を図り、民間アパートや分譲地も増やしていきます。 結びに、共創協働のまちづくりです。町民全員が幸せになるためには、行政の一方的な取り組みだけでは難しく、町民と共にまちづくりを進めていくことが重要です。町民と対話し、いろいろな課題を共有して、『まちをどうしていきたいか』という思いを一つにすることが大切であると認識しています。町民の思いを行政が支えていく形で、一緒に事業を進めていく所存です」 幸せに暮らせる環境を  ――町民へのメッセージを。 「人口減少社会は避けて通れない問題であるのは事実です。引き続き磐梯町の魅力をより大胆に発信しながら関係人口の創出、移住・定住の促進を図り、町内の活性化に注力するとともに、本町の日常生活に幸せを感じて暮らせるような仕組みづくりや環境づくりを鋭意進めていきます。併せて、町民の皆さまがオープンに議論できる機会を提供し、その内容を踏まえた新しい形での行政サービスを提供できるよう努めます」

  • 【南会津町】渡部正義町長インタビュー

     わたなべ・まさよし 1958年7月生まれ。県立田島高校卒。旧田島町役場入庁後、総合政策課長、総務課長などを歴任。南会津町副町長を経て昨年4月の町長選で初当選を果たした。  ――5月8日から新型コロナウイルスの感染症法の位置付けが2類相当から5類に引き下げられました。この間の町内における状況とアフターコロナ対策について。 「5月から6月にかけて総会シーズンを迎えましたが、終了後に懇親会が催されるケースが目立つなど、コロナ前の日常が戻りつつあると実感しています。町民は『しっかりと感染対策をしながら経済を回していくことが重要』と認識されているようで、最近では地域経済が非常に活発になってきたと思います。 一方、飲食業の方にお話を聞くと、昼の時間帯は客足が戻ってきたが、夜の時間帯までは完全に戻っていないとの声が聞かれます。生産工場や建設業では、集団感染が発生した場合、生産ラインを止めなくてはならない、あるいは作業現場を止めなくてはならない、といった不安やリスクを依然として感じているのではないかと考えます。 新型コロナが落ち着きつつある一方で、最近では、電気料金の値上げや物価高騰の影響が深刻です。当町では、その対策として、電気料金や燃料費高騰に苦しむ事業者に対し、100万円を上限とする原油価格等高騰対策事業(事業費4000万円)を4月から実施するなどして、支援に取り組んでいます。 そのほか、新型コロナや物価高の影響による消費低迷からの回復を図るため、地域振興緊急対策事業(同1410万円)としてプレミアム付商品券の発行に向け取り組んでいます。また、酪農家からは飼料代の高騰により相当影響が出ているとの声や、農家の方からは農業資材の高止まりに苦慮されている話が寄せられているので、的確な支援策を検討しています。今後補正予算などで、全体を見据えて、限られた財源を有効に使っていく考えです」 ――公約である子育て・医療福祉政策の充実をはじめ、結婚支援対策、若年層の定住対策の進捗状況についてうかがいます。 「子育て支援については、まず保育所の0~2歳児の保育料負担軽減対策(同1141万円)です。全額負担について検討を重ねましたが、最終的には町が半額支援するという結論に至りました。次いで、新たなお子さんが生まれた際に10万円分の商品券を贈呈して誕生を祝うとともに、必要なものを町内で消費していただくための当町単独事業『パパママ応援交付金事業』(同710万円)を実施しています。 国と連携した事業としては『妊娠出産21プロジェクト事業』(同853万円)で、母子手帳交付時に5万円、出生時に5万円の現金を支給するとともに、伴走型支援として保健師による一貫した訪問活動を展開しています。 そのほか、地域子育て支援拠点事業として、出産をはじめ、幼少期、学童期の子どもを持つ親からの相談にきめ細かに対応するため、健康福祉課内の『子育て世代包括支援センターえがお』を核とした相談・支援体制の構築に努めています。 医療福祉については、昨年12月に県立南会津病院の病院長が不在となることが懸念された中、この間、南会津郡内の首長・議長会と連携して実情を訴え、4月1日から確実に病院長を配置していただけるよう、県に要望活動を行ってきました。紆余曲折ありましたが、坂下厚生総合病院で病院長を経験された松井遵一郎先生が南会津病院長として就任され、今までと変わりなく診療が行われています。同病院の医療体制の強化は南会津郡で最優先課題に位置づけられます。現在、常勤医がいない産婦人科、精神科、眼科における常勤医の配置をはじめ、小児周産期医療体制の充実、人工透析専門医と看護師の増員について引き続き要望していきます。 結婚支援対策については、7人の縁結びサポーターによるお相手紹介・結構相談全般を担う『縁結びサポーター事業』をはじめ、南会津地方振興局と合同で開催する婚活イベントを1回、本町単独の婚活イベントを2回予定しています。そのほか、身だしなみやマナー、異性とのスマートな話し方を学ぶ『スキルアップセミナー』の実施、結婚して居住する費用もしくは引っ越し費用について60万円を上限に補助する『結婚新生活支援事業』を展開しています。 現在、若い職員たちによる結婚支援策の検討・立案により『あづまっぺ実行委員会』が設立されました。今の若者たちの結婚観を踏まえ、肩ひじ張らずさりげなく出会える機会の必要性から、町が運営するインターネットコミュニティサイト『#ミィズ』を立ち上げ、6月12日現在で56人の方が登録されています。併せて、南会津町結婚サポート企業の登録も始めました。町内に立地する事業所や団体に呼びかけ、結婚支援の官民連携を図っており、6月5日時点で22の事業所に参画いただいています。 若者の定住対策については、Uターン、Iターンの仕組み作りが重要だと考えます。住宅取得時の支援をはじめ、移住してきた方々が地域でしっかり馴染んで生活してもらうための体制構築などを『定住対策プロジェクト事業』に盛り込み、鋭意進めています。また、人手不足が慢性化する中、若者の定住も含めて、新たな求人活動や事業所をPRするための費用の一部を助成する取り組みについて、『働き手確保支援事業』として新規で着手したところです。南郷トマト生産を中心とする新規就農者への支援、林産業の雇用促進、町内で新たに起業・商売したい方の支援対策として、『ビジネスチャレンジ支援事業』も展開しています」 観光商品開発に努める  ――関係・交流人口の創出にも注力されています。 「首都圏を中心に多くの企業でコミュニケーション能力や提案能力を高める研修が求められている中、当町の地域資源を生かした研修でディスカッション能力や提案力の向上を図る『チームビルディングツーリズム事業』を試験的に実施しています。現在は、モニターツアーという形で実施していますが、研修を実施した事業所からは非常に好評であり、関係人口創出のポテンシャルを感じています。また、埼玉県の埼玉栄高校などを運営する学校法人佐藤栄学園、千葉県の市立船橋高校との『町有施設等の利用に関する協定』を通じた高校合宿誘致事業にも引き続き尽力する考えです。そのほか、農家の生活体験を教育プログラムに組み入れた教育旅行『南会津農村生活体験推進協議会支援事業』も実施しています。『星空誘客事業』では、当地域の星空がどのぐらい素晴らしいのかという魅力を再認識していただけるよう、住民向けの星空観察会を実施しています。今後は商品化に向けた事例調査を進めながら、宿泊を伴う観光商品の開発に努めていく考えです」

