開業10年で閉院【なこそ病院】の〝闇〟

開業10年で閉院【なこそ病院】の〝闇〟

 2014年に新築された、いわき市勿来町の「なこそ病院」が今年春から夏にかけて突然解体された。建物には県が多額の補助金を支給していたが、病院を運営する医療法人社団と県との間で必要な手続きが終わる前に解体されたため、県は「甚だ遺憾」と語る。同病院は2023年から休眠状態となり、医師や看護師の給料未払いも常態化。民事訴訟も2件起こされていた。開業からわずか10年で消えた同病院の〝闇〟に迫る。(佐藤仁)

復興補助金受けた法人が乱脈経営で裁判沙汰

なこそ病院の外観
なこそ病院の外観
綺麗に整地された病院跡地(奥に見えるのはマルトの店舗)
綺麗に整地された病院跡地(奥に見えるのはマルトの店舗)

 なこそ病院が建っていたのは、いわき市勿来町窪田地内。すぐ隣では地元スーパー・マルトのほか、くすりのマルト、衣料のファミリー、マルト保育園などマルトグループの施設が並ぶ「マルトSC窪田」が営業している。近隣住民いわく「移動の足がない高齢者が通院のついでに買い物できるよう、病院が無料送迎バスを走らせていた」が、その病院は今、跡形もない。

 不動産登記簿を見ると、土地はマルトグループの不動産賃貸を行うマルトグループホールディングスの名義になっている。病院はマルトの土地に建っていたわけだ。

 一方、建物は医療法人社団栄央会(住所はなこそ病院と同じ)の名義で、実物は確認できないが、登記簿によると構造は「鉄骨造陸屋根3階建、1階1584平方㍍、2階1584平方㍍、3階954平方㍍」となっていた。「2014年9月4日新築」とも記されていた。

 たった10年で新しい病院がなくなる――それだけで奇々怪々だが、さらに登記簿を追うと▽いわき市が2022年7月に差押、▽地裁いわき支部がマルトグループHDの申し立てを受け2023年3月に処分禁止仮処分(建物収去請求権保全)、▽郡山市が同年同月に参加差押、▽北茨城市が今年1月に参加差押とあり、税金滞納やマルトとトラブルになっていた様子もうかがえる。

 新築から解体までに一体何があったのか。その経緯に触れる前に、病院が新築されることになった背景を説明したい。

 なこそ病院の前身は医療法人社団妙医会小川病院(いわき市勿来町関田)と言った。同病院は経営難で、いくつかの企業から支援を受けていたが2006年に経営破綻した。そこを買い取ったのが医師の永井博典氏で、永井氏は名称を医療法人社団栄央会なこそ病院に変更した。

 この時、なこそ病院は建物をリニューアルしていたが、それから5年後に発生した東日本大震災で周辺に津波が押し寄せ、建物が地震で損壊し、市から半壊認定を受けた。永井氏は、海岸近くに立っていた病院を高台に新築移転させることを検討。候補地に浮上したのが、前述のマルトが所有する土地だった。

 なこそ病院の内情を知る事情通によると「くすりのマルトで介護施設を建てようとしたが、なこそ病院の移転話が持ち上がり、土地を貸すことを決めた」という。

 永井氏にとっては、建物に県が補助金を支給してくれることも新築移転の後押しになった。

 2012年2月に策定された「県浜通り地方医療復興計画」の中で、県は浜通りの急性期・回復期・慢性期を担う医療機関の機能強化を目的に、なこそ病院を「急性期リハビリと在宅療養支援を行う病院」に位置付け、別掲の内訳で約7億5400万円を補助した。このうち、建物に支給された補助金は約6億3900万円に上る。

県が支給した補助金の内訳	

●施設整備
1億4074万円(2013年)※補助率1/2以内
3億4458万円(2014年)※補助率1/2以内
4031万円(2015年)※建設コスト高騰対策

●設備整備
1億1320万円(2014年)※補助率2/3以内
→建物への補助金計6億3885万円

●自家発電機器整備事業
383万円(2014年)※補助率1/2以内

●災害時医療用水確保事業
1129万円(2014年)※補助率2/3以内

●医療情報連携基盤整備事業
6048万円(2015年)※補助率2/3以内
3942万円(2015年)※補助率10/10以内

→補助金合計7億5388万円

 実際の事業費は分からないが、県の補助率が2分の1から3分の2なので、単純に補助金を倍にすると建物は12~13億円、総事業費は15億円程度かかったとみられる。

 こうして新築移転されたなこそ病院は内科総合、循環器内科、整形外科、耳鼻科、消化器内科、リハビリ科を備え、ベッド数65床(一般病床32床、療養病床33床)で2014年11月から診療を開始した。

