政経東北|多様化時代の福島を読み解く

原子力国際会議が郡山市で開催に違和感

原子力国際会議が郡山市で開催に違和感

 昨年11月27日から12月2日にかけて、郡山市のホテルハマツを会場に国際会議「IYNC2022」が開かれた。

 IYNC(International Youth Nuclear Congress)とは世界の原子力業界の若手有志(原則39歳以下)による国際NGO。原子力の平和利用促進や世代・国境を超えた知識継承を目的に、2000年から2年に一度、国際会議を開いている。

 当初、2022年の開催地はロシア・ソチだったが、ウクライナへの軍事侵攻を踏まえ、日本での開催に変更されたという。

 11月30日、ホテルハマツを訪ねると大勢の人たちが集まっていた。主催者によると直接参加者は海外120人、国内100人、オンライン参加者は40人。外国人はノーマスク姿で、日本人はマスクを付けている光景が印象的だった。参加者は2、3階に設けられた大小のブースに分かれ、ワークショップに臨んだり、研究者の発表や基調講演を聞いたり、数人で立ち話をしながら情報交換するなどしていた。

 「コロナ禍で大きなイベントが中止されていた中、国際会議が開かれるのはありがたいのですが……」

 と言いながら、複雑な表情を浮かべるのは市内の経済人だ。

 「IYNCの目的が引っかかるんです。原発事故で被災し、未だに避難地域を抱える福島県で、原子力の平和利用を謳う団体が国際会議を開くのは正直抵抗がある。47都道府県ある中から、なぜ福島県が開催地になったのかも疑問だ」(同)

 地元経済の観点から言うと、200人超の会議が連日開かれればホテル、飲食店、土産物、タクシー、観光地など多方面に波及効果が見込まれる。しかし放射能に翻弄され、県内の原発はすべて廃炉になることを踏まえると、原子力の平和利用という目的は確かに引っかかる。

 今回の会議はなぜ福島県で開かれることになったのか。IYNC2022共同実行委員長の川合康太氏にメールで質問を送ると、次のような返答があった。

 「福島県での開催が決まった背景には、東電福島第一原発の廃炉に関する情報発信と、郡山コンベンションビューローの協力という二つの要因があります。事故から11年以上経つが、発電だけでなく放射線治療なども含む世界の原子力事業に携わる若手には事実情報が届いていない。そこで、廃炉に関わる人たちがどう対応しているのか、各国の若手・学生にまとまった時間を持って伝えようと今回の会議を誘致しました。その結果、多くの方に廃炉の現状を理解していただき、今後は参加者各自による母国語での情報発信が期待できると考えています」

 原子力の平和利用という目的に抵抗を感じる県民がいることについては、こんな意義を強調した。

 「今回の会議は郡山コンベンションビューローやホテルハマツなど被災された方々と一緒に作り上げました。私たちは、参加者に地元産の野菜などを使った料理を提供したり、県内の現状を正しく知ってもらうことで福島県を好きになってもらいたいと考えた。そうすれば今後、風評被害などが発生した場合、会議で得た事実情報を自身の言葉で発信することにつながると思います」

 ちなみに、開会式には郡山市の品川萬里市長が招かれ挨拶した。内堀雅雄知事にも打診したが、公務都合で欠席、代理者の挨拶もなかった。これだけの規模の国際会議なら代理者の挨拶くらいあってもよさそうだが、内堀知事も原子力の平和利用が引っかかり、県として関わりを持つのを避けたのかもしれない。

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