福島交通と会津乗合自動車(会津バス)が来年4月1日に経営統合することが発表された。人口減少で利用者が減り続け、運転士の確保も難しくなる中、経営効率化を図ることで「地域の足」の存続と会社の生き残りを目指す。
利用者増のカギは魅力的なルートとダイヤの構築

福島交通と会津乗合自動車が11月10日に発表した共同プレスリリースによると、合併(経営統合)の方式は対等合併だが、各種手続きを簡便にするため法的には吸収合併方式を選択し、福島交通を存続会社とする。ただし、名称(福島交通、会津バス、あいづタクシー)や車体のカラーリングは地域に根付いている観点から変更しない。
本店は福島交通本社(福島市東浜町7―8)に置き、会津乗合自動車本社(会津若松市白虎町195)は支社となる見通し。新会社の社長には武藤泰典氏(福島交通社長)、副社長には佐藤俊材氏(会津乗合自動車社長)が就く。資本金は1億円。

この合併を受け、両社の傘下にある福島交通観光と会津トラベルサービスも来年4月1日付で合併し、福島交通観光を存続会社とする。
福島交通は中通り、会津乗合自動車は会津地方を営業基盤とするが、両社は共に㈱みちのりホールディングス(以下、みちのりHDと略。東京都千代田区、松本順会長)の100%子会社という関係性にある。
みちのりHDは経営難に陥った公共交通事業者を次々と傘下に収め、グループ企業には茨城交通、岩手県北自動車、関東自動車(栃木県)、湘南モノレール(神奈川県)、東日本交通(岩手県)、佐渡汽船(新潟県)などがある。福島交通は2009年4月、会津乗合自動車は2013年8月にみちのりグループに加わった。
みちのりグループは「ベストプラクティス(最も効果的な手法)の横展開やスケールメリットの追求により単独では成し得ない改善効果を生み出す」ことを目指し、グループ企業内において経営管理・PDCA手法の共通化、バス路線の新設、旅行商品の企画・販売、高速バスの新路線開設とネットワーク化、車両整備技術の共有などを進めてきた。
こうした中で、福島交通と会津乗合自動車も高速バスを共同運行したり、会津乗合自動車傘下の丸峰観光ホテルを組み込んだ旅行商品を扱ったり、両社の全路線と福島交通飯坂線の全駅でキャッシュレス決済サービスを始めるなどスケールメリットを生かす取り組みを進めてきたが、会津乗合自動車の佐藤俊材社長によると、合併に向けた検討を始めたのは昨年末だったという。
「一つは、両社ともみちのりグループに入って10年以上経ち、みちのりHDの取り組みが地元から理解されている感触が得られたこと。もう一つは、公共交通事業が転換点を迎える中、小さい会社で事業をするよりは大きい会社で事業をした方がメリットが大きいと判断したこと。この二つが合併を決断した大きな理由になります」(佐藤社長)
お互い隣接するエリアで営業しているため「それぞれの会社でバスを運行するよりは、一つの会社で運行した方が経営効率は格段に上がる」と佐藤社長は力説する。
「何と言っても本社を一つに集約できます。福島と会津は1時間で行き来できる距離なので、そういう場所に本社を二つ置く必要はありませんから。高速バスも両社で共同運行してきましたが、一つの会社になればダイヤや料金の設定が柔軟にできます。これまで別々にやっていた情報発信を、一つの会社で一元化できるのも大きな利点です」
そのほか、福島交通は誘客のための営業所を東京と大阪に構えているが、会津乗合自動車はないため、大都市圏から会津への誘客強化につながること、会津乗合自動車が持つ観光地特有のノウハウを福島交通と共有することで、中通りでも観光事業の積極展開が期待できるなど、互いに持たない部分を補完し合うことも期待されるという。
「同じグループ会社として、共同でできることは今までも一緒にやってきたが、合併で一つの会社になることでさらなる事業展開を図っていきたい」(同)
両社の経営状況も確認しておきたい。非上場の両社は決算を公表していないが、鉄道事業者でもある福島交通は国土交通省が発表している鉄道統計年報に業績が載っている。同年報で確認できた直近5年分の業績は別表①の通り。
表① 福島交通の業績
| 鉄軌道業営業収益 | 自動車 | その他の兼業 | 営業損益 | 当期損益 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 2018年度 | 5億0075万 | 46億4145万 | 3711万 | ▲8億6371万 | 3億7049万 |
| 2019年度 | 5億0163万 | 46億2405万 | 3669万 | ▲9億0642万 | 4億3201万 |
| 2020年度 | 4億0918万 | 30億8669万 | 3522万 | ▲19億6409万 | ▲1億1343万 |
| 2021年度 | 3億6652万 | 26億8268万 | 3045万 | ▲23億5069万 | 1億3021万 |