  • 【檜枝岐村】平野信之村長インタビュー

    ひらの・のぶゆき 1957年1月生まれ。喜多方工業高校卒。檜枝岐村役場で企画観光課長などを歴任。同村教育長、副村長などを経て、今年4月の村長選で初当選。  ――任期満了に伴う檜枝岐村長選において、無投票で初当選を果たしました。 「出馬にあたっては、村民の方々から要請をいただき、そうした声を真摯に受け止め立候補を決断した次第です。これまで副村長を務めてきましたが、実際に村長を務めると決断や責任が伴ううえ、立ち位置も明らかに異なります。あらためて職責の重さを実感しているところです」 ――1期目の抱負についてうかがいます。 「喫緊の課題は人口減少です。人口減に歯止めをかけるべく早急に対策に着手する考えです。また、震災・原発事故に伴う風評被害や新型コロナで落ち込んだ地域経済を何とか立て直したいと強く思います。今後は官民連携を一層強化し、民間からアイデアや知恵をお借りして実効性のある経済対策に努めていく考えです」 ――村の地域資源である尾瀬などの自然環境保護も長期的な課題となっています。 「かつて尾瀬観光に多くの観光客・登山客が訪れ、本村の規模に対し『オーバーユース』と言われた時代もありました。ただ、今は『アンダーユース』となり、利用されないために劣化する状況です。今後は関係機関の方々と協議を重ね、観光客の回復に注力する所存です。その一環として、バスを中心とする公共交通機関の利用促進を図っていきます。具体的には、本村―尾瀬―群馬県片品村間の相互移動の利便性を高め、観光ルートとしての魅力に磨きをかけながら観光客誘客を図ることで、宿泊業、飲食店、土産物屋も確実に潤うものと考えます。また、村内でのバス路線の維持は非常に厳しい状況ですが、観光客による利用増が図られれば乗車率のアップはもちろん、運行会社の収益性向上につながるなど、まさに『三方良し』となるはずです」 ――新型コロナウイルス感染症における感染症法の位置付けが5類に引き下げられました。この間、村の基幹産業に位置づけられる観光業の現状についてうかがいます。 「観光客は思ったほど戻っていないように感じます。本村は山岳観光地であり、感染症リスクは比較的低いため、この点を前面に打ち出していきたいと思います。教育旅行については回復している状況です」 ――その他今年度の重点事業について。 「村内のワーケーション施設が今年度中にリノベーションを経て完成する運びとなっています。結びに、村内の景観や若者受けする施設整備の一環として、檜枝岐川上流側に位置する中土合公園、ミニ尾瀬公園、癒しの空間の3公園を一体化する事業が今年度から着工する予定となっています」

  • 【楢葉町】松本幸英町長インタビュー

    まつもと・ゆきえい 1960年12月生まれ。県立四倉高卒。1997年から楢葉町議4期、その間議長を2期務める。2012年4月の町長選で初当選を果たし、現在3期目。  ――移住・定住施策のため、昨年、相談窓口機能を備えたコドウがオープンしました。 「コドウの昨年度の移住相談実績は80件で、そのうち15名が移住に結び付きました。移住相談窓口以外にも大学生のフィールドワークの対応や、町内で新しいことをはじめたい方をサポートするスタートアップ支援も行っています。また、移住者の数だけを重視するのではなく、移住してきた方が、例えば起業して新たなサービス等を提供することによって住民の利便性が向上するなど、満足度の高い町になることが移住定住事業の重要なポイントだと考えています。そのために町としては今後、地域の担い手となる方や地域課題を捉え、起業を考える方をはじめ、多くの方に少しでもまちを知っていただくため、まずはぜひ足を運んでいただきたいと考えています」 ――農業の6次化に取り組んでいます。 「これまで農業再生について効率化・省力化に向けた担い手への農業集積や基盤整備、サツマイモの産地化など、特色ある新しい農業モデルに取り組んできました。新たなチャレンジとして地元農産物を活用した付加価値の高い特産品開発、商品化を進め、生産から処理、加工、さらには販売や販路へと一体的な流れを構築する6次産業化の第一歩として『楢葉町特産品開発センター』が4月に落成しました。この施設では主に甘藷・柚子・米を活用した加工品の開発や製造を行い、そのほかの町内産の農産物も幅広く活用しながら生産農家の経営安定を目指していきたいと考えています」 ――今後の抱負。 「震災から12年が過ぎ、ハード面の整備からソフト事業への移行が重要となる今『笑顔とチャレンジがあふれるまち ならは』の実現のための事業として、昨年オープンしたコドウやまかない付きシェアハウスでの事業に加え、新たに地域住民との交流拠点『まざらっせ』もオープンしました。これらを活用し、移住者と震災前から住む町民が互いに手を携え交流人口の拡大を図りつつ、さらに新しいステージへ邁進していきます。 役場機能についても、今年度から住民サービス向上のため、窓口業務一元化として町民税務課を設置しました。また、新規企業誘致や安定的な雇用の確保に注力し、観光資源の活用も今まで以上に進めるべく、産業創生課を設置して組織強化を図っています。さらにはDX推進体制の整備・強化を目指し、政策企画課内にDX推進室を設置しました。私たちが目指すのは、最終的には町民の幸せな暮らしの実現です。このことを肝に銘じて全職員心を一つに今後も精進してまいります」

  • 【双葉町】伊澤史朗町長インタビュー

    いざわ・しろう 1958年生まれ。麻布獣医科大学獣医学部卒。2003年から双葉町議を務め、2013年の町長選で初当選。現在3期目。  ――昨年、特定復興再生拠点区域の避難指示が解除されました。 「町長就任時は町に帰還することは想像できませんでした。この間、町民と町政懇談会を行ってきましたが、町民からの『いつ帰還できるのか』との質問に答えられない時もありました。そういった意味で故郷に戻ったことは感慨深く、ホッとしています。一方で、医療・福祉や教育面の充実など新たな課題も生まれています」  ――JR双葉駅西側には公営住宅が建設中で診療所もオープンしました。  「当町は被災自治体で最後に避難指示が解除されたため、復興は遅れています。そのため、他自治体と同様のことを行っても町民は納得しないというのがスタートでした。そういった意味で、被災自治体の中で一番誇れる災害公営住宅と再生賃貸住宅であると自信を持っています。  診療所はJA厚生連の協力もあって開所しました。現在は週3日だけですが、来年以降は診療日を多くとっていただけるよう厚生連にも働きかけていきたいと考えています。また、移動手段を持たない高齢者などが駅から歩いていける場所にしたいとの考えから駅前に整備しました。町役場も駅前にあり、いずれ飲食店や商店ができ、『駅前に行けば便利』と思っていただけるような環境づくりを進めていきたいと思っています」  ――4月には浅野撚糸の双葉事業所が開所するなど産業復興の動きも活発です。  「帰還して生活していくには仕事・雇用が必要です。そのため避難指示解除前から企業誘致に取り組み、20件、24社と協定を締結し、現在は16件が町内で動き始めました。誘致企業の中には町内居住が雇用の条件のところもあり、ありがたく思っています。誘致企業で働く他地域から来られた方で、町の良さを知って住んでみようと思う方が増える可能性もあると思っています」  ――農業面ではブロッコリー栽培が行われています。  「除染によって痩せた土地でも栽培しやすいブロッコリーを、県の営農再開支援事業を利用して60㌃ほど栽培しています。もちろん検査も行われており、安全面の問題はありません。私も食べましたが、身が締まっており美味しいですね」  ――今後の抱負を。  「復興は町長就任直後から頭から離れたことはありませんが、やっとそのスタートラインに立つことができたと思っています。今後も職員含め、心一つに進んでいきたいと思います」

