本誌8月号に「会津若松市『ごみ緊急事態宣言』の波紋 1年半後の新焼却施設稼働がタイムリミット」という記事を掲載した。その中で、現在、会津若松地方広域市町村圏整備組合で新しいごみ焼却施設を建設しており、その焼却能力の問題でごみ減量化が急務となっていることを伝えた。そこで、今回は会津若松市以外の同組合構成町村のごみ減量化の取り組みがどうなっているのかを取材した。
目標まで残り6%から33%まで差が出る

会津若松市は5月20日、「ごみ緊急事態宣言」を発令し、6月から11月までの半年間を「緊急減量期間」と位置付けて、市民・事業者に協力を求めている。
その背景にあるのは2つ。
1つは、国(環境省)が毎年実施している「一般廃棄物処理事業実態調査」(2022年度版、今年6月公表)によると、福島県民1人が1日に出すごみの量は1021㌘で、富山県と並び全国ワーストだった。福島県はこの10年間の同調査で、毎年ワースト3前後を行き来している。そんな中でも、会津若松市は同規模自治体(人口10〜50万人の全国232自治体)でワースト10、生活系に限るとワースト4になっている。そんな不名誉な状況から脱却しようということ。
もう1つは、現在建設中の新しいごみ焼却施設が関係している。ごみ処理事業は、会津若松市、磐梯町、猪苗代町、会津坂下町、湯川村、柳津町、三島町、金山町、昭和村、会津美里町の1市7町2村で構成する会津若松地方広域市町村圏整備組合が担っており、新焼却施設建設も同組合の事業として進められている。
既存のごみ焼却施設は1日当たり225㌧の焼却能力がある。これに対し、新焼却施設は、1日当たり196㌧で29㌧減(約13%減)となる。これは、今後人口減少が避けられない中、それに見合った施設にすべき――との方針から、既存のごみ焼却施設より規模(焼却能力)を縮小したのである。
新施設完成は2025年度中で、2026年3月の稼働を予定している。それに向けて「新施設稼働までに、各構成市町村が燃やせるごみを減らそう」といった減量目標の割り当てがある。
会津若松市は最終的には燃やせるごみの排出量を1日当たり82・1㌧まで減らさなければならない。これに対して、2023年度の実績値は98・2㌧で、目標には届いていない。そうした中で「ごみ緊急事態宣言」の発令に至ったのだ。
同組合の中で、会津若松市が人口的に大きなウエイトを占めているため、同市が目標値に届くかどうかが大きなポイントになる。それは間違いないが、ほかの構成町村は目標達成が可能なのか。ということで、今回は会津若松市以外の同組合構成町村の状況を取材した。
目標達成の見通し

