【開店前の飲食店に並ぶ福島市職員】本誌取材で分かったサボりの実態

【開店前の飲食店に並ぶ福島市職員】本誌取材で分かったサボりの実態

 人気ラーメン店の〝開店前行列〟に福島市職員と思しき集団が並んでいた――。こんな匿名メールが本誌編集部に寄せられた。市に確認したところ、メール内容は事実であり、職員らは所定の手続きを取らず休憩時間を取っていたことが分かった。

 メールは昨年11月18日に送信されたもの。内容は以下の通り(一部読みづらい個所をリライトしている)。

 《今日10時半過ぎに福島市岡部の醤油亭というラーメン屋さんに行ったら、福島市の職員が8〜10人くらい並んでました。この店は人気店で、開店11時前に並ばないとスープがなくなるので、私は有給を取って平日の今日10時半過ぎに行きました。私の前方に並んでいた夫婦の旦那さんは、「なんだって、公務員はそんなに暇なのか?」と呆れていました。駐車場を見たら白いライトバンが2台、ナンバーは福島〇〇〇〇(メールでは番号が書かれていたがここでは伏せる)とありました。添付は職員の写真と車のナンバーの写真です》

 添付されていた 〝証拠写真〟には、腕に「福島市」と書かれた作業服を着た男性数人が並ぶ姿と、車のナンバーが収められていた。

 地方公務員法第30条では「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当たっては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」と定めている。もし仕事をサボって集団で並んでいたとすれば違法行為ということになる。

 一方で、公務員が昼の休憩時間に作業服姿で外食すること自体は問題ない。「早朝から仕事して昼休みを早めに取った」、「昼から仕事なので、その前に食事休憩を取った」というケースも考えられる。

 ネットで検索したところ、ラーメン店の正式名称は「ラーメン工房醤油亭」。セブンイレブン岡部店などがある三叉路の近くに立地する。ちぢれ麺の米沢ラーメンが味わえる店として人気を集めていたが、11月末で閉店していた。閉店する前に「どうしても食べたい」と考えて並んだのかもしれない。

 実際のところはどうだったのか、市人事課に連絡し、事実確認を依頼したところ、後日「メールの内容は事実であり、ごみ減量推進課の職員たちが並んでいた」と連絡が来た。

 市の担当者の説明によると、ごみ減量推進課は市内のごみ集積所などを管理する部署で、外勤が多い。普段は2人1組で行動しているが、問題の日は担当者9人が朝9時から市内のあらかわクリーンセンターに向かい、普段使用している公用車のタイヤ交換を行っていた。

 作業がひと段落した後、早めに昼休憩を取り、昼食を食べに行くことになった。なお、職員がそろって食事するのは、タイヤ交換時の恒例行事となっていたという。

 もっとも、ごみ減量推進課の担当者によると、「特別な用事がない限り、12時から13時の間に昼休憩を取ることになっている。変更する場合は昼に仕事が入っているなどやむを得ない理由があるときに限られ、その際は上長が指示を出す」。職員らは上長の指示を仰がず、勝手に昼休憩を早めに取っていたことになる。

 職員らは11時の開店前から行列に並んで食事を取り、その後市役所に戻った。帰庁後間もなく昼休憩の時間に入ったため、ちゃっかり長めの休憩時間を満喫していた。開店前行列に加えて、帰庁後に〝重複休憩〟を取っていた事実も分かったわけ。

 人事課の担当者は「現在詳細について調査中で、処分の対象になるかどうか検討する」と話したが、明らかに地方公務員法に違反している。おそらくタイヤ交換のたびに同じように行動していただろうし、似たような形でサボっている職員がほかにもいる可能性がある。いま一度、職員に勤務時のルールを徹底させるべきだ。

 警察官や消防士などが休憩時間、制服姿でコンビニを利用すると「仕事をサボっているのではないか」と市民から苦情が入ることがある。ネット上などでたびたび議論になるため、今回もそうした事例かもしれないと思い、念のため市に確認したところ、思わぬ事実が判明した。

 中には「外食した店がたまたま混雑していることもある。そんな目くじらを立てることではない」と見る向きもあるかもしれない。

 ただ、そもそも仕事の日に、わざわざ行列ができる人気ラーメン店を昼食の場所として選び、開店前から並ぶ行為は妥当だったのか。人手不足で、忙しく働く中小企業の立場からすると強い違和感を抱くだろう。「公務員はそんなに暇なのか?」と呆れられても仕方がない話だ。

 メールの差出人はわざわざ有給を取って並んでいたというから、なおさら「仕事がある日でも開店前から人気店に並んで食べることが許されるとは、なんていい職場なんだ」と感じただろう(実際は勝手な判断だったようだが)。

 公務員はその行動が市民に見られていることを自覚して業務に取り組む必要があろう。

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