  • 【玄葉光一郎】衆議院議員インタビュー

    げんば・こういちろう 1964年生まれ。安積高校、上智大学法学部卒。民主党政権時に外務大臣、国家戦略担当大臣、内閣府特命担当大臣、同党政策調査会長などを歴任。現在、立憲民主党東日本大震災復興対策本部長。10期目。  衆議院小選挙区の区割り変更に伴い、立憲民主党の玄葉光一郎衆院議員(59)は、地盤としてきた改定前の福島3区が分割されることになった。党内での候補者調整の経緯と新たな選挙区となる新福島2区での意気込みを、衆院解散の緊迫感が増す6月中旬に聞いた。支持率が低迷する同党の野党第一党としての責任についても尋ねてみた。  ――衆院小選挙区定数「10増10減」に伴い、定数1減の本県では区割りが変更となる中、立憲民主党は次の衆院選で新しい福島2区(郡山市、田村市、須賀川市、田村郡、岩瀬郡、石川郡)に玄葉代議士の擁立を決定しました。経緯と今後の選挙戦略についてうかがいます。 「中選挙区時代も含めると10期もお世話になってきた選挙区が二つに分割されるということで、体が引き裂かれる思いです。新2区、新3区のどちらを選んでも現職が既にいる状況が生まれてしまいました。 自分はどちらに重点を置いて活動すべきかということで、後援会の皆さんと丁寧に議論を重ねました。私が生まれ育ったのは田村で、主な地盤にしてきたのは田村、須賀川、岩瀬、石川地方です。一方、郡山も地元と言っていい。安積高校に通いましたし、郡山の経済圏で生活してきました。妻も郡山出身で縁が深い。最終的に新2区を活動の基盤にすると決めて、その上で馬場雄基代議士との競合をどうするかということになりました。 県連は当初からコスタリカ方式を進める方針でしたが、立憲民主党では比例枠がそもそも限られています。今後2回にわたり福島県で比例枠を一つずつ確保するのはかなり困難と予想されていました。 私自身、小選挙区で出る選択と比例で立候補し名簿順位で優遇を受ける選択の両方がありましたが、馬場代議士からは『まずは先輩が小選挙区で出てほしい』という話がありました。考え抜いた結果、私が小選挙区で当落のリスクを負うのが適切なのではないかと腹を据えました。ただし、そのためには馬場代議士が比例東北ブロック名簿で1位の優遇を受けることが前提になります。党本部に働きかけて、最終決定しました。 過去の選挙を振り返ると、当選を4回果たすまでは揺るがない支持をいただくために無我夢中でした。新しい区割りでの選挙は、若手時代と同様のチャレンジ精神が必要だと考えています。試練ではありますが、変化を新しいエネルギーに変えようと、原点に立ち返り精力的に選挙区内を回っています。新たな出会いの中に政治家の使命と喜びを日々見つけています」 ――日本維新の会が選挙の度に勢いを増していますが、野党第一党の座にある立憲民主党の現状をどのように捉えていますか。 「私は選挙に関しては、所属する党を前面に出して戦ったことはこれまで一度たりともありません。玄葉光一郎という政治家個人の力を訴えてきた姿勢は今後も変わりません。それで有権者を引き付けられなかったら、政治家としての魅力不足だと捉えています。 党の現状については、私は代表ではないので、責任を持って言える立場にありません。ただ個人的には、立憲民主、維新、国民民主による3派連合が望ましいと思っています。3派連合ができたら、いくつかの共通の公約を掲げ、選挙区調整をして、さらには共通の総理候補を立てて政権を狙う。もっとも、現状はそれができる段階ではありませんが。 維新や国民民主と現政権に代わる共通の総理候補を立てるまでの信頼関係を築けなかったことは、野党第一党の責任と捉えています。ただ、やはり政治に緊張感をもたらすために、野党は可能な限り協力すべきです」 ――5月8日から新型コロナウイルスの感染症法の位置付けが2類相当から5類に引き下げられました。今後求められる対策についてうかがいます。 「現政権に足りないのは、アフターコロナについて、地方に活力を与える分散型国土を目指し、人口減少抑止につなげようとする視点です。コロナ禍で一時、東京は転出超過になりました。私はコロナ禍を機に分散型国土を実現するため、思い切った手を打ってはどうかと予算委員会で岸田文雄総理に提案しました。例えば、私立大学の一学部でもいいので、地方に移してもらう。そのために協力してくれる私学には助成金を大幅に優遇する。また5G、6Gなどの次世代通信システムを東京から整備するのではなく、地方から整備するといった政策です。 しかし、コロナ禍が収束に向かうと、再び地方から都市への転入超過に戻ってしまいました。第二次安倍政権以降、東京一極集中はますます進んでいるように思います。自公政権は分散型国土を本気でつくる気がない。 少子化対策は、手当と同時に分散型国土の整備を進めなければ効果が得られません。 賃金が正規雇用よりも低い非正規雇用の割合が増え、結婚・出産に踏み切れない要因になっています。地方と都市の格差が広がり、若年層の所得が伸びていない点を直視しないと、少子化問題は克服できないと考えています」 ――東京電力福島第一原発でトリチウムを含んだ処理水の海洋放出が始まろうとしていますが、依然として安全性や風評被害を懸念する声が後を絶ちません。本県選出代議士として海洋放出の是非ならびに風評被害問題をどう解決すべきと考えますか。 「技術的には大丈夫なのだろうと信じたい。ただ『燃料デブリに触れた水』を海に流すのは歴史上初めてのことです。100%安心ではないという方の気持ちは分かります。 この間、私は二つのことを求めてきました。一つは、トリチウムの分離技術を最大限追求すること。もう一つは、海洋放出を福島県だけに押し付けるのではなく、県外でもタンク1杯分でいいから引き受けてもらってはどうか、と。残念ながら、それらに対する努力の形跡は全く見られていません。 科学的に大丈夫と示せても、残念ながら、近隣の韓国、中国だけではなくアメリカも含めた7割以上の人が『処理水が海に流れたら福島の農産品は買わない』というアンケート結果があります。他国から視察に来てもらい、丁寧に説明する必要があります。海外で安心して県産農産品を買ってもらうには、並大抵の努力では足りないと思います」 ――最後に、有権者にメッセージをお願いします。 「区割りの変化を新しいエネルギーに変えていきます。これまでお世話になった選挙区が引き裂かれてしまったことは大きな試練ですが、いまはチャレンジの機会と捉え直しています。有権者の皆さん、特に郡山の皆さんとは新たな出会いを通じ、しっかりとした絆を築けるようにしていきたい。お世話になった方々への恩を忘れず、多くの皆さんのためにしっかり汗をかき、必ず期待に応えていきたいと思っています」

  • 【福島県酒造組合】渡部謙一会長インタビュー

     わたなべ・けんいち 1965年、南会津町生まれ。東京農業大学農学部卒。開当男山酒造醸造元。福島県酒造組合副会長を経て、2022年5月より現職。  ――会長に就任され1年が経過しました。この間を振り返って。 「昨年5月の総会で会長に就任しました。しばらくは新型コロナウイルス感染症の影響により活動が制約されましたが、同年9月以降は3年ぶりに東京・JR新橋駅西口広場(SL広場)で『ふくしまの酒まつり』が開催されるなど、徐々にではありますが、既存の事業が再開されました。特に今年5月の連休明けからは会議、総会、各種打ち合わせなどが本格的に復活しており、現在はフル稼働で走り回っている状況です」 ――2022酒造年度の日本酒の出来栄えを競う全国新酒鑑評会で、本県は金賞受賞数14銘柄を獲得し、惜しくも10回連続日本一とはなりませんでしたが、「福島県産の日本酒」は依然として高いレベルにあることを示しました。 「『日本一』というのはあくまで金賞を受賞した蔵数の話です。それぞれの蔵元は、ひと冬、一生懸命寝る間も惜しんで酒造りに励み、手間暇かけた日本酒を出品してきました。また来年に向け、技術の向上と出品酒の研究を重ねながら酒造りに挑む――というだけの話かと思います。全国どの蔵も金賞を狙って自慢の銘柄を出品している中でのこの結果であり、『日本一』は福島県という括りの中での話に過ぎません。全国新酒鑑評会の結果を踏まえ、反省を生かしながら粛々と酒造りに励み、より良い品質の向上を目指すことが重要です」 ――昨年度の出荷状況についてうかがいます。 「コロナ禍が収束を見ない中、出荷量は前年並み程度で推移しており、コロナ禍前の水準には回復していません。お酒を飲むスタイルや飲むシーンが変化した影響も相まって、これから先も出荷量の回復には時間がかかると思っています。 逆に言うと、新しい消費動向をいかに見極められるかが今後の課題と認識しています。全国各地に酒蔵があり、さまざまな酒類が流通している中で、本県の日本酒を手に取っていただくにはどうすべきか、ということについて組合員で熟慮を重ねながら事業展開していく考えです」 ――2023年度の事業展開について。 「まず、従来通り、清酒アカデミーの運営や高品質清酒研究会での議論など、それぞれの蔵による品質向上、技術力向上について組合がいかにバックアップできるかが重要です。また、『夢の香』、『福乃香』の2種類の本県産好適米の安定生産・安定供給に寄与すべく、生産者と蔵元の橋渡し役を担うのも組合の大切な役割なので、しっかり取り組む考えです」 ――今後の抱負について。 「この間、コロナ禍の規制が緩和される中、4年ぶりに開催されるイベントもありますので、組合の総力を結集して足を運んでくださるお客様に感謝しながら、本県の日本酒の品質の良さをPRしていきたいと思います」