別表は、同組合構成町村別の新焼却施設稼働時(2026年3月)までの目標値(割り当て分)と、2023年度の実績値をまとめたもの。町村によっては、年間での回答だったところもあったため、それを365で割って、1日当たりの排出量を算出した。会津若松市と違い、分母が小さいため、小数点2位まで記載した。
市町村別1日当たりの燃やせるごみの排出量(目標と実績)
目標値 | 実績値(2023年度) | 目標達成までの減量率 | |
会津若松市 | 82・1㌧ | 98・2㌧ | 16・4% |
磐梯町 | 2・65㌧ | 2・86㌧ | 7・9% |
猪苗代町 | 10・30㌧ | 11・65㌧ | 11・6% |
会津坂下町 | 8・83㌧ | 10・37㌧ | 14・9% |
湯川村 | 1・91㌧ | 2・20㌧ | 13・2% |
柳津町 | 1・86㌧ | 2・16㌧ | 13・9% |
三島町 | 0・51㌧ | 0・77㌧ | 33・8% |
金山町 | 0・99㌧ | 1・19㌧ | 16・8% |
昭和村 | 0・73㌧ | 0・79㌧ | 7・6% |
会津美里町 | 12・91㌧ | 13・78㌧ | 6・3% |
2023年度の実績値で、目標値に最も近いのは会津美里町で、あと6・3%減らせば目標達成となる。逆に最も遠いのは三島町で、33・8%の減量が求められる。もっとも、割り当て自体が構成市町村で最小のため、新焼却施設の処理能力から見たら大きな問題にはならない。ただ、目標に届かなければ組合の衛生費負担金が増加することになるだろう。
そのほかでは、磐梯町と昭和村が目標まであと10%を切っている。それ以外は会津若松市と大差ない。
各町村に目標達成の見通しを聞いた。
磐梯町▽ごみの量は順調に減少しており、今後も目標達成に向けて取り組みを進めていく。
猪苗代町▽2022年度(1日当たり12・52㌧)から2023年度(同11・65㌧)のごみ減量実績値(前年度比93%)を維持すれば、目標を達成できる。
会津坂下町▽目標達成の見込みについては、厳しい目標ではあるが、目標達成できるよう焼却ごみ減量にむけた取り組みを継続・徹底していきたい。
湯川村▽これまでと同じ減量ペースだと目標値の達成は難しいと考えるが、家庭系の燃やせるごみについては、目標値には届かないものの着実に成果が見られている。減量への意識向上に伴い、分別方法等が各家庭に浸透してきていると実感している。一方で、事業系の燃やせるごみの進捗が芳しくない。事業系を減らすため、大口の事業所には協力を求めており、その対応次第で目標達成できると考えている。
柳津町▽現在、当町では住民向けにごみ削減に役立つ情報の発信や、減量化への協力をお願いしている。現状では目標達成できていないが、減量は着実に進んでいると認識しているので、今後も減量化の取り組みを推進することで、目標達成できるのではないかと考え、取り組みを進めている。
三島町▽目標達成については①生ごみ処理機「キエーロ」の普及、②古着のイベント回収(年3回)、③陶磁器類のイベント回収(年2回)、④使用済み小型家電の回収(通年)、⑤庁舎内シュレッダーの導入、⑥機密書類処分代行サービス導入を検討中、⑦ごみ分類に関する普及啓発などの減量対策に基づき努力している。
金山町▽人口減に伴い排出量は年々減少しており、1人1日当たり排出量も直近5年間では2023年度が最も少なくなったが、目標達成率は93%にとどまっている。2023年度までの減少率のまま推移した場合、目標達成は2027~2028年度になる見込みである。各搬入区分で見ると町定期収集と事業系ごみは減少しているが、一時多量ごみの処理場への直接搬入は年々増加している。生ごみなど日常生活から発生するごみに加え、一時多量ごみの減量施策が目標達成には必要となるが、町が近年力を入れている空き家対策で発生する空き家片づけの多量ごみは過去の蓄積で発生するものであり、現在の我々が発生量をコントロールするのは困難である。
昭和村▽年々排出量は減少傾向であったが、今年度はコロナ明けにより事業が活発になったことや、実家や空き家の片付けによる業者依頼、個人での直接搬入が増加しており、事業系、生活系の両方が増加している。この傾向は継続すると考えられることから、2025年度の目標達成は困難と思われる。しかし、村内のごみ収集所より搬入された生活系は、今年度も減少傾向にあることから減量の取り組みは一定の効果があったと考えられる。

