県議選「与野党敗北」から見る次期衆院選の行方

県議選「与野党敗北」から見る次期衆院選の行方

 「今このタイミングで解散したら大惨敗だろうな……」

 11月12日に投開票された県議選の結果を見ながらそう話すのは自民党県連の関係者だ。

 改選前31だった自民党は推薦を含めて現新33人を擁立した。しかし、河沼郡で総務会長の小林昭一氏が立憲民主党の新人に敗れ、いわき市でも当選9回の青木稔氏が落選するなど議席を29に減らす結果となった。

河沼郡小林 昭一猪俣 明伸
会津坂下町3,6143,784
湯川村584877
柳津町795985
選挙区計4,9935,646
(投票率61.18%)
大沼郡山内 長加藤志津佳
三島町485497
金山町656609
昭和村410344
会津美里町4,9064,136
選挙区計6,4575,586
(投票率60.58%)
南会津郡大桃 英樹渡部 英明
下郷町1,2051,753
檜枝岐村189138
只見町1,629941
南会津町3,4735,282
選挙区計6,4968,114
(投票率73.93%)

 政務三役による不祥事や物価高騰対策への批判など岸田内閣への風当たりは強く、各社の世論調査では支持率が20%台で低迷している。

 「市の周辺部はそれほどでもなかったが、中心部に行くと市民からの冷たい視線を感じた」

 とはある自民党候補者が口にした感想だが、それくらい同党への風当たりは強かったということだろう。

 とりわけ自民党にとってショックだったのは、一騎打ちとなった石川郡、河沼郡、大沼郡、南会津郡で1勝3敗と負け越したことだ。

 「これまでにない組織戦を展開したのに票差は変わらなかった」

 と肩を落とすのは石川郡選挙区の自民党関係者だ。

 自民党新人の武田務氏と無所属新人の山田真太郎氏の激突は、根本匠衆院議員が武田氏の選対本部長に就き、玄葉光一郎衆院議員が山田氏の応援に連日駆け付ける激しい選挙戦となった。衆院選の区割り変更で石川郡が旧3区から新2区に変わるのに伴い、旧2区選出の根本氏と旧3区選出の玄葉氏は新2区で直接対決するが、石川郡選挙区はその前哨戦と位置付けられ、武田氏と山田氏の争いは代理戦争の様相を呈した。

石川郡武田 務山田真太郎
石川町3,6364,412
玉川村1,4061,606
平田村1,3601,540
浅川町1,4511,409
古殿町1,2961,407
選挙区計9,14910,374
(投票率63.48%)


 石川郡選挙区はこれまで玄葉氏の秘書などを務めた円谷健市氏が3回連続当選してきた。対する自民党は前回(2019年)、前々回(15年)とも円谷氏に及ばなかったが、

 「組織的な選挙戦を行わず、まとまりを欠いても円谷氏と1000票未満差の争いをしてきた。そうした中で今回は根本先生が直々に選対本部長に就き徹底した組織戦を展開、SNSも駆使するなど陣営はかなりの手ごたえを得ていた。正直、勝っても負けても僅差と思っていたが、蓋を開けたら今までと変わらない1000票程度の差だった」(同)

 石川郡は旧3区を地盤としてきた上杉謙太郎衆院議員(比例東北)が2021年の衆院選で玄葉氏と接戦を演じただけに、根本氏としては更に肉薄するか逆転したい思惑があったはず。自民党への逆風はここでも予想以上に強かったようだ。

 もっとも「ここで解散したら厳しい」と警戒する自民党関係者だが、だからと言って有権者が立憲民主党に投票するかというと、県議選の結果から同党に期待していないことは明らか。維新やれいわなど新たな勢力も、議席は獲得したが大きく台頭するとは考えにくい。既成政党が活力を失う中、「小泉元首相のような超個性的な政治家が内から現れない限り自民党への期待は高まらないだろう」とはベテラン県議の弁である。

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