【須賀川商工会議所】菊地大介 会頭インタビュー

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【須賀川商工会議所】菊地大介 会頭インタビュー

きくち・だいすけ 1972年10月生まれ。㈱あおい代表取締役。東北学院大卒。2019年11月から須賀川商工会議所副会頭を務め、昨年11月から現職。

 新型コロナウイルスの感染拡大がひと段落し、経済の動きの再生に期待が寄せられている。県内経済界ではどのように対応していく考えなのか。須賀川商工会議所の菊地大介会頭(㈱あおい代表取締役)にこの間の会員事業所の状況やアフターコロナに向けた展望、さらには物価高騰やデジタル化への対応などについて、語ってもらった。

 ――昨年10月の臨時議員総会で新会頭に選任されました。就任から半年経過しましたが、現在の率直な感想を教えてください。

 「3年前の副会頭就任後、すぐに新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、ほとんど大きな動きが取れなかった3年間でした。新型コロナウイルスの5類引き下げが決まり、徐々に社会の正常化が図られる中で会頭に就任させていただいたことを感慨深く受け止めています。

 就任のあいさつでも述べましたが3年の任期中に、①物価高騰への対応、②デジタル化の推進、③アフターコロナに向けての対応に取り組んでいきたいと考えています。

 新型コロナウイルスの感染拡大がひと段落し、人の動きが活発になっていますが、飲食業・観光業の事業所ではこの間、金融機関から借り入れしてきたところが多く、今後、本格的に返済が始まります。そうした事業所へのサポートを行っていきたいですね」

 ――物価高騰が家計に深刻な影響を与えており、国では大手企業などに対して賃上げ要請を行っています。中小企業を支える商議所として、どのように対応していく考えですか。

 「会員事業所には中小企業が多く、価格転嫁や賃上げなどに対応できず苦しんでいます。固定費が上昇する中で賃上げを行うのはとても勇気がいることですが、この時期に賃上げを行わなければ人手不足になってしまうという問題もあります。

 私は建設業を経営していますが、国土交通省関東地方整備局では入札時、賃上げを行っている事業所に、ポイントが加算されるようになりました。今後、県・市町村発注の工事でも同じような仕組みが設けられる可能性があります。国の要請を受けて大手企業は賃上げを発表しており、中小企業も賃上げについて考えるときが来ていると思います」

 ――デジタル化の推進を進めていますが、現在の進捗状況はいかがでしょうか。

 「副会頭を務めていた昨年、『DX(デジタルトランスフォーメーション)推進研究会』を立ち上げました。今後アフターコロナに向かっていく中でDXを進めていかなければ立ち遅れてしまうと思います。高齢の方などは理解するのが難しい分野ではありますが、例えば商店街の中でグループラインでのやり取りを行うだけでも十分なDXです。

 飲食店ではスマホで注文できるアプリを活用するなど、簡単なことでもできることが多いです。会員事業所には中小企業が多いだけに、商議所として積極的に支援していきたいと考えています」

インバウンド増加に期待

 ――ウィズコロナ、アフターコロナを見据えて、今後どのような形で事業を展開していきたいと考えていますか。

 「令和4年度末、令和5年度初めには懇親会や歓送迎会などが行われ、街なかにもかなり人出が戻ってきたようです。 期待しているのは国内も含めたインバウンドの増加です。特に今年は3月に福島空港が開港30周年を迎え、沖縄便をはじめベトナム便が12便来ます。福島空港では那覇空港とともに連絡促進協議会を立ち上げており、互いに連携しています。

 私は同協議会の会長も兼任していますが、沖縄県は昨年本土復帰50年の節目を迎えたこともあり、注目を集めているので、県と連携しながら沖縄便再開に向けて動いていきたいと思います。

 観光物産振興協会長も兼任していますが、コロナ禍を経て観光のスタイルが変わっています。自然とのふれあいや文化交流、アクティビティを楽しむ『アドベンチャーツーリズム』が人気を集め、高付加価値ツーリズムも注目されています。

 体験型観光という面ではサッカー・いわきFCがJ2に昇格しましたが、来県するサポーターの福島空港利用を見越して、いわき商工会議所と協定を結びました。今後の仕掛け方によっては、観光で人を呼び寄せることができると思っています」

 ――観光ということでは、昨年、「松明あかし」が3年ぶりに有観客開催となるなど、イベントも徐々に再開されるようになっています。今後の展望はいかがでしょうか。

 「この間、夏の風物詩である須賀川市釈迦堂川花火大会は花火を打ち上げるだけで露店はなく、松明あかしは無観客で大松明に火をつけただけでした。それだけに、昨年の松明あかしの有観客開催は多くの市民が待ち望んでいたと思います。今年は花火大会に関しても通常開催され、さまざまな露店も従来通り出店される見通しです。

 花火大会や松明あかしは一時的に交流人口が増えるイベントに過ぎませんが、市内には継続的に観光客が訪れる歴史的な史跡などがあるわけではないので、本市では意識的に数多くのイベントを開催してきた経緯があります。今後は先ほども話した通り、県とも連携を図りながら、今までとは違った観光を模索していきたいと思います」

 ――昨年発生した福島県沖地震の影響について。

 「令和元年東日本台風の被害やコロナ禍に加え、2年連続で地震が発生し、四重苦に苦しむ事業所も多い現状にあります。そういった事業所に対しては、商議所としても伴走型支援を続けていきたいと思います」

 ――ウルトラマンによるまちづくりについて。

 「震災・原発事故後、市と円谷プロダクションが協定を締結し、市中心部にモニュメントを建造するなど、互いに連携を図ってきました。メディアの露出も増加し相乗効果で市内の飲食店が紹介されるなど、大きな効果がありました。締結から10年目を迎え、あらためて市と同プロダクションがまちづくり連携協定を結びました。今後は市とともに、ソフト面でもウルトラマンのまちづくりを進めていきたいと思います。福島空港にも新たなモニュメントを建造する計画があり、空港を盛り上げていきたいと思います」

 ――今後の抱負。

 「100年に一度と言われるパンデミックやロシアのウクライナ侵攻など、社会情勢が大きく変化しています。人口減少が進む地方では地方創生が叫ばれ、各地域が競って地域振興に取り組んでいます。変化に乗り遅れないようにしつつ、住みやすく魅力ある須賀川市の実現のため、努力していきたいと思います」

須賀川商工会議所ホームページ

掲載号:政経東北【2023年5月号】

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