 「開院当初は放射線関連の検査に来る人が多かった。それが落ち着くと次第に内科が診療の中心になったが、特に好調だったのは健康診断や各種検査だった」(事情通)

 ある建設会社社長は「3年くらい前まで会社の健診で使っていた。早く終わるし、料金も安かった」と言い、地元の高齢事業者も「なこそ病院で受けた検査で脳梗塞を見つけてもらい、市外の病院で手術した」と自身の経験を振り返る。

 「開院に合わせて高額な検査機器を揃えたので、地元の病院から『検査は全部おたくに回す』と言われていた」(事情通)

 だが、経営は徐々におかしくなっていく。原因は大きく四つあったと言われる。

新築前に複数の告発投書

 一つは医師不足。整形外科や耳鼻科には腕利きの医師がいたが、内科医がおらず、理事長の永井氏は麻酔科医のため、内科医を派遣してもらうコネを持たなかったという。

 二つは永井氏の経営感覚の無さ。職員が決算等を説明しても「なんとかなるでしょ」と重く受け止めず、傍目には病院経営を分かっていない人に映ったという。そもそも診療科目にない麻酔科医のため、頼りになる存在とはなり得なかったようだ。

 三つは借金返済。栄央会は2014年に独立行政法人福祉医療機構から6億5000万円の融資を受けたが、最初の5年間は無利息、その後の2年間は年0・4%で、7年目から年1・3%を支払う契約になっていた。にもかかわらず元金の返済は進まず、利息の支払いが始まると尚更滞ったという。

 ちなみに栄央会は福祉医療機構のほかに、ひまわり信用金庫から3億6400万円、JAいわき市(現JA福島さくら)から3億円、日本政策金融公庫から5000万円、大東銀行から4000万円、日医リースから5000万円の融資を受けていた。福祉医療機構からは6億5000万円とは別にコロナ対応資金5000万円を借りており、借金総額は15億0400万円に上った。

 四つは事務長の死。正確な日付は定かでないが、前身の小川病院時代から事務長を務めていた石原英昭氏が亡くなったことは「実質的に経営を切り盛りしていただけに大きな痛手だった」(事情通)という。

 これら四つの原因は新築移転後に浮上したが、実は、不穏の予兆は開院前からあった。2012年11月から2013年8月にかけて、病院の不正を告発する匿名投書がマスコミに複数寄せられていたのだ。

 本誌編集部にも計6通届いたが、そこには「なこそ病院は経営的に苦戦しており、補助金目当てで新築移転しようとしているので、県は補助金を支給すべきではない」と書かれていた。それ以外にも▽医師・看護師を水増しして診療報酬を請求、▽麻酔科医の理事長による整形外科診療、▽当直医不在が多い、▽前身の小川病院時代からいかがわしい人物の出入りが頻繁にあった――等々が細かく記されていた。

 匿名とはいえ内部のことを知らなければ書けない投書が連続して届いたため、本誌は当時、なこそ病院を取材。この時、記者と面会したのが生前の石原英昭事務長だった。

 石原氏は投書の内容を否定し「いわき市医師会と県からも『投書に関する事実確認をしたい』と言われたので、資料を見せて説明したら理解してもらえた」「不正が見つかれば県の補助金はとっくに取り消されている」と述べたが、一方で気になる発言も。「投書が送られた背景には病院内部の主導権争いがある?」という記者の問いに、トラブルの詳細は語らなかったが「だいたい推測通りだと思います」と答えたのだ。

 石原氏が亡くなった以上、真相は藪の中だが、今思うと、なこそ病院は新築前から〝火種〟を抱えていたのかもしれない(連続投書については本誌2013年10月号「なこそ病院『内部告発騒動』の裏側」を参照されたい)。