  • 【福島県警備業協会】前田泰彦会長インタビュー

     まえだ・やすひこ 1959年生まれ。東海大卒。綜合警備保障㈱第八地域本部長などを歴任し、2018年5月からALSOK福島㈱社長。同月、福島県警備業協会長に就任した。  ――新型コロナウイルスの影響によりイベントの縮小や中止が続いてきましたが、5月からは季節性インフルエンザと同様の5類に分類されました。現在の会員事業所の状況はいかがでしょうか。 「さまざまなイベントが復活してきたため、仕事が徐々に増えてきております。ありがたいことです。須賀川市の釈迦堂川花火大会は4年ぶりに通常開催となり、雑踏警備業務などの仕事が見込まれています。課題として、イベント警備の人手不足が深刻化しており、年々予算も厳しくなってきています。イベントの安全性を確保するためには適正な人数や警備単価が不可欠です。主催者である行政の財政状況が大変だということは重々承知していますが、なんとか工夫を凝らして予算を確保していただき、警備単価の適正化に努めていただければと思っています」 ――以前から適正料金確保と経営基盤強化を訴えられています。岸田政権でも賃上げを最重要課題に挙げていますが、今後の見通しは。 「適正料金確保の重要性については、国や関係各所にご理解いただきつつあると感じています。国土交通省は一般管理経費を含めた労務単価として、資格ありで2万4600円が妥当だと示しています。ただ公共事業では、警備業は建設業者の下請けとなっている現状があります。労務単価に理解を示していただくために、協会も指導していきますが、会員各社が丁寧に説明していくことが重要だと思っています。 引き続き安売りせず、ダンピング行為を排除し、公正な競争による適正料金の確保、経営基盤の強化を働きかけていきます」 ――本年度の重点目標について。 「①警備員の労働時間・健康の管理による『業界全体の健全化』、②研修会実施による『教育事業』、③機械導入によるデジタル化や人手不足の解消・働き方改革、④地域安全の社会貢献活動、⑤警備業務の適正化、⑥労働災害防止、⑦関係省庁、関係機関、団体などに対しての要望活動、⑧表彰制度、⑨広報活動です。労働災害防止については、今年初めて警備業務で亡くなられた方々の慰霊祭を行いました。1人も犠牲者が出ないよう努めることが大前提です。事故が起こらないように労災防止支援を徹底します。広報活動については、大相撲で大活躍している福島市出身の力士・大波三兄弟が8月の福島場所で〝凱旋〟するので、協会として協賛させていただき、業界全体をPRしていきたいと考えています」 ――今後の抱負を。 「適正料金の交渉や安全確保のための取り組みを引き続き行っていきます。会員事業所には警備業の役割と責任を自覚していただき、警備員をしっかり育ててほしいと思っています。協会としては資格の特別講習などを実施して、業界がさらに発展できるようにバックアップしていきます」

  • 【根本匠】衆議院議員インタビュー

     ねもと・たくみ 1951年生まれ。安積高、東大経済学部卒業後、建設省入省。衆院議員当選後、厚生労働大臣、復興大臣などを歴任。現在衆院予算委員長を務める。  岸田文雄政権発足から約1年半を迎えた。岸田首相の盟友で宏池会(岸田派)の会長代行兼事務総長を務める根本匠衆院議員(72、9期)は、政権運営をどう見るのか。防衛力強化や異次元の少子化対策への評価を聞いた。大震災・原発事故からの復興への道筋と、衆院予算委員長の職責の重さと心構えについても聞いた。  ――岸田政権発足から約1年半が経過しました。 「岸田首相の強みは、『聞く力』と、判断力、そして決断力です。いろいろな意見に耳を傾けて課題を整理し、最後は迅速に決断します。新型コロナ対策は迅速で的確でしたし、ロシアによるウクライナ侵略に伴う資材価格、物価高騰に対しては、対策を切れ目なく行っています。ロシアによるウクライナ侵略は明々白々な国際法違反の暴挙です。ロシアに対してG7と足並みをそろえて経済制裁を行ってきました。ウクライナ電撃訪問は、首相の覚悟を示し、国際社会に向けて大きなメッセージになりました」 ――岸田政権が進める防衛力強化と異次元の子育て支援をどう見ますか。 「『ウクライナは明日の東アジア』との危機感を持って見るべきです。国民の命とくらしを守り抜くことは政治の使命であり、防衛力強化はわが国の未来にとって不可欠です。反撃能力を持つのはあくまで抑止力を高めるためで、防衛のために弾薬を十分に確保して継戦能力も高めねばなりません。サイバー攻撃や宇宙空間からの攻撃など新たな脅威もあります。自衛隊が拠点とする建物を耐震化していく必要もあります。 『次元の異なる少子化対策』については、経済的支援の強化、保育サービスの拡充、働き方改革が欠かせません。特に重要なのは、男性が育児休業を取得し、子育てに深く関わることです。企業もワークライフバランスを整えて応援する雰囲気になっています。子育てを社会全体で支えていくんだという意識を共有して財源も確保していく必要があります」  ――衆院予算委員長として、議事を取り仕切ってきました。 「国会の一番大事な仕事は予算を決めることです。内閣が作成した予算案を国民から選ばれた議員たちが議論し承認して初めて全ての政策が動きだします。予算委員会は、与野党ともに全力を傾注する、〝国会の主戦場〟であり〝花形委員会〟とも言われます。野党は首相や大臣の答弁が不十分だと抗議し、審議を止めろと言って議事が滞る。これをどうさばいていくかが予算委員長の職責です。全ての予算案に目を通すのはもちろん、関連法案も事前に頭の中で整理しています。 予算委員長は野党に7、与党に3の軸足を置いてさばきます。一方で盟友の岸田首相を支えなければならないとの心づもりもあります。源義経を支える弁慶のような心情です。予算委員長は受け身ではいけません。激しい議論をまとめるため、最後は自分がさばくんだという気迫と気概が必要です」 ――震災・原発事故から12年を迎えました。 「第2次安倍内閣で復興大臣を務めました。安倍さんは『全閣僚は被災地復興の役割がある、復興大臣はその司令塔』と位置付けました。自ら考えて、復興大臣が関係省庁を直接指揮できる仕組み『タスクフォース』を創りました。私は『匠フォース』のつもりですが、各省庁の縦割りを乗り越え引っ張っていくのが私の仕事でした。 この仕組みを生かして津波被災地の高台移転等では、用地取得の迅速化などを実現しました。ただし事業規模が大きく市町村だけでは対応できないので、独立行政法人都市再生機構(UR)をフル活用しました。URには長年培ってきたまちづくりのノウハウがあります。一例を挙げると、高台移転地整備のために山を削って出た土を運んで津波被災地のかさ上げに使いました。1日200台のダンプをもってしても6年かかると言われていましたが、URは長さ100㍍以上のベルトコンベアを用いて1年半で達成、工期を大幅に短縮できたのです。 URは民主党政権時、その存在意義が問われ、冬の時代でした。事業仕分けで『宅地開発等の開発事業は廃止』とされていました。URがなかったら、復興は大幅に遅れていました。これだけでも、政権奪還の意味が大きかったことがお分かりいただけるでしょう。 復興大臣時代、新たな施策として町外コミュニティーの核となる復興公営住宅整備など、特に子どもの屋内外の遊び場をつくる『子ども元気復活交付金』の創設を主導しました。初めに制度ができれば、その後も予算付けをして事業が動き続けます。あの時、動かすための仕組みを創ったのは大きいと思います。大臣主導で様々なアイデアを練り上げて実現し、やりがいがありました。 復興大臣を辞めてだいぶ経ちますが、今も復興政策に深く関わっています。復興加速化本部プロジェクトチーム座長として、『里山・広葉樹林再生プロジェクト』を林野庁と徹底的に議論して昨年創設しました。しいたけ原木としての利用が停滞している広葉樹林の計画的な伐採と更新を進めるもので、10年間に5000㌶を対象とする予定です。里山の除染とは、単に土壌を剥ぐのではなく里山を構成する広葉樹林を伐採し、新しく芽を出すよう促すことが本質です。誰も気づかなかった。初めて私が気づいたのです。 萌芽更新により里山が再生され、自然循環が蘇る。原発事故で滞った伐採を進め、里山にも復興を広げていきます」 ――東京電力は福島第一原発敷地内で溜まり続けるALPS処理水を春から夏ごろにかけて海洋放出する予定です。 「廃炉作業を促進するためには処理水を適切に処理するのが大前提です。トリチウムが出す放射線は極めて弱く、健康に影響を及ぼさないというのが科学的知見です。海洋放出する際にはトリチウム濃度を世界保健機関の飲料水基準値の7分の1程度にする計画で、国内外の原発でもトリチウム水は海に流しています。国際原子力機関(IAEA)など第三者機関の監視で安全・安心を担保することが必要です。風評被害については、対策の基金を設けており、迅速に対処します。万全の体制を整え国内外の理解を得る努力を続けていくしかありません」 ――衆院小選挙区の区割り改定を受け、地盤が新2区に再編されました。次期衆院選にはどのような戦略で臨みますか。 「これまでの選挙区に2市9町村が加わります。票数で見ると自民党が弱かった場所です。選挙活動に奇策はありません。やるべきことをやるだけです。私は政策を考えるのが好きで政治家になりました。課題があると、解決にはどのような制度が必要かと担当省庁と議論を交わして政策を実践し、実現してきました。新しい選挙区を回り、各地域の課題を発見すると『課題解決型政治家』としてのやる気がみなぎります。これまでと変わらず、地元の皆様の声に耳を傾けて政策に生かしていきたいです。これまでも、そしてこれからも、福島から国を動かす。選挙の結果は自ずと付いてくるはずです」 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 【菅家一郎】衆議院議員インタビュー