会津美里町▽達成する見込み。
会津美里町は〝強硬策〟を実施

「達成できる」というところもあれば、「難しい」というところもあり、見通しには差が出ている。それ以外では、「達成に向けて努力する」といった回答もあり、今後の取り組み、住民・事業者などの動向次第ということになろう。
ごみ減量化の取り組みについては、減量・分別などに関する啓発活動や、生ごみ処理機購入への助成、衣類品などの回収、プラスチックや古紙などの回収ボックス設置などを行っているところが多かった。
基本的には排出する人の意識によるところが大きいが、「ごみを減らしましょう」、「正しく分別しましょう」ということは、ずっと言われ続けてきていること。そのため、これまでと変わらない取り組みでは、なかなか効果は出ないだろう。
会津若松市が「緊急事態宣言」を発令したのもそのためで、言わば少しセンセーショナルなことをして、住民の危機意識を煽ったという側面もあろう。場合によっては、そのくらいのことも必要なのかもしれない。
そんな中、会津美里町では、2020年10月から、分別ルールが守られていないごみは収集せずにステッカー等を貼り、分別の周知徹底を図る取り組みを行っているという。要するに、呼びかけ・啓発活動だけでなく、そういった〝強硬策〟も駆使しているということだ。
このほか、猪苗代町と磐梯町ではこんな取り組みを実施している。
「町内の事業者で生ごみを比較的多く排出する事業所6カ所の生ごみを回収して、優良堆肥製造施設に搬入し、ごみの減量化と地域資源循環型社会の構築を目指して実施している」(猪苗代町)
「排出量の多い2企業とは、昨年度からごみ削減に対して調整を図ってきた。本年度から、ごみ分別のために計量器を導入することができた。これにより、ごみの見える化が可能となり、ごみ削減の課題が明確となった。また、プラスチックと紙類の分別強化を進めるだけではなく、分別した後に、ごみではなく再資源化させるフローを作るために、企業や処理業者と調整を進めている。今年度、磐梯町の脱炭素と持続可能なまちづくりの実現に向けて、町内に拠点を持つ企業と包括連携協定を締結予定。ごみ削減についても、共通認識を持ちスピード感をもって進めていく」(磐梯町)
小規模自治体では、1つの事業所から排出されるごみのウエイトが大きくなることもあろう。そのため、大量排出する事業者への呼びかけなどを強化して、減量に努めるというのも1つの手段だろう。
ちなみに、本誌の「目標達成は可能か」との問いに、猪苗代町と会津美里町は明確に「目標達成できる」と回答している。磐梯町は「ごみの量は順調に減少しており、今後も目標達成に向けて取り組みを進めていく」との回答だったが、目標達成までに必要なのはあと7・9%の減量で、ほかの組合構成町村に比べると、その幅は小さい。
会津若松市のその後

最後に、会津若松市のその後についても触れておこう。前述したように、同市は5月20日、「ごみ緊急事態宣言」を発令し、6月から11月までの半年間を「緊急減量期間」と位置付けている。その後、市は7月19日に「ごみ緊急事態宣言」に関するタウンミーティングを行い、市民への呼びかけや意見交換を行った。その中で、同宣言を出してから1カ月間(今年6月分)の最新データも示された。それによると、前年同期比で15・3%の減少が見られたという。もっとも、曜日の並びの関係で、今年6月は昨年6月と比べてごみの収集回数が2回少なかった。その分を補正すると9・2%減になるが、一定程度の成果は出ていると言える。
一方、7月は前年同期比で1・9%の増加だったという。ただ、こちらも曜日の並びの関係で、昨年は回収回数が17回、今年は18回で1回多かった。その分を補正すると、1・3%減になる。
補正分を含めると、緊急事態宣言後、2カ月連続で減少となっているが、目標は「12%以上減」と設定しており、それには届いていない。前段で、少しセンセーショナルなことをして、住民の危機意識を煽った側面もあると書いたが、思うような結果は出ていないということだ。今後、さらなる努力が求められる。
こうして、同組合構成市町村は、それぞれでごみ減量に向けた取り組みを進めているわけだが、新焼却施設稼働のタイムリミットまではあと1年半ほど。それまでに目標を達成できるのか、どこまでそこに近づけるのかは注目だ。
一方で、ごみの減量は地球規模の問題である。今回は「新しいごみ焼却施設の稼働」という分かりやすいタイムリミットがあるから、それまでに何ができるか、といった視点で取材を進めてきたが、そこに間に合わせるだけではなく、長期的な取り組みが求められることは言うまでもない。環境面のためにも、もっと別なことに行政の予算を回せるようにするという意味でも、ごみの減量は真剣に取り組まなければならない問題だろう。