 「石原氏の死去後、後任事務長には現場出身の職員や地元金融機関OBが就いたが、職員は内情を分かっていないし、金融機関OBも数字は読めるが経営の素人で、石原氏の代わりは見つからなかった」(事情通)

 経営の不安定さが増していく中、なこそ病院はさらなる窮地に見舞われる。石原氏に続き、永井氏も2020年12月に亡くなったのだ。取材では「永井氏自死説」を唱える人もいたが、実際は大病を患い、都内の病院で息を引き取った。

 本誌の手元に、永井氏の死去後に作成された栄央会の内部資料があるが、2017~2020年度の決算と2021年度の業績予想は別表の通り。事実上5期連続赤字で、2022~2024年度の計画業績も3000~6000万円の赤字を見込んでいる。ちなみに、登記簿の資産欄には2020年3月時点で「債務超過額5億0533万2437円」と記されている。

売上高営業損益経常損益当期純損益
2017年6億5020万円▲160万円1010万円980万円
2018年6億0860万円▲1億6020万円▲1億4310万円▲1億4330万円
2019年6億3010万円▲1億1590万円▲1億0230万円▲1億0440万円
2020年6億0850万円▲1億3410万円▲1億2380万円▲1億3020万円
2021年5億2650万円▲1億4440万円▲1億0940万円▲1億0960万円
2017~20年は実績。21年は予測。決算期は3月。▲は赤字。

 「一部の人たちの判断で、理事会に報告せずに〝禁じ手〟と言われる診療報酬ファクタリング(※)をしていたことも発覚した」(同)

※診療報酬債権をファクタリング会社に売却して現金化する手法。診療報酬を受け取るまでの期間は通常2~3カ月程度だが、ファクタリングを利用すれば前倒しで報酬を受け取れる。

 医師・看護師不足も慢性化し、診療科目は六つあるのに医師は常勤1人、非常勤3人の計4人。看護師も入院を受け付けながら常勤26人、非常勤4人、看護補助者10人の計40人しかいなかった。

 「ブローカーもたくさん来た。『紹介料2000万円を払えば医師を1人連れてくる』と」(同)

理事長が短期で次々交代

 経営が立ち行かなくなったなこそ病院は「今いる人員で立て直すのは無理」と事業承継先を探し始める。

 ある医療コンサルタントがこんな話をしてくれた。

 「関西の医療系財団がM&Aで買収するも、病院施設を使った外国人の医療系人材育成事業がコロナ禍で頓挫し、短期間で首都圏の医療法人に売却した。しかし、そこも再建できず、2023年に入ってすぐに休眠状態になった」

 事情通もこう補足する。

 「10以上の企業・団体に事業承継を求めたが、コロナ禍で対面交渉ができず、決算書を見せると『この数字では無理』と即断られた。ベッド数が少なすぎるとも言われた。65床は中途半端で、130床ないと利益を出せないという。『なぜ65床の病院を建てようと思ったのか疑問』と首を傾げる交渉相手もいた」

 栄央会の登記簿を見ると、永井氏の死去から4カ月後の2021年4月に中村洪一氏(兵庫県朝来市)が理事長に就くが半年で辞任。後任に北川智介氏(神奈川県横浜市)が就任するが、同氏も8カ月で退任し、2023年5月に大橋健二氏(いわき市)が理事長に就いている。

 インターネットで検索すると、朝来市の大植病院に中村洪一氏、横浜市の季喜ホームクリニック新横浜に北川智介氏、郡山医師会に大橋健二氏と「同姓同名の医師」がいることが確認できたが「同一人物」かどうかは分からない。

 大橋氏の住所はなこそ病院から徒歩5分の一軒家だった。2014年に栄央会が社宅として新築したが、訪問してみると庭中雑草だらけで人が住んでいる気配はなかった。近所の人も「1年以上、人が出入りしているところを見ていない」。

近所の人によると、なこそ病院の理事長専用社宅は1年以上、人の出入りがないとのこと
近所の人によると、なこそ病院の理事長専用社宅は1年以上、人の出入りがないとのこと