     かんけ・いちろう 1955年生まれ。会津高校、早稲田大学社会科学部卒。会津若松市議、福島県議、会津若松市長を経て2012年の衆院選で初当選。環境大臣政務官、復興副大臣などを歴任。  衆議院小選挙区の区割り改定で、本県は5議席から4議席に減った。会津地方と県南地方は新3区に再編され、自民党の新3区支部長には会津地方を地盤とする菅家一郎衆院議員(67、4期、比例東北)が就任。地元の範囲が広がり、有権者の声をどのように受け止め国政に届けていくのか、菅家氏に地方創生の在り方を聞いた。  ――衆議院小選挙区の区割り改定に伴う候補者調整の末、本県新3区の支部長に就任しました。経緯と選挙戦略についてうかがいます。 「本県は五つの選挙区から四つの選挙区に1議席減る結果となりました。旧第4選挙区は新たに県南を含めた第3選挙区に区割りが決まり、会津地方を中心に取り組んできた私と県南を中心に活動してきた上杉謙太郎先生との調整が党本部で慎重に検討されてきた経緯があります。 私は会津若松市長時代には大震災・原発事故が起こり、被災者の受け入れ、衆議院議員になってからはJR只見線の復旧、会津縦貫北道路、甲子道路の全線開通など地元の要望の実現に一つ一つ取り組んできました。その実績を評価していただいたのだと捉えています。今までの選挙結果は僅差で対立候補に力及ばなかったことは重く受け止めていますが、党本部が総合的に判断して、私を新3区の支部長として決定した責任を果たしていこうと思います。 上杉先生は、旧第3選挙区では地盤の県南地方で毎回票を積み上げ、前回衆院選では対立候補である玄葉光一郎氏を上回りました。有権者からの支持を党本部が評価し、比例代表の支部長として、名簿の上位に位置付けしました。新3区の市町村をまとめると、県内では最も広い面積です。上杉先生のお力をいただいて、私も上杉先生のために働いて連携を図っていきます。 地元の範囲が県内最大となりますが、有権者の皆様の声を一つ一つ受け止め、地方政治の最前線にいる市町村長と市町村議、県会議員のご助言も得て、それを与党議員として国政に届ければ、有権者からの応援という結果は付いてくると思います」 ――県南地方を地盤とする上杉謙太郎代議士は県衆院比例区支部長として比例東北で優遇措置となる運びですが、今後どのような協力関係を築いていきますか。 「自民党所属の県議の先生方は、会津地方には6人、県南地方には3人います。選挙区の面積は広くなりますが、上杉先生、9人の県議などあらゆる政治家とこれまで以上に密接な関係が築けます。一緒に選挙に臨めるのは心強いです。 次の選挙に関しては、私と上杉先生が積み上げてきた与党議員の経験を生かせるように2人とも議席を維持することが福島県のためになると思います。私自身に言い聞かせているのですが、『お任せ』ではだめだと。私は県南で上杉先生のお力を借りながら自分なりのネットワークを構築するのはもちろん、上杉先生には私の会津の知り合いを積極的に紹介し、つないでいきます。県内の声を政治に生かすという共通目標のために、小選挙区、比例区ともに票を上積みしていきたいです」 ――5月8日から新型コロナウイルス感染症の感染症法の位置付けが5類相当に引き下げられます。政府の対応の評価並びに、「ウィズコロナ」を見据えた経済対策についてどう取り組むべきですか。 「ワクチン接種をはじめ感染対策が浸透し、感染者は減少傾向です。現状に合うように法律を見直すのは必要だと思います。基礎疾患を抱える方、高齢の方が感染しないように医療機関や福祉施設での感染拡大を防いだ上で、感染症法の位置付けを引き下げるのは妥当だと考えます。 コロナ禍で飲食店、観光が大きなダメージを受け、それが長引きました。国も補償などで対応してきました。この間、感染者数は減少傾向が続いていましたが、感染拡大からの3年間は『日常生活を取り戻す』という気分に国民はなれなかったと思います。5類への引き下げで、職場の歓送迎会、地域住民の方々が懇親会などを臆することなく開けるようになったのは大きいです。自然と、地域経済が活性化へ向けて息を吹き返していくのではないでしょうか。 会津地方は県内でも有数の観光地です。海外からのインバウンドを増やし、交流人口を増やしていくことが、人口減少時代の地方創生の形だと思います。コロナの5類引き下げに合うタイミングで、只見線は昨年の10月に全線再開通し、観光路線として大いに賑わっています。 県南については、国道289号の甲子トンネルは首都圏から県への玄関口である白河市、西郷村と大内宿がある下郷町をつなぎます。県外からの観光客は戻りつつあり、観光に関しては県南と会津地方が結びついて相乗効果が見込めるのではないでしょうか」 ――自身が代表を務める「首都直下型地震対策バックヤード構想推進研究会」におけるこれまでの活動と今後の展開についてうかがいます。 「東京への人口・政府機能の過度な集中と、今後30年間で起きる可能性が高い首都直下型地震への対応を考えた政策です。国会の委員会が、首都圏が災害や有事で打撃を受けた時に代わりに機能を担う場、つまり『バックヤード』の最有力候補地の一つに挙げたのが福島県でした。 緊急事態下の首都圏を支えるには、安全で高速な交通網が整備されていなければなりません。バックヤードの一つである本県では、東北新幹線と上越新幹線のミッシングリンク(分断された路線)が磐越西線です。ここが高速鉄道でつながれば、環状新幹線となり、平時は東京から地方への分散の受け皿、緊急時は物資の供給や避難者の受け入れに役立ちます。研究会の活動が実り、国会で『地域公共交通の活性化及び再生に関する法律』の改正につながりました。 構想で特に重要なのが政府の司令塔機能の移転です。これはまだ明確に示されていないので、今夏には国土交通省の国土形成計画に取りまとめる予定です。政府機能の分散は政府自体がその方針を示すべきではないのか、そのような思いで私たち研究会は提言をまとめ、昨年12月に国土交通大臣と国土強靱化担当大臣に要望しました。我々研究会の意見を政策に生かせるようにさらに継続して活動していきます」 ――有権者へのメッセージをお願いします。 「新3区の支部長に就任させていただいたことに深く感謝申し上げます。厳しい選挙にもかかわらず応援していただいたおかげだと思っています。県南、会津地方と広い地域にまたがる選挙区の支部長ですが、その重みをひしひしと感じています。 全国で人口減少が進んでいますが、会津地方は特に影響が著しい地域です。高齢の方々が手厚い支援で健やかに暮らせるようにするのはもちろん、若い人が居心地の良い故郷にもう1回戻って、そこで安心して安全に仕事や子育てができるような環境を整えるよう尽力していきたいです。県南地方は、首都圏からの玄関口に当たり、地方分散の受け皿として重要です。両地方で、若い人たちが夢と希望を持って住み続けられるよう全力で取り組んでいきます」 【菅家一郎】衆議院議員のホームページ 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 【いわき市】内田広之市長インタビュー

