伊達市の9月定例会で、情報公開条例の改善を促す一般質問があった。本誌は9月号で県内59市町村のうち54市町村が公文書開示請求権者を住民などに限定しており「福島県は全国と比べて『情報公開後進自治体』が多い」と報じた。執行部の答弁には、それを裏付けるように情報公開に後ろ向きの姿勢が表れた。
島明美議員が一般質問
9月10日に島明美議員(1期)が一般質問に立った。伊達市は情報公開条例で開示請求権者を市内在住者や通勤・通学者などに限定しており、それ以外の者については「任意開示」という形で市の裁量に任せている。
島議員が「請求権者を制限する規定を撤廃しないのか」と問うと、宍戸利洋総務部長は「実質誰でも開示請求できるので問題は生じていない」と答弁。だが、任意開示では不開示決定を受けても審査請求(不服申し立て)が認められない欠陥がある。
島議員がこの点を問うと、宍戸総務部長は「任意開示については任意なので不服申し立てができない運用をしている。これまで任意開示請求者から不服申し立てはないので今の制度で運用していきたい」。そして、「職員の労働コスト増加も考えなければならない。制度の濫用や多数の請求があった場合に備えガイドラインを制定する必要がある」と、条例改善に二の足を踏む事情を明かした。
最後に須田博行市長が「情報公開は行政の透明性のために重要。任意開示で公開できるものについては公開していると考える。今後は県内の市町村の動向を見て、『何人も』と定めて制限を撤廃するのか、任意開示のままで情報開示が図れるのか、検討しながらどちらにするか考えていきたい」と述べた。

福島市と伊達地方の開示請求権者
市町村 | 開示請求権者 |
---|---|
福島市 | 何人も |
伊達市 | 制限(任意開示) |
桑折町 | 制限 |
国見町 | 何人も |
川俣町 | 制限(任意開示) |
福島県内は情報公開後進自治体が多いので動向を見るには値しない。伊達市(人口5万5000人)が参考にすべきは、全国に散らばる姉妹都市や友好交流都市だ。姉妹都市の北海道松前町(6000人)は、開示請求権者を制限していない。友好交流都市の千葉県白井市(6万2000人)と滋賀県草津市(14万人)も制限なし。一方、長野県南牧村(3000人)は村民などに制限し、かつ任意開示も認めていない。南牧村以外の3市町は制限を設けていなかった。
ちなみに、伊達市と同じ名を冠した「先輩」である北海道伊達市(3万1000人)も制限なし。1972(昭和47)年に市制を施行した格の違いを見せつけた。
情報公開制度の意義は、誰もが公文書開示請求を通じて「知る権利」を行使し、行政監視ができることにある。これに対し、監視される側の行政機関には不都合な文書を隠す意図が働き、隠すべきでない部分も黒塗りにしてしまう。歯止めをかけるには、審査請求で諮問機関が不開示決定が妥当かどうかを判断する仕組みが不可欠だ。公文書開示請求権に付随する審査請求権は、単なる不服申し立てではなく、情報公開制度を内実が伴ったものにする働きがある。伊達市議会での議論は、審査請求の意味付けを欠いていた。
伊達市が情報公開条例改善に躊躇する理由は、「職員の業務量が増える」という消極的なもの。須田市長は「県内の市町村の動向を見て条例を改正するかどうか検討する」と言うが、県内の自治体は大半が伊達市と同じように請求権者を制限しているので、低い水準での横並びに陥る可能性が高い。同じ横並びなら、伊達市の先を進む姉妹都市や友好交流都市に並ぶことを目指してはどうか。