使ったのは職場の公用カメラ
相馬市の下水道課長(当時)が市内の知人女性宅に侵入して女性を盗撮、さらに下着を盗んだとして、住居侵入と窃盗の罪、県迷惑行為等防止条例違反に問われている。住居侵入した時点で悪質だが、業務中に侵入していた点、公用カメラを悪用していた点から、公務員としての心構えにも疑いの目が向けられる。
罪に問われているのは南相馬市原町区の増田克彦被告(55)。9月13日に福島地裁で行われた初公判に増田被告はスーツ姿で現れ、裁判官からの罪状認否に「間違いありません」とか細い声で答えた。現在保釈中。 増田被告は専門学校卒業後、1988年に電気技師として相馬市役所に入庁し、2020年4月に下水道課長に就任した。事件を受けて市は増田被告を7月25月付で懲戒免職。増田被告は、平日は南相馬市鹿島区にある実家から仕事に通い、週末に妻が住むアパートに帰る生活を送っていた。
検察側の冒頭陳述によると、事件のきっかけは2019年4月ごろ。被害者の知人女性に恋愛感情を抱き、22年9月には尾行して住居を割り出した。デジカメで外観を撮影するようになった。今年5月中旬に玄関の鍵を不正に入手したという。6月7日(水)午後1時45分ごろ、その鍵を使って侵入し、洗濯機から下着1枚を盗み、実家の自室で撮影。その後も女性宅にたびたび侵入し、デジカメで部屋の内部を撮ったという。私物のカメラよりも画質がいいからという理由で公用のデジカメを使っていた。
増田被告の欲求はエスカレートし盗撮機設置を考えるようになった。大手通販サイトで小型カメラを買い、同22日(木)午後1時50分ごろ、女性宅に侵入。消しゴムサイズの小型カメラを録画状態のまま脱衣所に配置し撮影した。犯行の約1週間前には「下見」に入り、盗撮のテストをする徹底ぶりだった。女性が不審物に気づいて警察に通報したため犯行が発覚。6月30日に逮捕された。
最初に侵入した日も小型カメラを設置した日も平日の午後2時前。つまり増田被告は、勤務中に犯行に及んでいたことになる。市役所には、どんな届け出をして職場を離れていたのか。
増田被告が意図していたかどうかは分からないが、盗撮行為は7月13日に性的姿態撮影処罰法の施行で厳罰化を控えていた。同法は性的な恥ずかしい姿を正当な理由がなく、相手の同意を得ずに、あるいは同意しないことを表明するのを困難にさせる状態で撮影する行為を罰する。性的画像・動画の盗撮はそもそもアウトだが、提供したり配信したりするのも罪になった点がネット社会への対処を反映している。
県内では公務員による盗撮事件が目立っている。10月11日には本宮市のスーパーで買い物をしていた40代女性のスカートの中を小型カメラで撮影しようとしたとして、県総合療育センター(郡山市)の主任医療技師の男(54)が性的姿態撮影処罰法違反(撮影未遂)で逮捕された。4月に判明した、いわき市の中学校女子更衣室盗撮事件は、同市平の男性中学校教諭(当時30歳)が県迷惑行為等防止条例違反容疑で逮捕された。懲戒免職となったが、罰金50万円の略式命令で済んだ。
公務員が盗撮していたということだけで、所属先の信頼やイメージが損なわれる。相馬市の元下水道課長は、公務があるはずの平日に公用カメラを使用して盗撮していたから、失墜はなおさらだ。