    うちだ・ひろゆき 1972年3月生まれ。東北大教育学部卒。東大大学院教育学研究科修了。文部科学省教育改革推進室長、福島大理事兼事務局長などを歴任し、2021年9月の市長選で初当選。  ――市長就任から1年半が経過しました。この間を振り返って。 「就任当時、市が抱えているさまざまな課題について、『見える化』が図られておらず、青写真も示されていない現状にありました。そのため、昨年1年かけて議論を重ねながら『いわき版骨太の方針』を策定し、今後のビジョンをお示ししました。 教育・子育て、農林水産業の担い手不足、医師不足、産業振興、若者の雇用確保、公共交通整備などについて、骨格をつくり見通しを示しました。さらに各地区の区長を中心とした話し合いの場に足を運び、課題や取り組み状況を共有しました」 ――優先的に取り組みたい課題は。 「特に重視しているのが、若者の人口流出です。高校卒業後、進学・就職で約6割が首都圏などに流出します。人口減少につなげないためには、地元に帰りたいと思ってもらえる環境づくりが大事であり、産業振興や若者の雇用確保を生み出すことが大事です。本市は製造品出荷額等が東北で1位の都市であり、ものづくりや素材産業の分野で、いかに若者にとって魅力的な雇用を生み出せるかがポイントになると思います。 4月1日、浪江町に福島国際研究教育機構(エフレイ)が開設されました。これらを見据えて、本市では課長級のエフレイ連携企画官を2人配置しました。また、4月15日には市役所内郷支所にエフレイの出張所が開設され、市内で設立記念シンポジウムが開催されました。世界トップレベルの研究者が集まる同機構と連携し、市内の既存産業と研究が融合していくことで、専門性が高い分野の若者に市内で働いていただけることを期待しています。若い力が活発になることが真の復興であり、今年はスタートの年だと思っています」 ――新型コロナウイルスの5類移行に伴い、観光振興をはじめコロナ禍で制限されてきた事業に着手できることと思います。 「コロナ禍前の市内入り込み客数は約800万人でしたが、2022年は約540万人でした。今後はウィズコロナの時代になり、一時的に感染者が増加しても、行動制限・イベント自粛を呼び掛けるのではなく、各自が対策しながら開催していくことになると思います。 本市では昨年から花火大会、いわき七夕まつり、いわきサンシャインマラソンなどのイベントを順次復活しており、海水浴場もオープンしました。今年はそのほかのイベントも本格的に再開する予定で、市外から訪れる人をしっかりおもてなししていきたいと考えています。 入り込み客数増加という意味では、サッカー・いわきFCのJ2昇格により、同チームや対戦チームのサポーターが多く足を運ぶようになったことも大きいです。先日、JR磐越東線のいわき―小野新町駅間が赤字になっているという発表がありましたが、いわきFCの試合などと連携し利用を促すのも一つの方法だと思います。沿岸部にサイクリングロード『いわき七浜街道』を整備しているので、自転車関連の合宿なども積極的に誘致したいですね」  ――市では健康ポータルサイトを設立し、健康指標改善に取り組んでいますが、今後の展望は。 「65歳の人が元気で自立して暮らせる年数を算出した『お達者度』を県内13市で比較すると、本市は男女とも県内最下位です。特定健康診断の受診率もワーストで心臓・脳血管疾患による死亡割合は他市と比べて高い。健診を怠り、病気が悪化して治療が遅れる傾向が読み取れます。塩分摂取率は全国平均より高く、生活習慣も健康指標の低さに影響していると思われます。 子どものうちからの啓発が必要だと考え、現在、市内のモデル校の中学2年生を対象とした事業を実施しています。実際に早期指導は改善効果があることが分かったので、今後対象校を拡大し、学校を通して家庭に健康意識が広まることを期待しています。また、高齢者向けにフレイル(加齢により心身が衰えた状態)の疑いがないか検査を実施したり、スポーツイベントで血液検査や血圧測定を行ったり、シルバーリハビリ体操を普及させることで、介護予防の取り組みも広めています。加えていわき市医師会、いわき市病院協議会と連携協定を締結し、健康寿命を延ばす取り組みも進めています」 ――近年、激甚化する自然災害への対策が不可欠となっています。 「さまざまな対策を講じていますが、その中から2つ紹介します。 1つは要支援者の把握です。東日本大震災や令和元年東日本台風では、思うように動けない要支援者が逃げ遅れて亡くなったケースが確認されました。そこで個別に避難計画を策定することを決め、特に、災害リスクが高い地域の要支援者からヒアリング調査を実施し、災害時の避難体制の整備を進めています。次の災害時は『逃げ遅れゼロ』を実現したいと思います。 もう一つは防災士の活用です。本市には防災士の資格を持つ人が県内最多となる900人以上います。市内には町内会が529団体あり、403団体の自主防災組織が立ち上げられていますが、人口減少や高齢化の進展の中、訓練などの活動状況に差が生じてきているようです。そこで、防災士に災害時における地域のリーダーとして活躍してもらおうと考え、昨年、全国初となる『登録防災士』制度を作りました。 令和元年東日本台風で越水した夏井川や好間川は川底の掘削がだいぶ進んでおり、同じ規模の雨が降っても水害は防げそうですが、自然災害の甚大化が進んでいるので、防災対策が重要になると考えています」 ――国・東京電力は福島第一原発敷地内に溜まるALPS処理水の海洋放出を春から夏にかけて実施する方針です。沿岸部の自治体としてどのように受け止めていますか。 「国・東電は住民向けの説明会を開いたり、福島県産品のPRイベントを開催しており、アンケートなどを見る限り、国民への理解も少しずつ広まっているように思います。ただ、まだ合意が整う途上にあります。国・東電は漁業関係者の皆さんに対し『関係者の理解なしにいかなる処分も行わない』と約束しているので、まずは理解醸成をしっかりやってほしい。そのためには、対話を重ねるしかないのではないでしょうか」 ――今年度の重点事業について。 「特に強調しておきたいのが、子育て関係の施策です。国の方で異次元の子育て支援策を掲げているので、本市でも連動して手厚くしていきたい。子育て世帯の支援としては、部活動などで全国大会などに出場する選手への支援メニューを充実したり、インフルエンザの予防接種費用の助成を実施しました。学校給食の無償化についても全国で議論になっているので、市長会を通じて国へ伝えていきたいと思います」 いわき市のホームページ 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 【矢祭町】佐川正一郎町長インタビュー

