8月に、浅川町で飼育されていた牛の肉から国の基準を超える放射性セシウムが検出され、地元紙などで報じられた。
県が公表している「農林水産物 加工食品モニタリング情報」を見ると、8月22日の検査でセシウム137が119ベクレル検出された検体が確認できる。国の基準である1㌔当たり100ベクレルを超える数値だ。そのほかにも、同日、浅川町産の牛肉から63・9ベクレルが検出された検体もあった。
この前後1カ月分くらいのモニタリング検査結果を見てみたが、その2件以外は、すべて「検出せず」となっており、原発事故から13年以上経ったいまからすると、検出されること自体が非常に珍しいケースと言える。しかも、基準値を超えるほどだから、よっぽどだ。
その後の県の調べで、この牛に原発事故直後に集められた稲わらを食べさせていたことが原因だと判明した。石川町の元農家が原発事故の直後から保管していたものを、今年7月下旬に浅川町の畜産農家に譲渡した。その稲わらからは1㌔当たり1万ベクレルの放射性セシウムが検出されたという。
これを受け、県は事故後の調査で同様の稲わらを保管していた農家を対象に稲わらを処分したかどうか調査したところ、3軒の農家が処分しないまま保管していることが分かり、国や市町村と連携して適切に処分する方針を示した。
牛肉には大きく分けて2種類ある。1つは最初から肉牛として飼育された「飼育牛」、もう1つは繁殖用、あるいは乳牛として飼育されていたが、その能力が低下したため、牛肉にされた「廃用牛」。
現在のモニタリング検査では、前者は各農場で年1頭以上、後者は全頭検査が行われている。その理由は飼育牛は飼育期間が30カ月程度と短いこと。これに対し、廃用牛は長期間にわたり飼育されているため、全頭検査を実施しているのだという。
今回、問題になったのは廃用牛で全頭検査の対象だった。そのため、モニタリング検査で基準値超が分かり、市場に出回るのを未然に防ぐことができた。
県によると、「今回の件は、事故直後から保管されていた稲わらを食べさせたことが原因で、稲わらが渡った経路や、ほかに同様の(事故直後から保管されていた)稲わらがあるかどうかということが把握できたので、今後、同様のことが起きることはないと考えています」とのことだった。
それにしても、13年経っても、稲わらから1㌔当たり1万ベクレルの放射性セシウムが検出されたというのは少し驚いた。モノ・場所によっては、まだ相当な放射性セシウムが残っているということを、あらためて感じさせられた。
もう一つは、原発事故直後の2011年7月にも、浅川町の畜産農家から出荷された食肉用の牛42頭が、高濃度の放射性セシウムが含まれた稲わらを食べていたことが分かり、騒ぎになったことがある。この時はすでに流通していたから、より大きな問題となったが、また浅川町から「牛肉問題」、「稲わら問題」が出たのはたまたまか、それとも管理などの問題があるからなのか。