 なこそ病院のホームページを見ると「獅暁会申請中」という一文がある。調べると、同病院と同じ住所に事務所を置き、今年2月に郡山駅西口の駅前ビルに移転した獅暁会(酒井広美代表理事)という一般社団法人に行き着いた。医療コンサルタントを主業にしているようだ。

 だが、話を聞くため事務所を訪ねると、そこはレンタルオフィス会社のフロアで、受付の女性に「獅暁会に取り次いでほしい」とお願いするも断られてしまった。女性の話しぶりから、獅暁会はレンタルオフィスに住所を登録しているだけで、事務所の実体はないとみられる。

 「晩年のなこそ病院は、職員が給料未払いで労働基準監督署に訴えたり、医療系廃棄物を適正処理せず関連施設の敷地に放置して保健所から改善命令を受けたり、『自分はある人に言われてここに来ただけなのでよく分からない』『報酬として2000万円くれるなら理事長をやってもいい』などという輩が経営に介入しようとしていた」(事情通)

 もはや、経営は完全に行き詰まっていた。

 地裁いわき支部では、栄央会を被告とする民事訴訟が2件起こされていたことも確認された。

 一つは、マルトグループHDが昨年1月、栄央会を相手取った建物収去と土地明け渡しを求める訴訟。訴えによると、同社は栄央会(提訴時の理事長は大橋氏)と2013年6月から30年間、病院敷地を月額35万円で貸す賃貸契約を結んだが、2022年7月分から未払いとなり、同年11月に契約解除を通知。提訴から4カ月後の昨年5月、栄央会が口頭弁論に出頭しなかったため、同社の訴えを認める判決が確定した。

騙されて理事長に!?

 もう一つは、大橋理事長が昨年8月、栄央会、福井啓介氏、北川智介氏を相手取った役員登記の変更を求める訴訟。訴えによると、大橋氏は騙されて院長兼理事長に就かされたとしている(以下は訴状より)。

 ①北川氏は元理事長で、福井氏はなこそ病院事務長、理事を務める一方、同病院の医療サービスを行うRICHE BOND(リッシュボンド)代表取締役を兼務していた。

 ②大橋氏は2022年4月に人材派遣会社からなこそ病院の一般勤務医の仕事を紹介され、同年5月、福井氏に会ったその日に院長就任を要請された。大橋氏は年俸2500万円で同年6月から1年間、院長を務める契約を交わした。

 ③大橋氏は福井・北川氏から「院長は診療をしっかりやってほしい。経営は専門家がやる。万が一、経営破綻することがあっても院長に責任を負わせることは一切ない」と言われていた。

 ④ところが、2022年11月から給与未払いが発生。大橋氏はこのまま未払いが続くなら2023年3月までに退職する意向を伝えた。

 ⑤2022年12月、大橋氏は福井氏から「理事長に就任してくれれば診療報酬ファクタリングで未払い分の給料を払えるし、従業員の給料も払える。そうすれば退職に歯止めがかかり、事業継続が可能になる」と言われ、福井氏が持参した登記申請書類に実印を押すよう迫られた。大橋氏は栄央会の債務について個人責任を負わないことを条件に、やむなく理事長就任に応じた。

 ⑥しかし、この時点で給料未払いは2カ月に及び、看護師・従業員は次々と退職。入院患者の他病院への転院等も始まった。病院は2023年1月中旬に閉鎖され、事実上の倒産状態に陥った。

 ⑦大橋氏は2023年6月、栄央会に詐欺等を理由に理事長を辞任する旨の書面を送った。

 その後、大橋氏は二度の訴え変更を申し立て、最終的に栄央会に未払い給料や慰謝料など計約780万円の支払いを求めた。

 「詐欺」とは穏やかでないが、訴状によると、残されていた臨時社員総会議事録と理事会議事録に、大橋氏が両会に出席していないにもかかわらず、出席して理事長就任を承諾したと書かれ、三文判で「大橋」の印まで押されていたという。大橋氏は「福井氏と北川氏による捏造」と主張している。

 裁判は結局、被告が口頭弁論に出頭せず、答弁書等も提出しなかったことから、今年8月、大橋氏の訴えを認める判決が確定した。

 大橋氏の主張しか知り得ないので真相ははっきりしないが、少なくとも、なこそ病院は2022年には末期状態にあったわけ。

 ちなみに、大橋氏の主張に出てくるRICHE BOND(東京都千代田区)は2012年設立。資本金300万円。医療・介護のコンサルタント業を行い、役員は福井氏1人しかいない。

