本誌6月号に「泥棒被害にあった北塩原村ラビスパ裏磐梯」という記事を掲載した。北塩原村の健康増進温浴施設・ラビスパ裏磐梯は昨年1月末に閉鎖されたが、その後、泥棒に入られたことを伝えた。
同施設については、本誌昨年1月号、5月号で報じた。2023年12月議会で遠藤和夫村長が「ラビスパ裏磐梯を2024年1月末で事業停止、3月末で廃止にする」旨を明かしたことから、その背景などをリポートしたのが昨年1月号記事。同施設はオープンから30年近くが経ち、建物や内部設備の老朽化が課題となっていた。施設改修費用は10億円規模になると予想されたことから、議会で議論してきた中で「廃止」の方針に至った。
しかし、議会はそれを認めなかった。同施設が存在する根拠になっているのは村の「温泉健康増進施設条例」で、同施設閉鎖後の1月31日に開かれた臨時議会で同条例廃止案が提出されたが、議会はこれを賛成ゼロ(全員反対)で否決したのだ。その後、昨年3月議会で再度、同条廃止案が提出されたが、賛成4、反対5の賛成少数で否決された。つまり、同施設廃止が二度にわたって否決されたことになる。これによって、施設は閉鎖しているが、条例上は存続しているという状況に陥り、それがいまも続いている。その経過を続報したのが昨年5月号記事である。
そんな中で起きた泥棒事件について、ある村民は皮肉たっぷりに、こんなことを指摘した。
「ラビスパ裏磐梯の現状は、遠藤村長は廃止したいけど、議会はそれを認めないという状況です。議会が廃止を認めない以上は存続させるしかありません。つまりは施設を再開させなければならないということです。そんな中で機械室の配線が盗まれる事件が起きました。遠藤村長からしたら、『再開させるのが困難だ』と言える理由ができた格好。これ以上は口にしないけど……何が言いたいか分かるよね?」
要するに「自作自演」と言いたいのだろう。さすがにそんなことは考えにくいが、今回の事件をそんなふうに見ている村民もいる――6月号ではそんなことを指摘した。
その後、この村民から「やっぱり思っていた通りのことが起きた」との情報が寄せられた。
6月20日に臨時議会を開き、村は「温泉健康増進施設条例」を廃止する条例案を提出したというのだ。
「村は今回の泥棒被害によって、別途修繕費が必要になったこと、もともと建物や内部設備の老朽化が課題となっており、それらを合わせると、さらに修繕費が膨らむことを理由に、やはり再開は難しいとして、温泉健康増進施設条例の廃止案を出したのです。要するに、前に私が言ったことが現実的になったということです」(前出の村民)
ただ、これには議会の反発を招いた。この村民はこう続ける。
「議案審議の中で、議員から質問があったが、回数が制限されていることから、動議を出して追及する動きに発展した。何度か休議を挟んで最終的に村は議案(温泉健康増進施設条例の廃止案)を取り下げました」
過去2回の否決に続き、3回目は否決ではなく議案取り下げだったが、議案を通すことはできなかった。村は近く都合4回目となる温泉健康増進施設条例の廃止案を出す考えのようだが、堂々巡りが続きそうな情勢である。