「地域の守り手」企業を衰退させる県の入札制度

「地域建設業の地域貢献度や技術力が適正に評価される入札制度について」という要望書

 県建設産業団体連合会(長谷川浩一会長)は12月6日、自民党県連に「地域建設業の地域貢献度や技術力が適正に評価される入札制度について」という要望書を提出した。

 要望書は大きく三つの項目で構成されるが、その一つ「入札制度全般について」という項目では以下の要望を行っている。

 ①入札制度においては、「地域の守り手」として県施設の維持管理業務や災害対応等を担い、日頃から災害への備えや技術研鑽に努めている企業の適正な評価に努めること。

 ②中山間地域等、人口の少ない地域においては、「地域の守り手」である地元建設企業の存続は地域の安全や利便性を確保するうえで必要不可欠であり、競争性を重視するだけでなく、地元建設企業が安定的・継続的に経営できる透明性のある入札制度にすること。

 ③「公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)」に基づき、建設関係企業が公共工事の受注により技術力向上や設備投資、福利厚生の充実等に必要な適正利潤を確保できるよう、最低制限価格、低入札の失格基準、調査基準価格等を引き上げること。

 同連合会の会員である県建設業協会は、県と締結する災害応援協定に基づき災害対応を行ったり、除雪作業を担うなど「地域の守り手」として活動している。しかし、こうした取り組みは企業経営の負担となっており、会員企業の使命感に委ねられている側面がある。「地域貢献の努力に見合ったインセンティブが必要」という意見は以前からあった。

 県では2006年の県政汚職事件以降、入札制度を総合評価方式に切り替えたが、20年度から「地域の守り手育成方式」という指名競争入札を創設した。背景には、総合評価方式は中山間地の「地域の守り手」企業ほど持ち点の少なさから受注に苦慮してしまうため、指名競争入札を一定程度導入することで受注機会を生み出し、安定経営につなげるとともに、引き続き「地域の守り手」の役割を担ってもらう狙いがあった。

 ところがこの指名競争入札には問題点があった。▽国・県・市町村いずれかの指示で災害出動した実績がある、▽国・県・市町村のいずれかと災害応援協定を締結している、▽国・県・市町村のいずれかと施設維持管理や除雪業務の契約実績がある――このうち一つに該当すれば入札に参加できるが、市町村業務の実績しか持たず国・県業務の実績がない企業は機動力や技術力に乏しく、受注しても「品質に問題がある施工」が行われる可能性が高いのだ。

 挙げ句、仕事欲しさにダンピングが行われ、適正価格が損なわれるなど品確法に反する応札も横行。結果的に「地域の守り手」企業が受注できない状況に見舞われた。

 例えば喜多方管内では2020~21年度、この指名競争入札で24件の工事が発注され、うち13件が県業務の実績がある企業、11件が同実績のない企業が落札した。これらの企業が昨年8月に同管内で起きた災害でどういう役割を果たしたかというと、前者は災害現場で迅速な対応を見せたが、後者は市町村業務の実績しか持たないことを理由に県から災害対応を依頼されなかったのだ。要するに「地域の守り手」として見なされていないわけ。

 これでは「地域の守り手」の役割を果たしていない企業がどんどん受注し、その分、災害対応や除雪に当たる企業は受注機会を奪われ、最悪廃業しかねない。廃業後、役割を果たしていない企業が代わって「地域の守り手」になる保証もない。

 本誌先月号で郡山市の建設業界でも同様の問題が起きていることをリポートしたが、行政が「地域の守り手」を支えることは県土と住民の安全・安心を守ることにつながる。県も同市も、早急かつ適正な入札制度への改善が求められる。

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