    さがわ・しょういちろう 1951年11月生まれ。茨城県立大子第一高校、富士短大卒。家業の㈱佐川商店を経営。矢祭町議1期を経て、2019年4月の町長選で初当選。現在2期目。  ――4月の町長選で無投票再選されました。 「1期4年間の役割の重要さをあらためて実感しましたし、1期目の中での積み重ねがあったからこそ、今回、無投票でまた町政の舵取りを担う立場に立てたと考えています。自分の考えを住民の皆様に伝えるという意味では選挙態勢を整えるのは不可欠ですが、選挙のための政治ではなく、町民本位の行政でなければならないので、これからも町民を思い、共創のまちづくりを進めていきます」 ――今年度の重点事業について。 「笑顔あふれる共創のまちづくりをコンセプトに、町民と地域行政が一体となって魅力あるまちづくりを目指す、というのが2期目の大きな目標です。それを実現するため、6月からは4年ぶりとなる地域懇談会を実施するほか、各地域の住民の皆様にもまちづくりに参加できるような場を提供し、皆様の要望や提言を真摯に受け止めて町政に反映し、共同参加型のまちづくりに取り組んでいきます。 また、町内の空き家対策も重要課題で、3月末には㈱AGE technologiesと連携協定を結び、空き家の適正管理・活用に努めているほか、町内に発足したNPO団体に空き家バンク制度を有効活用してもらい、地域の課題に密着した施策を打ち出していく考えです」 ――2期目の抱負について。 「本町を取り巻く課題は様々あり、人口減に対してはどうしてもマイナスに捉えられてしまいますが、教育面は子ども一人ひとりに対してより多くのリソースを割くことが可能になります。マイナス面ばかりに目を向けるのではなく、人口減だからこそできる施策も開拓していきたいと考えています。また、本町を含めた県南地域の交流人口・関係人口創出という意味では、行政間の連携も必要不可欠です。加えて本町は茨城県とも隣接しており、関東圏との玄関口に当たるので、水郡線の活性化や久慈川の防災、国道118号のインフラ整備など、茨城県との交流深化にも努めていきます。 本町にゆかりのある偉人として吉岡艮太夫という人物がおり、日米修好通商条約批准の際に若き日の勝海舟やジョン万次郎、福沢諭吉らと軍艦・咸臨丸に乗り込んで日本初の太平洋横断任務に就き、帰国後は幕臣として徳川家に忠義を尽くしました。その生涯や足跡を周知していきたいと考えています。 ほかにも道の駅構想の具体化や駅前開発、公民館改修といったハード面の整備、町内事業者の担い手不足解消や空き店舗解消といったソフト面の問題解決に尽力し、町民の皆様の期待に応えていきたいと思っています」

  • 【三島町】矢澤源成町長インタビュー

     やざわ・げんせい 1951年生まれ。東洋大学経済学部卒。76年に三島町職員となり、生涯学習課長、政策担当課長などを歴任。町教育長を経て、2015年の町長選で初当選。今年4月の町長選で3選を果たした。  ――4月23日投票の三島町長選では、激戦を制し3選を果たしました。選挙戦を振り返って。 「私が今まで進めてきた取り組み、2期務めてきた実績、今後の4年間を見据えた本町の方向性について、町民の皆さんに訴えたことが認められたのかな、とあらためて実感しています。町長の任に就かせていただくにあたって、国、県の動きを見ると、これからの時代は経済成長を前提とした施策ではなく、ある程度成熟社会を踏まえた方向性に転換していると実感します。本町でも、医療・介護・福祉・保健・環境・自然保護・再生という言葉をキーワードとする地域社会の創造が私の使命であると痛感しています」 ――2期8年の総括を。 「この間、特に注力してきた分野が医療・福祉です。地域住民の生活を守るため、地域包括支援センターや在宅医療の充実に努めてきました。また、本町をはじめ、柳津町、金山町、昭和村の医療圏を構成する4町村での連携のもと、県に対し、老朽化が著しい県立宮下病院の改善策について要望を重ねてきました。そうした中で、町民運動場への移転・新築が決定し、『有床診療所』として2027年度に開院の予定です。これに伴い、在宅医療センターも新設されるなど、県内でも特に過疎化や高齢化率が高い特性に合わせた地域医療の拡充が期待されます。 今後も構成自治体同士がしっかりとスクラムを組みながら同病院と一体となり、過疎地域における医療拡充を図っていく必要があります。医療・介護・保健・福祉が集約される地域包括的役割を担う同センターは、地域住民が安心・安全に暮らせる心のよりどころと言っても過言ではありません。 一方、同病院整備を足掛かりに道路整備にもつなげていきたいと考えます。現在、財政難や公共事業の削減も相まって本町の雇用を下支えする建設業は厳しい状況です。今後の建設予算の獲得には相応の合理性が一層問われるものと考えます。同病院移転を契機に周辺の道路のみならず、医療圏内の交通を円滑にするための道路整備が必要となるので、今後も関係機関に対し積極的に働きかけを行っていきます。そのほか、柳津町・三島町学校給食センターの整備、子育て支援策として給食費と保育料の無料化や紙おむつの支給、町営バスの減免制度創設、若者定住促進事業を展開してきました」 ――3期目で目指す町政運営の方針についてうかがいます。 「私の政治哲学は〝本町の守るべきものはしっかり守り、変えるべきものはしっかり変えていく〟であり、端的に言えば『温故知新』と『不易流行』に尽きます。それらに基づいた町政運営を展開していきます。 1974(昭和49)年以降、本町では、5つの運動を展開してきた経緯があります。具体的には、①都市と農村の交流を通した地域活性化を狙いとする『ふるさと運動』、②伝統行事の数々を集落の誇りとして守り連帯意識を醸成する『1地区1プライド運動』、③伝統的なモノづくりの技と自然や地域資源を現代生活に生かしながら交流人口創出を図る『生活工芸運動』、④県立宮下病院の拡充や健康寿命の延伸を狙いとする『健康づくり運動』、⑤健康づくりと農業の連携・融合を目指した『有機農業運動』――であり、まちづくりの根幹になっています。地域をどのように活性化するのか、そのためには地域の資源をどう活用するのか、引き続き『温故知新』と『不易流行』の精神で取り組む考えです」 広域連携で活性化図る  ――周辺自治体との広域連携の重要性について訴えてきました。 「周辺自治体を巻き込んだ広域連携のメリットは、各々の自治体における短所を互いに補い合える点のみならず、各自治体が持つ長所を認め合いながら相乗効果を発揮して『点から面』への地域振興を図っていける点だと考えています。そのためにも周辺各自治体と『Win―Win(ウィンウィン)』の関係を構築していきたいと強く思います。 現在、本町の人口は1400人で、人口減少と少子高齢化が加速している状況にあります。この問題に対処するためにも広域連携は大変重要になっていきますし、本町を含む過疎地を抱える山村の自治体が豊かさを維持するための至上命題と言えます。現時点では、先述した宮下病院を中核とする4町村の医療圏構想などで具現化しています。 柳津町、昭和村との連携による『特定地域づくり』の活用も重要です。教育や文化も含めた『総合的企業』という観点で、地域の文化の香りを生かした広域連携を展開し、活性化を図っていく考えです」 ――3期目の重点事業について。 「1つは、『結婚・出産・子育てしやすい環境の整備』です。結婚祝い金制度の充実をはじめ、世代間の垣根を超えたさまざまな交流、きめ細かな子育て支援策、保育所や学童保育の充実を図っていく考えです。 2つは、『地域資源を生かした仕事を創る』です。環境に配慮した地域産業創生を目指し、4年間にわたり、環境省からご指導いただきながら取り組んできました。この間、『三島町における木質バイオマス活用を契機とした地域循環共生圏構築事業』、『三島町ゼロカーボンビジョン』など、環境省と連携しながら協定を締結し、環境問題についていろいろ議論を重ねてきました。 再生可能エネルギーにも注目しています。森林を生かした木質バイオマス発電、水を活用する小水力発電を積極的に展開して『産業化』を図り、循環型地域経済社会の創造を目指していきます。また、桐や編み組、温泉、会津地鶏、カスミソウ、健康野菜、山菜など魅力ある地域資源をさらに磨き上げ、地場産業の振興による雇用の拡大、農・商・工連携による地域で稼いだお金を地域に還元する地域経済循環の構造を一層盤石にする考えです。 3つは、『交流人口から関係人口・定住人口につながる流れをつくる』です。『サイノカミ』をはじめ、雛流し、虫供養など本町独自の地域文化をはじめ、自然との共有による豊かな暮らしなど、本町の魅力を積極的に発信し、交流人口の拡大はもちろん、関係人口の創出、ひいては定住人口の向上に努めていきたいと考えます。併せて、町内の空き家等の利活用にも注力していきます。 結びに、『生涯活き活きと過ごせる魅力ある地域を創る』です。『みしま健康ポイント事業』、有機農業などの健康づくりをはじめ、生涯学習の充実、町内集落における民俗文化の魅力発信による元気なまちづくりに向け鋭意努めていきます。そのほか、会津地鶏加工場の建設をはじめ、ガソリンスタンドや通信情報施設の整備にも着手します」 三島町のホームページ