 いわき市保健所によると「栄央会からは2023年1月31日を廃止日とする病院廃止届が提出されているが、書面には廃止理由を記載する欄はない」という。

 それから1年余を経て建物は解体されたが、同保健所では正式な解体時期を把握しておらず、本誌も「今年春から夏にかけて」としか分かっていない。

 この解体に困惑しているのが県地域医療課だ。県では廃止届が出されたことを受け、財産の残存価格を算出した上で、他病院への事業承継や異業(介護、看護)転換など新たな転用策を栄央会側と協議することにしていた。同課の中原智弘課長によると「これだけ立派な施設を簡単には壊せない。地域の医療・介護事情を踏まえ、別の用途は当然考えなければならない」。もちろん、新築時に県から多額の補助金が投じられたことも、簡単には壊せない理由の一つだった。

 ところが建物は、栄央会との協議が始まる前に突然解体された。中原課長は「なぜ急いで壊さなければならないのか、正直驚いた」と言う。それでなくても栄央会は、役員変更時に行わなければならない県への報告を怠ったり、決算届が未提出の年度があるなど書類不足が頻繁に起きていた。中原課長いわく「建物はすでにないが、財産処分に関する書類の手続きはまだ残っている」とも。

 県は栄央会と協議を続けたい意向だが、法人の実態がないため協議の窓口探しに苦労していると言い、勝手に財産処分(解体)されたことについては「甚だ遺憾」(中原課長)としている。

巷で飛び交うウワサ

 巷では、解体を急いだ理由について「レントゲン室を囲う鉛板がなかった」「配線が不足していた」「そもそもあの施設規模では15億円もかかるはずがない」などとして「証拠隠滅のためではないか」とのウワサが囁かれている。

 しかし「鉛板は使われていなかったかもしれないが、鉛シートで覆っていた可能性がある」「竣工検査で配線はチェックされたはず」との指摘もあり、建物が存在しない今、手抜き工事の有無は確認しようがない。工事費(補助金)の〝中抜き疑惑〟も現状ではウワサの域を出ない。

 「栄央会の理事や社員には地元を代表する企業の社長や議員が名前を連ね、その人たちとつながりのある金融機関が融資に応じた。そのことをもって怪しいという人もいるが、現実には、栄央会で資金不足が起きると個人の金を貸したり、人脈を駆使して支援先を探すなど再建に奔走していた。『地域医療のため』という一心で骨を折ったが、仇になった格好です」(医療関係者)

 ところで、実体のない栄央会に代わり建物を解体したのはくすりのマルトとされる。裁判で建物収去と土地明け渡しが認められたとはいえ、解体には巨費がかかったはず。同社に解体の経緯を問い合わせたが、締め切りまでに返答はなかった。医療関係者は「栄央会との賃貸契約で毎年保証金を積み立てさせる条項があったようなので、その金を使って解体したのかも。忌々しい建物を放置しておくのは、マルトにとって許せなかったのではないか」と推測する。

 最後に。栄央会は前記・大橋氏の訴えが認められたことで、理事長就任登記が抹消され(10月16日付)、元理事長の北川氏が同日付で理事長に戻った。多額の借金返済や県地域医療課との書類の手続きが北川氏のもとで進むのか、注目される。

※締め切り後、マルトHDから代理人弁護士を通じて以下の文書回答(11月26日付)があったので紹介する。「依頼人は、同病院に建物の底地を賃貸しておりましたが、地代の未払が続いたことから賃貸借契約を解除し、建物収去・土地明渡訴訟を提起して勝訴判決を得て、裁判所執行官に強制執行申立を行いました。それを受け、執行官により建物の解体・収去手続がなされ、本件建物が解体されました。以上が建物解体の経緯であり、これ以上の回答は出来かねますので、よろしくご理解下さるようお願いいたします」

佐藤 仁

さとう・じん

1972(昭和47)年生まれ。栃木県出身。
新卒で東邦出版に入社。

【最近担当した主な記事】
ゼビオ「本社移転」の波紋
丸峰観光ホテル社長の呆れた経営感覚

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