| 2022年度 | 3億9337万 | 31億2010万 | 2967万 | ▲19億4237万 | 2億0777万 |
コロナ禍の真っ只中だった2020年度は当期損益で赤字を計上したが、それ以外の年度は黒字となっている。営業損益が大幅赤字なのに、なぜ当期損益は黒字なのかと思う人もいるかもしれないが、これは路線バスを維持させるため国や県から手厚い補助(地域公共交通確保維持改善事業補助金)が行われているからだ。
一方、会津乗合自動車は丸峰観光ホテルを傘下に収める前までは民間信用調査機関のデータで決算を確認できたが、現在は非公開扱いとなっているため、非公開前の直近5年分の業績を別表②にまとめた。同社はコロナ禍の影響で2019~2021年に赤字を計上し、それ以外はかろうじて黒字だった。
表② 会津乗合自動車の業績
| 売上高 | 当期純利益 | |
|---|---|---|
| 2018年 | 23億9900万円 | 1300万円 |
| 2019年 | 23億8200万円 | ▲1400万円 |
| 2020年 | 16億6700万円 | ▲2億7300万円 |
| 2021年 | 14億4700万円 | ▲5000万円 |
| 2022年 | 17億5000万円 | 4500万円 |
数字だけを見ると、会津乗合自動車の方が合併によって助かる立場にいることになる。
台数・人員増のメリット
地域交通政策が専門の吉田樹・福島大学経済経営学類教授は両社の合併を次のように評する。
「過去には同じみちのりグループの中で、関東自動車が東野交通と、茨城交通が日立電鉄交通サービスと合併した実績があります。また、会社ごとに機器類が異なるケースが多い中、両社は会津乗合自動車が2024年7月からICカード『NORUCA』を導入したことで、既に導入していた福島交通とタッチ決済が統一されていました。そうした状況を踏まえると今回の合併に特段の驚きはなく、その時期が来たものと受け止めています」
吉田教授によると、機器類もさることながら、文化の異なる企業同士の合併は当然簡単ではないが、会津乗合自動車の場合はみちのりHD出身の佐藤俊材社長が福島交通を意識しながら合併の機運を醸成していった影響も大きかったのではないかと見ている。
もちろん、会社を大きくすることで得られるメリットも合併に踏み切る要因となる。
「バス事業はスケールメリットが働きやすく、合併によって台数や人員が増える意義は大きい。とりわけ今は、どの会社も運転士不足が叫ばれているので、人員の融通は利きやすくなると思います」(同)
吉田教授は、通勤時間帯の路線バスを、福島交通の運転士が会津若松市内、会津乗合自動車の運転士が福島市内をいきなり走らせるのは難しいが、都市間を結ぶ高速バスならどちらの運転士がハンドルを握っても支障はないと指摘。貸切バスも、同じ福島県内で営業エリアが重なる部分は多かったはずなので、運転士が増える分だけ走らせられるバスの台数も増えるとみている。
「会津は修学旅行の需要が多いので、繁忙期に福島交通の運転士を融通できるメリットは大きい。逆に、福島市で大口の需要があった場合は会津乗合自動車の運転士にお願いするシーンが増えると思います」(同)
現在は、福島交通観光で販売した旅行商品だからと言って周遊に使われるのは福島交通のバスとは限らない。福島交通に依頼しても「バス、運転士が確保できない」と言われれば、福島交通観光は他社の貸切バスに依頼している。独立採算制なので当然と言えば当然だが、合併で福島交通の台数や人員が増えれば運行機会も増えるので、グループ外に流出していた売上をグループ内にとどめる効果も期待できる。
「運転士だけでなく、整備士や事務系の従業員も決して多いわけではないので、一緒にやれることを増やせば人員の融通だけでなく経費の削減にもつながります」(同)
メリハリつけた路線構築


とはいえ、台数と人員を増やし、経費を減らせば経営が好転するわけではない。吉田教授は「新会社のもとで路線バスの魅力的なルートとダイヤを構築できるかどうかがカギになる」と指摘する。
「例えば、新常磐交通はメディアで減便が話題になることが多いが、実は、いわき駅―ニュータウンー小名浜を結ぶ路線は増便しており、ダイヤも00分、15分、30分という具合にキリの良い時間で揃えているのです。人が集まる場所をつなぎ、分かり易いダイヤにすれば、利用者からアテにされ、自然と乗ってもらえるようになります。合併後の福島交通も経営の軸となる路線を構築し、サ
ービスを高めて利用者増につなげられるかが重要です」(同)
その一方で、利用者が少ない路線や地域はデマンド交通やライドシェアでカバーする。「広く薄く」ではなくメリハリをつけていくことが、これからのバス会社には欠かせないと吉田教授は言う。
利用者の減少に歯止めをかけるのは簡単ではないが、新しい福島交通が「地域の足」を維持するため、どのような経営を展開していくのか注目される。

