  • 【川内村】遠藤雄幸村長インタビュー

    えんどう・ゆうこう 1955年1月生まれ。原町高、福島大教育学部卒。㈲わたや社長。川内村議を経て、2004年の村長選で初当選。20年4月の村長選で5選を果たした。  ――新型コロナウイルスの位置づけが5類に引き下げられました。 「5類引き下げに伴い対策本部を解散しましたが、今後感染拡大が続いた時には再度立ち上げるなど柔軟に対応していきます。今後の感染状況を見ながら必要に応じた支援をしていきたいと思います。 村内事業所はコロナ禍と燃料費高騰で打撃を受けており、村としても支援してきました。飲食店に関しては、各種会合が再開されるなど、少しずつ回復している実感があります。 イベントも、例年より規模を縮小するなどしてマラソン大会や秋祭りなどが再開されてきています。感染状況を見ながらですが、今年は通常通り開催したいと考えています」 ――村内産ワインの反響はいかがですか。 「昨年春に白ワイン、秋に赤ワイン、12月にスパークリングワインを販売したところ、おかげさまで在庫がなくなるほど反響をいただきました。今年は出荷量を増やし、全12銘柄、約1万3000本の出荷を見込んでいます。販売店や首都圏でPRを兼ねた即売会・試飲会を開催しており、ふるさと納税の返礼品としても検討しています。 村内には、生食用のブドウの栽培農家も約40軒あり、こちらも高評価をいただいています。ビニールハウスを活用して栽培している稲作農家もいます」 ――村といわき市小川町をつなぐ国道399号十文字工区が昨年開通しました。 「いわき方面から村内の入浴施設などを訪れるようになっています。詩人・草野心平とゆかりが深い本村と小川町の商工会が連携し、誘客事業を展開していく動きも生まれています。さらに整備中の県道36号小野富岡線が開通すれば、田村市や郡山市に行きやすくなり、あぶくま高原道路を経由することで須賀川市や白河市も生活圏になります。道路インフラが整備されることで医療、通勤・通学面での選択肢が増え、復興加速につながっていくことが期待されます」 ――今年度の重点施策について。 「役場庁舎が築50年超となり、度重なる地震で損傷していることもあって、建て替えを予定しています。有識者を交えた検討委員会で検討を重ねた結果、『新庁舎を新築することが適当』との答申をいただきました。職員や村民等の声も聞きながら、今後、基本・実施設計を策定し、庁舎建設を行っていくことになります。新たな庁舎は村の防災拠点かつシンボリックな存在にしたいですね。 庁舎建設と併せて、義務教育学校設立により廃校となった旧川内中学校の利活用も検討していきたいと考えています」 川内村のホームページ

  • 【会津美里町】杉山純一町長インタビュー

    すぎやま・じゅんいち 1957年生まれ。東京農業大農学部卒。衆議院議員秘書を経て、2003年から県議連続5期、その間議長を務めた。2021年4月の会津美里町長選で初当選。  ――町長就任から2年が経過しました。 「就任当初から新型コロナウイルスの感染が広がり、ワクチン接種や感染防止対策はこれまで未経験だったので大変苦労しました。 選挙公約に掲げた中では、一番重要なのが人口減少対策で、若者定住支援や子育て世代の支援に注力しました。また、町長就任前から町内の温泉施設の売却・譲渡の話があり、本郷温泉湯陶里は令和2年に無事譲渡でき、新鶴温泉は、昨年あらためて公募をかけ、会津若松市の会社に売却が決定し、今年4月に『新鶴温泉んだ』として生まれ変わりました」 ――昨年末に㈱ウェルソックと地域包括連携協定を締結しました。 「本町と㈱ウェルソックの包括連携協定は、高速通信網を活用した『産業のDX』や『暮らしのDX』の推進等を図ることを目的としています。協定内容は、①町内における各種産業のスマート化実証実験の誘致促進に関すること、②ロボットやIoT等の最新技術の実装促進に関すること、③地震等の災害発生時における町民の安全確保に関すること、④町民の安全・安心の向上に寄与すること、⑤その他、高速無線通信網の活用促進、地域振興に関すること、です。主な取り組みとして、昨年度に整備を進めた町内Wi―Fi環境を活用したインターネット接続サービスを4月28日から開始しており、今後は防災や防犯など様々な分野に活用していきます」 ――本郷庁舎の改修が進められています。 「本郷庁舎は『町民が集い、自ら学び、活動を支援し、人と地域をつなぐ拠点』を基本理念に、生涯学習センター機能とともに支所機能と福祉センターの一部機能を備えた施設になります。令和6年1月の開館に向けて準備を進めており、進捗率は5月末時点で89・2%と、予定より早い進捗になっています」 ――今年度の重点事業について。 「今年度は第三次総合計画後期基本計画3年目の中間年度となり、これまでの取り組みへの評価を行いながら、職員一丸となって事業を効果的に進めていきたいと考えています。 特に重点的に進めていきたいのが教育環境の充実と人口減少対策です。教育については、ICTを活用した教育環境整備のため、デジタル教科書導入や家庭でのタブレット学習を推進するほか、9年間教育の先進的実践を進めるため、本郷地域に本町初となる義務教育学校の開校を令和6年度を目標に進めていきます。人口減少対策については、移住対策の充実を図るほか、本年度は新たに小中学校入学児、中学校卒業生徒の保護者に対して子育て支援金を交付し、経済的な支援を充実させていきます」 会津美里町のホームページ