元裁判官・樋口英明氏が語る原発問題

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元裁判官・樋口英明氏が語る原発問題
集会の様子
集会の様子

 「ノーモア原発公害裁判の勝利を目指す宮城県民集会」が11月25日に仙台市で行われた。

 「宮城県民集会」と謳っているが、いわき市民訴訟、浪江町津島訴訟、川俣町山木屋訴訟など、福島県内の原発賠償集団訴訟の原告メンバーなどが多数参加した。集会では、それら集団訴訟に加え、女川原発再稼働差し止め訴訟、子ども被ばく訴訟、みやぎ訴訟、山形訴訟などの現状報告や、意見・情報交換が行われた。

 現在、それら訴訟の多くは仙台高裁での二審に移っており、仙台高裁からほど近い「仙台市戦災復興記念館」を会場に行われた同集会には、約100人が参加した。

 同集会の目玉企画は、元裁判官の樋口英明氏の記念講演。樋口氏は1952年生まれ。三重県出身。大阪、名古屋などの地裁・家裁などの判事補・判事を経て、2012年から福井地裁判事部総括判事を務めた。同職時代の2014年5月、福井県大飯原発の周辺住民が申し立てた関西電力大飯原発3・4号機の運転差し止め訴訟で、運転差し止めを命じる判決を下した。さらに2015年4月、関西電力高浜原発についても、周辺住民らの仮処分申し立てを認め、同原発3、4号機の再稼働差し止めの仮処分決定を出した。その後、名古屋家裁に異動となり、2017年に定年退官した。

『私が原発を止めた理由』(旬報社)などの著書でも知られる。

 樋口氏は講演で「私自身、3・11までは原発に無関心だった。安全だと思い込んでいた」と語った。

 加えて、樋口氏は「原発問題は先入観のかたまり」とも。国の監督官庁がしっかりやっているだろう、電力会社がきちんとしているだろう、と。そして何より、「われわれ素人に分かるはずがない難しいものだ」という先入観。

 しかし、原発問題の本質は以下の2つしかないという。

 ○人が管理し続けなければならない(止める、冷やす、閉じ込める)。

 ○人が管理できなくなったときの事故、それに伴う被害は想像を絶するほど大きい。

 「例えば、家電製品や自動車であれば、何かトラブルがあったら使用をやめればいい。その後、管理し続ける必要はない。自動車であれば、路肩に止めてJAFでも呼べばいい。原発はそうはいかない。止めた後も管理し続けなければならない。(前出の例と)似ているもので言うと飛行機。飛行中にトラブルがあり、ただ単にエンジンを止めただけでは大きな事故になる。その後の対応が必要になる。原発も同様」

樋口英明氏

 原発を管理し続けるには、電気と水が必要になるが、大きな地震が発生した場合、停電や断水の恐れが生じる。そういった点から、「原発が大地震に耐えられるかどうか。その本質が分かったから、あの(原発運転差し止めを認める)判決を書いた」という。

 樋口氏は、「原発は国家防衛上の弱点になる」、「自国に向けられた核兵器である」とも述べた。

 このほか、生業訴訟など4件の集団訴訟に対する国の責任を認定しなかった最高裁判決(今年6月17日)についても解説した。

 講演後は質疑応答の時間が設けられ、出席者らは樋口氏に聞きたいことを聞いて理解を深めた。

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